もっとちゃんとしたバトルが希望なんですが
闘技場にあがると少し高い位置になるため広く感じる。周りからの視線も感じるため少し緊張してきたな。
「あいつら全然そんな素振りも見せなかったな」
そういう度胸を持ち合わせているのか、何も考えないただのバカなのか?
「あ、なんか今マーシーが俺をバカにしたような気がした」
「奇遇やな、おれもそう感じたわ」
僕と対峙した参加者は身長と同じくらいの両手剣を手にした職業が騎士の青年だった。シルバーの鎧に純銀の両手剣。兜は装着していないため顔は出ているが首から下は硬そうだな。肩まで伸びた金髪のサラサラヘアをなびかせて両手で持った剣を横に構えてニヒルな笑みを浮かべている。
「おいおい、そんな木刀で僕の剣技を防げると思っているのかい?」
「お手柔らかにお願いします」
僕は右手に木刀を持ち右半身を前に相手に対して半身で身構えた。
「キャー!ルベールさまー!!」
「ルベールさま!がんばってー!!」
「剣を持った姿もかっこいいーー!!」
観客席から黄色い声援が飛んでくる。どうやらこの相手はルベールくんと言うようだな。
「ふっ、女の子に血を見せるのは忍びないからね。安心しなよみねうちにしてあげるから」
え?その両手剣、両刃ですよ。側面で殴るの?鉄の塊だから鈍器としても十分だから直撃すればもっとひどいことになるんじゃないの?
「マーシーの相手さんなんか色男みたいやな」
「そんな相手をぶちのめしたら女の子からどんな目を向けられるのでしょうかね?」
2人はなんだか楽しそうに笑みを浮かべているな。
「始め!!」
さぁ試合開始だな。
ルベールくんは剣を横に構えたまま真っ直ぐ僕に向かってきて横一線。
僕は後ろに飛んでその攻撃を躱す。
「なによ!あの平民!!ルベールさまの剣を躱すなんて!!」
「さっさとやられちゃいなさいよ!」
「ああ!剣を振っている姿も素敵!!」
・・・・・・・・・・・・・。
僕はチラリとタカシとマサルに目を向けた。
メッチャ笑ってますね。
「ははっ。いい動きをしているね今の攻撃を躱すなんて。次はそうはいかないよ」
ルベールくんは今度は両手で持った剣を肩に担ぐ形で構えをとった。
うん。なかなか器用に人をいらつかせるヤツだな。
ルベールくんは剣を担いだまま一直線に僕に突進。そのままその身の丈もある大剣を振り下ろす。
ガアン!!
もちろん回避します。
大剣は地面に打ち付けられてルベールくんは不思議そうな顔をしている。
え?どうしてそんな不思議そうな顔を?そんなバカ正直に真っ直ぐ突っ込んできたら普通躱されるだろ?
僕はそんな驚いているルベールくんの髪を左手で鷲掴み、木刀を持った右手で角度をつけて鼻へ拳をお見舞いする。
そう、鼻狙いです。
ゴッ!!
すると鼻血がだらだら、鼻は明後日の方向を向いている。
「いぎゃあああああああ!!!血が!!血がぁぁぁ!!!!!」
ルベールくんは大剣を手放して鼻を押さえて叫び出した。
「きゃあああああ!!ルベールさまーーー!!」
「なによアイツ!!卑怯よ!!!!!」
え?卑怯ってなにが?
「ああああ!鮮血に染まるルベールさまも素敵!!」
タカシとマサルはケラケラと笑っている。
僕はチラッと審判を見るが審判は首を横に振っただけだ。流石に鼻血を出して痛がっているだけじゃ戦闘不能とはみなさないよね。
痛がっているフリかもしれないしね。
僕は鼻を押さえて痛がっているルベールくんの背後に立ち木刀を軽―く耳に打ち付けた
「いぎゃあああああ!!!耳が!!耳があああ!!」
「きゃあああ!!ルベールさまああ!!!」
「卑怯よ!!卑怯だわ!!!背後から攻撃なんて!!」
「ああああ!その叫び声も素敵!」
どうやら1人変態が混じっているようだ。
僕は再度審判に目を向ける。審判は少し首を傾げたがまた首を横に振った。
うーーーんまいったな。
僕が悪いんじゃないよ。僕が悪いんじゃないからね。
そして僕は木刀を右へ左へとその顔にビシバシと打ち付ける。剣としてではなく平手のようにしならせてダメージを与えるというよりはそれはもうただの折檻のように。
無表情で。
「痛っ!!やめ!!やめて!!いぎゃ!!いた!!」
そして頭を抱えてうずくまったルベールくん。僕は三度審判の方を見た。
「そ・・・・そこまで!」
「いやああああああ!!ルベールさまーーー!!」
「あなた!!ルベールさまになんてことするのよ!!」
「あああん!あの怯えた姿!!なんとも言えないわ!!」
おい、1人変態がいるぞ。大丈夫か?
僕はすっきりしない気持ちで闘技場を降りた。
「ひゃっはっはっはっ!マーシーさすが!!」
「鬼畜っぷりもそうだがあの相手をひくのが流石マーシー」
「初撃できっちり鼻を折るところがやっぱマーシーやわ!」
言いたい放題だ。
周りの試合も順調に進みどんどん消化されていく。あの魔族も十兵衛さんも問題なく勝ち進んでいるな。
お、ロボもちゃんと勝っているな。げっ、ロボと僕同じブロックじゃないか。このままなら明日にあたっちまうな。
その後も僕たち3人は危なげなく勝ち進み、夕方になるころに予選の半分が終了したということで続きは明日ということになる。勝ち進んだ参加者はまた明日も同じように集合ということだ。
僕たちはホテルへと戻った。
部屋についた僕たちは少しの雑談のあと早めの就寝。一応そこで参加者に居た魔族については話しておいた。あそこに居ていいものなのか僕達3人には判断はつかないが一応情報共有だ。そして明日はできるだけ苦戦してギリギリ勝っているという姿をとるようにと話した。
なぜか?
だって賭けがあるということは倍率なんかもあるんじゃないかということだ。なるべく倍率を上げてそして優勝すれば大儲けじゃないか。まぁ実際倍率なんかも関係ないかもしれないがやってて損はない。
2人とも面倒くさいとか言っているがそのかわり本選は自由にしていいと話したら渋々呑んでくれそうだ。
さてと明日もはりきっていこう。
そして予選会1日目は終了した。




