バトルって、こう、ドンパチするのを期待したが
武闘大会予選開始
次々と番号が呼ばれてそれぞれの闘技場に集まっていく。とりあえずは3人共別々のブロックに配置されたようでホッとした。
ボードを確認すると僕の番号はまだ少し先になりそうだがタカシが早々に呼ばれていた。
「よっしゃ。ほんだらちょっと行ってくるわ」
「分かってるな?タカシ」
「大丈夫、大丈夫。本選までは我慢するわ」
「あの高速で動くのも禁止だからな」
タカシは笑顔で手を振り闘技場へ向かって行った。僕らも少し遠目でその闘技場に目を向ける。
「もぐもぐ、どんなものかな?ング、ごくん。2人で組み手はよくやったが、俺たち対人戦ってほとんど経験してこなかったからなぁ」
残った焼き鳥の串を手にマサルが心配そうな表情を浮かべた。
「俺も同じことを考えてたけど、相手がよっぽどの熟練者でもない限り大丈夫だろ」
「お、ミゴニゴルじゃねーか」
「去年の本選出場者が早くも登場か」
「相手のやつは・・・初出場か?ご愁傷様」
説明セリフありがとう。
タカシの相手はどうやら昨年の本選出場者のようだ。身の丈と変わらぬ大きな大剣を背中に背負ったおじさんだ。軽鎧の隙間から見える腕と足は筋肉がパンパンでいかにもパワーファイターっぽい。
他の闘技場でも試合が次々と始まっていく中タカシとそのミゴニゴルという選手の立つ闘技場も開始が合図された。
「始め!」
ミゴニゴルは大剣を横に構えて腰を落とす。タカシは何故かずっと笑顔だ。笑顔でそのミゴニゴルを中心にゆっくりと円を描きながら歩いている。
ミゴニゴルは歩くタカシに視線を向け相対するように身体の向きをかえている。
「カウンタータイプなんか?そっちが来ーへんならこっちからいくで」
タカシは歩を進める向きをミゴニゴルに向けてスピードは速めず遅めず歩くスピードのまま近づいていく。
3メートルくらいの距離まで近づくとミゴニゴルの大剣が横一線。
ブンッ!!と振り切った大剣をタカシは1歩後ろに下がることで躱していた。
そのまま大剣を反してさらに横一線、される前にはタカシは懐まで飛び込んでいてミゴニゴルを腕ごと抱き抱えていた。
「どっちが石頭か勝負しよか!」
ゴチン!!
ゴチン!!!
ゴツン!!!!
3回目でミゴニゴルは
「ま・・・・まいった・・・・」
と言って降参した。
オオオオオオッ!
っと歓声があがる。去年の本選出場者にあっさり勝っちまったからな。
まぁあれくらいは仕方ないか。常人離れしたパワーもスピードも出していないしな。懐に入り込んだダッシュも許容範囲内だ。ここにいる少々早いヤツならあれくらいはできそうだ。このミゴニゴルってのは去年本選出場しただけでギリギリベスト16くらいだったんだろうな。
タカシが闘技場から降りてきた。
「おつかれさん」
「おう。あれくらいならええか?」
「ああ。あれくらいでいけるならこの後も同じ感じでいこう」
マサルも初戦を迎えていた。
相手はマサルと似た体形の小太りな武闘家だった。服装はタカシと同じような道着を着ている。
「アチョー、ハチョー」
構えてカンフーっぽい掛け声でマサルを威嚇する。
「始め!!」
試合開始と同時に突っ込んでくる小太りな武闘家。マサルはどうしようか悩んでいるようでとりあえず飛んできた蹴りを腕でガード。その後もキックやパンチを連打する武闘家の攻撃をバシバシと腕や足でガードし続ける。
「なんや、防戦一方やんけ」
「いや、あれは多分どうやって手加減して勝つのか悩んでいるんだろうな」
ガードしかしないマサルに対してその小太りの武闘家(小武闘家)は活き活きと攻撃をしかけてくる。
しかしミドルキックを放った右足をマサルが左腕でガッチリホールド。
「あ、捕まえたやん」
「ああ。これで試合終了だな」
「ハチョー!!」
小武闘家はそれでも続けて宙に浮く状態になり左足でマサルの鳩尾に鋭い前蹴りをお見舞いする。
ドンッ!!とマサルの鳩尾に左足が直撃したがマサルはびくともしていなかった。
「やっと捕まえた」
マサルは今度は左足を右腕でロック。咄嗟に小武闘家は両足を掴まれたまま上体を起こして今度はマサルの顔面めがけて拳を繰り出そうとするがその拳が届く前にマサルは両足を掴んだままグルングルンと回り始めた。
「ジャイアントスイングやな・・・」
「ああ、よく回っているな」
遠心力により体が伸び切ってしまっている小武闘家は反撃もままならない。
そのまま5周6周7周と回り続けて勢いをつけるとマサルはもちろん
ポーーーーイ
と場外へと放り投げた。
「じょ・・場外!!」
審判がマサルの勝利を宣言するとマサルはフラフラと闘技場から降りてこちらへと向かってきた。
「結果あのようになってしまいました」
「まぁ仕方ないわな。意外に手加減して勝つって難しいもんな」
「ナイスファイト!実践でジャイアントスイングが見れるとは思ってなかったよ」
「気持ち悪い。できればこんな戦い方はやりたくない」
だいたいの参加者はステータスが100前後のヤツが多いな。その中でも強そうなのはさっきの魔族と十兵衛さんくらいか。そういえばロボのステータス見忘れたな、後でチェックしておくか。
参加者の中には現役の冒険者で名前の売れているヤツはいないのかな?銀獅子のロン毛のおじさんあたりは出場していれば優勝候補だろうな。聖騎士の副団長のレイアガールあたりもトップだな。ナイトガードのグラブルさんも出場していればかなり上位になりそうだ。
アルベルトが言っていたように聖騎士の目にとまったり観客の目にとまって仕官するっていうのもあながち間違ってはいなかったのか。
僕達みたいに腕試しってのは少ないように思える。
出場者は何人かのグループに分かれていることが多くメンバーが少しでも多く本選出場できるようにチームで考えたりもしているようだ。大量に人数を出場させればその分本選に残せる確率はまぁ上がるよな。
何人か女の子もいるな。すげームキムキの女子発見。流石に女の子とはあまりあたりたくないな。
「お、次は俺の出番みたいだ」
別の闘技場で僕の711番が呼ばれた。
「マーシー魔法無しでいけんの?」
「そういえばマーシーが魔法以外で戦う姿をほとんど見ていない。というよりも木刀だとしても剣の類を使えるのか?あの金髪いじめっ子の時も剣関係なく殴ってたよな?」
「パワーはないけどスピードは割と自信あるからな。そっちで戦ってみるさ」
パワーは3倍になっているがそれでも210。参加者の中では高目だろうけど、このくらいのヤツはままいる。けれどスピードは4倍にしているため770だ。ウチの2人を除けばダントツだからそっちでなんとかなるだろう。剣術LVも3あるし。
「じゃあ行ってくるよ」
僕は闘技場へと足を向けた。




