抜き足差し足忍び足、横の2人の仮面がすげー気になる
さてと、先に腹ごしらえだ。
おっとその前にミズリー師匠に話しを通しておかないとな。
僕は1人で冒険者ギルドに入るとこの時間で人は少なかったが右端のカウンターだけ3人も並んでいやがる。僕は空いたカウンターもある中右端のミズリー師匠の列に並ぶ。
15分ほどで順番が来ると僕は小声で事情を説明してミズリー師匠に報告。
「何バカなこと考えてんのよ」
「おっしゃる通りですが2時間後にはもう事は起こります。ミズリー師匠が立場上難しいなら他をあたりますが?」
「数時間前にできた弟子が最大級の問題事を持ち込んで来るなんてね」
「師匠、俺師匠のこと『信頼』してます。じゃなきゃこんなこと話したりしません。『信頼』できる師匠だからこそ話してるんです」
「そ・・・そんなこと言われたって・・・」
頬を染めるミズリー師匠はとってもかわいい。
「大丈夫です。時間に現場に居ていただくだけでも構いませんので。証人さえいれば後はこっちでなんとかします。俺も師匠をできれば巻き込みたくはないと思っています」
「わ・・・分かったわ。正直ルガー伯爵は真っ黒なヤツだからどうなろうと知ったこっちゃないけど、無茶だけはしないようにね」
「ありがとうございます。明日は朝から魔法の訓練お願いしますね、師匠」
そう言って僕は冒険者ギルドを後にした。
その後僕たちはホテルを出て近くの焼き肉屋でまず飯を食う。酒は禁止。そこで12時前まで時間をつぶす。ミズリーさんが証人として現場に来てくれることを説明し、なるべく迷惑がかからないようにしようと2人に伝える。悪役になるのは僕ら3人で十分。あまり周りに迷惑はかけないように。もちろんその中にルガー伯爵は入っていない。
頃合いを見て店を出ると通行人はもうあまりいなかった。多分貴族街の方はもっと人通りが少ないんだろうな。
冒険者の服装のまま、いざ東地区へ。
入れば入るほど人通りは少なくなっていく。この貴族街の夜道を冒険者が歩いているだけで不審者に見えてきそうだ。
目的地の100メートルくらい手前で人通りが無いのを確認し僕たちは黒系の服装にお面をつける。僕はお面はないので黒いタオルを目から下に巻き付けた。
そこからは忍者入門。腰の低い体勢でシュタタタタと物陰に隠れながらルガーの豪邸へと近寄っていく。
索敵ON
門番は変わらず4人。ルガー伯爵の部屋にはルガー伯爵1人、部屋の前にはギーネルと別の見張り。
隣の部屋にはダルの葉。
建物に入ってすぐに2人の見張りに建物内にはメイドや執事がちらほら。全員で20人くらいかな。
「どうすんの?マーシーがあのでっかい火の玉ぶっ込むん?」
「ただ焼くだけならそれでいいんだけどな」
「大量殺人犯マーシーの誕生ですね」
それにしても僕たち3人の不審者っぷりが半端ない。黒い服装に2人は奇妙なお面だからな。
「とりあえず作戦を伝える」
「おう」
「いつでもどうぞ」
マサルはお面の隙間から焼き鳥を刺して口に入れた。
「俺がまず門番4人を眠らせて3人とも中庭に侵入。その間タカシとマサルは周囲の警戒。豪邸の前で俺が建物丸々入る範囲でスリープを使う」
「え?そんなんできるん?」
「魔力量で範囲は広げれるみたいだから大丈夫だと思う。もし無理だったとしたら入り口から入って中に居る全員を無力化する」
「え?じゃあ首トンしてええの?」
「死なないようにな」
絶対スリープは成功させよう。
「無力化したら中にいる人間を全員庭に放り出す。これは2人に任せる。俺はダルの葉の確認をしたら建物に火を放つ。火が確認できたら2人はすぐに離脱。少し離れて誰もいないのを確認したらアイテムボックスを使って元の服装に戻して何食わぬ顔で野次馬と一緒に火事の見学でもしていればいい」
「了解。お面は?」
「着けて野次馬になってたら殺す」
「はいはい。マーシーはその後どうすんの?」
「離脱はもちろんするがダルの葉に火がつかないようにとか火が周りに広がらないように考えるよ。幸い建物の周りはでかい庭だから他に燃え移ることはないと思うが」
「よっしゃ、ほんだら始めよか?犯罪行為」
「まさか異世界で放火犯になるとはね」
2人の言う通り本当に僕たちは何をしてるんだろう。
「さぁ、始めよう」
僕は壁際を猛スピードで門番の居る場所まで駆ける。タカシみたいに見えないほどというわけにはいかないが門番が振り向く前には門番4人の脇に到着。
「スリープ」
そのままダラリと倒れこんだ4人の門番。
それをタカシとマサルに外から見えないように中に隠すように塀の中へと移動させる。
門から中に入ると広い庭。建物までは距離がある。警備やドーベルマンの類は居ないな。
「あそこまでとりあえずダッシュな」
僕は入り口の扉の横の辺り。窓のないところを指さす。
タタタタタッ
建物の前で3人が低い体勢で周りを警戒する。
「なんかこういうのってワクワクすんな」
「忍者だ忍者。こう、闇に紛れてっていうのがいい」
「今から重犯罪を犯すことを忘れるなよ」
僕は建物に手を当てる。
全員で21人。まとまって居るのはいいが別々の部屋に居るのを運ぶのは手間だな。
「行くぞ。スリープ使ったら入り口から入って寝てるやつら全員外に連れ出せよ」
「扉にカギがかかってたら?」
「こじ開けろ」
「「了解」」
「よし行くぞ。静寂の・・・・・・・」
(あ、詠唱忘れたパターンや)
(まさかのここで?)
「えーと、『とりあえず全員爆睡コースな。スリープ!!』」
(詠唱でもなんでもないやん!)
(ゴリ押した。ここ数年で一番のゴリ押し!)
広範囲に魔力を込めたためいつも使ってる魔法よりもグッと魔力は使用した感じがした。
あと、結論を言うと詠唱なんて必要はなかった。十分に魔法は発動したし威力も申し分ない。
索敵で確認した21人は睡眠状態に・・・・・。
「マサル、ルガーの部屋の前のギーネルが眠ってない。2階の右奥に居るから無力化してこい。殺すなよ。入ってすぐ左の食堂みたいなところにもう一人寝てないヤツがいるからそいつは俺がなんとかする。タカシは予定通り寝てるヤツを庭に放り出しておけ」
「「了解!!」」
すぐさま行動だ、起きてる2人が行動を起こす前に。
タカシが入り口のノブをひねるとバキンッと音をたててノブが折れる。マサルはそのまま扉を蹴飛ばし奥の階段へ、僕はすぐに入って左の扉を開けた。
「な・・何者だ!」
魔法使い風の服装の40歳くらいの男性。なぜ魔法が効かなかったのか聞きたいところだが今はそんな余裕はない。
「パラライズ」
その魔法使いへ向かっていった野球ボールくらいの光の球はその魔法使いの目の前で弾けて消えた。
「馬鹿め!!この首飾りはマジックガードが付与されているのだよ。風の刃よヤツを切り刻め!ウィンドカッター!」
ご説明どうも。
僕は一気に相手に向かって行く。
魔法使いの放ったウィンドカッターは僕のガードに弾かれて消滅した。
「な!?」
間合いを詰めた勢いのまま腹部に蹴り。
ドゴッ!
「ごォォォォォオ」
そのまま転がって悶絶している。
僕はその首飾りを剥ぎ取りスリープ、それからヒールもかけてやる。
「よし、こっちはオッケーだ」
その魔法使いを掴んで入り口へ運んで庭に放り出す。
タカシは目につく人間を1人1人庭に運んでいる。
「タカシここは任せたぞ、俺はマサルを見に行く」
その時2階から
ドゴオォオォオォオォオン
と、大きな物音が聞こえてきた。
あまり物音をたててくれるなよ、全部無駄になっちまうじゃねーか。
僕は心配になりながら階段を駆け上った。




