漆黒とか煉獄とか口にするともう照れる年齢です
貴族街のある東地区から冒険者ギルドのある西地区まで戻ってきた。
タカシとマサルも僕の部屋に呼んで今から作戦会議だ。
「はて何回目だったか?フルボッコミーティングー!!!」
イエーイ!パチパチパチパチ。拍手はまばらだ。
ルガー伯爵の豪邸にある『ダルの葉』。帝都では売買禁止、使用禁止。所持しているだけで牢獄行き。帝都だけでなくほとんどの街で禁止とされている薬物のようだ。
それを所持しているっていうのを暴いてやること。まぁ聖騎士あたりに通報してやるのが一番いいが現行犯逮捕じゃないと意味がない。通報したところで逃げる算段や隠す算段はできてるはずだしな。
「とりあえずシンプルにいこう」
「正面突破?」
「殴り込み?殴りこむん?なんか極道映画っぽくてええな」
「そんなわけねーだろ。とりあえず騒ぎを起こす。まぁ今回の場合は火事あたりかな?そこに第三者介入。できれば聖騎士あたりが希望なんだが今回はミズリーさんにお願いする。そこで『ダルの葉』を発見してもらう。『なんだこれは?偶然にも火事の現場でダルの葉発見大作戦』だ」
「ネーミングセンスは置いとくとして、まぁそんな感じが一番ええんかな」
「一番大事なのは俺たちがやったとばれないこと。そこが一番難しいと思うのですが」
マサルの言う通り、そこが一番大事だ。
「そこでだ」
僕はアイテムボックスから本日借りてきた魔法書を全部床に放り出した。
「この魔法書を全部今から目を通す」
「「なぜ?」」
「相手を無力化する魔法を探す。眠らせる、麻痺、目くらまし、そのあたりの詠唱文を見つけるんだ」
「そんなん俺が高速で背後とって首トンでええんちゃうの?」
「現実に首トンとか無理だろ。多分首の骨折れてそのまま死ぬ」
「「確かに」」
2人は嫌々でも言われたことはこなしてくれた。文章は全部読まなくていいからそれらしい単語を見つけたら僕に声をかける。
多分長丁場になるため酒とタバコは多少なら許可を出した。マサルはなにも言わずに串に刺さった鶏肉を頬張っている。
ちゃんとホテルのフロントで室内の喫煙は大丈夫か確認はとってある。親切にも依頼があった時用に灰皿まで用意されていた。
何語か分からない本を1ページ1ページめくって一気に目を通していくだけの作業。何語か分からなくても語学スキルのおかげでちゃんと何が書かれているのかははっきり分かる。本によっては魔法の生まれた成り立ちが書かれているだけの本なんかもあったからさらっと読んで脇へ移動。各詠唱の書かれている本は僕の元へ運ばれてくる。
火魔法や水魔法など基本魔法の初級中級の詠唱文はすぐに見つかった。本によって少しずつ文面が違うことに驚いたが基本は変わらず『大いなる炎の力を』とか『大地の力を授け給え』など完全に中二病のセリフならなんでもいけるような気がした。
「お、これなんかそうちゃうの?」
タカシがなにやら見つけた本をこちらに持ってきた。
「どれどれ。『我願う、拘束の力を宿し魔力を持って彼のものの自由を奪え、パラライズ』」
僕の伸ばした掌からその『何か』は飛び出しそのままマサルにヒットしたかと思うと
「アビャッ!!」
マサルが本を持ったまま痙攣して動きを止めた。
よしよし、パラライズか。名前はそのままだな。麻痺効果のある魔法だ。ステータス画面を確認すると新しく麻痺魔法と項目が増えていたがLVは1が上限のようですでにMAXになっている。
待てよ、一回使えばスキルポイントの振り分け無しで魔法を取得したことになるのか?
あ、そういえばミクシリアさんに共鳴で氷魔法教わった時はスキルポイント振らずにそのまま使えたよな。今ステータスの氷魔法を確認するとLV1状態。中級上級と上げるにはポイントを振る必要はある。そうか、火魔法や水魔法は元々使えない状態だったからまずLV1にするのにもポイントを振ったけど自力で使えるようになればポイントも不要なのか。そりゃそうか、僕たち以外はポイント振り分けなんてないんだから訓練して覚えればLV1、鍛錬して経験値を積んでいけば自動的にLV2LV3と上がっていくものか。これは僕らにもあてはまると考えてもいい。わざわざポイントを振らなくても練習次第で威力は高めていけるな。
「マ・マ・マ・―・シシシィ・ィーー」
あ、マサルが痺れている。
「キュア」
マサルは前掛けのポケットに手を突っ込んだ
「よし、一発は一発な」
金属バットを振りかぶったマサルが襲い掛かってきた。
ガキィィン!!
金属バットは僕のガードの壁にたたきつけられた。
「マサル、殺す気か?」
「そのセリフをそっくりそのまま返してやる。さっき麻痺ってた時、呼吸もしずらかったんだぞ」
「すまなかったなマサル。今日の晩飯はマサルの好きな店にしよう」
「お、おう。じゃあ今日は肉な!肉!!牛肉な!」
(マーシーマーシー、次コレ)
タカシが別の本を持ってきた
「静寂の力よ彼のものを昏睡へと導け、スリープ」
マサルは眠った。
「これも使えるな。後はどのくらい広範囲で使えるかだな」
それにしても詠唱が簡単すぎやしないか?適当に言葉並べていたら新しい魔法を覚えたりしないだろうか?
「キュア」
「ふぁぁぁぁー、ん?俺寝てた?」
「すまないなマサル、眠いのに頑張ってもらって」
かれこれ2~3時間魔法書とのにらめっこは続いた。
使い勝手の良さそうな魔法はパラライズとスリープ。この2つは実にありがたい。
他に覚えた魔法は毒魔法のポイズン。これは流石にまずいと思いマサルには使っていない。
狂戦士魔法バーサーカー。マサルに使用したら目が真っ赤になった瞬間恐怖を感じすぐにキュアで解除した。正直キュアで解除できなかったらと思うとゾッとする。ちなみにバーサーカー状態のマサルのステータスはすべて1.5倍に跳ね上がっていた。
ミズリーさんの言っていたマジックガードも覚えた。そのまま丸い盾が目の前に出てくるイメージ。魔法書によると物理攻撃よりも魔法攻撃に対しての強度の方が高いようだ。ということはガードの方はその逆なのだろうか?
成果といえば僕のキュアは麻痺も睡眠もバーサーカー状態も回復できると分かったのも成果だな。
詠唱文は無いが興味のある魔法の記載もいくつか見つけた。
土魔法の派生魔法、植物魔法。
空間魔法、妖精のエルムが言ってたやつだな。
結界魔法。
重力魔法。
そして召喚魔法。
このあたりはどういうものかの説明だけで詠唱文は記載されていなかった。代々受け継がれているとか血の滲むような訓練が必要だとか。とりあえず使えるヤツに出会わなければ習得は難しいか。想像力だけで適当に詠唱してなんとかLV1までもっていけないだろうか?
「よし、二人ともお疲れさん。まだ夕方だから夜まで休憩しようか。10時までゆっくりしてそれから飯を食いに行く。決行は12時だな」
「ほんだら俺は風呂入ってちょっと寝よかな。いい感じに酒呑んでもうたし」
「今はまだ4時か・・。俺も風呂入って少し寝るか」
僕も少し寝ておこう。フロントに9時半に起こしてもらえるようにお願いしてくるか。
少しの休息。僕はフロントにモーニングコールをお願いする。モーニングではなくイブニングコールでも快く受け付けてくれた。それから風呂に入ってそのままベットイン。文字を読みながら呑んでいたため酔いが回ってしまってすぐに寝付くことができた。
体を揺さぶられて眠りから覚める。黒いスーツのような正装で僕を起こしてくれた女性スタッフさんは笑顔で僕の部屋を出て行った。
それから顔を洗ってタカシとマサルを起こしに行く。
僕はタカシの部屋をノックした。
返事がない。
「まだ寝てるのかな?」
ガチャリ
カギは空いていたのでそのまま中に入る。
「感知スキルも働いてか気配には結構敏感になってるんだよな」
僕は入ってすぐに上を見上げた。
「タカシ、何してる」
入り口入ってすぐの天井に忍者のごとく張り付いたタカシがこちらを見下ろしていた。
「いやあ、驚かそう思って・・・」
「いつからそこに?」
「まだ5分くらいやな」
「俺が5分で来てよかったな」
タカシを連れてマサルの部屋へ。
僕はマサルの部屋をノックした。
返事はない。
ガチャリ
僕はカギのかかっていないドアを開けた。
「マサル、起きてるか?」
見渡した限りマサルはいなかった。リビング、寝室、浴室。
索敵ON
ベットにいるな。しかしベットはもぬけの殻だ。
「と、いうことは」
ドン!
僕はベットを蹴り上げるとベットの下からマサルがバツの悪そうな顔で現れた。
「マサル、何してる?」
「いやあ、驚かそうと思って」
「残念だったな、マサル」
3人揃って僕たちはマサルの部屋のソファに腰をかけた。
「とりあえず飯だな。マサルの希望通り肉を食いに行こう」
「おっにっく!おっにっく!」
「二人とも黒のトレーナーかロンTは持ってるか?」
「黒か?あるにはあるが」
「俺もロンTやったらあるけど」
「それとこの前買ったお面もあるな?」
一応少々の変装はしておこうという算段だ。冒険者の服装のまま行ったらばれることもありそうだしな。
「着替えは現地でアイテムボックスで手早くしよう」
そして僕たちはホテルを出た。




