ドラゴンをまる1匹食す。体積的に無理だわ
「旨っこの肉旨っ!!」
マサルがうるさい。
「さて私も食べるとしよう」
ダープさんが僕の横に皆と同じように地べたに座り込んだ。
「すみませんこんな食事までいただけまして」
「いやいや、作ったのはダルブ達で。私は金を出しているだけだ」
「素材も取ってそこに置いてあるからもっていけよ。この2人が自分でちゃんと剥ぎ取った分だからな」
ちゃんとやっていたのか2人とも。
「ワイバーンの牙、爪、鱗は高値で取引される。流石にルーキーとはいえその服装はまずいだろう」
確かに僕もそう思いますダルブさん。けれどどれもこれも高いんですよね。
「一応さっき言ってた通り全体の3分の1くらいだよ。それでも装備揃えるくらいは十分おつりがくるくらいだな」
あの横に積まれているのがそうか・・・・多いな。
「多くないですか?」
「テメーラあれでいくらになると思ってんだ。やるっつってんだから持って帰れ!このルーキーども」
グラブルさんが槍先を僕の目の前に突き出している。
「分かりました分かりましたありがとうございます」
「君たちなんだか冒険者っぽくないな。いい素材取っていい武器揃えてそして金を稼いで名を売って。そういうもんだろう?」
ダープさんのおっしゃる通りだと思います。
「俺はワイバーンと戦えたら金はいらんけど」
うん、ここにバカが1人
「俺は旨いものさえあれば金はいらない」
うん、2人でしたね。
「マサル。旨いものを食うには金がいるんじゃないのか?」
「はっ!?確かに食べるためには金がいる!」
「ワイバーン狩って食べればええやん」
「はっ!?タカシ天才!!やっぱり金はなくても大丈夫!」
「すみませんダープさん。こんな感じであまりお金に執着ないんでしょうね。俺は2人ほどじゃないですが普通に生活できれば贅沢しようともあまり思わない性格でして」
「そうか、商人には向いていないな。しかしそういう考えの人間は冒険者の高ランクにたまにいるな。後は盗賊にもいるがな」
うん。一歩間違えると犯罪者にもなるかな。
「それにしてもこのワイバーンの肉って美味しいですよね?他のドラゴンなんかも美味しかったりするんですか?」
強い魔物は旨いとかならわかりやすいよなあ。今のところ野兎、猪、一角牛と強さと旨さは比例しているし。
「はっはっは。ドラゴンを狩るつもりなのか?確かにドラゴンの肉は超高級食材だな。手に入れたらぜひ私に譲ってくれ。相応の値段で買い取るよ」
ダープさんが笑顔で返してくれる。
「確かに食ったことはもちろんないが死ぬほど旨いらしいぞ。しかも死ぬほど高い。ドラゴンのコース料理で金貨が1枚2枚っていうからな。食べるだけで金貨を出すならどう考えても武器や防具に使うだろ?金持ちの道楽ってやつさ」
グラブルさんがワイバーンの肉を頬張りながら「こいつも結構値がつくんだよなあ」と呟いた。
ドラゴンの肉が100万200万か・・・。
「俺の冒険の終着点はドラゴンの肉に決定した」
マサルが真顔でなんか言ってるな
確かに食ってはみたいが100万とかは絶対に払わん。狩る機会があれば考えるか。
と、ミクシリアさんがフラフラと寄ってきた。
「大丈夫ですかミクシリアさん?まだ寝ててもいいんじゃないですか?」
「だーいじょうぶ、だーいじょうぶ。ちょっとふらつくだけだから。私もワイバーンのお肉食べたいし」
僕の横に座りこみグラブルさんからワイバーンのお肉ののったお皿を受け取った。
「んぐんぐ。やっぱり美味しいわねェ。こういう時は冒険者やってて良かったって思えるわ」
ダルブさんがミクシリアさんを心配そうな目で見つめている「大丈夫なのか?魔法都市まで使い物にならないなんて言うなよ」
「大丈夫。見ててよ」
ミクシリアさんは後ろを振り返りだれもいないことを確認すると左手をかざした。
「サンダー!」
ピシャーーーーン!!
「な、雷魔法だと!?」
ダルブさんが驚き立ち上がった。
「ちょっと魔力酔いは厳しかったけど得られるものは大きかったわ。マーシーとの共鳴がすごく相性良かったんだと思うわ」
がしっとミクシリアさんは僕を羽交い絞めにした。
「ウチのパーティーに入れましょう。即戦力だし私の魔力向上にぴったりよ。魔力酔いはあったけれど共鳴してから確実に私の魔力がアップしているわ」
うん、確かにミクシリアさんの知力は146だったはずだが今は170になっている。こんなステータスのあげ方もあるのか。
「ねェねェウチに入りなよ。みんな良い人ばっか「お断りします」りよって、即答って!」
「無茶を言うなよミクシリア。彼らにも彼らの目的があるだろう。もちろん入ってくれるのは正直ありがたいがな。魔法使いはやはり1人でも多いほうがいい」
「本当にありがたい申し出ですがやっぱりお受けできかねます。人様に話すようなことではないですが旅の目標もありますし、やりたいこともまだまだあります。別のチームに入ってしまうとどうしても自由に行動できなくなってしまいますし」
「もぐもぐ、んぐ。そう俺の目標はドラゴンをまる一匹食すること」
ああマサルはさっきそう言っていたな。ただ、1人でまる一匹食べることになっているが。
「という冗談はさておきやっぱり俺たちは3人パーティーが一番いいんですよ」
マサルは冗談ではないって目で睨んでいる。
「お姉さん、マーシーはやらん。マーシーがおらんかったら俺たち2人は多分・・・・・野垂れ死ぬ」
ん、タカシ。ちゃんと分かっているじゃないか。まず金は適当に使う。行く場所も考えずとりあえず街を出る。人と会うと喧嘩する。多分常に酒を呑んでいる。うん、盗賊とかが似合うよな。
「まあまあいいじゃないかミクシリア。冒険者やってりゃまたそのうちどっかで会うこともあるだろ。その時はまたこうやって肉でも一緒に食べれるだろう?」
グラブルさんはどっちかというとタカシやマサルと似ているな。
「ええええェェ、じゃあ回復魔法も教えてよ。回復魔法も使えるんでしょ?」
「教えるってまたさっきの共鳴ってのをやるんですか?また酔いますよ?」
「大丈夫よ!1回のゲロで魔法1つ使えるようになるなら安いもんよ!」
なんかものすごく身体に悪いような気がする。本当に大丈夫なのだろうか?無理やり魔法使えるようにするために寿命とか縮まってないだろうな?
「そういえば魔力酔いって一体なんなんですか?どう考えても身体に悪そうですけど?」
「魔力の摂取のしすぎってことよ。魔力の自然回復って文字通り植物や大地、自然から魔力を人体に吸収して回復しているのは知っているわよね?」
え?そうなの?そういえばエルムも自然から魔力を食べているみたいなこと言ってたか。
「例えば魔力濃度の濃い場所に長時間居たとしたら過剰に魔力を摂取してしまって魔力酔いになってしまったりするものなのよ。このあたりならスーの森くらいかしらね。それとは別で魔力酔いを起こすのが今回の共鳴ね。あるていど同じくらいの魔力を持ったもの同士なら起きたりしないんだけど片方の魔力が相手を大きく上回ってしまっている場合は相手の魔力の影響で魔力酔いを起こしたりするものなのよ。今回の原因はマーシーの魔力が原因ね。私もまあまあ魔力には自信ある方だけど単純に考えてもマーシーは私の倍以上の魔力があるはずよ」
うん。倍じゃあきかないな。
「それに魔力の相性が私たち良すぎるのよ!共鳴しただけで魔法が使えるくらい浸透するなんて普通ありえないわ!本来なら共鳴して使い方の感覚を身につけてから何か月も何年も練習して使えるようになるのが普通なんだから!」
「分かりました。分かりましたよ。あと1回だけ。あと回復魔法だけは共鳴させていただきます」
「・・・・・・・マーシーあなた・・・・他の魔法も使えるんじゃない?」
ギクッ!!するどい。
「まあ私が火とか土魔法覚えても多分効率悪いから欲しいとは言わないけれど・・・・いるのよねえ、才能の塊みたいな人って」
効率が悪い・・・か。
「やっぱり効率ってあるんですか?複数の属性の魔法を使えても火魔法が得意なら水魔法は苦手みたいな」
「もちろんよ。火と水、土と風は特にそうね。けれども例外はもちろん居るわ。私の先輩・・・兄弟子っていうのかしらね。上級の水魔法を使える人なのだけれど水以外も中級くらいまでなら使いこなしていたのよねえ」
僕もそれくらいならいけるな。
「それはすごいですね。ぜひ会って教授いただきたい」
「レムールって名前よ。確か今は冒険者になったって聞いたから会うことがあれば私の名前を出して色々聞いてみてもいいかも」
レムールか覚えておこう。魔法の知識はあって困ることはないはずだし。




