序盤で出てくるモンスターじゃないよ
僕たちは草原を走る走る。
はっきり言って爽快です。
森のように障害物があるわけではないのでスピードをグングンあげても大丈夫。
前を行く二人が徐々にスピードが上がっていくのがわかる。僕も負けじとスピードをあげるがこっちはそろそろ限界だ。前を行く二人の方が素早さの数値が上なのが顕著に出始める
「待て待て!二人とも早すぎる!っていうかこんなスピードで走ってるのを誰かに見られたらまずいぞ!」
「大丈夫大丈夫。人っ子一人おらんやん」
ただっ広く広がる草原地帯に確かに人の気配は全くない。野犬っぽいのがさっき居たが僕らのスピードについてこれずにそのまま引き離したところだ。
「追いつかれへんからって言い訳してんちゃうぞ」
カッチーン
野郎、言いやがったな。
「スピードアップ、パワーアップ!」
素早さと力が1.5倍に上昇した。十分だ。
一気に加速して前を行く二人に並ぶ。
「お先っ」
そして追い抜く。
「「あっ」」
2人の声がハモって僕の横を横切ったが無表情で置き去りにしてやる。
「待てゴラァぁぁぁマーーーシーーーー!!」
チンピラっぽい反応を見せるタカシ
「なにそれ!魔法?魔法か!!卑怯者!!」
卑怯もへったくれもあるか。
んん?ダメだ。
僕は減速してブレーキをかける。そして後ろを振り返る。
「ストーーップ、ストップ」
両手を広げて二人を止める。
「なんやなんや、試合放棄か?」
「違う違う。前方に人だ」
僕の索敵の端にひっかかったのは馬車だ。目視でも小さく見えている。
「ここからは少し歩いて行くぞ。すれ違って見えなくなったらまた駆けだせばいい」
流石に二人からは反論はなく僕たち3人はトボトボと歩き出した。
馬車は2台。前後に2台並んでこちらにゆっくりと向かってきている。高さはさほどでもないがこの世界に来てから見た馬車の中では結構大きい。御者が1人とその隣に長い槍を持った護衛っぽいのが1人見える。
「なあなあ何処向かってんのかな?フランかな?」
「いや、俺たちが抜けてきたスーの森から方向的には左に行けば魔法都市、右に行けば軍事国家ジャマルだからどっちかだろうな」
多分商人とかだと思うが。
ガタガタと揺れながら馬車は目の前まで来た。もちろん道を塞ぐつもりは無いので少し距離はとっているが、槍を持った護衛っぽいヤツがこちらを警戒しているようだった。
僕の索敵スキルによると前の馬車の中には2人、商人と戦士。後ろの馬車は御者を除いて3人。魔法使い戦士戦士。多分護衛だろうな。
「待て」
前の馬車が停止して槍持ちの護衛が声をかけてきた。
タカシとマサルは僕の後方に。
「なんでしょうか?」
「こんなところで何をしている?」
「僕たちは冒険者でして帝都まで旅の途中なのですが」
「3人でしかも歩いてか?」
正確には走ってだけどね
「まだまだ冒険者ランクEの新米ですので」
「なんだルーキーなのか。この先の山にはグリズリーが出るから入るんじゃないぞ。山にぶつかったら右から迂回すれば帝都に着ける」
「わざわざありがとうございます。そちらも道中お気をつけください」
それだけ話すと馬車は出発しだした。
良かった。なにかイベントでも発生するかと思ったが何もなかったようだ
「なになに?ただの旅人やったん??」
まあ問題はなかったな。
「たぶん商人と護衛ってところかな。槍持ってた人も親切にグリズリーのことを教えてくれるくらいにいい人って感じだったし。ひょっとしたら護衛任務中の冒険者なのかも」
まあ少しこのまま歩いて行こう。見えなくなったらまたスピードあげればいいか。
「マーフィー、マーフィーばひゃでみっかってことふぁどのふらいははるはな」
何喋ってるんだ、とりあえず焼き鳥から口を離せよマサル。
どうやら山までどのくらいで着くかということらしい。
「馬車で3日の距離だからな。今ダッシュで30分くらいは進んだと思うから多分半分くらいは進んでるはずだ」
しかしまだ山は見えていない。大丈夫かな、ゴールが見えていないとスゴイ心配になる。
「マーシーマーシー」
「なんだタカシ」
「あれはなんやろ?鳥か?飛行機か?」
鳥?飛行機?
「なにか飛んでるのか?」
僕は視線を上空に向ける。
うむ、何も見えん。
「ほらほら、あっちの方からなんか来るわ」
タカシは帝都方面を指さしている。
とりあえず索敵を前方に目一杯広げて目を細めて空を見つめる。
なにか点が見えるな。索敵にはまだひっかからないが。
「確かに何か見えるな。俺の索敵の範囲外だからまだ何かはわからないが」
「なんやろ?鳥に、、、、、、、見えるような」
僕には黒い点にしか見えないが。
「黒ゴマ?」
「ゴマだったら食べてしまえマサル」
「ゴマだったらもちろん食べます」
お、やっと索敵に・・・・・・・・
やばいヤツだ・・・・・・・・・・・・。
どこか身を隠すところは・・・・・・・ない。
ここは360度見渡せる草原の真っただ中だ。
「おい二人ともいつでも逃げる準備だけしておけ。あれは」
「ワイバーンだ」
ワイバーンLV42
近づいてくると翼をバッサバッサとはばたかせているのが分かってきた。
「ワイバーン?ワイバーンって飛竜ってやつですね?」
その通りですマサルさん。仮にも竜と呼ばれるものですね。
「飛竜か!じゃあ強いやんな!!」
「飛竜って美味いんかな?」
「味はわからんが強いのは強いだろうな。けれどあれはパスだ!」
「なんでなん?やろうや!竜やで竜!冒険活劇の幕開けやで!」
「ちょっとだけ!ちょっとだけでも齧ってみたい!」
「いやいや二人とも空飛んでる相手にどう攻撃するつもりなんだよ」
「「確かに」」
あの気功弾っていうのがまともに使えれば攻撃手段にはなるだろうけどまだまだ使えないしな。
そうなると相手できるのが僕しかいない。
「俺は相手する気はないからな。素通りしてくれるならそれに越したことはない。とりあえずじっとして様子をみてみよう」
えーーって顔で2人は僕を見るが正直相手の強さが見当つかないから危険はなるだけ避けていきたい。それに空を飛び回っている相手に魔法をぶちあてる自信もそんなにない。広範囲の魔法を放てばいけるかもしれないが先ほど通過していったギャラリーに見られるのも勘弁願いたいしな。
さらに近づいて目視で飛竜だと認識できるところまできた。あら、思ったより大きい。
力352、素早さ378、体力202。空も飛べてファイアブレスってのがある。火を吹くのか・・・・。
殴り合いができればタカシかマサルでも勝てるだろうが空飛ぶってのは反則だよなぁ。
バサッバサッ、翼をはばたいて近づいてくる
「おおう、思ったよりでかいやん」
どうやら僕たちには興味はなさそうでこちらには一切反応はしていない。そのまま僕たちの上空を通過した。
ドラゴンを下から見ることができるなんて少し感動してしまったな。
「あーあ、通りすぎてもーたか」
タカシが残念そうにしていたがまだ始まりの街を出てすぐぐらいだからな。メインの敵がスライムの時にいきなりドラゴンが出てきてどうするんだよ。
GYAAAAAAAA!!!!
「なんだ!!」
後方でいきなりワイバーンが叫んだ!!
100メートル以上上空を飛んでいたワイバーンは下降しながら口元に炎を纏わりだしていた。
狙う先はどうやら馬車のようだ。
「ちっ!!マジか!!」
僕たち3人は咄嗟にトップスピードで引き返す。




