ただの雑談回
秦国から港町チョーアンへの旅路。
ジパングへはチョーアンから船での移動になる。
秦国からチョーアンへは馬車でだいたい3日、そこからジパングへは船で1日あれば着くらしい。
僕達は馬車に揺られながらチョーアンへと向かっている。
途中、馬を休ませるために数時間おきに休憩をとり、夜は順番で監視をたてて馬車で雑魚寝だ。
召喚獣で監視させる案も出たが、鳥は無理。エルムは嫌がるだろうし、こんなところにドラゴンを出すわけにもいかず順番で見張りに立つことで落ち着いた。
「マーシー、マーシー、暇やで」
「そりゃ、やることなんてないからな」
僕は手持ちの魔法書に目線を向けたまま返した。
「何かないんですかマーシー?俺たちがアッと驚くようなこととか、もしくは俺たちが胸キュンするような話しとか、ハラハラドキドキするような裏話とか」
「マサル、瓜二つのメイメイ王女と偽メイメイ王女をバストの大きさで見破ったらしいな?すごいな」
「え?なにそれキモっ」
「キモい言うな!!キモいは誹謗中傷の言葉ですよ!キモいと言われて心に深い傷を負った歴戦の勇姿達がどれだけいると思ってるんですか!」
「マサル、落ち着けよ。そして想像してみろ。メイメイ王女に蔑んだ目を向けられながら『キモい』と言われている姿を」
「ん・・・・あれ?・・・・・悪くない・・・・。そんなバカな!そんな視線を向けられて俺が喜んで・・・いる・・・だと?マーシーじゃあるまいし!」
「いやいや、俺にそんな趣味はねーし」
「マサルもマーシーもキッモ」
「ほら見ろ、マサルのせいで俺の評価が下がったじゃないか、冤罪もいいところだ」
「「いやいやいやいやいやいや」」
タカシとマサルは2人揃って首と手を交互に左右に振った。
「マーシーはもうちょっと自分のこと分かった方がええで。なんかちゃうねん、なんかマサルとはちゃうねん」
「そうです。俺がエロいとか、女の子に目がいくとか、巨乳がやっぱりいいとかは男として誰しもが持ってるものですよ。けれどマーシーはちょっと変化球なんですよ!少しねじ曲がった性癖なんですよ!すなわち変態なんですよ!」
「マサルのガン見は女性のバストをミリ単位で言い当てるくらいのガン見だぞ」
「マサルひくわー、横からも前からも見過ぎやわ」
「見て何が悪いんですか!?そこにソレが在れば誰だってガン見するでしょう!」
「舐め回すように見るという言葉があるがマサルのそれは本当に目で舐めまわしてるみたいだよな」
「マジで?マサル器用やな」
「くっ!なんだか気づいたら責められているのが俺になっているような気がする!タカシ!タカシだって大きい方がいいでしょう!俺は至って普通の男の子ですよ!」
「まぁたしかに大きい方がええに決まってるけどな。でかけりゃ多少のビジュアルの低さにも目を瞑れるわ」
「タカシ。タカシが例え女の子の前でその言葉を発しないとしても、そう考える思想があるだけで色んなものが値下がりしてるんだぞ」
「マーシーに1票です。俺はそんなクズの思想は持っていないです。生物学上女の子であれば差はないですね」
「巨乳と貧乳ならどっちが好きなんや?」
「巨乳が好きです」
「差をつけてるからアウト」
「せや、ちょっと聞きたかってんけど、マーシーはさぁ、、、」
「なんだよ?改まって」
「ミラちゃんとヤッたん?」
「そんな自殺行為はできなかったな」
「そうなんや、やっぱり魔王さまかー」
「そこは男として惚れた女の父親に負けない気持ちで思い切って欲しかったですが」
「思い切って死ねと?」
「せやなー、娘が告白した相手のふともも貫通するような父親やったしなー」
「それどころじゃなく殺しに来てたからな」
「告白だけであれでしたらやる事やってたら一体どうなっていたんでしょうね?」
「冗談になってないな。正直恐怖しかなかったからな」
「たしかにメチャメチャ強いよなー。殴っても蹴ってもビクともせんからなー。3人がかりでも多分勝たれへんやろなー」
「魔王様に歯向かうなんて愚かな奴らだ。勝てるわけがないでしょう?最後の最後で相対する相手ですよ」
「そういえばマサルは魔王様と一切絡んでなかったな、俺とタカシは本気かそうでないかは別として一悶着あったからな」
「魔王様と敵対する理由がないじゃないですか。俺は腕試しで魔族のトップに殴りかかるバカじゃないですし。そんな危険な存在を父に持つ娘さんに手を出すわけないですし」
「あれは魔王様がええって言うたからやけどな」
「俺は完全に可愛い娘を奪われたと勘違いした八つ当たりだけどな」
「レベルを上げ、仲間を増やし、伝説の武器や防具を手に入れて、中ボスを倒して四天王をやっつけてからやっと最終ダンジョン。そこでやっと相対する魔王様にレベル20、30でばったり出会ってはじまりの町で買った鉄の剣で特攻かますなんてバカしかできない芸当ですよ」
「それはタカシな。俺のは完全に不慮の事故だ」
「運がなかったのは認めますが、自業自得だと思いますが」
「俺はなにも悪いことなんてしてないんだけどな」
「ミラちゃんに色目を」
「ミラちゃんに唾つけてたやん」
「いやいやこっちからわざわざ手は出してない出してない。外見もそうだがやることなす事俺の好み過ぎて必然的に好きにはなったが」
「その好きって言葉をもっと早い段階で聞きたかったんですがね。そうすればもう少し違った展開があったんじゃないでしょうか」
「せやな、魔王様と会う前に両想いになっとったら・・・・・・・・・・・・もっと早い段階で魔王様に貫通されとったかな?」
「マジそれな」
「でしょうね」
「マーシーはロマネちゃんとか領主の娘さんとかレイファンちゃんはどうなん?」
「どうって、、、、子供じゃねーか」
「そういうのが好きなんでしょう?マーシーは」
「いつ俺がロリコンだとカミングアウトしたんだ?」
「ほんだら楽園のセラちゃんは?」
「セラちゃんかー、、、。可愛いし胸もデカいしもちろんタイプなんだけどなー」
「けど?」
「あれは完全に営業スマイルだからな」
「なんやねん、その営業スマイルを本当のスマイルに。誰にでも振りまくその笑顔をたった1人の俺だけのために向けてもらうために努力すんのが男やろーが!好きな子に振り向かれるために努力して何が悪い!」
「マリーちゃんは諦めろ」
「マリーちゃんは無理です」
「なんやねん!もう後3回、いや!次や!次行ったらきっと振り向いてくれるんや!後1歩やねん!後1歩やで!」
「そう思わせるマリーちゃんが1枚も2枚も上手なんだよ」
「醜い悪あがきはやめた方がいいですよ」
タカシのボディがマサルの腹に突き刺さった。
「なんや!勝ったつもりかマサル!」
マサルの腕パンがタカシの肩を打ち付ける。
「あの大人っぽいミレーヌさんはベッドでは子供のような無邪気な笑顔を見せる」
タカシは肩を押さえながら涙を流していた。
「マサル、タカシを泣かすなよ。タカシが惨めじゃないか」
「この件に関しては俺は一歩も引きませんよ」
この土俵はマサルの完勝だからな。
「タカシ、女の子はマリーちゃんだけじゃないぞ。この世界には男と女しかいない、ということは今後出会う奴の半分は女ってことだ。俺が何を言いたいか分かるか?タカシ」
「はっ!俺の恋の勝率はつまりは50%ってことなんか!」
「流石タカシだな。2回に1回はどうしてもうまくいかないこともあるんだ。次のチャンスを今度こそ掴めばいいだけだ」
「せやな!流石に俺やって100発100中ってわけにはいかんわな!」
ホントに馬鹿って羨ましいな。
「タカシ、マーシー、ここでこの世界1番の謎の話しをしませんか?」
「なんやねんな、7人の魔王とかか?」
「それなら目視できるステータスとか、たまに出てくるゲームのような選択肢とかは謎だな」
「いえ、ボブです」
「ほんまソレな」
「何者なんだろうな、ボブ」
「俺が思うにこの世界を牛耳っているのはボブなのではないでしょうか?」
「ただの肉屋が?」
「ただの肉屋とあなどってたらあかんで。そんな大きくないフランに始まり、帝都に魔法都市、やっぱり魔大陸にも支店を展開してるって所がこの世界の肉屋を統括してると言っても過言じゃないで」
「そう、この世界の肉屋はボブ次第なんですよ!」
「お、、、恐ろしいことやで、、、。ボブの一声で肉屋はどうとでもなるっちゅーことなんか?」
「その通りです。肉を食べるならボブに逆らわない。肉を食べたいならボブに断りを入れる。肉の為ならボブに頭を下げるしかないですよ」
「やっぱりそれほどなんか、ボブ。これからはボブには足向けて寝られへんな。ひょっとしたらボブが7人の魔王のうちの1人ってこともあるんちゃうか?」
「ありえますね。魔大陸にも店を構えることができるというのが人間ではなく魔族であり、これだけの展開を見せる大型チェーン店のトップとなればもちろんこの世界ではシンプルに強い可能性もあるでしょうね。そういうわけでジパング支店があれば是非とも寄っていきましょう。世界の肉屋から目をつけられたくないですからね」
2人が思いのほか楽しそうだったので僕は横槍を入れずに話しをじっと聞いていた。
いつもお気に入り評価ありがとうございます!
ホントにただの雑談しかしてないよ。




