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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
22/230

名前を決めるって考えるよね。だって名前って一生物だから。






やはりこうやって対峙すると威圧感ハンパないな。寝そべってても縦に2メートルくらいある巨大な犬。




定期的に冒険者達が治癒の血を求めてチームを組んで襲ってくるらしい。


治癒の血。あらゆる傷を癒し、あらゆる病をも癒す。エリクサーみたいなもんかな?

そして噂では不老不死の薬の材料として扱われるらしい。不老不死って本当かよ。


「なるほどなるほど。それで今回も治癒の血目当てで冒険者がやって来たってことか。そして苦戦していたと」


「苦戦、苦戦か。確かにそうかもしれんな。守りながら戦うというのは骨が折れる。しかも今回やって来た冒険者共は今までのヤツらよりもどうやら格上のようだしな」


今回はAランクのチームが参加してるとか言ってたな。


さてさて僕等がここで行うべき行動はなんだろうか?


①山神様に加勢する。


②冒険者共をぶちのめす。


③とりあえず1度は助けたという義理はできたので魔法都市へ向かう。


このイベントはどう進めるべきだろうか?流れから言えば山神様を助けるのが大筋ではあると思うが。


ああ、④山神様を冒険者につき出す。まぁこれは無いわな。


とにかく山神様を助けるって方向でいいのはいい。僕がしなくてもタカシは間違いなく山神様を助ける方向で動くはずだし。


「なぁなぁ、血ぐらい少し分けてやったらいいんじゃね?」


タカシが子犬の方とジャレ合いながら言ったセリフ。なるほど、それはいいかもしれない。


タカシの何でもないセリフは直感ゆえか、たまにファインプレーを起こす。


「よし、それで行こう」


僕は立ち上がり先日試しに使ったポーションの空瓶を取り出した。


「Aランクの冒険者を追い払いにいこうか」








スーの森に進入した冒険者達は先程地震と大量の水で嫌がらせした場所から少しずれたところで固まっていた。


周囲を索敵したところ今は斥候も出していないようなのでこれで全員と考えて間違いなさそうだ。


「それで、どうすんの?降りていって全員ぶちのめしたらええん?」


僕達はそこを見下ろせる崖の上で待機している。


「暴力では何も生まれない。なんでもかんでも殴ればいいってわけではないぞ」


降りていって全員叩きのめすのも不可能ではない。この距離ならステータスまで確認できるが全員大して危険も感じない程度だ。フルアーマーのゴツいのが力が200あるがそいつ以外はせいぜい100そこそこ。スピードも80から150程で僕等の半分以下の集まりだ。


1人知力(魔力)が180の魔法使いがいるが僕の足元にも及ばない。


「よし、じゃあ予定通りに頼むぞ」


山神様が前に出る

「本当に大丈夫なのか?」

山神様は不安そうだ。


「大丈夫大丈夫。とりあえず目一杯啖呵をきってくれればいい。後は悪鬼のごとくあいつらを睨みつけててくれれば」


犬でもそんな顔ができるんだなというほどの疑いの表情を浮かべた山神様だが、諦めたように崖の淵に静止した。




「聞け!冒険者ども!」


広場で集まっていた冒険者達がビクっと身を強張らせ装備を手に構える。山神様の低くよく通る声に全員が上方を見上げた。


「この神聖なるスーの森を荒らし、我に対する暴悪」


魔法使いは下がって詠唱!ロペス、モルガンは前に出ろ!固まるな左右に広がれ!


お、咄嗟とはいえちゃんと統率がとれてるな


「少々おいたが過ぎるな人間共。多少痛い目をみないとわからんようだな」



さてと、ここからは僕の番。「ファイアーボール!」と、崖下には聞こえないくらいの声で唱える。すると山神様の上方に一つ二つ三つ、、、計10個ほどの一角牛の時の倍くらいの大きさの火の玉が現れる。多分直径20メートルくらいか。


「熱い熱い」

タカシとマサルは子犬と一緒に後方に下がっていった。

山神様も多分熱いだろうが動揺1つせずに崖下の連中を睨みつけたままだ。うむ流石。


崖下の冒険者達には太陽が何個も現れたように見えるだろうな。


「な、、なんだよありゃ」

「山神が火魔法を?」

「あんなの魔法じゃないだろ」

「うそだろあんなのが降ってきたら、、」


よしよしビビらせるには十分だったか。

それでは行きます。

降り注げ、メテオ(仮)


10個の火の玉が冒険者達に落ちてくる


「うぁぁぁぁぁーー!」

「きゃぁぁぁーー!!」

「ウォーターボール!ウォーターボール!」

「なん、、だよ、、それ、、」

「誰か相殺しろーー!!」

「神様、、、」

「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「駄目だ、、、死、、」


正に阿鼻叫喚。

確かにあんなの降ってきたら地獄だよな。


叫ぶもの。祈るもの。抗うもの。諦めるもの。諦めないもの。


別にそんなのを鑑賞する趣味はない。むしろあんまり見たくない惨劇だ。


「よいしょーー」


そして僕はその火の玉の軌道を全て冒険者の上空3メートルくらいで横へ逸らす。火の玉達は全て冒険者達を躱して冒険者達を囲むように着弾した。


ドン!ドドッ!ボゥ!バキバキッ!爆発したわけではないが炎を撒き散らし冒険者を取り囲むように一瞬にして火の海、火の囲いができあがる。


「よし、今だ。行け山神様!真ん中の赤い鎧のヤツだ。」

赤い鎧はさっき咄嗟に周りに指示を出したヤツだ。おそらくあいつがリーダーだろう。


山神様が合図とともに崖からバッと身を投げた。

頭上から火の玉も嫌だが頭上からこのバカデカイ犬も相当怖いよな。


僕は崖からこっそりと見守りつつあたりの火の海を見てゾッとしていた。うむ、僕の火魔法はやっぱりヤバいな。


ドォンと着地した山神様の前足に踏みつけられて押し倒されている赤い鎧のリーダー。


「人間よ我は貴様等と関わりあうのは不愉快極まりない。殺そうと思えばいつでも殺せる過少な存在が我に弓引くとは命知らずもいいところだ」


「ぐあぁぁぁ」

あのデカい前足に踏みつけられて苦しむリーダー。周りの冒険者達も身が竦んで動けないでいる。


「我に関わるな。この森に関わるな。人間共にそう伝えろ。そうすれば命は助けてやろう」


ぐぅぅぅぅ

呻くだけで返事はない。というよりは踏みつけてて返事ができないんじゃないだろうか?


「どうした?返事は!!!」

と、力を入れてさらに踏みつけを強くした瞬間に僕は

「アースクエイク」


ドォンと冒険者達の足元が割れ。ビキビキビキッと僕のいる崖も下からヒビが入る


「わ、、分か、、た。もう関わら、、ない」


その言葉を聞いた山神様は足をどけて一歩下がった。


ゴホッゴホッとむせるリーダーに女性が1人駆け寄りどうやら回復魔法をかけているようだ。


山神様は手筈通りに1つの瓶をリーダーに投げつけた。


「こ、、これは、、?」


「我の血が入っている。手ぶらでは帰れんだろう」


そのまま山神様は振り返りヒビ割れした崖をピョンピョンとものの見事に駆け上がり冒険者達を見下ろした。


「さっさと出ていけ人間共。2度とこの森に入ってくるな。次はこれくらいでは済まんぞ」


さ、後片付け後片付け。


僕は小声で「ウォーターボール」と5メートル級の水の玉を火元へと浴びせる。その間山神様はさも自分が行っているように崖から冒険者を見下ろすポーズをじっととってくれていた。


鎮火も済んで「さぁ行こう」と僕は山神様と一緒に森へと引き返す。


少し離れたところから見守っていたタカシ、マサル、そして子犬。子犬は僕が近づくと少し身を竦めたように感じたが、まぁ気のせいだろう。とりあえずさっきの広場に戻ろう。


並走して森を駆ける僕と山神様。山神様が何か言いたげだったが僕は笑顔でなんでしょう?みたいな顔をするとフンと顔を背けられた。そんな表情がすごく可愛いらしく見えた。こんなバカデカイ犬なのにな。


「やぁ終わった終わった」

何もしてないタカシが両手にビールを掲げている。

「一仕事後のビールは格別だよな」

何もしてないマサルもビールを掲げている。


それにしてもさぁとタカシがビールに口をつけながら言う

「その治癒の血って別に渡す必要なかったんじゃね?あんだけビビらせたら大丈夫やったんちゃう?」

さぁ、どうだろう?

「一応落とし所ってヤツかな。ビビらせて2度と来るなって話しても次はもっと強く、もっと大勢で押し掛けて来る可能性はある。ただ今回のクエスト依頼が治癒の血であるのなら一応は成功ってことだから依頼がこれでなくなる可能性もあるし面目もたつんじゃないかと思うよ」


それでもまた来る可能性は0ではないが限りなく減らすことはできたと思う。


「それよりもだ」

山神様が口を開いた

「なんだ?あの魔法は?」


「え?ファイアーボールだね」


「あの質量のファイアーボールをあの数だけ出せる人間などいるわけがない。勇者でも大賢者でも不可能だ」


「まぁ俺は勇者でも大賢者でもないからね」


「魔族、いや魔王ならあるいは、、」


「いやいや至って普通の人間だよ魔力が多いのは認めるけど」


「すごいやろヤマト。ウチの紅一点や」


いやいや紅一点の使い方おかしいし。それに嫌な単語出てきたな。魔王って。


「お、マーシーマーシー。こいついけるクチみたいだぞ」


マサルが子犬にビールをすすめている。犬がビール瓶をラッパ飲みしてるぞ。


「アルコール大丈夫なのか?仮にも犬だぞ」


「ヤマト、ヤマトはビールはいけんの?」

今度はタカシが山神にビールをすすめだした。


「、、、さっきからずっと我のことをヤマトと呼んでいるがなんだそれは?」


「ん?ヤマトとサクラやろ?略してヤマサク」


「そういえば山神様は名前とかないの?」

ステータス表示は山神様と山神の子ってなってるだけだな。


「名は、、、ない」


「じゃあヤマトとサクラでええやん。っていうかヤマトとサクラやし」


「はははは、我に対して斯様な態度をとるものがいるとはな。貴様達は本当に我が怖くはないのだな」


お、初めて笑ってくれたな。


「怖いわけないやん家族やし。俺はヤマトがこんなちっちゃい頃から知ってんねんで」


「まぁそのヤマトとこのヤマトはまた違うとは思うけどな」


山神様は口をポカンと開けていたがくくくっと今度はちょっと怖い感じに笑っている。


「ヤマト。ヤマトか。それにサクラ。構わん呼びやすければそう呼んでくれても構わんよ」


お、スゲェ。ステータス表示が山神様からヤマトに変わった。


「ははは、飲め飲め。ヤマトもいけるんやろ」


タカシがビールをヤマトの口に突っ込んだ。そのままグビグビと小さく見えるビール瓶を飲み干す。


「酒なんて何年ぶりか」


しばし僕達はビールとマサルの取り出した焼き鳥で舌鼓だった。ビールは冷えてる。焼き鳥は焼きたてのようにホット。アイテムボックス万歳。横になったヤマトの身体をソファ代わりに。サクラはまるでクッションだ。





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