また来てね
向かいにはロン王子が座り、ホウリュウ王子とメイメイ王女、リン王女はその後ろに立ったままだ。ちなみにミノくんは外で待っている。
「忙しそうやなロン。事務仕事ってヤツやな、俺は絶対でけへんやつやわ」
「ホウリュウ兄さんやメイメイ姉さんが手伝ってくれていますから助かってます。リン姉さんと僕は覚えるのに必死ですよ」
「いえ、元々私がしていたことをロン様とリンに引き継いでいるだけですよ。今後は1人でできるようになってもらわないと」
「あっはっは、大変そうやなロン。まぁ兄貴が手伝ってくれてるうちは目一杯甘えたらええわ。そのうち嫌でも自分でせなあかんねんやろ?」
「はい。1日でも早く1人前にならないと。それで今日はどうされましたか?」
「昨日お話しした通りに我々に何かできることがあればとお伺いさせていただきました」
「なんでも言うてや。俺らにできることやったらなんでもすんで」
「ロン様」
ホウリュウ王子はロンに視線を向けた。
ロンはこちらを見直す。
「お申し出ありがとうございます。ですがお3人方にお願いすることは特にはございません。この国のこと、この城のことは我々で解決できます」
「そっか・・・・・・・せやな。俺らは部外者やからな。今まさにこの国の第一歩を踏み出そうとしてるところやしな。俺らが変に手伝ってもうたらなんか台無しになってまうかもな」
「いえ、台無しになるというわけではないです。ですが、僕達がすべきことだというだけです。わざわざお越しいただきまして感謝いたします」
「ええんや。・・・・・・・・・・・ロン、俺ら今日にはこの国出るわ」
「え?もっとゆっくりしていってもらって構いませんよ。昨日の今日じゃないですか」
「いや、こんな冒険者が我が物顔でロン達に声かけんのも多分外から見たらおかしい話しやし。俺らが居って変な誤解生まんとも限らんしな」
「タカシの言う通りですよロン王子様。今この国は新しい1歩を踏み出したところです。その中には俺たち3人は必要ない。良い方向にきっかけをつくる一波になれたならそれだけでいい。俺たちの存在を表に出す必要もないしこれ以上関わるべきでもないはずです」
「あなたたちも・・・・・ホウリュウ兄さんと同じことを言うのですね?」
「そうですか、ホウリュウ王子様も同じことを・・・・・・。それが1番ですよ」
「でもな、ロン。俺たちはいつまでもこの国の味方で、ロンお前の味方やで。それは忘れんなや。何かあったらいつでも頼ってこい。すっ飛んで来たるから」
「ははは、次期国王様に向かって頼ってこいって随分大物だな、タカシ」
「・・・・・・はい!!何かあったら頼らせていただきます!!また・・・・・・・・来てくださいね、この国に」
「ああ、また寄るわ。次会った時はもっと貫禄つけとけよ」
お暇するか。
僕達はソファを立った。
「リン王女様、ロン王子様を支えてあげてくださいね。私もまたお伺いさせていただきますので」
「はい、マーシーさん!ありがとうございます!きっと、きっとまた来てくださいね!」
マサルはずっとメイメイちゃんを見ている。
「マサル、メイメイ王女様に挨拶あるか?」
「メイメイちゃん・・・・・・・・・・・報酬は次回会ったときに・・・・ブッ」
タカシのボディに悶絶するマサル。
「メイメイ王女様。マサルは何かのためにあなたに力を貸したわけではありません。あなたという人柄に惹かれて手を貸しただけです。したがって報酬は一切必要ありませんので」
「メ・・・・メイメイちゃん・・・・・」
「マサル・・・・・・・ありがとう・・・・・・また来てね」
メイメイ王女は今まで見せたことのない満面の笑顔を見せた。
こんな笑顔もできるんだな、メイメイ王女。
ホウリュウ、ロン、リンの3人はその笑顔に一瞬驚いた表情をみせたがその後にクスリと笑い僕達3人に軽く頭を下げた。
僕とタカシはマサルを引っ張って部屋を出る。
「さて、行こう」
「ああ、せやな」
「うううう・・・・・・メイメイちゃーーん」
僕達は廊下を歩く。
向かいからきらびやかな鎧に身を包んだ長身ロン毛の人間が向かってきていた。
シリュウ王子だ。
僕達は歩みを止めずにそのまま歩く。
「今日このままこの国出るわ」
タカシが前方に向かって声を出した。
「そうか・・・・・・・・・・・・・・また来い」
「ああ。また来るわ」
すれ違っていったシリュウ王子。
僕達はそのまま入り口の門まで歩いていった。
門を出て遠くから城を眺める。
「きっと良い国になるな」
「当たり前や。ロンが王様やねんぞ」
「メイメイちゃんのあの笑顔・・・・・・・・・尊い・・・・・」
「さあ、御者くんに会いに行こう」
僕達は馬屋へと向かった。
御者くんは並びの宿に居ると言っていたが馬屋に到着すると馬屋の前でベンチに座り、ただただ待っている御者くんを発見。
「お待たせ。随分待たせて申し訳なかったね」
僕は御者くんに言葉をかけた。
「マ・・・・・・・・マーシーさん・・・・・・・・皆さん」
「ホンマごめんな、ちょっと野暮用できてもうて」
「ちょっと野暮用で国のシンボル破壊wwwプププwww」
口を押えて笑いをこらえているマサルを押しのける。
「今日すぐに出発はできるかな?」
「はい!すぐに準備します!」
「ありがとう。それじゃあ準備の間に俺たちは食料と酒の補充に行こうか」
「「はい」」
タカシとマサルは同時に僕に手を差し出した。
僕は懐から大銀貨を出し2人に3枚づつ手渡した。
「え?コレで足りるん?」
「特に高級品を買う必要ないだろ。これだって30万くらいの価値のはずだぞ」
「ああ、そっか。なんか帝都やったら金貨ばんばん使ってたから金銭感覚おかしかったんかな?」
「足りなかったらタカシは自分のを使え。マサルは俺に頭を下げろ」
「そっか、ほな行こか」
「マーシー、お小遣い制にしませんか?そういえば俺はほとんどお金を持ってないのですが」
「マサルには渡さん。買い食いであっという間になくなるだろ」
「間違ってないだけに言い返せないじゃないですか」
「自覚しているならいい」
僕達は食料とお酒を買い漁る。それぞれのアイテムボックスに放り込み僕のアイテムボックスにもある程度ストックしておく。
買い物が終わって馬屋に戻ってくると御者くんに案内されて街の東へ。
そこで少し大きめの馬車に乗り込んだ。
「それでは出発しますね。準備はよろしいですか?」
「ああ大丈夫だ。チョーアンまでよろしく頼む」
「ほんだら出発や!新しい冒険の始まりやで!空から女の子が降ってきてもなんのそのや!」
「え?女の子が降って来るんですか!?どこに!?キャッチは俺が絶対にしますからね!」
「振ってこねーよ」
「そんなん降って来るやけないやん。妄想も甚だしいで、マサル」
ガタガタと音を鳴らして馬車は進む。
秦国の行く末ももちろん気になるが、ここからはこの国の人間次第だろう。
僕達のやったことが良いことだったのか悪いことだったのかは今現状では答えは出ない。
それでもきっとこの国は良い国になるんだろうなと3人共確信していた。
いつもお気に入り評価ありがとうございます!
さてと・・・・・・やっと次へ行けるわ。




