あの目印の塔って、俺がなくしたんだよな
ホテルの一室で目が覚める。
誰かがシャワーを浴びている音がした。
「ううーーーん」
僕は目を擦りながらベットから出る。
「どうしてお前たちは俺の部屋を使うんだよ。特に風呂」
ソファに寝そべりながらキセルから煙を出しているタカシ。ということはマサルがなぜか僕の部屋の風呂に入っているということだ。
「朝起きて俺がここで一服してたらマサルが自然に入ってきて自然に風呂のドアを開けてタオルも用意して自然に入っていったで。疑いも迷いもなかったわ。まさに我が物顔」
僕はアイテムボックスからオレンジジュースを出してソファに座った。
「さてと、やっとこの国からおさらばできるな」
「せやなー、ほんの3日ほどやったのに何カ月も居った気分やわー」
「それだけ濃密だったってことでな」
「あとはジパングまで行くだけやな」
「途中でなにもなければな」
「え?なんかあんの?」
「強姦に襲われている女性を助けたらどこそこの王女様でしたとか、空から女の子が降って来るとか、喧嘩売った相手が魔王様だったりしなければな」
「なんなん、その具体的なんは?最初のはすでに経験してるしな」
「それだけ俺たちが何かしらのトラブルに巻き込まれすぎてるんだよ」
「空から女の子が降って来るなんて妄想も甚だしいで」
「おい、変なフラグをたてるな」
ガチャリと風呂のドアが開いた。
「ああーー、いい湯でした。あ、マーシーおはよう」
「おい、全裸で出てくるな」
「この解放感がまたいい」
服を着たマサルもソファに座り僕達はジュースで一息。
「イエーーイ!フルボッコミーティングーー!!」
「イエーイ!」
「久々やん、イエーイ!」
「とりあえずお城には挨拶に行こう。早ければもう今日にでもここを出てもいいと思っている」
「え?早ない?なんか手伝うことあったら手伝ってやりたいんやけど」
「もちろんそうなんだが、長男次男と国王様もわざわざ挨拶に来てくれたわけだしな。あとはもう一度ロン、リン、メイメイの3人に挨拶すればいつでも出ていけると思う。正直ここまで感謝されてる立場上向こうからなにか手伝ってくれとは言わなさそうだしな」
「そっか・・・・・・もうちょっと居ってもええかなって思ってたけど」
「まぁいいんじゃないでしょうか。俺たちはやっぱり部外者ですから、これからのこの国には必要ないでしょうし」
「マサルの言う通りかな。俺たちが現場に立ってロンやメイメイあたりにため口きくのもどうかと思うしな」
「ほんだらさっさとジパングに向かうってことか」
「ああ、港町のチョーアンってところから船が出てるらしいからそこまではまた馬車だな。御者くん元気にしてるかな?」
「ああ、そういや待ってるって言ってたな、あの御者くん」
「よし、それじゃあ城に挨拶に行ってなにも問題なければ今日発つことを話して街で食料の調達。それから御者くんのところに向かおうか」
「食料は多めにお願いします。この前みたいに足りなくなると困りますので」
「なら食べる量を控えるんだな」
「金ならあるくせに!!」
「金はあるが控えろよ!!」
「まぁまぁ、ええやんマーシー。楽しい旅行中に何か我慢せなあかんって嫌やしな」
「ほら、タカシも言ってるじゃないですか!我慢は体に毒なんですよ!」
「タカシ・・・・・何が欲しいんだ?」
「酒のストックが切れた」
「そんなことだろうとは思ったがな」
「大変ですマーシー!!食料も酒も底をついてるんですよ!買い溜めしなきゃ!」
「うるさい、分かってるよ。俺だって飢え死にしたいわけじゃない。それにジパングに向かうのは船旅になるし、向こうで食料の補給ができるとも限らないからな。アイテムボックスをパンパンにしてやる」
僕達はさっと着替えてそのままチェックアウトしホテルを出た。
城まではゆっくりと歩いて向かう。
大きくそびえ立つお城に向かうだけなので迷うことはない。昨日と違うのは目印だった塔がなくなっているくらいだ。
ダラダラと無駄話をしながら道中開いている料理屋も詮索していく。
朝も早い時間だったがチラホラと店は開いているようだ。
お城に着いて大きな門の前にいる門番に僕は話しかけた。しまった、入れるかな?
「すみませんがロン王子様、リン王女様、もしくはメイメイ王女様にお取次ぎ願いたいのですが」
「ああん?何者だ?そのような予定は入っていないぞ」
そうだよな、前回と全く同じ展開じゃないか。
「お、マサル殿じゃないか。今日はメイメイ様とは一緒じゃないのか?」
門番がマサルに声をかけた。
「門番さん、メイメイちゃ・・・・・メイメイ王女様は今日はまだ戻ってきてないですか?」
「ああ、そろそろ戻ってくると思うぞ。ここで待つか?」
「はい、待たせていただきます」
「ナイスマサル」
「ここ数日は毎朝メイメイちゃんと教会に行ってましたから」
待つこと数分。
遠くにデカイ人影が見えた。
「戻ってきましたね」
「あのミノくんってのは良い目印だな」
「あーーー、マサルーーーー、おはよーーー」
「あら、どうしたの?」
「さすがに一介の冒険者は勝手にお城には入れないようでして」
「そう、じゃあ一緒にいらっしゃい」
「おかえりなさいませメイメイ王女様」
「ご苦労様。彼らも連れて行くわね」
「はっ」
僕らはメイメイ王女とミノくんに並んでお城に入った。
「今日はどうしたの?」
「何かできることがあればお手伝いさせていただこうかと思いまして」
「そう・・・・・・。それじゃあロンのところに行ってみましょうか」
僕達は城内に入るとメイメイ王女に連れられて両開きの大きな扉の部屋まで案内された。
扉の脇には槍を持った兵士が並んでいる。
「ロンは今自分の部屋じゃなくてここに居んの?」
「ここは執務室よ。ロンは色々やることがあるから」
コンコンとノックし
「メイメイです、入ります」
扉を空けて中に入る。
「メイメイ姉さんおかえりなさい」
「ロン、お客さんよ」
「あ、皆さん!」
机の上には大量の書類。その前に座ってロン王子は必死に書類にサインをしているところだった。
横の少し小さめの机にはリン王女が。
ロン王子の横にはホウリュウ王子が立って書類に目を通している。
「ミエリ、お茶を用意してください」
ロン王子は部屋の隅に立っていた10歳くらいのメイドに声をかけた。
「お、ミエリちゃんおはよう」
どうやらタカシも知っている子のようだ。
「それじゃあ10分休憩にしましょうかロン様」
「はい、ありがとうございますホウリュウ兄さん」
ロン様・・・・か。
ホウリュウ王子はきっちりしてるな。
「朝早くから突然の訪問失礼いたします。ご挨拶にお伺いさせていただきました」
「どうぞどうぞそちらにかけてください。すぐにお茶を用意しますね」
僕達はソファに案内されて3人で座った。
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