弁償させられる前にここを発とう
満場一致でロンが次期国王としておさまった。
「これにて本会議は終了とする。国民への発表と他国への公表も随時行う様に。ホウリュウ、お前がロンと相談し指揮をとれ」
「はっ、かしこまりました」
「シリュウ、お前は引き続き城内の復旧、兵士たちの様子を見ておくように。ロンへの報告を忘れるな」
「了解だ」
「メイメイは今回巻き込まれた亜人達を見てやるように。彼らも被害者だからな」
「はい、ありがとうございます」
「リン、ロンの手助けをしてあげなさい。分からないことは兄たちに聞きながらな。リンの成長がロンの成長にもなる。そしてこの国の成長にもつながると考えなさい」
「はい、お父様」
「ロン。抱え込まないようにな。ロンの周りには兄弟たちだけではなく多くの人間が居てくれる。もちろん儂に頼ることも1つだ。自由にやりなさい」
「はい、父上」
「さて、儂の仕事はここまでじゃな」
ゆっくりと国王様はこちらへと向かって来る。
『タカシ!タカシ!侮辱罪で死刑ですよ!』
『もしくは目の前の机を壊した弁償をさせられるか』
『こうなったらもう3人で謝るしかないで!キレのあるジャンピング土下座でもする?』
ピタリと僕達3人の前で立ち止まった国王様、いや僕達の前ではなく、レイニーとレイファンの前だ。
「レイファン・・・・・・いきなり父親だと言われて混乱していると思うが・・・・・・・」
「国王様が・・・・・・お父さん・・・・・・・」
「そうよ。ごめんね、今まで黙っていて」
「いや、悪いのは儂じゃ。レイファンすまない、お主を母親と離れ離れにしてしまったのは儂じゃ。なんと謝ればよいのか・・・・・」
僕は横から口を挟んだ。
「レイファン・・・・・『あきらめろ』。真実だ。俺に諦めさせたんだからレイファンもあきらめてこの真実に向き合うんだな。プププ、第三者のハーフエルフがいきなり重要人物に格上げだな?」
「あなた・・・・・・知ってたの・・・・?」
「俺が全く関係のないヤツをわざわざここまで連れて来ると思ってるのか?」
「キーーー、最初から最後までホントむかつく!」
「良かったな・・・・・・・・・母親に・・・・・・・・いや、両親に出会えて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうね、ありがとう」
「時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり3人で話せばいいさ。親子水入らずでな」
そして国王様とレイニー、レイファンは部屋から出ていった。
王子たちやお偉いさんも部屋から出ていき僕達も席を立つと最後に残ったロンが話しかけて来た。
「タカシさん」
「おう、ロン。頑張れや。これからが大変やろうけどな」
「はい。・・・・・・・・ありがとうございました」
ロンは深々と頭を下げた。
「俺らに頭下げるんはこれっきりやぞ。国のトップが簡単に頭下げるもんちゃうからな」
「はい!」
「期待してんぞ」
バシバシとタカシはロンの背中を叩いた。
「タカシさん・・・・・・・この国で、僕の元で働きませんか?お2人ももちろん一緒に。メイメイ姉さんもリン姉さんも喜ぶと思います」
「ロン・・・・・・誘ってくれるんはうれしいんやけどな」
「そうだな、頼ってくれるのは嬉しいがな」
「俺もできればメイメイちゃんとずっと一緒に居たいんですが」
「そう・・・・・ですか・・・・・・・・・・分かりました!!僕は皆さんがいなくても、きっとこの国をすばらしい国にしてみせます!!次にタカシさんたちがこの国に来た時にはアッと驚くように!」
「もう少しは多分ここにおるつもりやから、なんかあったら言うてくれ」
「まぁ多少の後始末は手伝うつもりだからな。タカシが馬車馬のように働いてくれるぞ」
「俺ももう少しメイメイちゃんを拝んでからここを発つつもりですから」
ロン王子はゆっくりしていってくださいと笑顔で返した。
さぁ、目の前の破壊された机はそのまま放置してとっととこの部屋を出よう。それにしても僕達はこの国のものを破壊してばかりな気がする。気のせいかな。
ロン王子に部屋を用意すると言われたが、この城に滞在すると周りの目もあるし落ち着かないという理由で僕達は昨日のホテルを3部屋とった。宿泊費を出すとは言ってくれたが塔やら机やらロビーやらの破壊が頭をよぎりどうにも甘えるわけにはいかなかった。
その夜僕達はホテルの一室でくつろいでいた。
「希望通り、そんで予定通りことが進んでよかったわー。ロンが王様になれたし。めでたしめでたしやな」
タカシがビール片手にソファに座っている。
「あの塔って弁償することになったらいくらくらいになるんでしょうかね?」
マサルがテーブルに並べられた料理を口に運びながら誰にも視線を向けずに呟いた。
「ロン王子が国王になったことでうやむやになったようなもんだからな。とりあえず刺激せずにこの国を離れよう」
「え?すぐこの国出んの?」
「実際問題俺たちがやれることはあまりないと思うよ。俺たちにできることならなんだって手伝ってやりたいところだが、せいぜいが力仕事くらいなんじゃないか?あとは王子や王女の仕事だろうな」
「そうですね。倒す敵もいなければぶっ壊す塔も叩き折る机ももうないわけですしね」
「あれ?マサルがなんか自分だけ罪を犯してない風に言ってるように聞こえんねんけど」
「俺はなにも罪を犯してはいない」
「せやな、せいぜいメイメイちゃんを視姦しとったくらいやな」
「ただ見ていただけです。何も悪くはない」
その時部屋をコンコンとノックする音が聞こえる。
「誰だろう?わざわざここに来るヤツなんていないと思うが」
僕は2人を置いて玄関に向かいながら索敵を広げた。中々おもしろい客人じゃないか。
僕は扉を開けた。
「こんなところにこんな時間にどうされましたでしょうか?」
「なんやマーシー?誰が来たんやー?」
「どうぞお入りください。少々ちらかってますが」
僕は客人を中へと通した。
テーブルに座って肉を口に放り込んだマサルとビールをラッパ呑みしていたタカシ、2人とも入ってきた客人を見て固まった。
「長男やん」
「ホウリュウ王子じゃないですか」
ホウリュウ王子とその後ろに黒髪ロングの女性と白髪ロングの女性。
ホウリュウ王子の後ろに居る女性2人はマサルと視線が合うと少し後ろに後ずさった。
「どうぞお掛けください。おらマサル、そっちに行け」
「いや、ここで結構」
ホウリュウ王子は部屋の入り口に立ち僕達3人に視線を向けた。
「それで?もちろん何か用件があるんですよね?」
僕はホウリュウ王子の向かいに立ったままで尋ねる。
『マーシーマーシー!!弁償ですよ弁償!!なんとか塔ではなく机にしてください!!!』
『ちちちち、ちゃうって!多分、そう、あれやって!あれ!あれやん!マサルが後ろのお姉ちゃんにしたセクハラが問題になったんやって!』
『指一本触れてませんが』
『いやいや捕まえる時にガッシリいってたやん』
『あれは事故です』
「本当にありがとう」
ホウリュウ王子は深々と頭を下げた。
「ホウリュウ・・・様」
「ホウリュウ様・・・・」
後ろのお姉さん方は驚いた表情でホウリュウ王子を見た。
「王族が冒険者に頭を下げるなんて大問題ですよ、ホウリュウ王子様」
僕の声にホウリュウ王子は返す。
「ああもちろんだ。だからこれっきり、今後このようなことはしない。だが、どうしても感謝の言葉を伝えたかった。私たちを救ってくれてありがとう、そしてこの国を救ってくれてありがとう」
ホウリュウ王子はゆっくりと頭を上げ、3人を見た。
ゆっくりとタカシが立ち上がる。
「あんまり気に病まんでええで。催眠にかかってたことを気にしてるんやと思うけど、俺もアレにかかってえらいヤバいもんやって分かってるから。簡単に抵抗できるもんやなかったからな。それにこう言っちゃなんやけどホウリュウ王子のためにやったわけやないしな」
「もちろん分かっているよ。それでも・・・・・それでもだ」
「分かりました。ホウリュウ王子様のお言葉確かに受け取らせていただきました。改めてそう言っていただけると我々も今回やってきたことが報われます。立場上、下げるわけにはいかない頭をわざわざこのようなところに足を運んでまで見せていただいたことにその真意が汲み取れます。真に光栄です」
『なんなん?その歯の浮くようなセリフは?』
『マーシーってそういうところがせこいんですよね』
「何かあれば我々を頼ってくれ。秦国は君たちを歓迎する」
「ありがとうございます。何かあれば頼らせていただきます」
ホウリュウ王子はそう言って振り返り玄関へと向かった。
本当に感謝の気持ちだけ伝えにここに来たんだな。律義な人だ。
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いや、作者のやる気が出ます!!




