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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
207/230

この戦いはここまでだ





マサルはメイメイの元を離れて乱戦となっている中央へ。1人でも犠牲者を減らすべく向かう。




ダン!!


と、その時メイメイの横にやってきた男。



「お、メイメイちゃん。マサルは?・・・・・・・・・あっちか。殺さんように蹴り飛ばしてるってことか。ほんだら俺も手伝おうかな?」

「あ、タカシだーー。さっき、お嬢を殺そうとしてたタカシだーー」

「さっきはホンマごめんて。つくづく恐ろしいもんやな、催眠って。やりたくないことを無理やりやらされる。殺したくないのに体が勝手に動いてまう。ほんで意識はあるわけやしな。催眠中はそれが正しいことやと思って動いてるからコイツらは犠牲者なんやろーな」



メイメイは唇を噛みながら潤む目でタカシを見た。

「誰にも死んでほしくない・・・・。城のみんなも、街の友達も、誰にも死んでほしくない・・・・」


「そんな顔されたらマサルじゃないけどなんとかしたくなるやん。とりあえず俺も1人でも犠牲者減らしていくか」








パン!




と、なにかが弾けた感覚がその場を覆った。


ただの違和感。魔法の弾けた音かと思われる程度。



しかしその場にいる者たちの態度が一気に変貌する。






それは




獣人たちのみの変化だった。




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「なぜ・・・・・俺は・・・・・・・・・」

「痛いィィィ!!いぎゃーー!!」

「くそォ!!くそっ!!!」

「助けて・・・・助け・・・・」

「何がどうなってるんだ!!」

「どうして俺は・・・・・・・こんなことを・・・・・・」

「殺してやる!!殺してやる!!!」

「もう嫌だ・・・・・・・・」



「あれーー?なんだか様子がおかしいーーー?」

「催眠が・・・・・・・切れたんか??」




メイメイへと向かって一直線に走っていた2人組のトカゲ男がミノの前でガックリと膝をついた。

「メイメイ様・・・・・どうして俺は・・・・・」

「メイメイ様・・・メイメイ様ぁ・・・・」




「メイメイちゃん!!今や!!!多分催眠が切れたんや!!」


メイメイは腕で目元を拭いダッと駆け出した。乱戦となっている中央へ。




一気に抵抗の薄れた獣人に対して王国兵士たちが剣や槍を突き出している。




異変に気づき前線へと駆け出したのはロンだ。


「全員下がれ!!攻撃中止――――!!!下がれ下がれ!!!」

声を張り上げるロン。しかしその声を耳にしても、今振り下ろそうとしている剣を止めることはできない。



獣人たちの催眠は全員まとめて切れていた。


それでも目の前で槍を突き出してくる兵士、剣を振り下ろしてくる兵士に対して自らの剣で切り結ぶ者も多い。

自分の身を守るために剣や拳を振るう者。

すでに何人切りつけたか分からない自分の剣を見て何も考えず、続けて兵士を切りつける者。



「やめろ!!これ以上犠牲を増やすな!!獣人たちも剣を下ろすんだーー!!」

ロンはその敵味方入り乱れた戦場に突っ込んでいく。

「ロン様!!お待ちください!!」

エドガーがロンを引き留めようと後を追った。





明らかに手を止めた獣人たち。まだ剣を振り下ろそうとしているものもいるがシリュウ王子には自ずと答えが分かる。


目を見れば分かる。


戦う姿勢で分かる。



催眠が解けたのだろうと。





どうする?手を止めるか?いや、急に攻撃を中止させればまだ剣を突き出してきている獣人の剣が味方に届くかもしれない。

どうする?どうすればいい?


シリュウ王子は獣人たちの目を見た。



ずいぶんと怯えていた。


ひどく怯えた目で今にも泣きだしそうだった。






そこでシリュウ王子の耳に聞こえてきたのはメイメイ王女の声だった。

大声を上げながら、単身でこちらに突っ込んでくる。



「みんなやめて!!もういい!!もういいのよ!!下がって!!下がりなさい!!!」



シリュウ王子は叫んだ


「テメーら!!攻撃中止だーーー!!この戦争はここまでだーー!!」

シリュウ王子は槍の刃の無い所で目の前の獣人たちを吹き飛ばし獣人たちに背を向けて自軍の方を向いた。

「やめろ!!これ以上は攻撃する必要はない!!下がれ!!!下がるんだ!!!!」


無防備に敵に背を向けるシリュウ王子を見た王国の兵士たちが何事かと驚いている。



そんなシリュウ王子の背後にサーベルを持った狼男が襲い掛かった。


「シリュウ様!!」

「シリュウ王子様!!」

咄嗟に兵士が声をかける。



と、そこに割り込んだ人影。

「よいっしょっと」

マサルだった。

マサルは狼男の腕を掴んでハンマー投げよろしく獣人の集まる方へと投げた。



マサルに遅れてタカシが次々と兵士の付近にいる獣人たちを軽く蹴りつけ、時には腕を掴んで投げ飛ばし王国兵士から獣人を引き離すように動いている。


シリュウ王子はそんなタカシとマサルをチラリと横目に見ただけでそのまま敵に背を向けたまま声を張り上げる。



「全員下がれ!!後退しろ!!」


その横に立ち並ぶ姿が増えた。


「攻撃を中止してください!!獣人たちは操られていたんです!!それも今解けました!!この戦いはここまでです!!!」

ロン王子がシリュウ王子の横に並び同じように獣人たちに背を向け、王国兵士たちの方を向きながら声を上げる。



「下がりなさい!!大丈夫!!もう大丈夫だから!!もうこれ以上誰も傷つかないでいいの!!大丈夫だから!!私を信じて!!!」


シリュウ王子とロン王子の後方に獣人の方を向きながらメイメイ王女が声を張り上げる。



シリュウ、ロン、メイメイの3人を中心に真っ二つに割れ、対峙した王国兵士たちと獣人たち。

戦場は先ほどまでとは打って変わって3人の声が皆に届くほど静けさに包まれている。




呆然としている獣人たち。



そして・・・・・・・・・カラン、カランと獣人たちは武器を地面に落とした。







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