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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
205/230

潰せるもんなら潰してみやがれ






月の塔に絡みつく龍の嘶き。


崩れ落ちる月の塔。




その場にいたもの全員が目を見開いた。


「つつつつ・・・・月の塔が!!」

「なんなんだ!!」

「一体誰が!!」




そんな兵士の1人に斬りかかった獣人の一撃をロンは剣で受け止めた。


ギイン!!


「くっ!!よそ見をするな!!」


体が重くなった。自身の力が弱くなった。獣人の動きを速いと感じた。獣人の一撃が重いと感じた


。ロンはすぐに理解した。




(月の塔が壊されたことで加護が無くなった。いや、薄らいだのか。個々の能力では獣人の方が有利になってしまう)


「槍兵踏ん張れ!!獣人どもの勢いはなくなってきているぞ!!弓はあるだけ全て打ち込め!!お前たちの弓術で獣人はひるんでいるぞ!!剣を持て!!前を向け!!我が国の強さを最後まで見せつけろ!!」


「「「おおおおおおおお!!!!」」」


前衛の槍兵たちは自身を鼓舞するように声を上げた。


「ひィィィィッ!ち・・・力が・・・・」

「くそ!!急に切れなくなっ・・・」


中衛に集まった加護頼みのものたちは月の塔が崩れ、自身の力が弱まったことで怯え、陣の外に逃げようとするものたちまで出てきた。


そんな中、敵に背を向けて逃げ出すものたちに襲い掛かろうとする獣人を必死に迎撃するロン。


「ロン様!お下がりください!!ここはわたしが!!」

「エドガー!駄目だ!!僕が逃げれば残っている者たちの意思を踏み潰すことになる!エドガーは僕と一緒に槍兵に向かう獣人を止めるんだ!!」



ロンは明らかに重くなった獣人の一撃を受け止めながらも全体を見ていた。ここで槍兵が抜かれたら一気に崩れ出す。前線に配置された槍兵たちは戦っている者たちの中でも戦経験があったり国王様の警護の経験者であったりこの戦闘の要となっていて自分たちの位置の重要性も分かっていた。力が抜けたことにより動揺はあるものの強い意思で獣人の進行を真正面から受け止めていた。




「くっ!」


人ゴミを抜けて来た狼男が右手に持ったサーベルでロンに切りつけるがロンは自身の剣でそのサーベルを正面から受け狼男の腹部へ蹴りを入れて距離をとった。

ザシュッとその隙にその狼男の首筋にエドガーが剣を突き刺した。


「ロン様!ご無事・・・・・・・」

エドガーの目に映るロンへと襲い掛かる2匹の獣人。ロンはこちらを見ており気づいていなかった。エドガーには間に合わない。


「ロン様!!お逃げください!!!」



獣人の1人の手に持った鉄製の剣はロンの右わき腹を打ち付けてロンは吹き飛んだ。

「ロン様!!」

もう1人の獣人はそのままエドガーへと切りつけるがエドガーはその剣をなんとか受け止める。

「くそ!!どけーー!!」



ロンを吹き飛ばした獣人はそのままロンへと歩み寄りその剣を大きく振りかぶる。


ロンはハッと吹き飛ばされたことに気づくが、わき腹の激痛と手に持っていた剣がないことに気づいた。見上げると獣人が剣を振り上げている。



「おおおおおお!!」

ロンは痛みをこらえ拳を握りしめた。



「ロン様――――――――!!」

エドガーの声が響く。







ザシュッ!!


血しぶきが舞う。





ドサッと獣人の腕が地面に落ちた。


「に・・・い・・・・・さま」




大きな槍を振り上げたシリュウ王子は獣人の腕を切り落とした槍を返してそのまま獣人の首を落とした。



「シリュウ様!!」

「シリュウ王子様!!」

「シリュウ王子様!ご無事で!!」



「ロン、素手で向かって行こうとはいい度胸だな。早く剣を拾え」

「は・・・・はい!!」

ロンは近くにあった自身の剣を拾いシリュウ王子の横に立った。



「ロン、加護が消えてもよく踏ん張ったな。エドガーと一緒にここにいろ。あとは俺に任せておけ」



シリュウはこの状況をある程度は理解していた。

催眠中に話しを聞いた。洗脳された獣人ども。それを殲滅するために敷かれた陣。月の塔の破壊による力の減少。


(ここで俺のすることは決まっている)




シリュウ王子は槍を高々と掲げた。

「戦えない弱者はここからさっさと失せろ!!国を守る力の無いヤツはいらん!!」シリュウ王子の声はこの戦場で大きく響き全員の耳に入るほどだ「槍兵ども!!!よくここまで持ちこたえたな!!我が国の自慢だ!!兵隊長ダービン!そこに居るんだろう?よくここまで鍛えたな!終わったら美味い酒を奢ってやる!!シュリ!グレイン!居るか?!!」


中衛で獣人を押しとどめていた刃の大きい槍を持った数人がすぐにシリュウ王子に駆け寄っていく。シリュウ王子の親衛隊たちだ。

「はっ、ここに全員」

ズラリとシリュウ王子の後方に並んだ。


「まだ戦えるものは剣を持て!!俺が道を切り拓く!!手柄をダービン率いる槍兵どもにくれてやるつもりはないぞ!!!」



一気に前方に駆けだしたシリュウ王子。それに親衛隊たちが続いた。

その声を聞いて逃げ腰だった兵士たちも剣を握り直す。



「俺に続けーーー!!!!!」

「「「「「「おおおおお!!!!」」」」」」



「おらテメーら!!シリュウ王子に全部持ってかれちまうぞ!!!獣人どもを押し返せ!!!!」

「「「「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」」」」

槍兵率いるダービン隊長が声を上げると前衛で踏ん張っていた槍兵たちが獣人を押し返し一歩一歩と前へと押し返し始めた。






中衛で兵士と切り結んでいた獣人を吹き飛ばしながら真っ直ぐ最前線まで突っ切ったシリュウ王子。


「肩借りるぞ!!!」

前方の重鎧を着た槍兵の肩を足場に大きく跳躍したシリュウ王子。

「ライト・レイ!!!!」

複数の光の矢が獣人たちに降り注ぎさらにシリュウ王子自身が槍を横一閃。槍兵たちよりもさらに前。まさに最前線に降り立ったシリュウ王子。親衛隊たちもすぐにシリュウ王子の周りに並んだ。






穏やかではない視線をシリュウ王子たちに向ける獣人たち。一息つく間もなく襲い掛かって来る。





「この国を潰せるもんなら潰してみやがれ!!!」





シリュウ王子は槍を振り回しながら獣人たちに向かっていく。


その背後にはギラギラ輝いた目をさせた大勢のものたちが彼に続いて前進していった。








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