メイメイちゃんが2人?なんて贅沢な。
マーシーとタカシが塔を登っているころマサルは駆けていた。
「はい、索敵ドン。マーシーほど範囲広くは見れないですが十分。メイメイちゃんたちは王様と合流しているはず」
王様のいる建物に複数の反応。
「お、居た居たいました。メイメイちゃーーーん!!」
他には目もくれず一直線に王様のいる建物へと向かって行くマサル。
国王様のいる建物。
マサルが到着する数分前。
「南門が破られたようです!!」
「くそっ!全員持ち場につけ!ここは絶対に死守するんだ!国王様にもすぐに状況をお伝えしろ!」
バタン!!と開く扉。
「メイメイ王女様!!」
「メイメイ様!」
扉からフロアに入ってきたメイメイ王女と3人の兵士。
先日タカシマサルが王子たちと一戦交えたロビーには10人ほどの兵士が槍や剣を携えて整列していた。
「お父様は無事ですね?ここは絶対に死守しなさい!」
「ははっ!命に代えましても!」
ビシッと敬礼する兵士たち。
メイメイ王女はそのままスタスタと3人の兵士を引き連れて階段へと向かっていく。
さらにその時。
バタン!!
と、ロビーの扉が再度開いた。
そこに入ってきたのは
メイメイ王女だった。
「メ・・・・・・メイメイ王女・・・・・様?」
「な・・・・・・どういうことだ・・・・・」
警護の兵士が扉から入ってきたメイメイ王女を見、その視線を階段に向かうメイメイ王女へと動かす。
「メイメイ王女が・・・・・・2人・・・・・・・?」
「ど・・・・どういうことだ・・・・・?」
「お嬢――、お嬢がもう一人いるよー」
「ええそうね。エンジの言っていた通りね。その私の偽物を通してはダメよ!」
メイメイはロビーの警護をする兵士たちに声を上げる。
「え!?私がもう一人!?その者は偽物よ!早く捕えなさい!!」
兵士を3人引き連れたメイメイも叫ぶ。
ロビーに集まる警備兵は咄嗟のことに驚きはしたが、いつもメイメイと一緒にいるミノが居ることからほぼ全員が階段に近いメイメイへと視線を向けた。
さらに扉から入って来たのはリン王女だ。おそらく兵士たちには見えていないが肩にはエルムが掛けている。
「そっちのお姉さまが偽物です!!」
「ファイアーボール!!」
咄嗟に魔法を唱えたのは偽メイメイの近くに居た兵士の1人。3メートル級の火の玉がメイメイとミノに向かって放たれるが。
「ウォーターボール」
ミノの前に咄嗟に出たメイメイは放たれた火の玉よりもさらに大きい水の玉をソレにぶつけて相殺する。
魔法の接触部分から水蒸気がまき散らされ視界が悪くなる中、魔法の爆発の中から人影が一瞬見えたと感じたミノ。
「くっ!」
「お嬢!!」
ダーク
突然その場にいる全員の視界が真っ暗闇に覆われた。一切の光は無い。一切の物音もしない。目の前にメイメイの居たミノはすぐに手探りでメイメイを探すがなにもない空間を仰ぐだけだ。
その場に居たもの全員がそれぞれに声を上げ叫ぶ。
しかしまわりの声は聞こえず全員が全員孤立した恐怖に襲われる。
おそらく10秒もたたないうちにその暗闇は払われて全員の視界が元通りに戻った。
「お嬢!!」
「メイメイ姉さん!!」
ロビーの中央で数メートル離れて対峙している2人のメイメイに皆の視線が向かう。
それぞれが今は全く同じ服装をしており水魔法のせいで所々髪や服が濡れている。
もちろん声も全く同じ。
「なるほどね。服装も同じにできるみたいね」
「ここまで同じなんてまるで鏡ね」
「お・・・・お嬢・・・・・・・・・・」
「ミノ、そっちが偽物よ。気をつけなさい」
「ミノ、私が分からないなら離れていなさい」
パリン!!と窓の割れる音と同時に階段の近くに居た偽メイメイと共に居た兵士が庭に逃走した。
「くっ!お前たち4人は今出て行ったものを追え!!残りはここの死守だ!」
「はっ!!」
警備隊長がすぐに指示を出した。
「我々はメイメイ王女を監視だ。どちらも階段には近づかせるな」
「メ・・・・・メイメイ姉さん・・・・・・・」
「リン近づいてはダメよ。離れなさい」
「ここまでそっくりに変身されるなんてね。いっそのこと2人とも拘束していいんじゃないかしら?」
ロビーにいる全員硬直状態。
誰も動けるものはいなかった。
誰も見分けることができなかった。
(エルムちゃん、どっちがメイメイ姉さんか分からない?)
小声でそっとエルムに声をかけたリン王女。
(マーシーの持ってる変化の指輪とは違う。幻を見せるものじゃなくそのものに成り代わる実際に姿形の変わるマジックアイテムみたい。すぐには判断はつかないわ)
ロビーの警備兵たちは手を出さない。
結果的に誰も上へと行かせなければいいだけなのだからどちらが本物のメイメイだろうと2人ともここで釘付けにすればいい。
ただただ時間だけが過ぎる中、空気を読まないヤツが乱入してくる。
「メイメイちゃーーーーーーん!!!!」
バタン!!
と、扉を勢いよく開けて入ってきたのはマサルだった。
「マサルさん」
「やあリンちゃん。メイメイちゃんは?」
「マサルーー。お嬢が2人にーー」
「メイメイちゃんが2人?何言っているんですか?このバカ牛」
マサルはロビー中央に対峙する2人のメイメイちゃんを目撃する。
そして、二度見した。
目をゴシゴシ。
さらに三度見。
「なんて贅沢な。しかも2人とも水に濡れて服が少し透けて・・・・」
リン王女とエルムの視線に気づいて口を閉ざしたマサル。
「どっちが本物のメイメイちゃんか分からず膠着状態ということですね?」
マサルはゆっくりと前に進みミノの横を通り過ぎる。そして視線を2人のメイメイに向けたまま少し離れて真横から2人を凝視する。
「マサル、あなたどっちが偽物か分かるの?」
「マサル大丈夫よ。リンを守っていて」
2人のメイメイをじっと見つめていたマサル。
「よいしょーーーーー!!」
ドオン!!
と、1人のメイメイの腹部に強烈なミドルキックを入れたマサル。
蹴られた方のメイメイはそのまま勢いよく吹き飛ばされて床にバウンドし壁に激突すると。そのまま動かなくなった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一同固まる。
「ふっざけんじゃねーぞコノヤロー!!俺に女の子の体を蹴らせんじゃねーよ!!例え偽物だったとしてもメイメイちゃんの姿に似てるヤツに蹴りなんていれたくねーんだよ!!」
「マ・・・・・マサルー。そっちが偽物のお嬢なのー?」
ミノがゆっくりと近づいてきた。
「あんた戸惑い無くいったわね。違いあったの?」
フラフラと飛んできたエルム。
「メイメイちゃんのバストは103cmだ!!バスト98cmで偽物語ろうなんて甘すぎる!!せめて100cmオーバーを用意するべきです!」
兵士がすぐに吹き飛ばされた方のメイメイに近寄って容態を確認していた。
「に・・・・偽物だ・・・・・」
そこには髭の男性が泡を吹いて倒れていた。
「偽物に気づいたのは褒めてあげたいけど、視線がちょっと怖いんだけど」
メイメイは両手で胸を隠すポーズをした。
「え!?そこはよくメイメイちゃんのことを見てるって褒めてくれてもいいんじゃないですか?」
「マサルー、視線がいやらしー」
「おい牛、俺は今役に立った自負があるぞ」
リンは遠くから冷たい視線をマサルに送っていた。
「あの、これ以上俺をいじめないでくれますか?俺悪いことしましたか?」
「いいえ、ありがとうマサル。お手柄よ。さぁお父様の所に行きましょう」
すると扉が開き先ほど出て行った警備兵が戻ってきた。
「隊長すみません。逃げ出した2人の兵士を捕まえたんですが、自分で自分の喉を切りつけて命を絶ちました」
「待て・・・・・・・2人・・・・・・・だと?」
「はい。窓から逃げたのは2人でした」
「ここに来た時メイメイ様の偽物と共に居たのは3人だ!!すぐに王のもとに!!」
警備隊長が傍に居た兵士2人を連れてすぐに階段を上がった。
「私たちも行きましょう」
メイメイはマサルとリンを引き連れて警備隊長について階段を上がる。
いつもお気に入り評価ありがとうございます!
お約束だと思うんですよ。
偽物と本物を当てる展開。
書かずにはいられなかった。




