石から人が生えている?
塔の頂上に到着し、そこにあった木製の扉にゆっくりとタカシが手をかける。
中は淡い光が発せられていた。
見た感じこの塔のぼんやりと光っている色と同じような薄青い光。
部屋の奥には台座がある。
おそらく石製だろうか。
胸元あたりまである巨大な石の台座にそれは居た。
「マーシー、マーシー」
「なんだ?見れば分かる」
「ああ。豊満なバストや」
台座から人が生えていた。
いや、腰辺りから下はその台座に埋まっておりこちらから見えるのは腰から上の上半身のみ。
服は着ておらず胸丸出しの女性だ。
綺麗な真っ白な肌。閉じた目
そして尖った耳。
エルフか。
エルフだ。
エルフが?
ガシッとタカシは僕を羽交い絞めにした。
「マーシー落ち着け!見た感じ拉致監禁っぽいけどそうじゃないかもしれん!おっぱい丸出しやけど何も虐待とかされてないかもしれん!せや、よく見てみい、綺麗な肌やんけ!なにか虐待とかされてる風じゃないやん!なんか理由あんねんて!暴れたらあかんて!なにもかも破壊したらあかんて!!」
「いやいや、俺を一体なんだと思ってるの?」
「この国の加護のためエルフを監禁。無理やり磔。エルフの生命力を強制的に引っ張り出して塔に注入。そんで貴族共が力を得てる。マーシーブチ切れ。塔破壊。王様撲殺。ついでに貴族共抹殺。この国が地図から消える」
「想像力豊かだな。まぁやろうと思えばできなくはないが」
「できるからこそ止めてんねんで」
なぜこのエルフがここに居るのか理由も分かっていないのにそんなことはしないが。
問題は・・・・・・・・・似てるんだよ。
このエルフが・・・・・・・・・レイファンに。
「う・・・うぅーーん」
!?
ゆっくりとそのエルフの目が開いた。
ガッチリとエルフと視線が合う。
「いやーん、エッチ」
そう言ってエルフは両腕で胸元を隠した。
「マーシーのエッチ」
「お前もだ。お前もな」
僕はタカシにがっしりホールドされたままゆっくりとその石の台座へと進んだ。
「ここに来客なんて珍しいわね」
割と普通の反応だ。無理やり閉じ込められているわけでもないのか?
「少々お話しよろしいでしょうか?」
「ええ、いいけど。どうしてあなたはそこの彼に拘束されているのかしら?」
「タカシ大丈夫だ。最悪の状況じゃなさそうだ」
「ほんまか?ほんまに離して大丈夫なんやな?」
タカシはゆっくりと拘束を解いて僕の横に並んだ。
アイテムボックスから綺麗にたたんだ布の服を取り出す。
「よければ着てください。目のやり場に困りますので」
「ありがとう。侵入者にしては紳士的ね」
エルフは布の服を頭から被って袖を通した。
これで裸ではなくなった。いや、下がどうなっているか分からないが。
「エルフのねーちゃん、なんで下半身が石に埋まってんの?不便じゃないん?」
すごいぞタカシ。ド直球の質問だ。
「この台座はこの塔の装置よ。分かってて来たんじゃないの?」
「つまりこの台座があなたから魔力か何かを吸い出してこの塔に力を流してるってことですか?」
「ええそうよ」
「あれ?この人マーシーが連れてた女の子に似てへん?」
おい、思ったこと口にするのは考え物だぞ。
まぁその核心にも触れるつもりだったが。
「あなたはエルフですよね?レイファンというハーフエルフをご存じですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・知らないわ」
「そうですか」
多分親子だろうな。
「俺たちはここからあなたを助け出すことができます。一緒に出ませんか?」
「助ける必要はないわ。私は私の意思でここにいるのだから。もしかして助けるつもりで来たのかしら?」
まぁ思っていたとおりか。
捕まってる感じじゃないもんな。
けれど、僕たちの選択はもう決まっている。この塔を破壊することはすでに決定事項だ。目の前のエルフがどう反応しようと。
「しかし困ったことにこの塔は今から崩壊します。ですのでその前にあなたをここから救い出さないとあなたもこの塔と一緒に瓦礫の下に埋まってしまいますよ」
「!?嘘っ!この塔がなくなったら国がめちゃくちゃになるわ!あなたたち何か知っているの!?」
「知っているも何も・・・・・・・・・。この塔を今から俺たちが破壊するんですが」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言で目を見開いて僕を凝視するエルフ。
まぁそういう反応になるか。
「どういうつもり?この国を転覆させるつもり?そんなことはさせないわよ」
魔力が流れる。
下半身を固定されていても魔法も自由に使えるのか。
マジックガード
僕とタカシを覆うように前方にマジックガードを展開させるとキィンキィンと風の刃が弾かれた。
エルフさんの無詠唱で放ったウィンドカッターだろうか。
「あなたが自分の意思で台座にはまって力を注ぎ込み、この塔の維持をしているのは分かりました。この国のことを想ってこの国のために務めを果たしている責任感のある方なのは重々承知です。けれど、俺たちの出したこの国のための結論があなたと少々食い違っているだけです。あなたと同じようにこの国のためを思っていますよ」
「何をバカげたことを・・・・・」
「バカげたことなのは・・・・・・・分かってますよ。よそ者の俺たちがこの国の本質に口出しなんて一体どこの誰様なんだって。俺だってできればこんな国は素通りしたかった。けれど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だけど、タカシがそう言ってるんでな。俺はコイツの思うことを手助けしてやるんだよ。後のことは全部ひっくるめて俺がしりぬぐいしてやる」
「エルフのねーちゃん、俺は難しいことは分からん。この塔がなくなったらいままでの上下がひっくり返って大変なことになるかもしれへんってのは分かる。それでもな、ただ単に生まれた血筋だけでいらん力を持ってそれ以外のヤツにヘラヘラしながら暴力ふるう輩がいるってだけで俺は我慢ならん。なんの努力もしてへんヤツがいろんなもん背負って生きてるヤツをヘラヘラ笑って傷をつけとることが許されへん。そう思ったんや」
「バカ言わないで!!何百年と続いたこの国の歴史を個人の意見でどうこうしていい問題じゃないわ!力を失った王族なんて今までの反発であっと言う間に滅んでしまうわよ!」
「大丈夫や。中途半端な貴族の連中はどうしようもないかもしれんけど王子たちは結構しっかりしとる。人の上に立つ器を持っとる」
「そんなことをされたら・・・・・・・あの人に迷惑がかかる・・・・・・・。折角私が・・・・・・・・」
「エルフのおねーさん、あの人っていうのは王様のことですよね?」
「そうよ・・・・秦国王様」
国王様にたいしてあの人呼ばわりね。
「あなたがここに来たのはおそらく7年くらい前。そうなるとその前にもここにはこの塔に魔力を供給する人物がいたんでしょうか?」
「あなた何を知っているの?」
あてずっぽうなんだよな。今までの情報から考えて予測できることしか話せないよ。
「この塔を維持するにはエルフの魔力なのか、魔力であれば誰でもいいのかは分かりませんが供給する触媒が必要だ。7年前にその世代交代があった。後任に選ばれたのはあなた。いや、王様のためなら自分で志願したのかもしれないが。愛する人のために」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「7年間レイファンに一切の接触も連絡もないとなるならこのままどちらかが死ぬまで会えないこともありうる。レイファンに何も言わずにここに来たということは一生会えないと分かっていたんですね?あなたは愛する王様のためには務めを果たしていたかもしれませんが愛する娘のためには母として何もできていないんじゃないですか?レイファンは7年間痕跡もない母の行方をずっと探し続けているんですよ」
「あなたに何が分かるって言うの?」
「あなたがここに来なければこの国が揺れていた。塔の力が薄まるのか無くなるのか。そう考えればここに来たのは王のため国のため、さらには娘のためにもなりますね」
「私には・・・・・・・こうするしかなかった」
「はっきり言いますが俺のここまでの話しは全て憶測ですよ。どこまで合っているのか分かっていません。まぁ、過去の話しなんてこの際どうでもよくなったかな。今から俺たちの、俺のやりたいことを言いますね」
僕はマジックガードを解いてゆっくりとエルフに近寄っていく。
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