破壊・・・・・しますか。
タカシの問題発言にしばし固まる僕とマサル。
「タカシ、タカシ、もっかい言ってもらっていいか?」
「塔・・・・・・・・ぶっ壊そっか」
聞き間違いじゃなかったか・・・・・・・・。
「中々物騒なこと言いますね?あのバカでかい天まで届く、この国のシンボルである塔をぶっ壊す。この国の人間が聞いたら卒倒しそうですね」
「そうだな、国会議事堂ぶっ壊すのと同じようなものかもな」
タカシには何か思うことがあるのかな?
「うーーん、ちょっと考えててんけど、この国の胸糞悪い部分は貴族が偉くてそれ以外の人達が見下されてるところやんか」
「まぁ、そうだな」
「その原因として貴族王族に生まれたヤツは努力もなしに優れた力を手にして生まれてくることや」
「そうですね、あの10歳くらいのロン王子でさえそこいらの冒険者より強いわけですからね」
「ほんだらそんなシステム自体が不要なんちゃうのん?ただの血筋だけで努力もしてないヤツが暴力や暴言を好き勝手に吐いて誰も手出しでけへんなんて不公平にもほどがあるわ」
冒険者ギルドで会ったトカゲマンとフック船長のことだろうな。
「ということはタカシの言い分としては、その不公平を無しにするためにその根源であるあの塔を破壊してしまおうということですか?」
「なくなっても大丈夫やろ?」
「おいおい、国の根源を元から断とうとしてるぞ。大問題だろ」
「うーーん、結構大丈夫やと思うけど。この王子2人は十分強いと思うし、ロンもあんな力なくても十分立派な王子やと思うけど」
「この国の象徴である月の加護を抹消してしまおうということだが、この国の嫌なところである貴族王族が絶対主義を消そうとするならあの塔をぶっ壊すのは正解だろうな」
「いやいや大問題でしょう?マーシーもそのことは分かってるでしょう?」
「この国が崩壊するおそれがあるよな」
「いままで成り立っていた力関係がなくなったらハチャメチャになって反乱とかも起こるでしょうしね」
「まぁそうなるよな。今まで我慢していた連中、特に亜人獣人の皆様方は色々溜まってそうだしな。タカシはそこんところどう思う?」
「それでも・・・・・・・それを全部無しにしたってロンならこの国の為に動けるで」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
月の塔を破壊しますか?
YES ・ NO
おい、久々じゃねーか。
「2人ともまだ選ぶなよ」
「久しぶりに出てきたな」
「コレを見るとやっぱりゲームだなって思えますね」
「とりあえずマサルはメイメイちゃんたちの応援に行ってくれ。催眠は気絶させればいいからうまくやれよ」
「もちろん俺は助けに行きますが」
「こっちはこっちでなんとかするよ。まぁ最終的な決定権はウチのリーダーにあるんだがな」
「タカシ・・・・・・・・。思うようにすればいいですよ。その後の後処理はマーシーがやってくれますから。タカシが無茶をして、マーシーが後始末。そして俺がそれを傍観する。いつも通り」
「そして傍観しているマサルを俺がこき使う。いつも通りだな」
「じゃあ俺は行きますね」
すたこらサッサとマサルは城の方へと走っていった。
「さて、タカシ。一応最終確認だ。タカシがやりたい方を選べばいい。1人が選べばそれが決定になるしな。ああ、一応言っておくが理由なんて考えるなよ。後で言い訳みたいに聞こえるだけだからな。って喋ってる最中に押すのはやめてくんない?」
YES
さてと、大仕事だなこりゃ。
「ロンもこのままじゃあかんって思ってる。俺もそう思った。だからヨソもんの俺らが全部ぶっ壊したる。そんでこの国は1からやり直したらええ」
「この国の礎を根本からぶっ潰すことになるんだぞ。半端な思いと半端な覚悟でやっていいことじゃないからな」
「ああ、分かってる。俺も後始末は全力で手伝う。だから、何やったらええんかマーシーは考えとって」
「そこはまぁ、任せろ」
さてと、この国始まって以来の大事件を起こすとしましょうか。
ゲームの世界・・・・・。ゲームの中だからできること、か。
こんなリアルなゲームがあってたまるか。
リー即で塔を破壊するわけにはいかない。
城で起きてる反乱に対抗してるのは貴族たちだ。急に力がなくなったらすぐに制圧されてしまう。マサルや王子王女があるていど鎮圧してからが望ましい。タイミングは分からんがな。
あとはこの塔に誰もいないのか確認しておかなきゃな。中に人がいたら大変だ。
「まずは塔に入って誰かいないか確認しよう」
「せやな。居ったら大変や」
僕はノビている王子2人に直接触れてスリープをかけた。
「これで当分は起きないだろう。シリュウ王子の方は催眠も解けるはずだしな」
僕達は目の前にある塔の入り口らしき大きな扉の前に向かった。
ギイイイイイ・・・・・
あら、開いてる。
「おじゃましまーす」
「だれかいてますかーー?」
ライト
入り口から入ると石造りの広いフロアだ。明かりが無いのでライトで中を照らす。
ここには何も置いてなく、中央に螺旋状の石段がずーーーーっと上まで続いている。
「分かりやすくていいな。とりあえず上まで行ってみるか」
「目回りそうやな」
頂上を見上げるが暗くてなにがあるのかは見えない。
まぁ、端から見てもちゃんとてっぺんは見えていたから無限に続くわけではない。
飛んでいくことも考えたが折角階段があるんだから逆らわずに階段を使おう。
「さっさと行こうか」
僕はライトを数個増やして先行させ、螺旋状の階段を駆け上がっていく。
「ほんでどうやってぶっ壊すん?」
「・・・・・・・・・・・?俺にできないとでも?」
「ああ、そっか。マーシーやったら簡単か」
「そのためにも誰か居たら大変だからな」
「せやな。どの魔法でも巻き込まれたら死んでまうわな」
タッタッタッタッ、と階段を駆け上がっていく。
建物は縦に長いただの筒のようで中央に石柱。螺旋階段。他には今のところなにもない。
「あ、そうだタカシ。さっきのホウリュウ王子に使った必殺技ってのはなんだったんだ?空中を移動したように見えたが」
僕は駆けながらさっきのタカシの使った技を聞いてみた。
「ああ、なんか勝手に覚えててん」
「格闘家のレベルが上がって覚えたんだろうな」
「天駆と言うらしいわ。文字通り空中に足場を作ってさらに勢いも乗せれるんや。これで空中戦もお茶の子さいさいや」
「お茶の子さいさいって言葉を使うヤツを初めて見たよ」
「俺も初めて言うたわ」
「俺がマジックガードでやってるのと似たようなものかな?」
「なんなん?自分もそれくらいできるでみたいな言い方」
「そんなつもりはないが。便利そうだな、事実上空を飛ぶことも可能ってことだろ?」
「まぁ確かに。連続で出すこともできるからな。空を飛ぶって言うよりはやっぱり空を駆けてる感じやけど」
「ちょっとかっこいいよなー。俺も覚えたいなー」
「え?やっぱりそう思う?空を駆けるってフレーズええよな?残念やなー、格闘家の特権やしなー」
よし。うまい具合にタカシをのせた。
ぶっちゃけ風魔法とマジックガードで代用できるからたいして魅力は感じてないです。
お、そろそろ頂上っぽいな。
「天井が見えて来たな」
「ほんまや、誰か居んのかな?」
階段を上がりきると目の前に大きな木製の扉が現れた。
ここまでなにもなく人も居なかったからここにも誰もいなければ後は破壊だけだ。
塔の中も相変わらず索敵は反応していないため中の状況は分からない。
「よし、じゃあ開けていいぞ」
「え?俺が開けんの?」
「何かあった場合の反応はタカシの方が速いだろ?槍とか飛んで来て刺さったらヒールしてやるよ」
「飛んで来てもマッハで避けるけどな!」
タカシはゆっくりと扉に手をかけた。
まぁ槍が飛んで来ても僕ならガードで無傷なんだけどな。
キーーーッと音をたててゆっくりと扉が開く。
いつもお気に入り評価ありがとうございます!
明日も更新。基本2話連続更新です。
そして更新遅くなって申し訳ないです。




