今日のMVPはマサルだな
岩場からゆっくりとホウリュウ王子が右肩に小瓶に入った液体をぶっかけながら降りて来た。
「兄貴は引っ込んでろ!俺がやる!!」
「駄目だ。悪の目は完全に断つ」
「マサル、ホウリュウ王子は右肩負傷してるみたいだ」
「そうですね。タカシがやったんですかね?」
「俺、ホウリュウ王子でいい?」
「・・・・・・・・・・あえて弱ってる方選択するとか・・・・・。そういう正直なところは共感持てます。接近戦苦手なことも踏まえて許しましょう」
「サンキュ。終わったら旨い肉料理屋探しに行こーぜ」
「そうしましょう」
僕はホウリュウ王子に視線を向けて気休めだがレイピアを取り出した。
このレイピアなんて切り合ったら一発で折れるんだろうな。あの大剣ものすごく固そうだし高そうだし。
「ホウリュウ王子。お相手します」
僕はマサルから離れるようにゆっくりとホウリュウ王子から視線をはずさず歩を進める。
「王族に剣を向けるとは無礼な」
僕が向けるのは剣じゃなくて。
こっちだけどな!!
「アースニードル!!」
僕は地面をバンッと踏みつけると地面から3本のでかい棘がホウリュウ王子に襲い掛かった。
「ぬん!!」
大剣一閃。
一振りでいとも簡単にただの土へと還された。
あら、お強い。
ファイア
バッと僕は右に走りながら10ほどの野球ボールくらいの火の玉を作り出しホウリュウ王子に飛ばしていく。
ホウリュウ王子は手に持った大剣を前にし、火の玉をは弾きながらこちらに駆けてきた。
こちらも結構お早い。
こちらまであと数歩というところでホウリュウ王子は跳びあがり上段から大きくその大剣を振り下ろしてくる。
「ぬううん!!!」
僕は一瞬静止。
大丈夫。見えてる。
スッとその振り下ろされた大剣の射線から身をかわして手に持ったレイピアで振り下ろされた右腕に切りつけた。
スパッ
おや?
切れないぞ?
僕のレイピアで切りつけた腕には薄っすらと切り傷ができたが、紙で手を切ったくらいの小さな傷しかできなかった。
「貴様――!!私に傷を!!」
「いやいや仕方ないじゃん。そっちのその剣喰らったら傷どころじゃすまないよ?」
「王子に傷をつけるなど言語道断!!そこになおれ!!」
「無茶いうなよ」
僕は軽く火の玉をぶつけつつ距離をとった。
マサルは金属バットを手にシリュウ王子と切り合っている。ギイン、ガアン、と金属音を鳴らしながら右に左にステップを踏んでいた。
「やっぱり昨日より速くて重いですね」
「この!ちょこまかと!!」
「ああ!俺の金属バットが少しづつ欠けてる!!」
「そんなただの鉄の塊で俺の槍がいつまでも防げると思うなよ!!」
(倒さなくていいっていうのは楽でいいですね。この金属バットがもつかぎりはこのまま時間稼ぎができそうです。速いのは速いが目で充分追えるくらいですし。それよりもやっぱりマーシーがやりにくそうにしていますね。まぁ多分切られたとしてもマーシーのガードを貫通するほどでもないので大丈夫でしょうが)
「何よそ見をしている!!」
ガキイン!!
「はいはい、ちゃんと見てますよ」
(黒ローブは動かないですね。あれが動くと厄介そうなんですが)
その時遠くで微かに聞こえる衝撃音と歓声。
それは僕達が入ってきた方、つまりお城の方からだ。
「なんでしょうか?お城の方?」
「おいおい、まだ他に何かあるのか・・・・って、うおっと」
僕はホウリュウ王子の剣をかいくぐった。
「始まったか」
黒ローブがそう口にした。
「関係者は全員ここにいるのに他に何かあるんでしょうか?」
「いや、マサル。宰相のリャンがいない」
「あ、確かに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。貴様!!一体何を企んでいる!!さらに何かあるというのか!?」
あれ?マサルが非常に演技臭いセリフを黒ローブに向かって・・・・・・・。
「ふはははははははは!もう遅い!なんの策もなしに私がこんなところで貴様らの相手をしていると思ったか!!貴様らがノコノコとここにやって来て戦力のいないウチにバカな亜人共が城に突入し始めたのだ!!」
あ・・・・・・・・はいはい・・・・・・・・。自分はこんなことをしてやったぞ!って誰かに言いたくなるよねー。
マサルがシリュウ王子の剣を弾きながら念話で話しかけてきた。
『と、いうことらしいですよマーシー』
『やるなマサル。今日のMVPはマサルだな』
『どうしますか?』
『亜人がってのが気になるワードだな』
「亜人!?亜人だって??一体どういうことだ!!この国の亜人たちが一体全体どうやって関わって来るんだ!?ちくしょう!!俺たちの裏をかきやがって!!」
マサルの大根っぷりが少し笑える。
「ふはははははは!!街の亜人共を誑かして城に攻め込ませたのだよ!貴様らとはココが違うんだよココがな!!」
トントンと頭を指さす黒ローブ。
あなたの頭は大丈夫ですか?
「街の亜人共はメイメイの指示なら絶対だからな!!偽のメイメイを用意して武器を持たせ城に攻め込ませたのだ!!貴様らには想像もできまい!!」
『全部喋ってくれてますよ』
『ああ。アホで良かったよ』
「シリュウ王子!ホウリュウ王子!先にそこのメイメイを始末しろ!!」
「ああん!?どういうことだ!偽のメイメイってそこのメイメイでいいのか!」
シリュウ王子はそれその通り疑問を持ったようだ。
「ちっ。そうですシリュウ王子!そこのメイメイは魔族です。そいつが裏で全てを操っていた元凶です!すぐに始末してください!!」
「分かったよ!!」
まぁそうなるな。今偽のメイメイ王女が城を攻めてるなら本物が出てきたら色々問題あるもんな。
「マサル!」
「俺がメイメイちゃんに指一本でも触れさすと?」
ドン!!
とシリュウ王子はわき腹に蹴りを受けて横に吹き飛ばされた。
そしてメイメイ王女と牛くんの前に陣取った。
ホウリュウ王子は大剣を抱えて僕とメイメイ王女を交互に見ている。
「まぁ・・・・・・・事情は分かった。そろそろ出番だぞ。バカ1号」
キュア
カッと見開いた目。
バンッ!と地面に両手を叩きつけるとその勢いで体が浮き上がり一回転して地面に着地したタカシ。
「あれ?俺寝とった?」
タカシの状態異常『洗脳』はすでに消えている。
さてと、これで動きやすくなる。
どれから対処していこうかな?
いつもお気に入り評価ありがとうございます!




