ねぇねぇ、洗脳されてるよ
月の塔へと続く森を抜けてその場に着いた僕達の目に映ったのは。
タカシを一本背負いで投げ飛ばすマサルの姿だった。
「おい、どういう状況だコレは?」
「お、本物のマーシーじゃないですか」
「本物も偽物もねーだろ。なんだ?タカシがマサルの飯でも横取りしたのか?」
「横取りされたらもっとひどい目に遭わせますけどなにか?」
「それなら些細なことで揉めてるってことだな?何があった?」
「マーシー。マサルがなんかおかしいねん。俺の邪魔ばっかしよんねん」
「マーシー。おかしいのはタカシです。このおバカはどうやらメイメイちゃんを殺すらしいですよ」
「せやねん、ちょっとメイメイちゃん殺すだけやん。それやのにマサルは邪魔ばっかしよんねん。なんとか言ったってーや」
・・・・・・・・・・は?
なにそれ?マジで言ってんの?
怖いんだけど。
タカシのステータスをチェック。
あっらー。洗脳されちゃってますね。
「よし。おかしいのがどっちかはよーく分かった。マサル、タカシは誰にメイメイちゃんを殺せって言われてた?」
「黒いローブの男ですね。やっぱり操られてる系ですか?」
「ああ。洗脳っていう状態異常だ」
「メイメイちゃんを殺すって目的以外は至って普通なんですがね」
「おいタカシ」
「え?え?洗脳ってオレが?んなアホな」
「あの黒いローブに何かされたか思い出せ」
「いや、なんもされてないで。ロンに手をかざしてなにかしようとしてたけど。そういえばその時2人の間に割って入ったわ。いやいや、それでも洗脳って・・・・・・・されたら絶対分かるって」
エルムの言ってた通り、アニーちゃんと同じ感じか。1つの目的だけ刷り込んだ感じ。本気のタカシと敵対するのは問題だが自身も敵味方の判別がついたままなのはありがたいな。
シンプルに敵側についたら魔王並みに厄介だからな。
「タカシ、ちょっとこっちに来い」
「え?メイメイちゃん殺してからでいい?」
スリープ
ふにゃあ
「眠らせたんですか?」
「ああ。意識を失えば数分で正気に戻る」
「分かりました。じゃあマーシーがおかしくなったら殴って意識をなくさせればいいわけですね」
「・・・・・・・・・・・・まぁそうなんだが。勘弁してほしいな。リアルに殴って意識をなくすなんて体験したくもない」
「じゃあ首トンにしてみましょうか」
「それって絶対首が痛いだけのヤツだよね?」
「じゃあやっぱり殴るしかないですね」
「わかったよ、好きにしろ。皆さん、リン王女をお願いします」
僕はついてきた兵士に声をかけてマサルと一緒に前に出た。
リンは付いてきた兵士と一緒に牛くんの陰に隠れていたメイメイちゃんの方へと走って行った。
岩場の上にホウリュウ王子、シリュウ王子、黒いローブの男。
シリュウ王子のステータスにも洗脳が見える。
黒いローブの男の種族が魔族で、スキル欄に洗脳か。魔法じゃなくてそういう技とかスキルってことか。
『マサル、シリュウ王子も洗脳状態だ。ローブのヤツのスキルに洗脳があるからどうやらアイツが黒幕だな。洗脳喰らうなよ』
『タカシじゃあるまいし。大丈夫ですよ』
『シリュウ王子はすぐ治せると思うがホウリュウ王子のかかっている洗脳は多分簡単には治らないはずだ。ホウリュウ王子は完全に無力化する方向でいこう』
『マーシー。多分ですが、シリュウ王子の方は洗脳を解除しても襲って来る可能性高いですよ。昨日の様子でしたら』
『そうなのか。まぁ2人とも殺さない程度に無力化するか』
『もしくは大元を叩くかですね』
『それで片付けば楽でいいんだけどな』
僕とマサルはゆっくりと岩場へと歩いて近づいていく。王子2人もローブの男もいきなり襲ってはこないな。
「ホウリュウ王子様、シリュウ王子様。わたくしリン王女様の護衛をつとめておりますマーシーと申します。皆お二方の心配をされていますよ。とりあえず城に戻りましょう」
岩場の麓から3人を見上げながら話す。
洗脳の発動条件がいまいちまだ分かっていないからあまり近づきたくないな。
手をかざしていたというからには即発動はないと信じたいところだな。ダメでも俺のガードがちゃんと仕事してくれればいいが。
ガードが有効だったとしてもマサルがここで洗脳されるのがマズイな。それでシンプルに自殺させるか僕を殺しに来るパターンか。
ホウリュウ王子もシリュウ王子も昨日は800くらいだったスピードと体力がカンストしているな。月の塔が目の前ならここまで上昇するのか。正確な数値が知りたいぞ。もっと高性能の識別プリーズ。
「魔族の手下共め。この国を一体どうしたいのだ?俺が居る限り自由にはさせんぞ!!」
見た目とセリフはかっこいいんですけどねホウリュウ王子。あなたの横のヤツが魔族ですよ。
「ロンもメイメイも魔族に下るとはな。しかし!!この国は俺さえいればいい!!悪の芽を全て俺が排除してやる!!」
シリュウ王子、すでに結構ボロボロだな?誰にやられたんだ?タカシかな?
まぁそんなことよりも
スリープ
パキィィン!
ホウリュウ王子、シリュウ王子、黒いローブの男の前で何かが弾けたような光が走った。
げっ、魔法弾く装備かよ。
「マーシー、今何かしましたか?」
「ああ、まとめて眠らせようとしたが防がれた」
「そうですか。ならやっぱり殴って失神コースですね」
「そうなるな」
「魔法だと・・・・?俺様に向かって攻撃してくるとはいい度胸だな!!」
シリュウ王子が手に持った槍を大きく振りかぶった。
「王族に魔法を放つなんてなんて下賤な輩だ。ホウリュウ王子、シリュウ王子。この場に集まった者たちは全員敵のようです。殺すしかありません」
黒いローブが声をかけるとシリュウ王子が岩場から一直線にこちらに向かって来た。
まぁ相手をしながら考えるか。
僕は後ろに跳び退きシリュウ王子の槍は地面に叩きつけられるとボコンと地面に窪みができて槍の刃に合わせて地面が数メートル割れた。
マサルも難なく躱している。
魔法を弾くって言ってもちゃんと攻撃魔法は当たんのかね?
僕はサッカーボールくらいの石の塊を作り出した。
「へい、パス」
その石の塊をシリュウ王子へと飛ばす。
やっぱり距離はとっておきたいな。
タンタン、とステップを踏んで僕はシリュウ王子から離れていく。
シリュウ王子は槍を一振り、二振りで飛んできた石の塊を砕いてこちらへ肉薄してくる。
おいおい、早いじゃねーか。
確実に僕の首を狙った横なぎを僕はしゃがんで躱す。
見えてるだけまだ余裕はあるか。
「はい、ドーーン」
マサルがシリュウ王子を後ろからドロップキックで吹き飛ばした。
吹き飛ばされたシリュウ王子はすぐに態勢を立て直してこちらに向き直す。
「悪いな。やっぱ俺は剣とか槍持ったヤツとは相性悪いみたいだ。特にスリープとかパラライズが効かないとなると」
「でしょうね。マーシーにはあの黒ローブの相手をしてほしいところなのですが、俺1人じゃ王子2人はちょっときついんですよね」
「とりあえずバカが起きるまで王子2人を相手して時間を稼ぐか」
「そうですね。バカを待ちますか」
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