角が生えてたり羽が生えてたり肌が青かったりする?
タカシ視点からスタート
リン王女の護衛のアニーちゃんが急いでる所にたまたま出くわした。
マーシーの言うには月の塔に王子たちがいるかもしれんってことらしい。
その言葉を耳にしたロンは調べに行きましょうと一言。正直言って王子であるロン自身が行く必要なんかないって止めてはみたものの、自分も何かしたいという気持ちと月の塔には王族しか入られへんってことで俺以外の護衛、いつもロンについてるエドガーさんを含めて3人引き連れて月の塔へと続く門を抜けて来てみたわけやが。
大当たりやんけ。
開けた場所に出ると目の前には岩場に顔を伏せて座っているホウリュウ王子と槍を担いでこちらを見ているシリュウ王子。
岩場の後ろには数十メートルも横幅のあるでっかい塔。月の塔が空に向かってそびえている。
そしてもう一人。黒いローブを着た黒髪の30歳くらいの男。
「シリュウ兄さん!!何をなさっているのですか!?皆心配しております!」
「ロン・・・・・・・と・・・・・・・・。昨日の・・・・・・・・」
「毎度、昨日のです。なんなん?こんなところで密会なんか?」
岩場の上に座って俯いているホウリュウ王子の横に黒のローブの男。
シリュウ王子は昨日も持っていたでかい槍をこちらに向けて構えた。
俺は一歩前に出た。
「誘拐されたと思われてる王子2人がここに。そんで見知らぬローブの男1人。ローブの男が誘拐したにはおかしい状況やな。王子2人とも拘束されてるわけでもないし。俺にはさっぱりわからんな」
「シリュウ王子様。そのものは魔族にございます。人間に化けてロン王子に近づいたようです」
ローブの男が岩場の上からシリュウ王子にそう声をかけた。
「は?なんやて?俺が魔族?おもろいこと言うてんな」
「なるほどそうか!貴様が魔族であればあの強さも納得いく!しかし残念だったな!!この場所では昨日のようにはいかんぞ!」
「おいおい王子様。そんなヤツの言うこと信じるんか?俺のどこが魔族やねん」
「シリュウ兄さん!なにを仰ってるんですか!タカシ殿を魔族だなんて!」
「おいロン、あそこのローブの男は誰や?知ってるか?」
「ホウリュウ兄さんの傍に仕えていたエンジというものです」
仕えてる?王子2人よりも目線上で喋ってるのはおかしいやろ。あいつが黒幕ってところか?
「ロン、どうするかお前が決めろ。あのエンジってのは状況から見たらかなり怪しいけど王子2人とも誘拐されたって感じはあんまりせーへん。長男は分からんけど多分次男の方は俺に向かって来そうや。負けやせんけど多少時間はかかる。その間にエンジってのをロン達で捕らえるか、援軍呼びに行くか、長男をどうにかするか」
「ここに兄さん達を連れてきたのはエンジ殿で間違いないと思います。エンジ殿を捕らえます」
そっか、ほんだら俺は次男をなんとかするか。
俺はゆっくりとロンたちから離れるように、シリュウ王子を目で追いながら横へと歩き出した。
「オラ次男坊、お前の相手は俺がしたるわ。昨日完敗したのにええ度胸やな」
「この魔族風情がァ!この場所で俺と対峙したことを後悔させてやるぞ!!」
「いやいや、マジで俺が魔族に見えんの?角生えてたり羽生えてたり肌が青かったりなんもそんな要素ないやん。まぁ、魔族って言われて嫌なわけじゃないけど」
シリュウ王子の槍が光を帯びて輝きだす。
あ、あれはまともに喰らったらあかんやつや。
ダン!!
と地を蹴りこちらに向かって来るシリュウ王子。
「おっと」
横なぎに確実に俺の頭を真っ二つにしようと槍を振るうが俺は咄嗟にしゃがんでその槍を躱した。
切り返しが昨日より速い!!
返した槍を後ろに飛んで躱すが胸元が横に切れてそこから血が滲みだしている。
傷は浅い。
塔がこんだけ近いから昨日よりもスピードが上がってるんか。
けど、それがお前のMAXやったら俺には届かへんぞ。
「エンジ殿!!兄さん達を連れ去ったあなたを拘束します!」
ロンは腰の剣を抜きエンジに向けた。
護衛の兵士たちも揃って剣を抜く。
「何を馬鹿な。2人は自分の足でついてきたのですよ」
「2人の様子がおかしいのは明白だ!」
ロンは猛スピードで岩場を駆けエンジに向かって跳び、その剣を振り下ろした。
「守れ、ホウリュウ王子」
ギイン!!
ロンの振り下ろした剣をホウリュウは自身の大きな大剣で受け止めた。
「ホウリュウ兄さん!なぜ!!」
「ホウリュウ王子、そいつも魔族だ。そいつは偽のロン王子だ。殺してしまえ」
「ロン・・・・・・ロンの偽物・・・・・・・・・・。魔族ごときがロンの姿をするなーーー!!」
大きく振るった大剣でロンは吹き飛ばされて岩場を転がった。
「ロン様!!」
「ロン王子様!」
「ホウリュウ王子様!落ち着いてください!!」
「ロン?あれは偽物だ。分からないのか?」
「そうだホウリュウ王子。あれは偽物のロン王子だ」
「エンジ!!貴様何が目的だ!!兄さんに何をした!!」
「何も。この国の為にホウリュウ王子とシリュウ王子の手助けをしているだけだ。貴様こそロン王子の名を語って何がしたいんだ?」
エンジは下卑た笑みを浮かべる。
ロンは地を蹴り、低い態勢でホウリュウの背後に居るエンジへと詰め寄り剣を振り上げる。
ギイン!!
「兄さん!!なぜそんなヤツを!!」
ホウリュウ王子は大剣でロンの剣を受け止め、ロンの腹部に蹴りをいれる。
再び吹き飛ばされたロンの元へ護衛の兵士が駆け寄った。
「ロン様!!」
「ロン王子様!!」
駆け寄った兵士はホウリュウ王子に剣を向ける。
「ダメだみんな!ホウリュウ兄さんには敵わない。3人はすぐに城まで戻ってメイメイ姉さんや他の人達を呼んで来るんだ。それまで僕とタカシ殿で時間を稼ぎます。大丈夫、月の塔が目の前にあるんだ。僕の全力ならホウリュウ兄さんに勝てなくても時間くらいは稼げる」
「しかし、ロン様!」
「これは命令だ。分かるだろう?全員残っても全滅するだけだ。お前たち3人に全てがかかっているんだ」
「くっ!」
「ロン様・・・」
「かしこまりましたロン様。しかし助けを呼びに行くのは2人です。早く行け、お前たち!迷っている暇は無いぞ!」
「エドガー・・・・・・・・・」
「あの時、馬車で襲われた時。タカシ殿に助けていただいたお陰で私は生きています。あの時、命永らえたのはこの時のためだったんです。行け!お前たち!」
「駄目だ。1人残らず殺せ。どうやらロン王子の周りは魔族に汚染されてしまっているようだ」
エンジがホウリュウ王子に指示をだした。
ホウリュウ王子が剣を構えた瞬間ロンがホウリュウ王子に向かって跳び出した。
ロンの剣をホウリュウはその大きな大剣を自在に操って防ぎきる。何度も何度も切りつけるロンの剣はホウリュウ王子には届かない。
しかしその間に兵士2人は素早く離脱。
エドガーはロンとホウリュウ王子の交戦を横目に見ながらエンジへと剣を向けて警戒している。なんとか2人がこの場から去るまで見届けた。
剣を打ち合っていたロンとホウリュウ王子だがそのパワーに押されてロンが態勢を崩した。
刹那、ホウリュウ王子の大剣が光輝く。
「終わりだ」
ホウリュウ王子の大剣が大きく振りかぶられ叩きつけるようにロンへと振り下ろされる。
ロンは自身の剣を前に出しその剣を防ごうとするが。
ザン!!
剣が何かを切り裂いた音が響く。
ロンの目の前にはエドガーの背中があった。
「ゴフッ、ロン・・・・・・様・・・・・・・・」
ホウリュウ王子の振り下ろした大剣はエドガーの左肩から入り、胸のあたりまで到達し背中から大剣が突き出していた。
「エド・・・・ガー・・・・・・・・・・・・・エドガー!!!!」
エドガーは手に持っていた剣を離しガシッとホウリュウ王子の大剣に抱き着いた。
「くっ、貴様!」
「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
ロンは叫びながらエドガーの横をすり抜けホウリュウ王子の大剣を持った右肩へと剣を突き出した。
ホウリュウ王子は抜けない大剣を咄嗟に手放したが間に合わず、ロンの突きはホウリュウ王子の右肩を貫通。その勢いでホウリュウ王子は後方へ吹き飛ばされた。
「エドガー!エドガーー!!」
大剣を担いだままのエドガーへと駆け寄るロン。
「ガキが。仕方がないコイツもやるか」
エンジはエドガーを支えるロンに手をかざした。
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