ただの雑談ですよ
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メイメイが席を立ちグラスを手にした。
「本日はささやかながらこのような場を設けさせていただきました。ソウソウ様もわざわざありがとうございます」
メイメイがタカシの横の鎧姿のおじさんに声をかけた。
「いやメイメイ王女様。私もこのような場に呼んでいただき光栄です」
「本日は昨日国王様を賊の手から見事に守り抜いた勇敢な冒険者であるマーシー殿を迎えさせていただきました」
メイメイがこちらへ目線をうつすと僕はスッと立ち上がり、ソウソウと呼ばれたおじさんの方へと頭を下げた。
「国王様を守ったのは事実だとしてもここに控える護衛や兵士の皆さま全員で賊を迎え打ったことが大事に至らなかった要因かと思います。もちろん国王様に被害がなかったことが一番です」
「ありがとうございますマーシー殿。それでは長話もなんですから、せっかくの料理をいただきましょう」
皆がグラスを口にして、料理に手をつけだした。
ものすごい勢いで料理を口に運び出したマサルを横目にレイファンへと目を向けると緊張しているようで目をキョロキョロとさせていた。
「どうした?食べないのか?」
「王子様と王女様が目の前に居るのよ。普通は料理なんて喉を通らないものよ」
「あとで王様に会うんだからお酒は控えていいが、料理は少しくらいは食べていいんだぞ」
「うっ・・・・、王子王女様でこれだけ胃が痛いのに王様を目の前にしたら私どうなるのかしら」
「マーシー、マーシー。レイファンちゃんはどのような経緯で懐柔したのですか?やっぱりナンパですか?」
「人聞きの悪いことを言うな。情報屋として雇っただけだ」
「マーシーに限ってそんな訳ないじゃないですか。襲われているところを助けたか自殺を止めたか?逆に殺されかけたかストーカーされたかってところでしょうか?」
普通に勧誘したと考えられないということか。当たらずも遠からず。
「レイファンちゃん。マーシーに何かされてませんか?この男は10代前半に異様に欲情する男ですよ。部屋に連れ込まれたり脅迫されたりしませんでしたか?」
あれ?同じ部屋に泊まったし、脅迫じゃないが結構強引に巻き込んだような気が・・・・・・。
ハッとした目でレイファンが僕を見た。
「やっぱり・・・・・・そうじゃないかと思ってたのよ」
「待て待て、指一本触れてないだろーが」
うーーん、お尻は触っちまったな。不可抗力だが。
「レイファンちゃん、何かされたんですか?訴えましょう!訴えたら絶対勝てます!コイツには前科が山ほどあるんですから!」
「前科なんてあるか!言ってみろ!!」
「領主の娘、ロマネちゃん、ミラちゃん、リン王女」
「うそ・・・・・リン王女様にも・・・・・・・」
「ど・れ・も!手を出してねーだろーが!!」
「あ!そういえば・・・・・・・・。私寝ぼけてて忘れてたけど・・・・・・。マーシーに・・・・・お尻を触られた・・・・」
「・・・・・え?・・・・・触ってないよ・・・・」
ガッとマサルが胸倉を掴んできた。
「触ったのか!!」
「え・・・・・・・・・・いや・・・・・・・・・・・・」
「目が泳いでるぞマーシー!マジで触ったのか!!」
「不可抗力だ!ベットに寝てるって知らなかったんだよ!!」
「・・・マーシー・・・・・。本当は信じてたのに・・・・・。半分は冗談だったんですが・・・・・」
「いやいや、そんなに絶望した目で見ないでくれない?マジで手が触れた程度だよ?なんにもしてないよ?」
「私・・・・こんなに危険な男と同じ部屋で寝てたなんて・・・・」
「何ーー!同じ部屋で!!マーシー!そこになおれ!!今日こそは!!今日こそは言ってやるぞ!!」
あ、ダメなヤツだ。なにもしてないけど状況証拠だけで有罪になるヤツだ。
「落ち着け、マサル。俺はなにもしてない。レイファンもレイファンだ。お前に何かしようとするならいくらでもチャンスはあっただろう?帰って来た時にベットにレイファンがいるのに気づかず手が触れてしまったことは正直に謝る。それ以外に俺がお前に何かしたか?言ってみろ」
「マーシーならなんだってする!コイツなら簡単に完全犯罪をやってみせる!」
「よし、ちょっとお前は黙ってろ。パラライズ」
アババババババ
「お尻を触ったのは事実でしょ!」
「帰ってきてベットに寝ころぶのは普通だろ?その時にレイファンに気づかず手が触れただけだ。わざわざあなたのお尻を触りましたなんて言うべきじゃないだろ?その後一緒の部屋にいたのに俺はお前に何かしたか?」
「なによ・・・そっちが正論みたいに・・・・」
「正論ってより、事実を伝えてるんだよ。安心しろ、なにもしてないし、なにかしようとも思ってない」
アババババババ
「分かったわよ。確かに何かされたって記憶はないのは確かだし。警戒だけはさせてもらうわ」
「好きなだけ警戒すりゃいいさ。なにかあるわけでもないしな」
パラライズを解除する。
「レイファンちゃん、何かあればすぐに言ってください。なにかおもしろ・・・・・いや、ひどいことされたら相談にのります。こんなおもしろ・・・・・いや、ひどい話を聞かされたら俺はおもしろ・・・・、心が痛みますから」
心の声が漏れてるぞマサル。楽しそうだな。
ふと、リンとロンがこちらに寄ってきた。
「なにか楽しそうにお話しされていましたがどうされましたか?」
「マーシーがレイファンちゃんのお・・・」
パラライズ
アバババババババ
「いえ、ただの雑談ですよ」
僕はサッと席を立った。レイファンも席を立つ。
「マーシーさん、ソウソウおじさまがぜひお礼をということですので」
タカシの横に座っていた綺麗な鎧姿のおじさんだ。
「申し訳ございません、こちらからお伺いさせていただくべきでした」
「いやいや、気になさるな。お礼を伝えたいだけだ。国王を守ってくれたこと、本当にありがとう」
「恐縮です」
「このようなこと、何年もなかったことであったからな。王族の力を慢心していた結果かもしれん」
「加護の力で王族貴族は絶対的な強さを持っていることですね」
その時メイメイが近寄ってきた。表情は優れない。
「やはり昨日の一件は問題でしたでしょうか?」
僕はそう切り出した。
「ええ、少し」
メイメイが答える。
「王様が狙われたこともそうですが、王子2人が敗北したということが問題だったってことでしょうか?」
「ええその通りね。ホウリュウ兄さまとシリュウ兄さまはこの国で一番の力を持った戦士。その2人が同じ王族ではなく外部の者に敗北したという事実が問題ね。あそこには別の兵士もたくさん居たから起こった事実を隠すこともできなかったし」
この国最強の2人が同じタイミングで敗北。それを負かしたのはタカシとマサルで、一介の冒険者。
「まぁ、打ち負かしたのが賊ではなくて、ロンと私の護衛だったっていうのは不幸中の幸いかもしれないけれど」
コップ片手にこちらに寄ってきたタカシ。
「負けるってのがそんなに問題なん?国が滅んだとかじゃないんやで?この広い世界で自分より強いヤツなんか結構居るもんやし、負けても今度は負けへんようにもっと強くなったらええんちゃうの?」
「タカシ殿。言いたいことは分かりますが、ホウリュウ兄さまとシリュウ兄さまの強さはこの国の象徴とも言うべきなんです。この国が栄えてきた理由にはこの地で加護の受けた人間の強さ。加護を大いに受けたものは誰にも負けないという自負。今回それを打ち崩されましたので」
ロンは暗い表情で口を開いた。
「あなたたちが負かしたことに関しては何も罪はないわ。あの状況で私たちがお父様の元へたどり着けないとお父様になにかあったかもしれないし。ただ、結果としてこの国の最強の2人があっさり負けてしまったことによって国が揺れてしまっているだけ」
その時部屋の扉が開き兵士が1人メイメイに近づいてきた。
そっと耳打ちで要件を伝えるとメイメイの表情が歪む。
「ごめんなさい、今日はここまでにさせてもらえるかしら」
「メイメイお姉さま?何かありましたか?」
リンが尋ねる。
メイメイはその場にいる一同に目線を動かした。
「ホウリュウ兄さまとシリュウ兄さまが居なくなったらしいわ」
「え!?」
「兄さんたちが!?」
「2人同時にいなくなって現在捜索中ね」
「メイメイ様。それを俺たちの耳に入れてよかったんですか?」
僕は尋ねる。
「ここには関係者しかいないでしょう?」
中々大胆な人だな、メイメイ。関係者ってことはこの後も巻き込んでいこうということか。
タカシとマサルは護衛継続。俺は俺で少し探ってみるか。
「分かりました。微力ながらお助けできればと思います。けれどまず先にすることは国王様の無事の確認と安全確保ですね」
「ええ、お父様は無事よ。護衛も増やすわ」
索敵ドン。
確認できる範囲に王子2人はヒットしないな。
あ、マサル忘れてた。
パラライズを解除する。
「なんだか慣れてきました。ちょっと強めのマッサージと思えば痛気持ちいいくらいには」
『タカシ、マサル、2人はロンとメイメイをちゃんと見てろよ。俺はリンを見てる。王子2人が行方不明でこれが誘拐なら他の3人もあるかもしれん』
『オッケー』
『ラジャ』
『俺は1度王様と話がしたいからそれが終わったらどこかで情報共有できればと思ってる。得られる情報はできるかぎりゲットしておけよ。何かあった場合は迷うな。自分の思うようにな』
『メイメイちゃんの敵は俺の敵』
『何も変わらへん。することはいつも通りや』
「それじゃあ突然で申し訳ないけれどここでお開きとしましょう。ソウソウ様すみません。マサル行くわよ」
メイメイとマサルは部屋を出ていった。
ロンとタカシもそろって部屋を出ていき、アニーに連れられて僕とリンとレイファンもそろって部屋を出た。




