変態か
マーシー視点に戻ってきました。
王様に襲い掛かった獣人たちを沈めて僕は廊下に倒れている宰相のリャンを確認しにいくと、そこにはリャンの姿はなかった。
僕はチッと舌打ちして部屋に戻る。
王様の部屋に戻ると王様とリンの目の前をエルムが浮かんでいた。
「まさか・・・・・・妖精か・・・・・・」
王様はボソッと呟き驚きながらエルムを見ている。
「ありがとうエルムちゃん!」
リンはエルムに心から感謝の言葉を出した。
「とりあえずこの獣人たちは城で引き取ってくださいね。表情から見て意識はなさそうでしたからなにも覚えていないかと思いますが」
僕は王様へと近づいた。
ビリビリッとその時倒れている獣人たちが感電したように痙攣しだした。
「キャッ!何!?」
リンは声を上げたが王様はそれを悲しい目で見ている。
数秒すると獣人たちの痙攣は治まったが5人ともすでに息は無かった。
想定内の証拠隠滅か。
「君は?」
王様が僕に問いかけた。
エルムはピュンと飛んできて僕の横に並んだ。
「初めまして秦国の王様。俺の名前はマーシーです。リン王女様の臨時の護衛をさせていただいてます。城内の侵入者に気づき王様のことを心配なさったリン王女と共に駆けつけさせていただきました。このような場所でのご挨拶にて申し訳ございません」
『よくも抜け抜けとそんな言葉が出てくるわね』
エルムが念話で何か言ってるな。
「いや、結果救われたのは事実。感謝する」
「お父様!お父様!私もマーシーさんに助けていただいたの。とっても強いの!空も飛ぶの!」
「その・・・・横に居るのは・・・・・・妖精かね?」
「はい。エルム」
僕はエルムに視線を向けた。
「こんばんは、秦の王。私はエルムよ。ちょっと成り行きでこの冒険者と一緒にいるの」
「妖精と一緒に居るものを疑うわけにもいかんか」
「いきなり王女を連れて王様の部屋に乗り込んできたものを疑うのは当然ですよ。けれど安心してください、俺は賊でもなんでもないです。行動で示したと思いますが」
「この子を守ってくれてありがとう。私の手には負えんかった」
「魔法を封じる。・・・いや、魔法を乱す結界かなにかですね?」
「ああ、準備も周到であったな。私も魔法を封じられればただのおっさんだからな」
「お父様!無事でよかった!」
リンは王様に縋りついた。
「ああ、ありがとうリン。よくきてくれたな」
王様はリンの頭をやさしく撫でる。
王様のその撫でた右手に光る、赤い指輪。
宝石部分は大きくかなり高価なものに見える。さらに言うとそこから魔力が溢れているのを肌で感じるため、なにかしらのマジックアイテムなのだろう。
赤い指輪・・・・・か。
エルムは何も言わずに僕の頭の上に乗っていた。
「エルムありがとう。よく守った」
「いえいえ、全部コレのためだから」
エルムは僕の頭から魔力を吸い始めた。
「秦王様。先ほどのリャン殿は・・・・・・、本物でしたでしょうか?誰かの化けた偽物であったりは?」
「間違いなく本物だったな。こんなに近くに居て気づかなかったとは、私もやはり歳だな」
「すみません、取り逃がしてしまいまして」
「仕方がない。そうだ、君には何か褒賞を出さないとな。何か欲しいものはあるかね?リンと言われたら困るが」
「おおおお、お父様!」
リン王女は王様の横で顔を真っ赤にしている。
「そうですね。特に欲しいものはないですが。・・・・・・ひとつお聞きしたいことがあります。その、赤い指輪。王は何処で、誰からそれを?」
王様は手につけた赤い指輪を眺めた。
「これか?そうだな、これは・・・・・。私の大事な人から譲りうけたものだ。君はこれを知っているのかね?」
「いえ、知人の母が持っていたものに似ていたものでしたから。特に欲しいとかそういうのではございません。お気になさらず」
「そうか、流石に譲るわけにもいかん物でな」
その時バタバタバタと廊下を走る足音が聞こえてくる。
僕は王様の横にすぐに移動した。
まぁ誰が来たかは分かっているんだが。
「お父様!」
「お父様!!」
部屋に駆け込んできたのは小学生くらいの少年と赤いドレスの美少女。
それに3メートルくらいの大男だった。まぁ顔は牛なんだけどな。彼が牛くんか。思ったよりインパクトあるな。
「ロン!メイメイ姉さん!!」
リンが声を出して2人に近寄っていく。
「リン姉さん!お父様も無事ですか!?」
「お父様、ご無事で」
「ああ大丈夫だ。リンと彼に救ってもらったよ」
ロンとメイメイの視線は僕に向いた。
「あ・・・あなたは?」
「誰でもいいわ。お父様を守ってくれたのでしょう?ありがとう」
ロンもメイメイも王様の無事を確認できてホッとした表情を見せている。
ベットに座る王様をリン、ロン、メイメイが囲んでいるので僕は少し離れて入り口にいた牛くんの所へと移動する。
「君が牛くんかい?マサルとタカシが世話になったみたいだね?あの2人迷惑をかけなかったか?」
「2人とも友達だよー。僕を見ても全然怖がらないしー。マサルはいきなり殴ってきたけどねー」
「そいつはマサルが悪いことをしたな。どうせ女の人を守ろうと勘違いしたとかだろう?」
「全くそのとおりなんだけどねー。全然気にしてないよー。2人と一緒にお風呂にも入ったんだー」
「そうか、ありがとう。今度俺も一緒に風呂でもゆっくりはいりたいな。あ、俺はマーシーだ」
「僕はミノだよー」
牛くんの名前はミノっていうのか。
「ごめんなさい、ゆっくりはしていられないの。下で今お兄様2人が揉めているからすぐにやめさせないと」
「そ、そうなんです!今僕の護衛とメイメイ姉さんの護衛が残って兄さんたちと争ってるところなんです!すぐに戻らないと!」
タカシとマサルね。良い予感はしないな。
「それなら私も行こう。メイメイ、肩を貸してくれるかい?」
「ありがとうお父様。私たちじゃ止めれなかったの」
「あ、それなら俺も肩を貸します。俺でも大丈夫ですか?秦王様?」
「ああ、ありがとう。頼めるかな?」
ロンやリンに任せるわけにもいかず、一応部外者なので確認もとって王様に肩を貸す。メイメイが逆側で王様を支えている。
メイメイの目線が僕の頭に向いたまま固定された。おっと、エルムに気づいたか。エルムの光はあまり大きくないんだが見えるってことは王様やリンと同様魔力が多い・・・・・・・・
おっとっと、3人で一番魔力が多いのはこの子か。魔力がカンストして999+になってるじゃないか。水魔法、土魔法に・・・・・・・毒魔法ね。
魔王様の側近に居たヤツと同じ魔法か・・・。
ちなみにロンにはエルムは見えていないようだ。ロンの魔力は100程度だからな。しかしこの少年、力もスピードも500超えてるじゃないか。恐ろしいな、月の加護。
リンは先にパタパタと入り口に近づくと牛くんと目が合った。
おっと大丈夫か?恐怖で泣き出したりしないか?
「わぁ、おっきい牛さんだー」
「こんにちはー」
わりと何ともないのか。この国の獣人嫌いは一部なのか?それともこっちが珍しいのか?
僕達は王様を連れてゆっくりと階段を下りていく。
下りて来る最中激しい物音や何かが壊れる音が聞こえてきた。
階段の端が見えて大きなロビーに出るとそこには地面に倒れている複数の人間と、1人立っているタカシの姿。
そしてなぜか鎖に縛られている女性2人の前で奇妙な反復横跳びをしているマサルの姿が目に入った。
変態か。
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