ここを通りたければ
マサル視点です。
広いロビーで乱戦を繰り広げる中に身を投じる。
「メイメイちゃん、さっきの腐る魔法はなるべく使わないように。牛くん!メイメイちゃんを任せた!」
「任されたー。気をつけてマサルー」
メイメイちゃんと牛くんは離れた場所にいるロン少年の元へと向かわせて俺は右手に金属バットを持ち槍使いが複数集まるところに向かっていく。
その先にはタカシが居るからだ。
「失礼します。俺も混ぜてください」
丁寧に言葉をかけて近づくと槍使いが2人こちらに向きなおし槍による突きを放ってきた。
「よっほっ」
と、俺は右へ下へと器用に動きその突きを躱すとタカシもそれに合わせて階段から離れるように動きだした。
「逃がすか!!」
ボサボサロン毛がその自慢の槍をタカシに向かって振るうと衝撃波が巻き起こり離れたタカシを襲った。
地面を削り一直線に襲ってきた衝撃波。しかしタカシは特に苦もなく大きく後方にバク宙をし躱すと着地と同時に俺の近くまで来た。
「マサル、王子2人は俺らに近いくらい強い」
「弱音とは珍しい」
「殺してええんやったら瞬殺するんやけど、王子やからな。そういうわけにもいかんやろ?」
「なら、分けますか?」
「せやな。先にロン達を上に行かすのが優先やけどな」
「それじゃあそのような感じで」
「ちなみにあのロン毛の第二王子は悪口言ったらすぐに的にしてもらえるで」
俺は右手に持った金属バットを前に差し出した。
「素手の人間相手にこの人数で全員槍持ってるとか恥ずかしくないんですか?」
「素手だろーが槍だろーがなんだろーだ殺し合いには関係ねーだろーが。オークごときが俺に話しかけるな」
ムカッと。
「なんだお前のその頭は?ちゃんと洗ってるのか?寝起きなのか?いつも綺麗で清潔なメイメイちゃんを見習え!取り巻きがいねーと1人じゃなにもできない弱虫毛虫が!」
「・・・・・・・・テメーも死にたいらしいな。この豚ヤローが」
即座にそのボサボサ頭の脇の1人が槍を突き出してきた。
「無礼だぞ!シリュウ様に対して!!」
「人をオークって言うヤツは無礼じゃないんですか?」
俺は金属バットでその槍をはじいた。
「俺右回り、マサルは左回りな」
「オッケ」
タカシは離れるように迂回し始める。
俺は槍をさばいてメイメイちゃんの方へと駆けて、俺とタカシは第二王子を中心に左右に離れていく。
「メイメイちゃん走れ!突破するぞ!」
「ロン、来なさい!」
「わ・・・分かりました!」
「マサルー、槍持った人を連れて来てるー」
俺の背後から数人槍使いが向かってきている。
とりあえずそいつらはそのままにメイメイちゃんたちと一緒に階段へと向かって走る。
階段前にはイケメン王子と・・・・・・・・・・・綺麗なお姉さんが2人!!!
くっ!!綺麗なお姉さんを両手にはべらしやがって!!
「ロン、メイメイ、ここは通さんと言っただろう!!」
「いや、このまま行く!!牛くん!!2人を抱えて飛べ!!」
「うん!僕飛ぶよーー」
牛くんはメイメイちゃんとロンを両脇に抱えて地面を思い切り踏み込み高くジャンプした。
絵面がヤバイですね。
とりあえずちょっと痺れてろ。
俺は右腕につけた雷の腕輪に力を込めて背後から迫る槍軍団へと電撃を飛ばす。
バチバチッとそれに触れた瞬間槍を持った兵士たちは顔をしかめて動きが止まる。
致死性はないがちょっとは動きが鈍るでしょう。
2人の綺麗なお姉さんがなにやら鎖鎌のような武器を空を飛んでいた牛くんに投げつけるが
「はい、そんなんさせませーーん」
逆側を回りこんでいたタカシがジャンプ一番、鎖ごと先に付いた武器を身体に絡めてそれを阻止。
そして俺は大きな剣を構えてメイメイちゃんたちを狙っていたイケメン王子に向かって行き金属バットで
ガキーーーン!!
金属バットとイケメンくんの大剣が交差する。
「させませんよ。イケメンくん」
「どけ!!邪魔をするな!!」
体に絡んだ鎖をタカシが豪快に振り回しお姉さん2人が壁まで吹き飛ばされる。
「マサル!しゃがめ!!」
咄嗟に俺は身を屈めると、俺の上空を両足を揃えてドロップキックで通過していくタカシ。
そのドロップキックを自身の大剣で防いだイケメン王子だったが勢いに負けてズザザザザと吹き飛ばされる。
「あっはっはっは、こりゃおもろい形になったやんけ」
着地したタカシは大きく笑った。
「あ、なるほど。つまりこういうことですか『ここを通りたければ俺たちを倒してから行け』と」
盤面逆転。
今は俺とタカシが階段に、そしてメイメイちゃんたちは牛くんに抱えられて今しがた階段を駆け上がっていった。
壁に吹き飛ばされたお姉さん2人。タカシに吹き飛ばされて階段部分から離れたイケメン王子。その後方で槍持ちの兵士といっしょにゆっくりとこちらに向かって来るボサボサ王子。
階段の前に陣取る俺たち。
「ほらほら、はよせなロン達が上に行ってまうで?ええんか?イケメン王子くん?」
「ギリギリギリギリ!誰も上には行かせん!!皆殺しだ!!!」
スゲー歯ぎしり。大丈夫ですか?この王子は?
「邪魔だ兄貴!!そいつらは俺がここで殺す!!」
こいつもこいつで一体何がしたいんでしょうか?
「さてと、後はなにも考えずに目の前のやつらを撃破といきましょうか」
「マサル、あの姉ちゃんらはそこの頭のおかしい第一王子とセットらしいからまとめて俺がやるわ。女の子は殴られへんやろ?あっちのボサボサ任せてええか?」
「もちろん女性は殴りませんが、タカシも殴っちゃダメですよ」
「まぁ、善処するわ」
タカシは目の前のイケメン王子の横に瞬時に移動し横からミドルキックを放つ。
しかしそれに反応して自身の大剣でそれを防ぐとそのまま大剣を逸らしてタカシへと切りつけるイケメン王子。
あのスピードに反応しますか・・・・。
そのタカシに向かって槍軍団が槍を構えるが今度は俺がタカシの背後を通りその槍軍団目掛けて金属バットを薙ぎ払った。
ガキン!ギイン!と手に持った槍を弾く。
態勢を崩した兵士の後ろから鋭い勢いでもっともデカイ槍が俺目掛けて突き出された。
咄嗟に金属バットを切り返してそのデカイ槍を側面から叩き逸らすがその槍は少し向きが逸れただけであまり態勢も崩れていない。
そのままボサボサ王子は弾かれた槍をグルリと回し刃とは逆の柄の部分を俺に振るってきた。
俺はそれを左腕でガードするが、左腕を襲う衝撃と痛み。
受けた俺は数メートル後方に飛ばされる。
なーるほど。王子2人は確かに他と違うってね。
取り巻きたちは脅威ではないが王子と一緒に動かれると少々厄介だ。
こりゃできれば王子以外は無力化してしまって王子と1対1にもっていった方がいいか。
俺はチラリとタカシを見た。
タカシは軽く頷いた。
考えることは一緒。
さてと、別々で好きに動くのではなく協力といきましょうか。
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