え?それは俺も含まれるの?
マサル視点。
賊が城に侵入する少し前。
俺はメイメイちゃんと牛くんとで小さな食堂で夜ご飯中です。
10人くらい座れるテーブルに料理が並べられて俺と牛くんは一心不乱に目の前の料理を口に運んでいます。
メイメイちゃんは小食なのか、目の前の一皿に手を出し、食べ終わると手持ちのハンカチーフで口元をお上品にぬぐいその後は俺と牛くんを眺めているだけです。
「メイメイちゃんはもう食べないんですか?」
俺はモグモグと料理を口にしながら尋ねる。
「ええ、お腹いっぱい」
「お嬢は小食なんだよー。もっと食べないと大きくなれないのにねー」
「大丈夫。十分に育っていますよ(もちろん胸が)。牛くんはもっと遠慮して食べるべきですね」
「えー、マサルの方が食べてるよー。僕より食べる人間ってどういうことなの?」
「目の前に出された料理は全て食べる。コレは料理人に対する礼儀です」
その時遠くでドオンドオン、と爆発音が聞こえた。その後悲鳴とバタバタと慌ただしい足音が聞こえて来る。
「なにかしら?」
俺は泣く泣く料理から手を離してすぐに扉に近づき聞き耳をたてた。
牛くんはメイメイちゃんのそばに立ち骨付き肉をかじっている。
なにやら侵入者が城内に入り込んだようなことを言っている。
「なにやら侵入者が入ってきたみたいですね」
「そう・・・・。見に行こうかしら」
「僕が見にいくよー」
ゆっくりとこちらに近づいてくる3メートル級の二足歩行の牛。
「マサルはお嬢をお願いねー」
「わざわざ見にいかなくても警備兵とかがなんとかするんじゃないですか?行くなら俺が見に行きますが」
ガッシャーーン!!
突如扉とは反対側の窓が盛大に割れて2人の黒ずくめの男が飛び出してきた。
しまった!メイメイちゃんが近い!
メイメイちゃんはその2人の賊に目線を向けた。
賊の2人はそれぞれ30センチくらいの刃物を持って1人は床に着地、1人はテーブルに着地すると間髪容れずにメイメイちゃん目掛けて突進しだした。
そうはさせ・・・・・・・・。
俺はメイメイちゃんを守るために一歩を踏み出そうとした。
したが・・・・・・・・踏みとどまった。
俺の目には訳のわからない現象が起きていた。
賊は地面を蹴るとその足がボロボロと崩れ落ち、メイメイちゃんに近づくにつれて膝まで崩れ、地面に倒れ込むと。そして目からは血の涙を流し、口から大量の血を吐き出してその場で動かなくなった。
テーブルを駆けていた賊も同じように腕と足が崩れテーブルから落ち、地面に転がったところで大量の血をまき散らしながら絶命していた。
やだ、なにそれ、怖い。
「お嬢、大丈夫?」
牛くんはメイメイちゃんの心配をしていた。
「大丈夫、問題ないわ」
メイメイちゃんは目や口から大量の血を垂れ流した死体を見てクスリと笑みを浮かべていた。
「メイメイちゃん、汚いからそんなものに近づいてはいけません」
「汚くはないわ。人の死に顔ってこんなに綺麗なのよ」
「メイメイちゃんの方が綺麗ですよ」
「なにそれマサル。寒いわよ」
「マサルー寒いー」
「黙れ牛。今この場でメイメイちゃんより綺麗なものなんてあるもんか」
「お嬢―。多分入ってきたのは奥に向かってるよー」
「そう・・・・・・・お父様のところかしら?」
「ってことは王様のところに向かってるってことですか?そいつは一大事じゃないですか」
「そうね。・・・・・・・・私たちも向かいましょうか」
「そうだねー。王様が襲われちゃったら大変だからねー」
ガチャリと扉を開けて牛くんが先行して廊下に出た。
ズガン!ベチャッ!!
「あ、ごめんー。君がいきなり襲ってくるから悪いんだよー」
牛くんが何かを潰したようだ。
「それじゃー行くよー。お嬢は真ん中―。マサルは後ろお願いー」
牛くんを先頭にメイメイちゃんが続いて俺が最後尾をついて行く。
扉を出ると壁に張り付いている黒ずくめの男がいた。
直線の廊下をドスドスと走る牛。
4足歩行ではなく2足歩行で走る牛。
その後ろを真っ赤なドレス姿で走るメイメイちゃんを追って俺もついてく。
道中に賊は1人倒れているだけでそれ以外は兵士があっちへこっちへと慌ただしく走り回り怪我をしたものを介抱しているメイドさんやらがいる。
庭園のようなところに出ると正面にここのシンボルのような高い塔とその手前に建物が見えた。聞いたところあの建物の最上階で王様は養生しているようだ。
この庭も戦闘のあとがあり、地面に大きな穴が空いていた。
「牛くんはこの城の中はよく知っているんだな?」
「うん、お嬢の護衛になってそろそろ1年くらいにはなるからねー」
「メイメイちゃんはよくこんな化け物牛を護衛に選びましたね」
「え?かわいいでしょ?」
牛くんはこちらに振り向き親指を立てた。親指なのかは分からないが。
「ソウデスネ、カワイイデスヨネー」
「もちろんマサルもかわいいわよ」
マサルもって・・・・俺は牛と同列なのか・・・・・・。
建物に到着し扉に入るとさらに目の前に大きな扉が立ちはだかった。
左右にも道はあるが、この扉の向こうからなにやら戦闘音が聞こえてくる。
「中でドンパチやってるみたいですね?」
「暴力反対だよー」
「聞き覚えのある声がするわ。とにかく入りましょう」
大きな扉をバタン!と勢いよく開けた。
中には10数人の兵士。
おや、肩と足から血を流しているタカシがいるじゃないですか。
「何?兄弟喧嘩中かしら?」
「お、タカシもしかして苦戦中?」
珍しく劣勢に見えるタカシはほとんどの兵士に武器を向けられていた。
「マサルええとこ来たな」
あ、まずいとこに来たかもしれませんね。
俺たちが入ってきたことで一時戦闘がストップしたようでその場に居たものの視線はこちらに向いている。
「お兄様方。お父様は無事なのかしら?」
俺たちはゆっくりと進む。
「メイメイ、そんな醜悪なものを連れてここに来るんじゃない」
でかい剣を持った豪華な鎧の顔の良い男。その醜悪なものは俺を含んでいませんよね?
「メイメイ!いつもの牛にオークまで連れてきやがったのか!この城をどれだけ汚すつもりだ!!」
ボサボサロン毛のでかい槍を持ったヤツは殺っていいのだろうか?いや、殺ってしまおう。あ、タカシがニヤニヤしている。ヤツも殺るか。
離れたところにいる綺麗な服の10歳くらいの少年がおそらく第三王子のロンくんかな?
「お父様が無事か確認するため上に行きます。お兄様方、そこをどきなさい」
「まぁ待て!上に行くのはコイツを殺してからだ!」
ボサボサロン毛はタカシに槍を向けた。なにやら恨みを買ったようですねタカシ。いつも通り。
「ここは通さん。だれも上には行かせはしない。反逆者の疑いのあるものはここで処す」
ふむふむ、ちょっと事情が掴めてきましたかね?
あのイケメンは階段を守って誰も上に通さないようにしている。
ボサボサロン毛はなぜかタカシを目の敵にしている。
2人の取り巻きはその2人に付き従っている。
ロン少年はタカシが心配だが上に行こうとしているのでしょうか?
「メイメイちゃんどうしますか?」
「お嬢―、どうするー?」
「上へ行くわ。お父様が心配だもの。ロンも連れて行くわ」
「分かりました。それなら道は俺が作りましょう。牛くん、メイメイちゃんを任せてもいいでしょうか?」
「うーん、大丈夫?王子が2人もいるよー」
「大丈夫ですよ。こっちはもっと強いのが2人になりましたから」
俺はスーっと息を吸い込んで声を張り上げた。
「今からメイメイちゃんとロン少年を上に向かわせる!手伝え!!」
部屋全体に聞こえるように。
もちろん、ただ1人に対して聞こえるように言っただけだが。
「了―解。ほんだらそれで行こか」
タカシはボソッとそう返した。
「ここは誰も通さんと言っているだろう。ここを通ろうとするものは誰であろうと切り伏せる」
さぁ、始めましょうか。
俺は地面を蹴って前に飛び出した。
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