ヒーローは遅れて、的な。
タカシ視点。
関西弁って特徴的でいいよね。
目の前に鎧姿の集団。
全員が槍を持っており兜は着けてない。鎧は全てシルバーで関節部分や胸部分を守るもので動きやすそうや。どこのセイントやねん。
全員険しい視線でこちらを見ているが中に1人、ボリュームのある肩まで伸びた髪。他とは違う薄くブルーがかった鎧を着て他のヤツとは違うゴツい槍を持った俺よりも背の高い男。
コイツは強いな。
「なぜ邪魔をした!!貴様も賊か!!」
その男は槍を俺に向けた。
と、後ろの連中も合わせて槍を構える。
「シリュウ兄さん!!彼は僕の護衛です!!早くお父様の所へ!!」
俺の前に出たロンは目の前の男をシリュウって言うた。そうか、こいつが次男か。
「ロン!!貴様!!この騒ぎをまさかお前が起こしたのか!!どういうつもりだ!!」
「待て待て待て待て。今空を飛んどったんはリン王女とその護衛や。あっちは一足早く王様のところに向かっとったんや。だからそれを撃ち落そうとしてたお前を俺が邪魔したんや」
俺は1歩前に出てロンの横に並んだ。
「貴様!!護衛の分際で俺に対して『お前』だと!!」
おいおい、論点変えて怒りだしたで。
「シリュウ様許可を」
「シリュウ様を侮辱するとは万死に値する」
シリュウの脇に2人の男が立ちこちらに槍を向けて来た。
「やめてください!シリュウ兄さん!!こんなことをしている場合じゃ!」
ロンは叫んだが。
「殺せ」
シリュウの一声でシリュウの取り巻きの2人がこちらにスタートを切った。
俺はロンの首根っこを掴んで後ろに下げる。
「悪いけど、俺は攻撃されたらやり返すで」
左の男の真っ直ぐ突いた槍が俺の顔を狙ってきたが俺はそれよりも早い動きでそれを左手で右に弾く。追って右の男は俺の右足を狙ってきたが咄嗟に右足を上げてその槍をガン!と踏みつけた。
「顔面狙うとは、本気で殺しにきたな?」
俺は態勢を崩していた左の男の腹部に裏拳一発。吹っ飛ぶ。
右の男の槍は踏みつけたまま俺は声をあげた。
「こんなんやってる場合やないやろ?早く王様んとこに行かなあかんのとちゃうんか?」
槍を踏みつけられた男の後ろからさらに2人の男が飛び出し、俺の槍を踏みつけた右足と逆の左腕を槍で払った。
バッと後ろに飛び退き回避すると上空からデカい人影が迫ってきた。
シリュウだ。
シリュウは槍を上段からシンプルに振りかぶり俺目掛けて振り下ろしてくる。
受けるか躱すか・・・・。
いや、逃げよう。
地面を蹴りシリュウから離れてロンに近づく。
シリュウの放った槍の一撃は地面に接触すると切れるのではなく地面を大きく破壊し石つぶてをまき散らした。
俺はロンを抱えて道の脇に逸れてダッシュで大回りして道の先の建物の方へと向かっていく。
「ああああああああああああああーーーー!!」
俺のダッシュに味わったことのない速度を感じたロンの叫びが庭園に響いた。
「クソッ!!逃げたか!!」
シリュウのそのような声が聞こえたが俺はそのすぐ後にはすでに建物の前まで到着しておりシリュウ達が来る前に素早く建物に入っていった。
「うううううぅぅぅ、気持ち悪いですぅ」
ロンは膝に手をついてうなだれていた。
「ほら、着いたぞ。どっちや?目の前の大きい扉か?それとも右か左か?」
「その大きな扉です。大きなホールになっていて上への階段があります」
「よっしゃ、ほんだら兄貴が来る前にさっさと行こか」
俺は目の前のでかい扉を開いて中に入る。
中は天井が高くちょっとした体育館くらいの広さのホールになっており中央に誰かの石像。先にはでかい階段がある。ここから王様の所に行けるんか。
しかしその階段の前には腕組みをしている男が1人。その脇には2人の女性。3人が堂々と待ち構えていた。
横にはおそらく賊と思われる死体が2人分転がっている。
タッタッタッと俺とロンはその3人に近づいていく。
「ホウリュウ兄さん!先にいらっしゃったんですね!」
様子がおかしい。
王様がこの上にいるんなら上に向かうべきや。
けど、こいつらは階段の前に陣取って何かを待ってるようや。
「ホウリュウ兄さん!すぐにお父様の所へ」
脇の1人は大きな剣を両手で抱えていた。鞘に入ったままの、マサルの金属バットに負けないくらいの大きさの剣。
中央の男はその剣の柄を掴み剣を抜くと目の前に突き出しロンへと向けた。
「止まれ。ここから先は通さん」
「え!?ホウリュウ兄さん!お父様のところへ行かないと!」
「やはり予想していた通り賊は父上の所へ向かう人物。ロン、貴様が今回の首謀者か」
「な!何を言っているのですか!お父様は無事なのですか!」
「ここは誰も通していない。父上の元には誰も行かさん。俺がここを守ることが父上を、そしてこの国を守ることになる」
俺は1歩前に出た。
「おい、お前のその言い分やったら、お前が賊の首謀者な可能性もあるやんけ。今王様を襲撃中やからここは誰も通さんって言うてるように聞こえんねんけど?一番ええんは、とりあえず王様の近くで護衛すんのがええんちゃうんか?」
「俺の使命はここを誰も通さないことだ。ここを通るというのなら父上襲撃の実行犯とみて処刑する」
「おい、ロン。長男はなんか頭ええみたいなこと言うてなかったか?あきらかコイツの頭おかしいで。空から襲撃とかされたらアウトやんけ」
バタン!!と俺らがさっき入ってきた扉が勢いよく開いた。
シリュウが追いついたみたいや。
「なんだ、兄貴もここにいたのか。おいロン!そこのヤローをこっちによこせ!侮辱罪でここで死刑にしてやる!」
「シリュウ兄さん!まだそんなことを言ってるんですか!先にお父様のところに行かないと!」
「シリュウ、貴様もここを通るというのか?」
「ああん?んなもんは後回しだ!先にその小僧をぶっ殺す」
「ロン、大変やな。こんな兄貴を2人も持つと」
「他人事のように言わないでください!兄さん2人に敵視されてるんですよ!」
「とりあえずお前が決めろ。長男ぶっ飛ばして上に行くんか?次男を仕留めてこの場をおさめるんか?それとも何もせず傍観するか?」
「もちろんお父様の所に向かいます!!」
「よっしゃ、ほんだら道は俺が作ったる」
俺はタタッとステップを踏んでホウリュウに向かって行く。
「まぁ、そうやろな」
すぐさま動いたのはホウリュウの脇に立っていた2人。1人はさっきの大剣の鞘を振りかぶりこちらに向かって来る黒髪ロングの姉ちゃん。もう1人は短剣2本を逆手に持った同じような顔をした白髪ロングの姉ちゃん。
白髪の方の姉ちゃんが短剣で俺に切りつけてくるが俺はそれをしゃがみ、さらに身を引いて躱し白髪の姉ちゃんに足払い。
態勢を崩した白髪の姉ちゃんの後ろからでかい鞘を投げつけてきた黒髪の姉ちゃん。
おっと、地面を蹴り右に飛び退く。
鞘には鎖がついておりそれを器用に引っ張り俺に追撃してくるが俺はそれをガシッと左手で掴んだ。
すると俺に向かって飛んでくる2本の短剣。その柄には鞘についている鎖よりも細い鎖が繋がっている。
「こっちもかい」
俺は左手に掴んでいたでかい鞘を短剣2本にぶち当てて相殺。
ゾクッと背筋が凍る。
視界の右端に大剣を横なぎに構えているホウリュウの姿に気づいた。
と、同時に俺は距離をとるために地面を蹴り剣の向かって来る方向と同じ向きに体を硬直させ回転させた。
ズバン!!
血しぶきが飛ぶ。
肩を切られた。が、浅い。
地面に着地したと同時に右上方から振り下ろされる大きな槍。
この、クソ次男が!!
着地した足と逆の足を振り上げハイキックでその槍の刃の根元を蹴り上げる。
槍はその場で止まり、衝撃が部屋に響く。
なんや?さっき庭で放った一撃よりもさらに強い!
ぶっ飛ばすつもりで蹴ったんやぞ。
シリュウの槍と俺の蹴りで膠着した2人。
すぐさまシリュウの脇から2本の槍が突き出される。
それを身を捻りながら躱したが今度は太ももを削られた。
チッ!!痛い!!
傷は深くはないが血液が地面に滴る。
一旦距離を置こうと地面を蹴り離れるが白髪の姉ちゃんの短剣2本が急に目の前に現れてそれを屈んで躱す。
厳しい。
特に長男次男が思ったよりもヤバい。1対1やったら負けへんけどこっちは殺すつもりはないけど向こうは殺すつもりで来る。
長男は階段に意識が向いてるから階段から離れて先に次男をやってまうか?
バタン!!
さらに扉が開く音が聞こえる。
皆の視線がチラリと扉の方に向かった。
「何?兄弟喧嘩中かしら?」
「お、タカシもしかして苦戦中?」
メイメイとマサル、そして牛君や。
「マサル、ええとこ来たな」
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