連日トラブル続きだな
嫌だ嫌だとダダをこねるレイファン
「そんなにか?王位継承争いなんて、今この国で一番の目玉みたいなもんじゃないか」
「この国の王族に絡んでいいことなんて1つもありゃしないわよ!!どいつもこいつもエルフって見ただけで罵倒やら貶すような視線やら、手だって簡単に出してくるし!それにどいつも冒険者よりも強いし!!いつも複数でいるから厄介だし!!貴族でもそうなのに、王族って言ったらもっとひどいって言うじゃない!」
「大丈夫だ。なにも表立って王族に喧嘩を売れとは言わない。俺の協力をするだけでいい。それにレイファンのスピードと魔力なら十分相手はできるだろう?」
「1対1でどこぞの貴族とやりあう程度なら問題ないけどそんなのした後には私も私の周りの人もみんなメチャメチャにされちゃうわよ」
王族貴族を相手にするということは国をそのまま相手取るということか。聞いてた通りだな。
するってーとタカシは指名手配されてるかもな。
「まぁ安心しろ。俺も国相手に喧嘩しようなんて考えてない。ちょっとこっちの事情が事情でな。簡単に話すとだな、俺の仲間が第三王子ロンと第一王女メイメイにそれぞれ護衛としてつくことになった。ああ、あと第二王女リンにもだな。この護衛の期限がおそらく王位継承争い終了までということになりそうだからなるべく穏便に誰かに王位を継承してほしいだけだ」
「なにその状況。5人の王子王女のウチ3人にスパイを潜りこませたってこと?やだ!この国を転覆させようとか考えてるの!?あんた何者なのよ!!」
「間違えるなよ。スパイじゃなくて本当に護衛なんだよ。3人が3人とも別々で正規に護衛として雇われたんだよ。俺だって信じたくねーよ」
「王族同士で争いが起きたらそれこそ仲間同士で争うことになるじゃない」
「だからだよ。だからこそ穏便に王位を誰かに継いでもらいたいんだよ。こっちだって身内で喧嘩なんてしたくねーよ」
「・・・・・・・・・おそらくホントなのね?嘘にしては話が大きすぎるし、報酬が多すぎる」
「ああ、事実だ。一応言っておくが、命はかけなくていい。こっちの事情でレイファンの身に危険が及ぶのはなるべく避けたい」
「ことがことだから無事でいられるかは分かんないわね。けれどこっちだって命は欲しいから危ない橋はなるべく渡らないわ」
「ああ、それでいい。なにか危険を感じたら逃げに徹してくれればいい」
「具体的に私は何をすればいいの?」
「こちらから指示がないウチは王族の情報を少しでも集めてくれるだけでいい。俺も集めているが情報屋の情報を少し集めた程度だ。直接王城に潜入なんてできないと思うから各地区の信頼できる情報屋から情報を買ってくるだけでいい。こいつは経費として渡しておく」
僕は追加で金貨5枚をテーブルに置いた。
「なんなの?あんたどうしてそんなにお金持ってんのよ?あくどい商売とかしてんの?」
「ちゃんと正攻法で稼いだ金だよ」
「信用できないわ。その歳で普通に稼いで金貨10枚15枚をポンと出せないと思うんだけど?」
「・・・・・・・・・・ちなみに俺はリアの魔術大会の今大会の優勝者。第三王子のロンの護衛についてる俺の仲間は帝都の武闘大会の優勝者な」
「え?ほんと!?・・・・・・・・・・・・・・それなら確かに引く手あまたね・・・・・・。少し納得」
「あ、そうだ。さっき追加で言ってたこと。レイファンがこの指輪を欲しがる理由ってのは?金銭的な理由だけじゃないんだろ?」
「そういえばそんなこと言ってたわね・・・・・・。まぁくだらない話しだから別に話してもいいけど。私の母が常に身につけていた真っ赤な指輪、それを探しているの。もう7年も前に母は行方不明になっちゃったんだけど、その時ずっとつけていたのを子供ながらに覚えていてね。形はもうあんまり思い出せないんだけど、その指輪は多分マジックアイテムで、当時はその指輪から母の魔力を感じていたの。だからその指輪を誰かが持っていたらソイツは母のことを何か知っているかもしれない。だから赤い指輪を見つけたら・・・・・・・・・」
「今まで盗んできたと?」
「ええそうね。いままで結構盗ってきたけれど、母の指輪は見つかってないわ。ひょっとしたらこの国にはもうないのかもしれないけれど」
「俺のこの変化の指輪も違ったのか?ならもういらないか?」
「ふざけないでよ!もうもらうって約束したからね!!絶対もらうんだから!!」
「正直でよろしい。コチラお高いですからねー」
「じゃあ私は情報集めってことでいいのね?」
「ああ、俺は今日の夜に城の仲間と情報のやりとりをして、明日またどう動くか考えよう」
「それじゃあ明日にまたここで集合ってことでいい?」
「ああ、鍵は渡しておくよ。泊まるところがなけりゃここに泊ればいい。明日までここは借りておくから」
「分かったわ。それじゃあ、ありがたく」
僕は鍵を渡す。
「一応、何か危険があったらここに戻って来るか、城へ行け。城で俺の名前を使ってリン王女かもしくは俺の仲間のタカシかマサルを頼れ。無茶はないようにな」
「リン王女に頼れって・・・・・知り合いなの?」
「そうだな・・・・貸しをひとつ作った・・・・・ってとこか」
「へえ、そう。分かったわ。それじゃあまた明日にね」
「ああ、任せた」
レイファンは部屋を出ていった。
さてと、夜まで時間があるな。夜になったら城まで行ってみてタカシ、マサル、あとエルムに近況を聞きに行くか。
指輪で再度変身して金髪の少年に化ける。
僕はホテルを出て街にくりだした。
タカシ、マサルあたりに一応手土産があってもいいかなと思い、近くの酒屋で瓶入りの酒を数本購入しておく。
冒険者ギルドの前まで歩いてくると向かいに馬屋が見えた。
お、御者くんが店の前で座って呆けているじゃないか。悪いことしちまったからな。
・・・・・・・・・・・・・姿も変えてるし一言謝罪に行っておくか。
僕は馬屋までゆっくりと歩いて行く。
「少年、ちょっといいか?」
少し声色を変えてここまで連れ添った御者くんに話しかけた。
「はい?なんでしょうか?」
「君はマーシーを待っているのかな?」
「あ!・・・・はい!ご存じなんですか!?」
「彼からの伝言を持ってきたんだ」
「伝言ですか?マーシーさん、どうかされたんですか?」
「彼からは君に謝っておいてくれということだ。どうしてもはずせない仕事が入ったようでここに数日滞在しないといけなくなったらしい。忙しくてここに来ることもできないようでね」
「そう・・・・ですか」
「このお金を預かっているから君に渡しておく。そのお金で護衛を雇って帝都に戻ってもいいし、待っててくれるのならそれを滞在費にまわしてくれということだ。戻っても問題ないと言っていたから無理に残る必要はない」
僕はまわりから見えないように素早く金貨2枚を御者くんに手渡した。
「こん・・・なに・・・・」
「彼はここまでありがとうと言っていたよ。すごく感謝していた」
「そうですか。・・・・・・・・・・あの、お願いがあるんですが!」
「どうした?」
「マーシーさんに、ここで待っていますとお伝えください!まだ仕事の途中なのでこのまま帰るわけにはいきません」
「・・・・・・そうか。分かった。彼の仕事は数日で終わる見込みだから一週間もかからないはずだ。もしなにか君にトラブルが起こるようならすぐに冒険者ギルドに助けを求めるように。マーシーには君がここで待っていることは伝えておこう」
「はい。ありがとうございます。僕はここの並びの宿に泊まっていますのでそのことも伝えてください」
「分かった。今この国は色々トラブルもあるらしいから危険があればすぐにこの国を離れるようにな。君に何かあればマーシーも悲しむ」
「分かりました。マーシーさんによろしくお伝えください」
僕はその場を離れて行った。
御者くん。なかなかいいヤツじゃないか。
若いのにしっかりしているしな。
さてと、腹ごしらえでもしてホテルでゆっくり夜になるのを待つかな。
ホテルの並びにあった定食屋でお腹を満たしてホテルに戻りひとっ風呂浴びる。
まだ夕方前だったので少々時間潰しになった。
少しうとうとしてしまったのでソファに座ったまま少し瞼を閉じる。ベットに入ってしまうとおそらく朝まで起きなさそうだ。
スッと意識が飛ぶ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。どのくらい経ったか分からないがゆっくりと目を開けると窓から見えるのは真っ暗闇に街頭の光。
時間を確認すると夜の10時をまわっていた。
結構寝たな。6時間くらいは意識がとんでいた。
寝過ごさないでよかったと心底思う。
さてと、城に行ってみるか。
急いでいないし昨日みたいに空を駆けていくのではなく下道をゆっくりと歩いて行こう。
街は夜も明かりが灯っていて酒を出す店も多い。
よく見ると若い女の子の客引きも多いことに気づいた。まぁ大きな街だからな、そういう店もあるよな。
少し寄って行こうかという葛藤と戦いながら夜道をお城方面へと歩いていく。
お城付近まで近づくと昨日と同じ木の上に上がり、リンの部屋の見える位置で索敵と目視でお城の様子を探る。
リンの部屋にはリンが1人。そばにはエルムがもちろん居る。
流石に人が多すぎてタカシとマサルは何処にいるか分からないか。
城の広さもあり付近にウチの2人は見当たらない。城の奥のほうなら索敵も届かないくらいの広さだ。
右手に見える門にガタガタと馬車が2台近寄って行く。なにやら門番と話しをしていると門が開かれてその馬車2台は城の中へと入っていった。
グワッ!
ギャッ!
大きな悲鳴ではない。小さく途切れた周りに響かせない悲鳴。索敵で確認すると門番が2人とも門の手前で倒れていた。
そして馬車から数人の人影が飛び出し城の中へと入っていく。
「随分ときな臭いことになってるじゃないか」
索敵で侵入者を確認すると猛スピードで城の中を進む複数の姿が確認できる。何人かはすでに倒れているので速攻で城の人間に見つかって始末されたんだろう。そのうち1人が迷わずリンの部屋へと向かっている。
僕は咄嗟に空を駆けてリンの部屋のバルコニーへと向かった。
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