バレバレでスタンバイ。中々滑稽だ
公園のような広い芝生地帯や木々の生い茂る森林地帯が目につきだすとこの辺りは人はあまり見かけないようになりだした。
道はしっかりと作られており、石畳の広い道はまっすぐと続いている。
人もいないのにどうやって情報屋を探せばいいんだろうか?
道をたまに通るのは馬車くらい。秦に入って来る馬車と出て行く馬車。
索敵を広げて確認。
ポツポツと人はいるのか・・・・・。え?森の中じゃないか。森の中に入れということか?
目視できていないが名前と職業だけは確認できるのでその中から情報屋を探してみる。
いるな・・・・・・森の中に・・・・・・。
仕方がない。周りに誰もいないのを確認してからバッと森に入ってその情報屋へとゆっくりと向かって行く。
木々が邪魔をして先は見えないが家や店があるようには感じられない。
こちらの足音に気づいたのだろうか先でこちらを向いて警戒している人影が見えてきた。
その姿は長く伸び切った、毛は手入れをされていない犬の姿の獣人だった。
「何か用か?」
犬の獣人は小さな木製のテーブルの前で木製の椅子にかけていた。
「ここに来たということはどういうことか分かるでしょう?」
僕は意味深に答える。
「何が欲しい?」
「情報だけでいいですよ」
「前金だ。ひとつにつき大銀貨5枚」
僕は金貨を1枚テーブルに置いた。
「なんの情報が欲しいんだ?」
「俺の知らない情報を2つください」
「お前が何を知っているか分からないが?」
「俺が欲しいのは今この国に起きている王位継承争い関係です。王子や王女の国民が知っているようなことは分かってる。昨日の誘拐騒ぎ2件も知っている。エンジとリャンがきな臭いというところくらいは知っている」
「そうか・・・・・昨日の2件も知っているとは中々良い情報網じゃないか」
2件とも絡んだせいだけどな。
「他に良い情報はありますか?」
「ここで手に入る情報は金で買える情報くらいだが、いいのか?」
「もちろんですよ。だからこそ買いにきたんですから」
「そうか。それではまず1つ目だ。ホウリュウの側近のエンジは人間ではない可能性が高い」
「獣人や亜人でなく?」
「おそらく魔族だ」
「どうやってそんなの調べたんですか?見た目はよっぽど特徴なければ区別つかないでしょう?」
「企業秘密だ。その情報は売ってない」
「この国を転覆させようと企んでるとか?」
「さあな、そこまでは分からない」
「・・・・・・・・・・・・・オズワール派ですか?バーウェン派ですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・さあな。それも分からない」
少し険しい目になった獣人の情報屋。僕が何も知らない一般人ではないぞという牽制にはなったかな?
「ありがとうございます。それじゃあもう1つは?」
「近々間違いなく王子王女の派閥で殺し合いが起きる」
「それは次期王様を巡ってってことで?」
「それしかないだろう」
「王様の死が引き金となってってことですか?」
「いや・・・・・おそらくその前に事は起きる可能性が高い」
「王族の誘拐が起きてるくらいですからね。この2つの誘拐も1つでも成功していればことは起こっていたってことでしょうね」
「だろうな」
僕は追加で金貨を1枚テーブルに置いた。
「まだなにか聞きたいのか?教えられる情報はこれくらいだが」
「それじゃあ俺から1つ質問させてください」
「売れる情報なら売ろう」
「リーエンの血を受け継いだハーフエルフ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「知っているが、売れない情報だということですか?」
「王位継承の問題には関係ないが、エルフの生んだ子にリーエンの血が受け継がれていることもある」
「わざわざ今『王位継承の問題には関係ない』と入れたのはそのハーフエルフは認知されていれば王位継承に関わってくるくらいの血筋だということかな?ひょっとしたらそこらの貴族の子じゃなく王様の子?」
「・・・・・・・・・・確かなことは分からん。とだけ言っておこう」
「了ー解。何か他に金額分で教えてくれることはありますか?」
「以上だな。これ以上追加で出されても売れる情報はもうない」
「そうですか。ありがとうございます。分かってるとは思いますがこの後俺の命を狙うようなことはないように。誰がきても返り討ちにあうのが関の山です。もちろんここで情報を買ったことはお互い誰にも喋らないように、ですね」
「もちろんだ。姿も変えているからこの後足取りも掴めなくなるのだろう?」
変化の指輪も知っているか・・・・。
「有意義な情報をありがとうございます」
僕は振り返りゆっくりとその場を後にした。
さてと、情報屋から得られる情報はこんなものかな?
左右を木々に囲まれた石畳の道を歩きながら考える。
今後どう動くべきか?
王子王女の争いに一枚も二枚も噛んでしまったのは仕方がない。タカシとマサルがその渦の渦中にいることからこの争いから抜け出すことは難しいと考えると、僕はどうするべきか?
ロンやリンあたりについて王様になれるように手伝う選択肢か?
まだ会ったこともないがマサルが護衛をしているメイメイにつくべきか?
第一王子、第二王子あたりがまともヤツであるならどちらかに穏便に王位を継いでもらってなるべく争いのないように動くべきか?
どの選択肢も外からじゃどうも動きにくいな。
ふと気づく。
またレイファンに尾行されているじゃないか。
懲りないヤツだな。そんなにこの指輪が欲しいのか?
また遠回りして僕の前方に先回りしだした。まさか、同じ手できたりしないだろうな?
折角レイファンが先回りしているので僕は歩をゆるめてゆっくりと道を歩く。
前方の曲がり角でスタンバッているレイファン。その姿は滑稽とも言える。一体なにをするつもりだ?
数十メートル先でタッタッタッと僕の視界に入ってきたレイファンはさっきとは違った服装で現れた。さきほどは子汚い服装だったが今度は真っ白のワンピースに真っ白のつばの大きな帽子。
レイファンが道の真ん中に立つとバタバタバタッとその真っ白なワンピースが揺れ、ビュンッとつむじ風に煽られて真っ白な帽子が上空に飛んだ。
その帽子は空高く舞い上がりこちらにゆっくりと向かってきている。
なるほど。
視線を上に向けさせてその隙を狙ってさっきのスピードで一気に指輪奪取作戦か。
ところがどっこい。
僕は歩を止めずに風魔法で上空に飛んだ帽子を押し返してそのままレイファンの頭の上に着地させた。
なにごともなかったかのように。
レイファンはその場で固まって動かない。
流石に帽子が戻ってきたときの対応なんて考えてなかったか。
プルプルと震えているレイファンの近くまできた僕は。
「いやあ、飛んでいった帽子が戻ってくるなんてすごいですね。手品かなにかですか?」
「この!よくもぬけぬけと!!あんたが風魔法使ったのなんて分かってんのよ!!」
レイファンはバックステップで距離を取り、ふとももに装備していたナイフを手に持った。
「こうなりゃ力づくよ!!」
「そんなにコイツが欲しいのか?」
僕は右手の指輪をレイファンに見せた。
「おとなしく渡しなさい!!」
「譲ろうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?」
レイファンは僕の言葉に驚いた表情を見せた。
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