え、ちょっ!?それはやめてくんない?
一応目的地は6区ということでゆっくりと6区方面へと足を向けている。
6区の情報屋からなにかしら追加で情報が得られればという考えだ。
脳内で1人ミーティングーー!!
イエーーイ!!
マサルの護衛相手はおそらく第一王女のメイメイだと思う。牛くんを連れているあたり人間嫌いのメイメイ王女で間違いなさそうだ。しかしなぜマサルを護衛につけているかは不明だ。
オークかなにかと思ったんだろうか?
王子王女の中でまともなのは聞いた感じじゃ第三王子のロンか。タカシが護衛についているから今後は誘拐暗殺は防げるだろう。第二王女も会って話をした感じじゃ普通の女の子という感じだったが次期王様かと言われれば難しいかと思う。
次期王様に一番近いのは普通に考えれば第一王子のホウリュウで間違いないだろう。何を基準で王になるのかはあるが、政治に貢献していることと長男であることを考えると一番丸く治まるはずだ。
そうなると・・・・・・・なぜロン王子とリン王女が誘拐されそうになったか?
一般的な考えとしてなら対抗馬を亡き者にすることが一番有益。
第一王子が・・・・・・。いや、まともに王位継承の話になれば一番の有力候補である第一王子が自身の手でわざわざ対抗に手をかけるのは考えにくい。放っておいてもそのまま王位につけると考えれば王族殺しという危険な橋を渡ることもない。
そう考えれば第二王子・・・・・・・。可能性はあるか。ロンもリンも第一王子についているとすれば勢力的にも邪魔になるし。最終的に第一王子から王位継承権を奪い取れたと考えればその時に他の敵はいないほうがいい。
でも、そう考えれば第一王子も同じか・・・・・。ロンとリンが第二王子よりなら第一王子が先に手をかける理由にもなるか。
王子、王女同士でどうつながっているのかも気になるな。
全く別々の勢力なのか、それともどこかとどこかが繋がっているのか?
リンは聞いた感じじゃ1人溢れているようにも感じるが。
後は第一王子の所のエンジと宰相のリャンか。エンジの集めたマジックアイテムに封魔錠があるということはリンを襲った可能性が出てくる。
この2人は情報が少ないが怪しい存在であるということくらいしか分からないか。
そして後は・・・・・・今僕の後をついてきているハーフエルフか。
レイファンと言う名前の14歳の女の子だ。
レイファン・リーエンではなく、ただのレイファン。
『月の加護』付きは漏れることなく全ての人間にリーエンって名前がついているのにもかかわらず、このハーフエルフにはリーエンがついていない。
そもそもこの国の人間は獣人亜人嫌いなのにエルフを孕ませたってことだろ?
そうか、そう考えればエルフに子供ができてしまってそれを認知することができずに育てられ、ひょっとしたらレイファン自身も自分にリーエンの血が流れていることを知らない可能性もあるか。
この国を出ることがなければ『月の加護』の影響も気づかないこともありうる。
僕は索敵で人通りの少ない路地を選択してその道に入って行く。
さてと、レイファンは何を狙ってるんだろうか?
僕の命か?ただ監視か?
レイファンがぐるっと先回りし始めた。今僕が通っている道の先に先回り。
なにかしようとしているな。索敵で動きがバレバレで目もあてられないが。
「痛い痛い痛い、いたーーい!」
目の前で帽子をかぶった女の子がうずくまっている。もちろんレイファンだが。
僕はゆっくりとその子に近づいていく。チラリとレイファンはこちらを見た。
「痛い痛いーー、お腹が痛いーー」
僕はその子のステータスをチェックしたが、特に病気チックな表記は出ていない。そりゃそうだろう。ステータスはわりかし高い、流石『月の加護』。特に魔力とスピードが400近い。
レイファンと目が合う。
僕は自然と後ろを振り返った。
「ちょっと!!あんたよ、あんた!!助けてよ!!急に腹痛が襲ってきたの!!ねえねえ!!イタタタタタ!!」
なんて分かりやすい罠なんだ。
近づいたらブスリとかないだろうな?まぁ僕のガードを貫けるわけでもないが。
僕はレイファンにゆっくりと近づいていった。
5メートル、3メートル、1メートルまで近寄る。
手を伸ばせば触れられる距離まで来た。
「大丈夫か?医者でも呼ぼうか?」
「イタタタタタ・・・・・大丈・・・・・・・・・・・ブ!!!」
咄嗟に僕の右手に手を伸ばして突っ込んできた。
「残念」
僕はひょいっと手を引いて体ごと突進してきたレイファンを躱した。
流石スピード400だな。良い動きだが。
「ちっ!!」
レイファンがさらに地面を蹴って僕の右手に手を伸ばすが僕はその手を掴んでその動きを止めた。
「捕まったけどここからどうする?」
「いやーーーーーー!!痴漢よ痴漢――――!!誰か助けてーーーー!!!!!」
え!?いや!?ちょっ。それはやめてくんない!?
僕は咄嗟にその手を離した。
レイファンは僕から距離をとってタッタッタと壁づたいに身軽に建物の屋根へと跳んで逃げていった。
遠くから人が近づいてくる声が聞こえる。
ブワッと額から冷や汗が流れ出て来た。恐ろしい。痴漢の冤罪とはこれほど恐ろしいものなのか。
レビテーション、突風。
僕はすぐさま風に乗り、建物の屋根に降り立つと屋根づたいに逃げていくレイファンを見つけた。
追いかけるか・・・・・。いや、別にいいか。
おそらく彼女が狙っていたのはこの指にはめられた赤い宝石。『変化の指輪』だったのだろうな。
これが『変化の指輪』と分かって狙ってきたのかどうかは分からないが。
僕がこのあたりであまり見ない冒険者だったからソイツが良さげな指輪をしていたから狙っただけなのかもしれないか。
僕は屋根づたいに少し離れて人通りの少ない別の路地に降りてそこからまた6区へとゆっくり向かった。




