お前は変に我慢しない方がいいよ
早朝。僕は今ホテルのソファに座っている。
目の前にいるのは
「そういうわけで護衛を受けてもうたわけや」
タカシが城にいる間の一連の話を終えたところだ。
「タカシとマサルが別々で護衛を受けたと」
「せやな。俺は第三王子のロンって子供や。マサルは知らんけど、とにかく美人やということや」
「牛くんか。この国の人間は獣人を毛嫌いしているはずなんだがな」
「そういえばそうやな。城の人間が全員獣人嫌いやないってことなんかな?」
「名前は聞いてないと」
「そういえば聞いてないわ。美人やとだけ」
「マサルは3日くらいって言ってたんだよな?」
「せやな。俺もそのくらいかな?決まってないけど。とにかく次の王様が決まれば落ち着くみたいなこと言ってたからそれがパッと決まればそこまでかな?」
「次期王様なんてすぐに決まるもんなのか?それで言うとそのロンって少年も王様候補ってことか。第三王子ってことはまだ最低2人は第一第二と王子がいるか・・・・」
「第三ってどういうことなん?ロンが三男ってことなんかな?」
「普通はそうだろうな。けれど奥さんが複数いる場合はその奥さんの血筋で継承権の順番が変わることもあると思うが。それでもロンよりも上に2人いることは間違いないな」
「第一と第二を叩きのめしたらロンが王様になんのかな?」
「頼むから理由なく王子に手をかけるなよ。国を敵にまわすぞ」
「リンちゃんっていうマーシーが助けた子は第二王女やねんな?」
「そうだな。ちょっと情報が少なすぎるな。俺たちの持ってる情報は第三王子がロンで第二王女がリン。そしてその2人とも命を・・・・いや、身柄を狙われていたってことくらいか」
「じゃあ俺は城の中で色々聞いてみるわ。第一王子に第二王子に次期王様争いのことやな」
「ああ、あまり大胆に聞くなよ。身近な人に聞くだけでいい。あと、ロンって少年とは2人になれることがあるなら色々聞いてみろ。王子自身の持ってる情報は価値がありそうだからな」
「了解。目立たんようにするわ」
「俺は外で情報を集めてみる。俺たちはまだこの国のことを知らなさすぎるからな」
「ほんだら行くわ。ちょっとの間別行動やな」
「この世界に来て初めてだな。無茶はするなよ」
「分かってる、分かってるって。マーシーとマサルがおらん所では無茶はせーへんよ」
「タカシ」
「ん?なんや?」
「自分の思うように動けよ。お前は変に我慢しない方がいいよ」
「・・・・・・・・・せやな。無茶はせんけど、我慢もせーへんわ」
「よし、行ってこい」
「おう、ほなまたな」
タカシは部屋を出て行った。
さてと、僕は僕で少しまわってみるか。とりあえず冒険者ギルドで聞き込みと、話しやすそうな人がいれば色々聞いてみるか。
僕はまず大きな鏡の前で指にはめた真っ赤な変化の指輪に魔力を流す。
すると指輪から漏れ出す魔力が体を纏わり自身の姿がボーイッシュなかわいい女の子に変わった。
「すげーな。あーあー。流石に声は変わらないか」
もういちど指輪に魔力を流すと今度は金髪の澄ました感じの姿に変わった。
「アルベルト団長を若くした感じだな。これでいいか」
冒険者ギルドであの時タカシと一緒に居たため貴族くんに顔を覚えられている可能性があるからな。
僕は3人分のチェックアウトを済ませてホテルを出た。
先に冒険者ギルドに行くか。
朝方ではあったが人通りは多い。
昨日はバタバタしていたためゆっくりとまわりを観察できていなかったがこうして見ると冒険者は少ない印象だ。ギルドも近いのにまわりは町民や綺麗な身なりの貴族が多く感じる。帝都の冒険者ギルドの周りはムサいおっさんとかが多かったが。
索敵と識別で周りを観察しながら歩く。
やっぱり変わっているな。身なりのイイヤツは鍛えている感じじゃないのにステータスが200やら300台だ。そして『月の加護』。
やっぱりこれがついてるヤツが王族の血が入ってるってことだろうか?
王族、貴族が単純に地位、権力、そして強さまでも持っているってことか。
ホテルを出てからこちらに気づかれないように50メートルくらい離れて後をついてくるものがいる。
偶然か?尾行されてるのか?
まぁ少し放っておくか。
冒険者ギルドに着いて僕は中に入った。
飲食のできるテーブルが並んでおり奥にはカウンターだ。
僕はそのままカウンターへ向かいひとつの受付に並ぶ。
この前の人とは別の白髪交じりのおじさんが受付をしている。
「すみません、少々よろしいでしょうか?」
「なんだ?こんな朝早くにはまだ依頼も貼り出しされてないぞ」
「私はこの街にきたばかりでして、噂だけは色々聞いているのですが、この街でのルールなどお伺いできるところがあればと思いまして」
「この街のルール?それなら身なりの良い貴族王族には関わるな。それと獣人亜人とは触れ合うな。それくらいだ」
「なにか他にないんですか?昨日は居酒屋の二階が吹っ飛んだり、王族の馬車が狙われたって耳にしましたが」
僕は小声でそのおじさんに話しかけた。
「お前・・・・・どこでそんな情報を?ああ、情報屋か。情報屋は選ぶようにな。あいつらは3割くらいは嘘の情報を混ぜてやがるからな」
情報屋?そんなヤツもいるのか。
「3割が嘘・・・・。なるほど、100正確な情報を流す情報屋はいない・・・・ってことですね。そんなのが1人いるだけで他の情報屋が商売にならない・・・・か」
「よく分かってるじゃねーか。まぁ全部を信用するなってことだ」
「じゃあ私に情報を売ったヤツはあまり信用ならなさそうですね」
「どこで買った?第1区か?第4区か?それとも・・・・第6区画の亜人か?」
「・・・・・・・・・・第1区です。第6区は亜人が情報を売ってるのですか?」
「1区か・・・・。1区は情報屋が多いから料金は安いがまがいもんも多い。情報の正確さなら4区がお勧めだ。そこでも手に入らない情報はたまに6区で手に入るって感じだな」
「分かりました。ありがとうございます。参考になりました」
「おう、気いつけてな。身なりのいいのには近づくなよ」
僕はギルドを出た。
さてと・・・・・1区とか4区とか全然意味が分からんな。
適当に朝飯でも食いながら聞いてみるか。
近くの飲食店に足を運ぶ。
ちなみにさっき僕を尾行していたっぽいヤツはさっきと同じ距離離れたところで待機している。
「サンドイッチとコーヒー」
店内でサンドイッチを口にしながら窓の外を見る。
尾行しているヤツはこの距離じゃ目視はできないか。どこかでアクション起こしてくるかな?
店員さんに少しばかり話を聞いて1区4区の場所はあるていど把握できた。
お城の場所から扇状に街を割っている感じだ。ここ、秦の国は帝都のように中央にお城があるのではなく、お城を中心に半円になっているようでお城の向こうは塔があり、山と森があるみたいだ。
お城を中心に反時計回りに1区2区3区・・・・・そして端が6区の6分割。
6区は森林地帯になっていて人間もいるが、獣人亜人が多く集まっているらしいのでマサルが居た教会ってのもおそらくここだろう。
腹ごしらえをして店を出て尾行を確認する。
まだいるな。
よし、4区へ向かってみよう。
僕は鼻歌混じりで4区へと向かった。
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