事の成り行きを2行で説明しよう
「はあああーーーーー、極楽ーーー極楽やーーー」
タカシは大浴場にいた。
「こんなでっかい風呂があるなんてなー。エドガーさん傷はもう大丈夫なんか?」
「ああ、大丈夫だ。さきほど回復魔法をかけてもらったからな。タカシくんにかけてもらったポーションも役に立ったよありがとう」
「そういえばポーション使い切ってもうたわ。マーシーにまた買ってもらわな」
「ポーションならいくつか城にあるのを用意させよう。私の為に使ってもらったわけだからな」
「マジで?ありがとう、マーシーに説明すんの面倒やと思っててん」
「そのマーシーというのは君の仲間かね?」
「せやねん、こいつが相当の守銭奴でさー。金のことになったらチマチマチマチマ言いよるからもらえるんやったらありがたいわー」
「分かった。それでは用意させよう。私は先に出るがタカシくんはゆっくりしていくといい」
ザバー、とエドガーさんは湯船から出て風呂から出ていった。
「こういうお城にはでっかい風呂とかやっぱりあんねんなー。魔大陸もそうやったしなー」
30分前に城に着いたタカシたち。
負傷していたロンとエドガーさんを見て慌てたように兵士が駆け寄って来、魔法使いが現れて2人を治療し始めた。
ロン王子を助けた功労者として散々お礼を言われて食事の用意をするからとそれまで風呂でも入ってゆっくりしておくように言われて今タカシは今日の疲れを癒していた。
「飯かー。飯よりも酒が呑みたいなー」
ガラガラ
風呂の扉が開いて誰かが入ってきた。
「あれ?この時間はいつも誰も入ってないのに先客がいるのかな?」
子供っぽい声がしてタカシは一体どんな子が入ってきたのかと目線を扉の方へと向けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・牛や。
子供の声とは裏腹に、筋骨隆々な3メートル近い巨漢に首の上は牛面だった。
そのままタカシの視線は下へ、おのずとタカシの視線は牛男の股に向けられた。
「勝てるか!!そんなん無理やん!!人類の基準を無視か!!」
「その声は・・・・・・・タカシ」
牛男の横からひょっこりと現れたのは・・・・・・マサルだった。
「なんでここにおんねん?」
「それはこっちのセリフです」
「マサルの知り合いなの?良かったー、知らない人が入ってたから心配しちゃったよー」
その牛男は牛の顔をニヤリとさせた奇妙な笑顔で中に入ってきた。
湯船に2人と牛が並んで浸かっている。
「ほんで?簡単に説明せーや」
「彼の名前は牛くんです」
「違うよ、ミノだよ」
「タカシと離れたあと、ある教会で獣人、亜人が集まってまして、そこの1人の人間に護衛を頼まれまして、3日ほど護衛の依頼を受けました。そして牛くんとお風呂に」
「随分と簡単に言い切ったけど・・・・・・・・・・女か?」
「何が・・・・・・?」
「その依頼をしたんは女か?」
「女じゃないよ、お嬢だよ」
「牛くん!ちょっと待って!今説明します!」
「まぁマサルが動くんは女絡みなんは別にええけど、マーシーに説明せなな」
「その人は死ぬかもしれないって言ってたんです。知り合った人が死ぬかもしれないって言われて俺は放っておくことができませんでした」
「でも、美人なんやろ?」
「ええ、とっても」
「さよけ。まぁ明日マーシーに説明せなあかんな。おかげで数日この国におるハメになるわけやしな」
「タカシは?なぜここに?」
「ああー、なんて言うか。馬車が襲われとって、襲われてた方はなんか王子らしくて、助けたかわりに風呂入って飯食っていけって」
「なるほど・・・・・タカシっぽいっちゃ、タカシっぽい」
「放っておいてもいいかとも思ったんやけど、その王子ってのが10歳くらいの子供やねんけど。まぁ気のええっていうか、漢気あるっていうかな」
「タカシが気に入るような男だったってことですね。それなら良いヤツなんでしょうね」
「せやな、ええヤツやな」
「それで?なんで牛くんと一緒に風呂なん?」
「依頼主さんが入っておいでって言ってくれまして」
「この時間帯は誰もお風呂に入っていないから僕はたまに入らせてもらってたんだよ」
「たまたま遅く風呂に入ってこんなんおったら裸足で逃げだすで」
「でしょうね。俺も知り合いじゃなかったら無理」
「ひどいよー。僕が入れるお風呂なんてここくらいしかないんだよー」
「その体の大きさでしたらそうでしょうね」
「牛くん強いん?めっちゃパワーありそうやん」
「ちなみに俺の掌底を腹に喰らって無事でした」
「そうなん?今度ちょっと手合わせしよーや」
「喧嘩は嫌だよー。殴るのも殴られるのも嫌いだよー」
そろそろ風呂からあがろうとタカシは立ち上がった。
「ほな、俺は先にあがるわ。明日マーシーにはマサルのことは伝えとくから安心せい。とりあえず3日やな?その3日はどう動くかはマーシーに任せるわ。じゃあな、牛くんも」
「おーう、お疲れー」
「タカシ、じゃーねー」
馴れ馴れしくじゃあねと言ってきた牛くんとマサルを風呂場に残してタカシは風呂から出た。
出たところでどうしようかとキョロキョロしていたら、さっき助けた女性が近寄ってきてひとつの部屋に案内された。
そこにはテーブルに豪華な食事とお酒が並べられており、人が20から30人くらい入る部屋だった。
「タカシ殿!入って入って!食事にしよう!」
ロンが声を掛けるとタカシは目の前にある自分の席に座りお酒を注いでもらいそれを口にした。
「タカシ殿ロン様をお救いいただきありがとうございます」
白髪の60歳くらいのじいさんが話しかけてきた。
「タカシ殿この度は本当に感謝する!ロン様なくしてこの国の繁栄はありえん!」
40くらいの綺麗な鎧姿のおじさんだ。
ロンはタカシの目の前で対面するように席について食事を口にしている。流石にお酒はロンの前にはないようだ。
「タカシ殿。タカシ殿はどこであのような強さを?随分お若く見えるが冒険者なのでしょうか?」
ロンが話しかけてきた。
「せやな、冒険者や。色々な国に行って、いろんなヤツと戦ってきたからそういう経験が俺を強くしたんやろな」
「お名前を聞いて調べたのですが、ひょっとして帝都の武闘大会で優勝を?」
「なんや、知ってたんか?せや、武闘大会も優勝した」
「やっぱりそうだったんですね!僕もその強さを見習いたいです!」
10歳のロン少年はタカシをまるでヒーローを見るような目をしていた。
「タカシ殿、折り入ってお願いがございます」
白髪のおじいさんだ。
「少しの間だけでも、ロン様の護衛をしていただけませんか?今回のようなことになりましたら次はどうなるか分かりません。しかしタカシ殿の強さであればロン様をお守りいただけるかと思うのですが」
「私からもお願いします。今この国は恥ずかしながら不安定です。次期王の決まるまでの間は今回のようにロン様を襲う輩が再び現れるかもしれません。何卒、何卒お受けいただけませんか?報酬はいかほどでも」
綺麗な鎧のおじさんも同じようにすがってくる。
「けどなー、こっちにも予定がなー」
「私からもお願いしますタカシ様。私たちではお世話はできてもお守りすることは敵いません。ぜひお願いします」
タカシの横で給仕をしていた、さっき助けた女性にもお願いされる。。
女の子にお願いされると流石に少し考える。
けれど、マーシーも待たせているわけでマサルもここに居ることを伝えないといけない。
「ロン様を守って・・・・」
最後にさっき助けた小さい女の子だ。
「はぁ、分かった分かった。けど、一旦明日の朝に俺の仲間に会いには行かせてくれ。そのあとまた戻ってくるわ。それでええか?」
「はい!ありがとございます!」
タカシの横に居た女性が深々と頭を下げる。
「ありがとうございます!タカシ殿!ご無理を言ってすみません!」
ロンは嬉しそうに立ち上がった。
流れで護衛を受けてしまったタカシ。
とりあえずマーシーにどう言おうか頭を捻って考える。
まぁマサルも勝手に受けたわけだから責められても2分の1で済むかな?
タカシはそう考えた。
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