単独行動、その時タカシは
今俺は裏通りを駆けている。
さっきまで横に居ったマサルはもう気づいたら居らんかった。
「はぁ、そろそろ誰も追ってきてへんかな?」
人通りの少ない通りで後ろを振り返っても誰かがついてきている感じはもうない。
「マサルは大丈夫やろか?流石に捕まることはないと思うけど」
夜の暗闇に紛れるように家の屋根づたいに移動したから結構離れてもうたな。
いまいちここが何処かわからん。
なんや、建物も随分と少ないとこまで来たな。
公園みたいな森林があったりして結構さびれた感じやな、このへんは。
ドン!
ヒヒーーン!
なんや?大きい物音と馬の鳴く声が聞こえた。
グワァァーー!!
キャーー!!
悲鳴と同時に俺の足はその場に向かっていた。
「グアアァァーー!ロン様・・・・お逃げくださ・・・」
鎧姿の兵士が身の丈もある大剣を持った男に背中から切られてその場に崩れ落ちる。
「さっさと王子を連れ出せ」
その大剣を持った男。長身でガタイのある中年で、革製の胸当てをした比較的動きやすい服装だ。魔法使いのようなローブを着た男が2人。同じように皮の胸当てをした剣を持った男2人を連れていた。
目の前には装飾の施された馬車があり馬は首を刎ねられて寝転がっている。
足元には鎧姿の兵士が4人。背中や肩口が切られて流血していた。
その時バタン!と馬車の扉が開かれ1人の少年が姿を現した。その少年は馬車の扉のノブにナイフを刺し込んでその大剣を持った男を睨みつける。
「待て!貴様の望みは僕だな!他のものに手を出すな!」
「ロン王子。確かに俺たちの狙いは貴様1人だが」
ドン!
その男は手に持った大剣を足元の鎧姿の兵士の背中に深々と突き刺した。
「目撃者を生かしておくほど優しくはない」
「きっさまーーー!!!」
そのロン王子と呼ばれた少年は腰の剣を素早く抜きその長身の男に対して切りかかった。
ギイン!!
それを大剣で受け止める男。
「グッ!!こんなガキがなんて力してんだ!だから王家の血は嫌いなんだよ!!」
ドゴッ!!
男の右足がロン少年の左わき腹に深くヒットするとその少年は体をくの字に折り、勢いそのまま。
ドン、ズザザザー、ドサッ
と、5メートルくらい吹き飛んで道の脇に立つ大きな木にその体を打ちつけてうずくまった。
「馬車にまだいるかもしれん、焼いて燻し出せ」
「ファイアストーム」
「ファイアストーム」
馬車は地面から立ち昇る炎に包まれた。
その時真っ暗闇の空から馬車に向かって落ちてくるものがあった。
鳥か?飛行機か?いや、タカシだ。
ドオォォォォン!!!!
馬車の天井を突き破り中に着地。
「大丈夫やったか?」
女性1人と女の子1人。マーシーの言ってたメイド服っぽいものを着てる。スカートは短くないけど。
外からは「なんだ?なんだ?」と声がしている。
女性の方が馬車の扉に必死に手をかけてたけど外の炎のせいでノブが焼けてもうてて掌にひどい火傷ができてる。
「とりあえずこっから出るで」
俺は2人を右左に担いで外の連中の居る逆側の壁を目一杯蹴りで破壊し、一気にその先の森へと駆けた。
100メートルくらい入って2人を地面に座らせる。
「大丈夫か?うわ、手ェめっちゃ火傷してるやん。そうや、俺マーシーにコレ持たされてたわ」
ポーションを取り出して女性の手に振りかけた。
淡い光を発して掌が綺麗に戻る。
「おお、すごいな。こんな便利なもんなんや」
「お願いします!!お願いします!!」
いきなり女性が俺にしがみついてくる。
「おわっ!どうしたんや?」
「どうか!どうか!ロン様をお助けください!!お礼はいかほどでもさせていただきます!どうかお願いします!!」
「お願いします!!私はどうなってもいいですから!!ロン様をお助けください!!」
すがるように女の子の方も俺にしがみついてきた。
「まぁまぁ、落ち着きーや。とりあえず様子は見に行くから」
「お願いします!!ロン様!ロン様を!!」
「・・・・・・・・・・・・・気が向いたらな」
俺は立ち上がってさっきの馬車の所へと戻る。
「おい、お前たちは森の中に入っていったヤツを見て来い。お前はロープでロン王子を縛れ」
「へい」
「了解」
ロン王子は木にもたれかかってうずくまっている。意識はあるようだが呼吸も苦しそうで表情をしかめていた。
「おい、おとなしくしてろよ。殺しゃしないからな」
俺はロープを持った男の前に姿を現した。
「な!なんだテメー!!」
他に2人森に入ろうとしていたが俺に気づいてこちらを見ている。
「お前がロン様ってヤツか?」
子供やんけ。10歳くらいか?
「あ・・・あなたは・・・・?」
「女の人と女の子は無事や。それを伝えに来た」
「そうか・・・・・ありがとう。すぐにここから逃げて・・・ください。僕が時間を稼ぎます」
「助けた2人からロン様を助けてくれって言われてんねんけど」
「無理です・・・。あの大剣の男。あれには勝てない」
「そっか、じゃあどうすんねん?」
「見知らぬ方。ぶしつけな・・・お願いですが、助けていただいた2人を・・・・お願いできませんか。お礼は2人に言えば・・・いかほどでも」
「お前は?」
「こいつらの相手を・・・します。少しくらいなら時間を稼げます。どうやら狙いは僕のようですし」
「お前が捕まるか死んでもうたら、さっきの2人はきっと悲しむで。自分はどうなってもええからお前を助けろ言うてたんやぞ」
「それでも・・・・それでも・・・・・2人をお願いします」
その少年は手元に転がっていた剣を力強く握りしめてフラフラと立ち上がった。
「そっちの男は殺せ。ロン王子は殺すなよ」
大剣を持った男が部下に指示を出した。
「少年・・・・・・・・・・・・・気が向いたわ」
俺は左から寄ってきていた2人の近くに移動すると2人を蹴り上げてその大剣を持ったヤツのあたりへ蹴り飛ばした。
ドサッ!ドサッ!
すぐに少年のいる場所まで戻る。
「お前は座ってろ」
肩を掴んで木の根元に無理やり座らせる。
「なんだ!やんのか!!」
ロープを持った1人が腰の剣に手をかけたが前蹴りで胸当ての部分を蹴ると真っ直ぐに吹き飛んでいく。
大剣を持ったヤツの横を勢いよく通り過ぎていった。
「ファイ・・・」
俺は親指で人差し指を弾いた。
バチン!!
と残っていたローブの男の額に衝撃が走りそのままローブの男は後ろに倒れ込んだ。
流石俺。勝負強い。ここぞって時は成功するもんな。気功弾、指弾バージョン。
俺は大剣の男を睨みながらゆっくりと近づいていく。
男は大剣を両手で持ち、右肩に担いだ。
「ロン王子を俺が運ぶハメになっちまったじゃねーか、どうしてくれるんだ?」
「運ばれて行くんはお前の方やけどな。担架でな」
俺は距離を詰める。
男は構えたまままだ動かない。
ゆっくりゆっくりと歩いて距離を詰める。
動いた。
ドン!!!
男が大剣を振り下ろすよりも早く俺はその男に肉薄しボディ一撃。
男は前のめりに崩れ落ちた。
ガランガランと音をたてて転がる大剣の音だけがその場に響いた。
「よっしゃ、しまいやな」
俺は倒れている鎧姿の兵士を確認してまわる。
あかんか。心臓が止まってもうてる。治癒の血も死んでるヤツには効かんってヤマトも言うてたからな。お、1人だけ息してるヤツがおった。俺はあるだけのポーションをその兵士の切られた背中から全身にぶっかけた。
「う・・・ううう・・・」
「おい!無事か!!」
「はっ!!ロン様は!!」
「無事や。歩けるか?」
「うぐ・・・。私はいい。ロン様を頼む」
ロン少年はフラフラとこちらに近づいてきた。
「エドガー、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「ロン様。よくぞご無事で」
「とりあえずここから離れよか。さっきの女の子らも連れてくるわ」
俺はさっきの女の子2人の元へと向かい、事情を説明して現場にもどってきた。
「ロン様!!ご無事で!!」
「ロン様!!」
女の子2人は少年に抱き付いて涙を流していた。
「とりあえずここは離れよか?お嬢ちゃんらはその少年頼むわ。俺はこっちの鎧の人運ぶから」
「ウェルやキンスは・・・・・・」
「アカン、この人以外は皆死んどる。残念やけど」
皆が暗い表情になるが少年が口を開いた
「とにかく帰りましょう。また襲われることもあるかもしれません」
「はい」
「ええ」
俺らは5人で夜道を進んだ。
歩きながら自己紹介だけは簡単に済ませた。
ロン様ってのはこの国の第三王子ってヤツらしい。第三ってどういう意味かも分かってへんけど、とにかく王子やってことや。それ以外は護衛とお付きの人ってこと。
「あのー言いにくいねんけど」
「どうしました?タカシ殿」
「俺ってさっきまでちょっと追われてる身やってんやんか。だから、もしそれに見つかったらそそくさと消えさせてもらうから」
「そんな、ぜひお礼をさせてください」
「王子様にそんなん言われたらぜひ俺もお礼は受けたいねんけどな」
「それなら大丈夫ですよ。もうお城が見えてきましたから」
高い塀に囲まれた城。その背後にはあの高い塔が建っている。
お城にお呼ばれされてもうたか。まぁええか、ホテルには明日の朝に戻ればええし。
頭の隅にマーシーとマサルのことはよぎったけど、まぁあの2人やったら心配することもないかな?と、俺は王子様に連れられてお城へと入っていった。
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次回はマサル視点でお送りします。




