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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
166/230

白馬の騎士というわけではないが






居酒屋の2階の一室。



件の部屋の前で索敵による部屋内部の確認だ。


王女様はおそらくベッドに1人でいる。

部屋の中央に3人の盗賊。

扉の前に1人、ベッドとは逆の壁に1人。


そっと扉に耳を当てて聞き耳してみる。



「へっへっへ、これで金貨50枚とは楽勝だな」

「クソッ!このガキ!魔法なんて使ってくるなんてな!」

「あの人からいただいた『封魔錠』がなけりゃもっと面倒だっただろうな」

「テメーが殴るからかわいい顔に痣ができちまったじゃねーか、ハハハハ」

「傷はついてもいいと言われている」

「はあ?じゃあ殺しちまおうぜ!!コイツの魔法で俺の左腕が折れてるかもしれねーんだぞ!」

「殺すのはだめだ。生きて連れてくるように言われている」

「クソッ!こんなガキじゃ犯る気にもなんねーしよ!」



スタスタスタ

1人の盗賊の歩く音。

ベッドに近寄っているようだ。


!?

「キャッ!!」


何かを切り裂いたような音と女の子の悲鳴。


「おいおいおい、商品に軽々しく傷をつけるなよ」

「へっ!その手錠のせいで魔法は使えねーだろ?」

「ははは。その顔じゃ、2度と人前には出れねーな」




・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



僕は扉に掌をあてた。



突風




グシャア!!!

と、いう音と同時に目の前の扉が巻き起こされた風で部屋の中に吹き飛んだ。


扉と風とがひと固まりで数人の盗賊を巻き込んでそのまま反対側の木製の壁を突き破る。


ガッシャーーン!!!


風に巻き込まれて部屋を放り出された4人の盗賊。壁にもたれていた盗賊1人は何事かと驚いた目で部屋に入ってきた僕と目が合う。


パラライズ


急に体の自由を奪われたそいつはバタンと床にひれ伏した。

僕はベッドに歩み寄る。


薄いピンク色のドレスに身を包み、乱れた長い金髪。後ろ手に縛られた少女。

左目に殴られたのか大きな痣があり、右のおでこ辺りから鼻を通り左頬まで斜めに切られた傷跡から血が滴り落ちていた。


その少女は下唇を噛みしめながら必死に我慢をしていた。痛みを我慢しているのか、泣き出しそうなのを我慢しているのか。


僕はその少女に手を近づける。

ビクッと身を引く少女。


「あーー、安心しろ。助けに来たってことだ。ちょっとじっとしてろ」

僕は少女の顔に手を近づけて


ヒール


切られた傷と左目の痣はきれいになくなった。

「後始末してくるからちょっとここで待ってろ」


僕は空いた壁から下を確認すると落とされた4人が今にも逃げ出そうというところだった。

もちろん逃がさないが。



盗賊4人の落ちた場所は表の通りの一本入ったところの裏通り。人通りは少なかった。それでも急に壁から人が飛び出したことに驚いている通行人が2人ほどいた。

僕はそのまま部屋から飛び降り風魔法で着地すると4人は気づいたように腰の剣を抜き放った。


「テメー!!一体なんのつもりだ!!」

「なんのつもりも何も、お前たちは誘拐犯なんだろ?誘拐じゃないのなら正当な理由を言ってみろ。小さい女の子の顔に傷をつけた理由を言ってみろ」

「ふざけんな!!やっちまえ!!」

2人の盗賊が真っ直ぐこちらに向かってきて剣を振りかぶった。




『マーシー、マーシー、こちらタカシ。聞こえますか?オーバー』

こんなタイミングでタカシからの念話だ。

『どうした?今戦闘中だ』

『面倒なことになったわ』


盗賊は僕に剣を振り下ろしたがその剣は僕の体の手前でキィン!!と何かに弾かれた。

「残念だな。コイツを破りたかったら魔王でも連れて来い」

僕のガードは優秀だよな。やっぱり魔王が化け物だったってことか。


スリープ


目の前の2人はふにゃっとそのまま地面に倒れ込んだ。


『タカシ、簡単に説明しろ』

『あの貴族と出くわしたわ』

『めちゃくちゃ面倒だな、おい』

『とりあえず逃げるから朝にはホテルに戻るわ』

『オーケー、マサルもそれで』

『おう、伝えとく』



盗賊の1人が通りを逃げるように走り出した。

「クソッ!!冗談じゃねえ!!」

こいつは違うな。


「オイ!逃げんじゃねーよ!」

残ったこっちが本命か。


ロック


逃げ出した盗賊の足元から地面がせせり出しその盗賊の首まで岩で覆われてそいつは動けなくなった。


「あと1人」

「テメー!一体なにもんだ!!俺たちに恨みでもあんのか!!」

「恨み・・・・・・・。無くは無いかな」


パラライズ


ビクンッと動けなくなった盗賊にゆっくりと歩み寄った。


「殴られたら殴り返すって言う精神はあまり肯定はしたくないんだが、お前は身動きのできない女の子の顔に何をした?」


ウインドカッター


ブシュッとそいつの顔を風の刃で切り裂く

「ギィヤーーーーー!!痛ェーーー!!」

そのままバランスを崩して地面に倒れたそいつは痛い痛いと涙声をあげていた。

「あの子はそんな悲鳴を上げなかったぞ。そのまま反省してろ」



空いた壁から女の子はこちらを見下ろしていた。


レビテーション

突風


僕はふわっと飛び上がり壁に穴の開いた部屋へと戻る。


「ごめんごめん待たせた」僕は女の子の顔をマジマジと見て「よし、傷は残ってないな。かわいいかわいい」

と頭をポンポンと撫でた。



クシャッと歪む女の子の表情。途端。


「うわああああーーーん!うわああああああああん!!」

僕にすり寄って大泣きしだした。

まずいまずい、ものすごい背徳的だぞ。

「怖かったーー!!怖かったのーーー!!」


そっか、そうだよな。我慢してたんだよな。あんな怖い思いをしたんだしな。

「よく頑張ったな。えらいえらい。もう大丈夫だ。もう安心していいぞ」

僕の胸に顔をうずめる女の子。背中をポンポンと叩いてやる。

さと、この手錠は外せるのかな?なにやら魔法を封じるみたいなことを言っていたな。タカシの怪力なら壊せるかもしれないが。




索敵で確認してもタカシマサルはすでにいない。ついでに貴族も下の店にはいないから2人を追って出ていったということかな?


ずっと泣いていた女の子は落ち着いてきたようでベッドに座っている。


「その手錠はどうしたら外せるか分かるか?」

「グスン、兄さまなら分かるかも」

兄さま・・・・・。王子様か・・・・・。

「じゃあここから1人で帰れる?」

「無理です」

「そっかー、そうだよなー」

「でも、この騒ぎなら警備兵が来ると思いますので警備兵が来れば」

警備兵か・・・・・。そういう国の機関はちょっと避けておきたいかな。貴族を敵に回している身分としては。

「そっか、それなら警備兵が来るまでここにいるといい。目の前の盗賊も動けないからね」

僕は立ち上がった。


「まままま待ってください!一緒に居てください!こんなところで1人にしないでください!」

「落ち着け落ち着け。送って行こうにも君の家は?」

王女様だからお城かな?


「月の塔の近く・・・・・です」

月の塔、あの高くそびえ立ったヤツか。城の向こう側にあったからお城ってことでやっぱりいいのか。

「送って行こうか?」

「はい!!ぜひ!!あの・・・・・・お名前は?」

「俺はマーシーね。君は?」

「リンです!!」

「それじゃあちょっと手錠見せてくれるかな?」

「あ、はい・・・。」


手錠つけた女の子を連れていたらただの犯罪者に見えてしまうからな。

リンにつけられた手錠を見てみる。

鉄の腕輪に中央に丸い石か何かがついている。ん?この石って。

僕はその石に触れてみる。

いけるかも。


僕は目一杯その石に魔力を注ぎ込んでみた。

その石はじわじわっと黒くなり始め、真っ黒になった途端パキンっと音を立てて割れ落ちた。

魔術大会のあの水晶と同じようなもんかな。石が割れるとそのまま簡単に手錠部分もはずれた。

「故障してたのかな?案外簡単にはずれたね」

「うそ、さっきまでは普通に起動していたのに」


さて、ここの壁の弁償とかもされそうだからさっさとトンズラさせてもらうか。

「それじゃあ飛んでいくから離しちゃダメだよ」

僕はリンをお姫様抱っこし、リンは僕の首に両腕を巻き付けた。

「は・・・はい!!」


レビテーション

突風


夜の暗闇を薄っすらと光っている月の塔を目印に飛び立つ。

バサバサとリンのドレスが風で揺れ・・・るかと思ったが、自身にかけているガードの範囲を広げると僕とリンを守るように壁ができ、風の抵抗で顔が歪んだり目が乾いたりは一切しなかった。適度に会話もできるほどに。



真っ暗な夜闇を颯爽とお姫様抱っこして駆ける姿はその後数日噂になった。






いつもお気に入り評価ありがとうございます!


次回はちょっと視点変更。タカシ視点でお送りします。



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