フラグ?なにそれ?おいしいの?
馬車は帝都を出発して秦へと向かっている。
一週間ほどで着く旅も現在5日目ですでにタカシとマサルは飽きてきているのかと思ったが。
「なんなん!あの首の長いヤツ!狩ろうや!あの首をブンブン振り回して敵をなぎ倒すんちゃうの!?」
「あれはダメです。肉があまりついてない。あんな細身の獣を狩っても食べるところはあまりないです」
「マーシーマーシー!前のドラゴン出そうや!そんでこの馬車引いてもらったらもっと早いんちゃうの?絶対良い案やと思うねんけど!」
「そういえばドラゴンって美味しいんですよね?一度そのドラゴンを食べてみて、その後さらに同じドラゴンを出すことができれば夢の無限ループが実現するんじゃないでしょうか?」
こんな感じで2人が起きてるうちはずーーーっと無駄な話をしている。
「おい、マサル。俺の食べ物のストックがもう切れるんだが、マサルのアイテムボックスにはどれくらい食料が残ってる?」
「え!?もうないんですか!?俺の方は・・・・・・・・・・・・焼き鳥があと数本・・・・・・ですかね」
「はいダウト。なに自分の分サバ読んでるんだよ。あるだけ出せ。こっそり食う気マンマンじゃねーか」
「いやいやいやそんなことよりもなぜマーシーはもっと食料を買ってないんですか!?飢え死にするじゃないですか!!」
「お前が予想の倍くらい食べてるんだよ。俺は10日分くらいは用意してたんだ」
「確かに、俺もマーシーが買ってたのは見てたけど結構な量買ってたで。10日分を5日で食いきるとは、やるなマサル」
「俺の食べる量を読み違えたマーシーが悪い」
「まぁいいか。人間その気になれば水だけで10日はいけるって言うしな」
「無理です無理です。10時間ならまだしも、10日は無理です」
「10時間しか無理って・・・・・・。どんだけだよ」
僕は御者をしてくれていた少年に声をかけた。
「近くに村とかないか?食料を補給したいんだが」
「もう少し行けばありますよ。その村は果物や野菜を育ててたと思いますので食料の補給はできると思いますよ」
「だってさ、マサル。次の村で食料の補給をしよう」
「賛成です。それでいきましょう」
馬車はガタガタと進む。
最悪獣を狩って焼いて食べればいいと思うがそれは最終手段だ。そのあたりを徘徊している生き物を焼いて食べるのはまだ抵抗がある。
1時間ほど進むと木製の家がまばらに並ぶ集落のような村発見。
所々に柵があり果物のなった木々や畑を囲っている。
「村やな」
「ああ、村だな」
「お、第一村人発見」
麦わら帽子のおじいさんだ。
馬車を止めてその村人に近寄る。
「すみません、秦に行く途中なのですが、食料が底をついてしまいまして。ここで食べ物の販売ってされてますか?」
「なんだ兄ちゃんたち、食いもんがほしいんだか?せだったら真っ直ぐいけばこの村でいんちばん大きな家があるだが、そこで買うとええ。この村はそこに野菜やくだもんを卸してんだが」
「ご親切にありがとうございます」
「これ食うだが?さっきウチでとれたヤツだ」
おじいさんは小ぶりの黄色いリンゴのようなものを僕らに見せた。
「え?いただけるんですか?」
「2つ3つならいいだが。ほれほれ」
僕は受け取って1かじり。
「あ、美味い。甘い」
僕はそれをタカシとマサルにも手渡した。
「甘っ!なんなんこれ!リンゴちゃうやんな!?」
「美味い。マーシー、この果樹園ごと買い占めましょう」
「ありがとうおじいさん。美味かったです」
僕は銀貨を一枚握らせて馬車に戻った。
「いやいや、こんなにもらえないだが!」
「こんなに美味いものをいただいたお礼です。ありがとうおじいさん!それじゃあ俺たちは行きますんで」
馬車を出発させて道を真っ直ぐ進む。
木製の家と畑、果樹園を眺めながら少し進むと他の家よりも大きなしっかりとした家とその前に並べられた積み荷、馬車。
おそらくここがさっきのおじいさんの言っていた商品を卸しているところか。
前に馬車を停車させて僕は1人で中に入った。
「すみませーん、少々よろしいでしょうか?」
「おう、なんだい?こんなへんぴな村に冒険者かい?」
「はい、俺たち秦まで行く途中なんですが、食料を販売していただくことはできますでしょうか?」
「こっちに並べてあるもんなら大丈夫だが、ここから秦なら2日もあれば着くからこのくらいか?」
紙でできた器に数種類の果物を乗せて差し出してくれた店員さん。
「それじゃあそれを5セットください」
「そんなにか、まあいいが。5セットなら丁度銀貨2枚だが」
「ありがとうございます」
僕は銀貨を2枚手渡した。
「今から秦に行くってのは仕事かい?」
「いえ、ジパングに行く途中で立ち寄るだけですよ」
「そうか、今あの国は王様が病に伏せっているからピリピリしてる。あまり長居はしない方がいいと思うぞ」
「忠告ありがとうございます。ちょっと寄ったらすぐに出発する予定ですよ」
「ああ、そうしたほうがいい。王子様同士の次期国王争いの真っただ中って話でな」
「そうなんですね・・・・・分かりました」
僕は包みを持って馬車へと戻った。
馬車に戻ってすぐに出発。今聞いた話をタカシとマサルにも共有しておく。
「なんや?魔王やら王やらは病気がちなんか?」
「次期国王争いですか・・・・。よくある展開」
「第一王子と第二王子が争っていてとかだろうな。あ、こっちの桃みたいなヤツ美味いな。王族の争いなんて勝手にやってろってーの。秦に着いても早いウチに出ることにしよう」
「フラグ・・・・・・ですね」
「マサル、そんなものはない。そうそう巻き込まれてたまるか。王族に関わることなんて一介の冒険者だったらないだろ?」
「そうですね考えすぎですね、はははは」
食料を補充して馬車は進む。
そしてそれから2日ほど進む。
と、ほどなくして木造の家と農村地帯。それを抜けると今度は石造りと木造の住宅地帯へと切り替わる。
「なんだ?いきなり街に入ってきたな」
「お客さん、この辺りはもう秦の国なんですよ。帝都みたいに壁に囲まれているんじゃなく街が城を覆っている感じですよ」
御者の少年が説明してくれた。
「もっと進めば冒険者ギルドもある大通りに出ます。そこに馬屋もありますのでとりあえずそこに馬車を停めますか?」
時間は夕方の5時だ。
このまま素通りするか、宿で一泊してから明日出発するか?か。
「どうする2人とも、ここで一泊していくか?それとも素通りするか?」
「久々にベットで寝たいってのは正直な意見やな。あと、どっかで美味い飯と酒にありつきたい」
「タカシに1票。あと、食料の補充も必要じゃないでしょうか?」
「お客さん、できれば馬を休ませた方がいいんで出発は明日以降の方がいいですよ」
滞在3票か。
まぁ仕方がないか。
「よし、それじゃあ今日はここで休んで明日出発しようか。御者くんもゆっくり休んでくれ。それでまた明日から頼むな」
僕は銀貨を5枚御者くんにチップとして手渡した。
「え!?こんなに!?いいんですか?」
「ああ、美味い飯でも食ってゆっくり休んでくれ」
馬車は通りを進む。
馬車の窓から遠目の高台に城壁に囲まれたお城が見えてきた。そのお城の背後にはさらにでかい塔がそびえ立っている。
「なんかでっかい塔が立ってんな」
「すごいな。もう薄暗いが、あの塔ぼんやり光ってるな」
「あれはこの国のシンボルでもある『月の塔』ですよ。何百年も前に建てられたらしいです」
住宅街も抜けると周りは賑やかな大通りへと姿を変えた。
飲食店や鍛冶屋、雑貨屋。いろんな商店が並んでいる。
「ボブの肉屋は?ここにもあるんか!?」
「絶対ここにもあるはずです!どこですか!?」
「あってもなくても関係ないけどな。結構賑やかだな。端から端までで考えれば塀はないが帝都よりも広いかもな」
中央広場と呼ばれる中央に噴水のあるただっ広いスペースに出て来た。右手に馬屋があるためそこに馬車は停車し御者くんが手続きをしてくれた。
もちろんこの場の停車賃は僕が出す。1日銀貨1枚もしない程度だ。
「よっしゃほんだらどっかで飯にしよか」
「そうですね。ここの名産料理はなんでしょうかね?」
「御者くんありがとう。それじゃあ明日ここで集合ってことにしよう。午前中は買い出しに行きたいからお昼丁度位に」
「分かりました。それでは一旦失礼しますね」
御者くんは手元の銀貨を見て微笑みながらその場を去った。
「マーシー、チップはずんだなー」
「せっかくなら良いホテルにでも泊まってくれればと思ってな」
「御者くんも一緒に飯でもよかったんですがね」
「いや、流石に俺たちだけで他人に話せないような内容もあると思うから別行動のほうが勝手がいいよ」
「せやな。ほんだら何食べるか考えよか?」
「その前に先に泊まるところ確保しておこう。帝都くらい良いホテルとかあるかな?」
「風呂付ですよね?ありますかね?」
「ちょうど目の前にギルドがあるから聞いてみるか」
噴水の向こう側に大きな建物。
看板に冒険者ギルドと書いてあるため分かりやすかった。
僕達は秦国の冒険者ギルドへと向かう。
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