黒歴史とはいとも簡単にできあがる
おそらく俺もミラも今顔は真っ赤だろうな。
なんだか学生時代を思い出す。
「ミラ、今から俺が話すことは他の誰にも話さないと約束してくれ。もちろん魔王様にもな」
「うん」
「俺たち3人はこの世界の人間じゃない」
「どういうこと?」
「こことは全く別の世界。魔族も魔獣もいない。魔法もない。言葉も文化も全く違う別世界。全く別の世界から俺たち3人は飛ばされてきたんだ」
「遠い国ではなく、全く別の世界から・・・・」
「ある日雷に打たれてな。3人まとめてこっちの世界に飛ばされてきた。それで俺たちが旅をしている目的ってのは元の世界に戻ることだ。俺たち3人共家族兄弟は元の世界にいる。もちろん帰りを待っている。だから俺たちは一生をここで過ごすという選択肢はまだ選んでいないんだ」
「信じるわ。本当なのね?」
「ここでわざわざ嘘はつかないさ」
「別の世界・・・・・。そんなものがあるなんて」
「俺だって実際に体験したからこそ話しているわけでこんなことが実際にあるなんて考えたこともなかったさ」
「それじゃあ・・・・・・いつかは帰るのね・・・・・・」
「そういうことだな。だから俺たちはこの世界で家庭を持って一生をここで過ごすという選択肢を選ばない」
「そう・・・・・・・・・ごめんなさい」
「謝るなよ。ミラはなにも悪くないじゃないか。悪いなら俺の方だ。いや、そんな自意識過剰なことは言うつもりはないが」
「いつかは帰る・・・・・・帰ったら・・・・・もう会えなくなる?」
「一度元の世界に戻ったら流石にこっちに戻ってくるのは難しいだろうな」
・・・・・・・・・。
「ごめんなさい・・・・・・・。今帰れなくなればって考えちゃった・・・・・・・・」
「全然気にしないよ。正直今のところ帰れる手掛かりなんて欠片もないわけだしな。帰る方法が見つからない可能性も大いにあるわけだし」
「そっか」
「ミラ。俺ミラが好きだよ」
「!?」
「帰れるなら俺は帰る選択をしてしまうから、このまま二度と会えなくなるかもしれない。だからこそ言わない方がいいかと思ったけれど、そんなに純粋に一直線に好きだと言ってくれる相手に対して本音をぶつけないのは失礼だと思う。俺もミラが好きだ」
「~~~!?」
顔を真っ赤にして左右にプルプル震えだすミラ。
なんだか、学生時代の恋愛を思い出した。
「すぐにこの世界から消えてしまうわけじゃないからまた立ち寄ることがあれば顔を見に来るよ。言っとくけど一目見た時から正直ミラは俺の好きなタイプどストライクだったんだからな」
「うううううぅぅぅ。・・・・・・・・・・知ってた・・・・・・・」
「知ってた・・・・・?何を?」
「大浴場で・・・・・・・・話してたの・・・・・・・・・・聞いてたの・・・・・。マサルが念話ですぐに大浴場に来いって・・・・・」
あのクソマサル・・・・・・・・
「じゃああの100点満点中300点っていうのも?」
「うん・・・・・黒髪黒目、髪も腰まであるロングの見た目清楚系。外見は100点。普段はツンっとしてる感じだが時折照れて顔を赤くするところ+50点。それでも自分を維持しようと気丈に振る舞うところ+30点。最後まで必死になって覚悟を持って思いをぶつけてきたところ・・・・・・+120点」
おい、なんて記憶力だ。
恥ずかしい!!
女の子を点数評価してて尚且つ聞かれてたなんて恥ずかしい!!
「よし、その記憶はすぐに消してくれ。恥ずかしすぎる。俺の黒歴史になっちまうぞ」
「大丈夫。私だけの記憶に保存しておく」
記憶を消す魔法はないのだろうか・・・・。
「すまないな。ここで結婚してやるって言えなくて。(魔王の娘で-200点は聞いていないようだな)待っていてくれとも言えないしな」
「ううん、いい。そのかわりひとつだけ。ひとつだけ約束してほしい」
「なんだ?できることならなんだってやるけど」
「もしも、元の世界に帰ることになった場合、帰るのを止めたりしない。けど、絶対に帰る前に1度会いに来て。お願い」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。分かったよ。そうなったら必ず会いに来る。約束する」
「うん・・・・・・ありがとう」
「じゃあ、俺からもひとつお願いがあるかな」
「どうぞ。なんでも」
「目を瞑って」
ミラは目を閉じた。
そして僕はミラに顔を近づけ
唇を合わせた。
「!?」
ボッ!と真っ赤になったミラは目をぱちくりさせてキョトンとしていた。
「さぁ、皆のところに戻ろうか。心配してるかもな」
僕は先に城の方へと足を向けた。
!?
「おい、そこで何している?」
木の影に隠れた人影が・・・・・・・・3人?
「俺たちの新しいスキル『隠形』や」
「気配を消すスキルです。ものすごく優秀」
「マーシー殿。やりますな」
さっき僕の前にいたばあさんだ。バリアンヌだったか。
「きゃっ!どうしてここに!?」
「どうしてもこうしても、俺たちを覗いていたんだろうな。嫌な趣味だな3人共」
「マーシーとミラちゃんの晴れ姿。誰かが目に焼き付けて後世に伝えるべきです」
「『俺、ミラが好きだよ』やって」
「『目を瞑って』・・・・・ププププ」
スリープ
「「フニャア」」
2人は眠りについた。
「おもいきり頭を殴りつけたら記憶を消せるかな?」
僕はデカい岩を二つ用意した。
「マーシーマーシー!駄目よ!死んじゃうわ!」
「それはそれでいいかもしれない」
「ダメよ!!」
バリアンヌはこちらを見ていた。
このばあさんも気配に気づけなかったな。相当やり手か?
「マーシー殿。ありがとうございます」
頭を深々と下げるバリアンヌばあさん。
「いやいや、今の聞いてたんでしょ?一緒にはなれないって」
「いえ、こんな幸せそうなミラ様を見られたことに本当に感謝しております」
「そう・・・・・ですか・・・・・・」
僕はタカシとマサルを担いだ。
「今ここで聞いたことは他言無用でお願いしますね。それじゃあ俺はコイツら連れて部屋に戻るよミラ。明日朝にな」
「うん、おやすみ」
「おやすみ、ミラ」
2人を連れて部屋に戻るとミザリィちゃんがすでにスタンバっていた。
「ありがとうミザリィちゃん。今日はもう寝るよ。明日の朝に起こしてくれると助かる」
「かしこまりました。おやすみなさいませ」
タカシとマサルをベットに放り僕も着替えてベットに潜りこんだ。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・こっぱずかしーーーーー!!
よくもあんな浮ついたセリフが言えたもんだ!!
漫画の見過ぎだろ!!
僕のバカバカバカバカ!!
僕は悶えながら眠りについた。
いつもお気に入り評価ありがとうございます




