マジで怖かったよ・・・
俺と魔王との間で交錯した魔法が消滅すると俺は魔王と再び視線を合わせた。
パラパラと小石が舞い衝撃音がなくなったこの通路にはしばしの静寂が訪れる。
「今のを返したか。やはり生かして帰すわけにはいかんな」
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
俺は肩で息をしていた。
今と同じ攻撃がきたらどうする?同じように返すのか?一回でMP全部持っていかれるような攻撃なんて何回もできない。
今の魔法の接触で顔や腕に火傷のような跡が残ったが体から特に痛みは無かった。アドレナリンが分泌しているからだろうか?
昔サッカーの試合中に捻挫をしたが、試合終了まで痛みがなく、終わってから痛みだしたことをふと思い出した。
魔王とのバトル中に思い出すことでもなかったかな。
「おい魔王。テメーが俺を殺そうとしてんのは分かった。本気も本気、超本気なのもな。今のも相当ヤバかったしな」
「誇っていいぞ。今のをヤバイという言葉だけで済ませることのできるものはそういない」
「ああ、そうかよ。こっちはなぁ、死ななけりゃなんだっていいんだよ。見逃してくれようが、テメーを殺そうが、卑怯な手を使おうがなんだってな」
「死なないというのは不可能だな。貴様が今のをもう一度返すことができるのか?」
「俺はなんだってやるしかねーんだよ!」
アイテムボックスから『治癒の血』を取り出して一気に飲み干す。
体が光りMPは一気に回復し体の傷も消え去った。
ステータスオープン
光魔法をLV5に。
『神の光』
「死なないためなら魔王だって殺してやる!!!」
右手に『神の火』
左手に『神の光』
「な・・・・何を・・・・」
「後のことはテメーをぶっ殺して俺が死ななかったら考える!!!」
ガッシャーーーーーーーーン!!!!!
その時天井がガラスのように割れた。
ヤマトに跨ったタカシが俺、そして魔王に視線を向けた。
「なんや!!おもろいことしてんな!!!俺も混ぜてくれや!!!」
ダン!!
ダン!!
地面と壁に衝撃が走り2ステップで魔王へと肉薄したタカシが渾身の右拳を魔王へと放つと魔王はそれを左腕でガード。
ザザアーー
と、3メートルほど勢いで吹き飛ばされる。
ヤマトに跨ったマサルとミラ。それに近くをエルムが飛んでいた。
俺は気が抜けたように発動しかけていた魔法を閉ざし安堵のため息を吐いた。
「お父様!!!!」
ミラがヤマトから降りるとその足でそのまま魔王へと向かって行く。
「どういうつもりですか!!お父様!!!」
「ミラ、いや、これには事情があるんだ」
「マーシーを連れ去って一体なにをなさっていたんですか!!」
殺そうとしてましたよ、そこの魔王は。
「マーシー、平気か?」
マサルが声をかけてきた。
『治癒の血』を飲んだばかりで怪我や疲労は一切ない。服がボロボロで地面には僕の血痕が残っているが。
「ああ、問題ない。ちょっと魔王様に殺されかけただけだ」
「それは大変でしたね。ミラちゃんに手を出そうとするから。ププッ(笑)」
「手は出してねーし。触れてもいないし」
「命があってなによりよ」
エルムは僕の頭に乗っかった。
「マジで死ぬかと思ったよ、俺」
「よく無事だったな。心配したぞ」
「ヤマトもありがとうな、来てくれて・・・・・・良かった」
どっと疲れた僕は膝をついた。
ミラが魔王に詰め寄っているのでタカシはしぶしぶこちらにやってきた。
「あーあ、俺も魔王様とやりたかったのに。ミラちゃんに持って行かれたわ。マーシー魔王様とやり合ったんやろ?どうやった?」
「ん?ああ。魔王はただの親バカだったってのはよーく分かったな」
パキン
と、なにかが割れたような感覚に包まれるとさきほどの廊下に全員戻ってきていた。
「お、廊下に戻ってきたみたいやな」
「おい、地面とか壁にメチャメチャ穴が空いてるぞ。タカシがなにかやらかしたのか?」
「なんで俺のせいになんの?見てたんか?証拠は?」
「クスクスクスクス、マーシーが攫われてタカシがそれにキレてこんなこと・・・・ブホッ!!」
タカシの前蹴りがマサルの腹に突き刺さった。
「そんなことよりマーシー、風呂入ろうや!なんかめっちゃ汚れてるやん!!あ、ミザリィちゃん。風呂入っていい?」
「そうだな、風呂入らせてもらおうか。その前に・・・・」
僕は魔王に詰め寄っているミラの元へ。
「ミラ、大丈夫だよ。俺は無事だったんだし。魔王様は俺が昨日使った魔法の追求をしてきただけだよ。ですよね?魔王様?」
僕は魔王に視線を向けた。
「ああ、そうだな。迷惑をかけたな」
「ミラ、それじゃあ俺はちょっと風呂入ってくる。後で食堂へ行くよ。また後でな、ミラ」
僕はあてつけのように魔王の前で『ミラ』と連呼する。
タカシとマサルが掴み合いをしている。その2人を捕まえてミザリィちゃんに連れられて大浴場へ。
「ヤマトも入っていくか?」
「いや、いい。用事も済んだことだから帰るとしよう」
「あー、私は一緒に入っていこうかしら」
「お前も帰れ、エルム。ヤマトサンキューな。助かったよ」
「我というよりは、エルムとあの娘の魔法で穴を開けたわけだからな。我は何もしておらんよ」
「そうよ!私がやったのよ!ワ・タ・シが!」
「ありがとうなエルム」
ポンと音をたてて消えた(消された)エルム。去り際に「ちょっ」って言葉が聞こえたが気のせいだろう。
ヤマトも帰って僕達3人は大浴場で汚れを落とした。
「はぁーー。生き返るーー。いや、マジで一回死んだ気分だったー」
「マーシー、地面に結構な量の血痕あったけどマジで大丈夫やったん?」
「俺・・・・・・・初めて太ももに何かが貫通する体験しちゃったよ。拳銃で撃たれたらああいう感じなのかな?」
「・・・・・・・・・・マジ?大問題じゃないですか。撃たれたのですか?」
「魔王様の指から黒いものが発射して俺の両太ももと右肩を貫通したなー(笑)」
「なんなんそれ?魔王がマーシー殺す気やったってことなん?ほんだらアイツ殺ってまおうや。この際3人がかりでもええんちゃうの?」
「本当に魔王様に命を狙われていたんですね?それならこのまま城から出ていったほうがいいんじゃないでしょうか?」
「うーん、そうだなー。ちょっと考えてる。魔王が本気ならうむを言わさず俺を、いや3人まとめて殺すことは簡単なんだと思うんだよなー。ちなみに俺の『神の火』は魔王の攻撃を防ぐのが精一杯だった」
「それなら魔王様が本気なら逃げても無駄だということですかね?」
「うーーん、確かに俺も認めるわ。さっき殴った感じこっちはめちゃくちゃ本気やったけど左腕でガードしたいうても全然効いてへんかったと思うわ」
「できれば味方につけたい。できなければこちらに関与しないように約束させたいかな。いつ魔王が俺たちに牙を剥くか分からない状況にはしたくないな」
「そうですね。それができればいいんですがね」
「まぁキーマンはやっぱりミラだろうな。なんとかうまい具合になるようにしてみるよ。それでいきなり戦争になったらすまんな」
「まぁ、マーシーの思うようにすればええよ。そのへんは任せるわ」
「ちなみにどうやってあの空間に入って来れたんだ?エルムを呼んでも入って来れないようになってたみたいだけど?」
「それは、エルムちゃんとミラちゃんの魔法ですね。なにやらエルムちゃんが位置を指示してミラちゃんが『神の水』をぶっ放した感じでしたね」
「そうか、心配かけたな」
「ぷぷぷ、思い出したら笑えてきました。あのタカシの慌てっぷり。八つ当たりのように壁をなぐりつけて『マーシーにもしものことがあったら城の全員殺す』ぷぷぷぷ」
「マサルも普段の口調じゃなかったやんけ」
タカシはマサルの両ほっぺを力強く掴んだ。
「いふぁいなこの!たふぁしのふぉうが!」
マサルもタカシの両ほっぺを掴み返した。
「ありがとう2人とも・・・・・・・・・・・・。マジで死ぬかと思った・・・・・・・・・・。マジで怖かったよ・・・・・・・・・」
僕は低いトーンでボソッと口を動かした。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
掴み合っていた手を離した2人は
「まぁ良かった良かった。無事でよかったわ」
「そうですよ。結果廊下が少々破損しただけで済んだということで」
さぁ魔王を交えて飯だな。
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