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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
152/230

手も足も出ない。それなら





左太ももから流れ出た血はすぐに治まった。


激痛は一瞬だった。一瞬だったが僕の頭には死という文字が浮かびあがる。



なんだよ!!ガード3重でも全然意味がない!逸れもしない!あんなの頭にでも喰らったら即死じゃねーか!!


魔王の指先はかわらずこちらを狙っている。



無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ!!

あんなのどうやって防げって言うんだよ!!!




!?




今度は右太ももを激痛が襲った。


「ギィヤアアアアアアアアアア!!!!」

ヒールヒールヒールヒールヒール!!!



イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ。

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。



「ファイアーボール!!」

通路目一杯の火の球を魔王目掛けて放つ。


その火の玉は魔王に到達するのと同時に小さく萎んでいき、かき消えた。


「火龍!!!」

今度は目の前に火龍を放ち一直線に魔王へと向かっていくが、さきほどと同じように魔王に到達すると同時にシュンと萎んでかき消えてしまう。



魔王はさきほどから体は動いておらず指先はこちらに向いたままだ。



何か来る!


僕はすぐさま横に動きその何かを躱そうとするが


「ギィヤアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


今度は右肩を何かが貫通していった。

すぐさまヒールを連発して回復するが一瞬の激痛に僕は地面に膝をつき右肩を抑えながら魔王を見上げていた。



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。




「ああああああああああああ!!!!!」

僕は叫びながらありったけの火の槍や矢を魔王目掛けてぶっ放す。


全ての魔法は魔王にたどり着く前に消滅し、ただのひとつも魔王までは届かない。


「ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!なんだよ!なんなんだよ!俺が何したってんだよ!!ふざけんなよ!!」

さらに魔法を連発するがどの魔法も魔王には届かない。



僕はジリジリと後ずさる。体が少しでも魔王から距離をとろうとする。



「中々良い回復魔法じゃないか」

魔王は表情を変えずに声を発した。


体を貫かれるたびに溢れ出す汗と血で体はビショビショだ。


重力魔法出力MAX!!



ドン!!


という岩が崩れる音と同時に魔王の周辺の地面が窪んだ。



コツコツコツコツ

と、魔王は一切苦も無く1歩2歩3歩と歩み寄って来る。


重力魔法も効かない。

召喚魔法も使えない。

火龍も効かない。




・・・・・・・・・・・・・・・・ステータスチェック。


!?


全てUNKNOWN・・・・・・・・・・。


パキン!!

すぐにステータスは見えなくなった。



「何か見えたのか?」

「この化け物が・・・・・・」



もう『神の火』しかない。






「もう『神の火』しかないだろう?出していいぞ」

「うるせえな、テメーに言われなくてもこっちは出すしかないんだよ」

口調なんてもうどうでもいい。

媚びへつらっていても結果は変わらない。


この旅でここまで苦労なく進めていたことに安心しきっていた自分を責める。俺はバカだ。命のやりとりが自然に起きるこの世界で俺自身が死ぬことなんて全然考えていなかった。いや、旅の初めは考えていたかもしれない。レベルを上げ、強くなり、死なないことは大前提だった。けれどスキルやステータスに満足してここまで死に直結するような事態に陥らなかったことがここまで俺の死への意識を薄めていたことに俺自身に腹が立った。


俺は死ぬ・・・・・?

俺が死ぬのか・・・・・・・?

こんな誰もいないところで1人寂しく・・・・・・・。



嫌だ!!


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!


死んでたまるか!!!






「『神の火』」


俺は右手に真っ白な炎を纏いデカい剣の姿へと変える。





「それとともに消えろ」


魔王は突き出していた指を広げて掌を前に。すると何もないところから真っ黒な渦ができたかと思うとグンッと通路を塞ぐような大きな黒い球が発生した。


その玉はゆっくりとこちらへと近づいてくる。


いや、玉ではない・・・・・・・。黒い空間・・・・・・・・。

まさか・・・・・・・・・。


ブラックホール・・・・・・・?



さっきから消えない危機感知の反応はしょっぱなから振り切っている。開始早々から危険度はMAXだったが、その黒い空間はその中でも最大級だということは言葉ではなく直感で分かった。



「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


俺は右手に纏わせた真っ白い炎の剣をその真っ黒の空間に叩きつけた。



ゴオオオオオッという俺をはじき返そうとする圧力。

バチバチバチバチッと電気の走るような音と紫電。


俺は必死に吹き飛ばされないようにその真っ黒の空間を『神の火』で抑えつける。

バチバチバチッと手に纏わせた真っ白な炎がその真っ黒な何かに触れたあたりから炎が消えていることに気づく。


無理か!!コイツでも無理なのか!!


MPが一気に半分近くまで減ったのが分かる。

いや、まだ半分も残ってる!!!



「おああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


『神の火』に魔力を込め続ける。

消えたところにはさらに魔力を込めて込めて炎が消えないように維持しながら真っ黒い空間を抑えつける。


これでもダメか!!これでもダメか!!これでもダメか!!これでもダメか!!

行け!!行け!!行け!!行け!!行け!!抑えつけろ!!抑えつけろ!抑えつけろ!!!!



バチッと紫電が走り俺の右腕や頬、肩、服を焼くが俺は構わず右手の炎に魔力を込め続ける。



真っ黒な空間は・・・・・・・・少しづつ小さくなっている・・・・・・・・。

終わりが見えている。


『神の火』で対抗できている。



勝機ではないが、生きる道しるべが見えたような気がした。

今はこれにすがるしかない。

MPももう3分の1を切ったが真っ黒な空間も俺の炎に削られて徐々に勢いが止んでいく。




バシュッ!!!



そして最大限まで小さくなったその黒いものは弾けて消え去り再び俺と魔王の視線が合った。







いつもお気に入り評価ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 今までの「オレツエー」からの絶対的ピンチ。こういうのがないと盛り上がらないよね。
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