その時2人は
タカシマサルSIDE
「おっさっけ!おっさっけ!」
「ごっはっん!ごっはっん!」
陽気に歩くタカシとマサル。
ミラとグルグムの後ろを歩く2人は少々お酒も入っておりご機嫌だ。
「こんなおもてなししてくれるんやったら魔大陸にもまた来たいなー」
「魔大陸って名前は不気味ですが、お酒やご飯はおいしいですし、ミネアさんやミラちゃんがいて、かわいいメイドさんまでいて。ここはまるでリゾート地ですね」
「なあなあマーシー、明日帰るんもええけどまた来てもええんちゃう?」
「ああ、そうだな。思ってたよりも普通なのは確かだしな」
「ああ、ぜひ来てくれ。次来た時ももてなそう。今度はゆっくりとタカシとマサル2人に手合わせ願いたいしな」
グルグムは笑顔で振り返りしに入ってきた。
「そうよ!またいらっしゃい!もちろん3人でね!」
同じように話しに入って来るミラ。
「なんか3人って強調してるけど、俺らはおまけみたいやなー(笑)」
「そうですね。だとしても俺も絶対来ますが」
「そそそそ、そんなことないわよ!!」
プイッと前を向きなおしたミラ。顔は真っ赤だ。
パキン
なにかが割れるような感覚がした。
薄いガラスが割れただけのような普通なら何も気にかけないような感覚。
しかし大きな反応を示した2人。タカシとマサル。
その不気味な感覚を感じた瞬間にちょうど目の前にいたタカシはグルグムを、マサルはミラを守るように背にして大きく振り返っていた。
ミラとグルグムもその割れるような感覚に違和感を感じ即座に振り返っている。
「なんや・・・・・・・・・今のんは・・・・・・・?」
「マーシーは?何処に・・・・・・・・・・・・?」
「なによ・・・・・・?今の」
「なんなのだ?今のは?」
一番後ろを歩いていたマーシーの姿がそこにはなかった。
「なんや!!今のは!!マーシー何処行った!?マーシー!!マーシー!!!」
叫ぶタカシ。
「落ち着けタカシ。今のは絶対ヤバイヤツだ。なにがヤバイのかは分からないがかなりヤバイ。ミラちゃん、グルグムさん、今のが何か分かるか?」
普段の敬語を忘れて周りに注意を払いながらミラとグルグムに問うマサル。
「わ・・・・分からないわ・・・・・・。何かの違和感を感じたけれど・・・・・。マーシーは・・・・・・?マーシーは何処・・・・・・・・・・・?」
「マサル殿。確かに何か嫌な感じは感じた。しかしこれが何かは私にはわからない。しかしマーシー殿がいなくなったことは確かだ。マーシー殿が危険にさらされている可能性がある以上早く原因を突き止めなければ」
「マ・・・・マーシー・・・・・・・。嘘よ・・・・・・・・」
グルグムがミラを支える。
ドンッ!!
タカシが地面を強く蹴りつけ廊下が凹む。
タカシ、マサル。両者ともに無言でステータスを開いて索敵スキルと感知スキルをMAXまで上げた。
すぐさま目一杯まで索敵を広げて城の周囲まで索敵するがマーシーの姿は確認できない。
「マーシー!!クソッ!!何処や!マーシー!!」
「クソッ!!何処にもいない!!何も感じない!!使えねーな!!」
苛立たしく声を荒げる2人。
2人はあのガラスの割れたような感覚の不気味さに最悪の想像もしていた。それがマーシーの生死に関わるレベルだと。
「城のものに話を聞いてくる!なにか分かるものがいるかもしれん!」
「そんな悠長なこと言ってられへんわ!!すぐにでもなんとかせなマーシーが死んでまうかもしれへんねんぞ!!」
「落ち着けタカシ!!アイツが簡単に死んでたまるか!!グルグムさんすぐにこの状況が分かりそうな人に聞いてくれ!すぐだ!!」
「うそ・・・・・・・マーシー・・・・・・・・」
近くを歩いていてこちらに気づいたメイドが数人やってきてミラを抱えた。
「クソッ!!クソッ!!!何処や!!何処行ったんや!マーシーー!!!」
ガン!ガン!
と壁に穴を開けて荒ぶるタカシをマサルが止める。
「やめろ!タカシ!!落ち着け!!」
「もし・・・・・。もしもマーシーに何かあったら・・・・・・・・。この城のヤツは全員殺す。魔王も殺す」
その殺気にあてられて近くのメイドはすくみ上がっている。
ガン!!
マサルの頭突きがタカシの脳天を襲った。
「落ち着け。マーシーは大丈夫だ。アイツは1人でもなんとかする。俺たちとは違うだろ?こっちはこっちでやれることをやるんだよ」
マサルがタカシの動きを止めてゆっくりとタカシに話しかける。
「そうだ・・・・。お・・・・・お父様に。お父様に聞いてみるわ。何か分かるかも・・・・」
「ああ、ミラちゃんすぐに聞いてくれ!魔王様なら何かわかるかもしれない」
「「!?」」
タカシとマサルの目が見開いた。
「そういえば魔王が見当たらん」
「この城の中に今魔王はいない・・・・」
2人は2人とも索敵で辺りを確認したが魔王の姿は見当たらなかった。
2人の結論は同じ答えを導き出している。
「あのクソが!!魔王がマーシー拉致ったんか!!」
「一番ありえそうだが一番厄介だ!!」
「そんな・・・・お父様が・・・・・。そんなわけ・・・・・」
「どうすりゃええ?どうすりゃええんや!?」
ハッ!とタカシはすぐさまアイテムボックスから取り出した笛を口にくわえた。
空間が歪みそこから巨体の真っ白な犬、ヤマトが出てくる。
「・・・・・・・・・・・・どうした?ただごとではないな」
野太い声でヤマトは声を発した。そばにいたメイドはミラを抱えてヤマトから距離をとる。
「わりぃヤマト!!簡単に言うとマーシーが魔王に拉致られた!!なんとか見つけられへんか!!」
「なんと・・・・・・。一体どうしたらそのような状況になるんだ」
ヤマトはスンスン、スンスン、と鼻を動かし廊下を探るように匂いを嗅いでいる。
「・・・・・・・・・・・一度空間の歪んだあとがある。我が出て来たのとは別だ。どこか別の空間に飛ばされた可能性がある」
「どうやったらそこに行ける!?ヤマトやったら行けるか!?」
「流石に我でも空間を自由には飛べん」
パキィィィン!!
その時目の前の何もない空中に光がはじけた。
「イタタタタタ。ちょっと何よー」
「なんとも良いタイミングで出てくるものだな、エルム」
「あら?山神じゃないの。どうしてこんなところに?ああ、笛で呼ばれたのね。あれ?マーシーがいないじゃないの。今確かに呼ばれて来たんだけれど」
「マーシーが呼んだ!?ってことはマーシーはまだ無事ってことだな!」
マサルがエルムに詰め寄った。
「ちょちょちょ、何よ?呼ばれたから来たんだからあたりまえでしょ」
「エルム!!マーシーが魔王に拉致られたっぽいんや!すぐなんとかしてくれ!!」
「・・・・・・・・・・・・・は?なにしてんのよ、あんたたち?」
「エルム説明はあとだ!!すぐにマーシーのところに行けなきゃ最悪魔王に殺される!!なんとかしてくれ!!」
マサルは再度エルムに詰め寄って行く。その慌てさで冗談ではないとエルムは悟った。
「分かったわ。なんとかしてみるわ」
「我も協力しよう」
魔王城の通路にとびきりでかい犬と輝く妖精。
マーシー救出のために動き出す。
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いつもと違う一面を出したかったりした。




