ファイアーパンチ爆誕
部屋に入ってきたのは普段着のミラと、メイド服姿のミネアさん。
「おはようございます。ミラネル様、ミネアさん。本日はどうされましたか?」
僕は澄ました顔であいさつした。
「ミザリィ、席を外してもらっていい?」
ミネアさんがミザリィちゃんにそう言うとミザリィちゃんは軽くお辞儀をして部屋を出ていった。
「マーシーのこの安定した変わり身の早さ」
「ホンマ自然にミラちゃんのことミラネル様って言うもんな。抜け目ないわ」
「対外的と身内とのやりとりは別物なんだよ。お前たちみたいに魔王様にも馴れ馴れしくとかできねーよ」
「今日帰るの?」
今日はいつも通りの表情。いや、少し沈んでるかな?
「ああ、ミラ。今日の船には間に合いそうにないから昼には出て港街で一泊してから明日には魔大陸を離れるかな」
「もう一日くらい・・・・泊っていったら?」
「うーん、明日の朝に出れば明日の船には間に合うとは思うが、タカシとマサルは?」
「俺はそれでもええよ。朝の8時くらいに出れば間に合うんちゃう?」
「そんなことよりも俺は今の『もう一日泊っていったら?』というミラちゃんのセリフにグッとくるものがありました」
「と、いうことらしいので、それじゃあ明日の朝に出ることにしようかな」
「そうね!それがいいわ!今日の夜は一緒に食事をしましょう!お酒も美味しいのを用意するから!」
パッと晴れた笑顔ではしゃぐミラ。
まぁ1日くらいは長居してもいいか。
「それじゃあお言葉に甘えようかな。あ、1つだけお願いがあるんだけど。今日は3人だけでちょっと外に出ようと思ってるんだけど、もちろん街には出ないから裏門から出て行ってまた入らせてもらっても大丈夫か?」
「分かったわ、それじゃあ出る時はグルグムについてもらって門番に話を通しておくわ」
「ああ、助かる」
タカシとマサルがこちらを見ている。何をするのか言ってないからな。
「それじゃあ夕方にはここに戻ってきておいてね。迎えにくるから」
「ありがとうミラ。じゃあまた夕方な」
ミラが部屋から出て行きミネアさんがこちらに頭を下げて退室していった。
かわりにミザリィちゃんが部屋に戻りドアの前で定位置だ。
「めっちゃ喜んでたな、ミラちゃ・・・・・ミラネル様」
「そうですね。入ってきたときと出て行くときの別人感ですね」
「まぁ1日くらいの延長はいいか」
「マーシー、今日はどうすんの?なんかすんの?」
「ああ、帰り際にでも試そうと思ってたことがあってな。後で話すよ」
10分くらいですぐに部屋にグルグムさんがやってきた。
「おはよう、マーシー殿、タカシ殿、マサル殿。今日も外に出ると聞いたが」
「おはようございますグルグムさん。今日は3人でですね。わざわざすみません」
「構わんよ。すぐに出るのかな?」
「まぁ、とっとと済ませておこうか。タカシ、マサル、今からでもいいか?」
「ええよ、はよ行って、はよ帰ってきてゆっくりしようや。夜まで」
「いつでもどうぞ」
僕達はグルグムさんと一緒に裏門へ。
昨日とはまた別の門番さんが2人いた。
「ベッテコークとグンブニンスターやん。おつかれさん」
マジか、本当に合ってるのか?適当じゃないよな?
「おお、人間の客人たちか。話は聞いているぞ。戻ってきたら合図してくれればいいからな」
「3人とも、大丈夫だとは思うが何か危険があれば城まですぐに戻ってくるようにな。あと、ミラ様が楽しみにしていたから夕食には遅れないように頼む」
「ありがとうございますグルグムさん。それじゃあちょっと行ってきます」
僕達はグルグムさんと門番に見送られて裏門を出た。
門は僕達が出るとすぐに閉じられ広い平野を僕達は3人でトボトボと歩き始める。
「どうすんの?森まで行くん?」
「そうだな、森にするか。ちょっとは離れたいからな」
「じゃ、競争する??」
クラウチングスタートの体勢でマサルは笑顔だ。
「競争じゃなくてもいいよ。スピードアップ」
僕は3人に補助魔法をかけた。
「おお、身体が軽い。今なら音速を越えれそうやわ」
「確かに軽い。いや、元々俺は軽いのですが。決して重くはないですよ」
「はい、よーい。スタート!」
僕は先頭きって走り出した。
しかしあっという間にタカシとマサルには追い抜かれて森に着くまでにはそうとう離されていた。
2人とも結構レベルあがったしな。このレベル差じゃスピードは勝てないか。
森の前についてひと段落。
「イエーイ、フルボッコミーティングー!」
「はーい」
「パチパチパチ」
今回は拍手はなかった。口頭のみだ。
「明日の朝帰るのはさっき話した通りな。朝8時くらいに出れば問題ないだろう。さっきのスピードアップを使えば多分3時間くらいで着くだろうから最悪10時くらいに出れば大丈夫かなとは思うが。ということで今日の夜は酒を控えるようにするのが1つ」
「10時かー。ほんだら遅くても7時には寝なあかんかー。しゃーないな」
コレ、コイツ本気で言ってるんだよなー。最悪、頃合いでスリープかけりゃいいか。
「で、今からすることなんだが。2人のもらった腕輪の確認が1つな」
「ああ、火と雷やったっけ?」
「試したいですね。確かに」
「あと俺のもらった魔法書の巻物な」
「せやったな、それ何書いてあったん?」
「聞いて驚け。『重力魔法』」
「あるある。よくあるよくある」
「『重力魔法』?相手を重くするみたいなん?」
「それを試してみようってところな。あともう一つは後でな」
「とりあえず腕輪を試してみましょう」
「せやな、とりあえず着けよか」
タカシとマサルは腕輪を右腕に通す。肘を越えたあたりでピタッと嵌って固定される。
「なんや、今大きさが変わってジャストフィットしたみたいやったわ」
「おっしゃる通り。ジャストサイズです」
マジックアイテムだからなのか?使用者にぴったりはまる腕輪。
「よっしゃそんじゃやってみよか?」
タカシは一番手前の木に近づいていく。タカシの腕輪は火の腕輪。火の付与があるみたいだがどんな感じなんだろう?
グッと拳を握り、振りかぶる。
「お?なんか分かるわ。やってええ?やってええの?」
「どうぞどうぞ」
「ファイアー!!」
タカシの振りかぶる腕輪から炎が噴き出し右腕にまとわりつく。
「パーーーーンチ!!」
ドオオォォォォン!!
ゴォォォォ!!
タカシが軽くこづいた木はその部分がへこみ、右腕にまとっていた炎がその木に移り、燃え始めた。
「おっとっと、ウォーター」
僕はすぐに鎮火した。
「どうだ、タカシ?」
「まぁなんとなく分かるわ。ファイアーパンチ爆誕」
「おれもおれも」
とマサルも意気揚々と同じことをすると木に電気が走り、瞬時に木が焦げた。
まぁ想像通りってことでいいかな。活用できることもあるだろうな。
それじゃあ次はこっちの『重力魔法』を試してみようか。僕は巻物を開いて目を通す。語学スキルLV3万歳。ミミズみたいな象形文字もなんのそのだ。
ふむ、読んだだけでステータスに『重力魔法』の項目がでてきたな。
とりあえずLV1にしてっと。おいおい、この魔法LV1しかないぞ。『グラビティ』か、そのままじゃねーか。
とりあえず試してみようか。
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