トリプルスコアーだよ、バカヤロウ
ミラとの死闘を終えて城へと戻ってきた。
裏門から同じように入りそのまま大浴場へとGOだ。なぜか大浴場前にスタンバっていたメイドのミザリィちゃん。準備がよろしいことで。
本日2度目の風呂で汚れをゆっくりと洗い流す。
「マーシー殿」
「おう、なんでも聞いてこいグルグムさん!覚悟はできているぞ!」
『神の火』のことか?『治癒の血』のことか?それともマウストゥマウスのことか?
「いや、ミラ様をありがとう」
深々と頭を下げるグルグムさん。
「ああ、無事でよかったですよ。あの魔法1発でも使ったら命に関わるんですよね?それを2発も使うなんてとんだじゃじゃ馬でしたね」
「まぁまぁグルグムさん。ミラちゃんがあの魔法使って死にかけたんを助けたんはマーシーやけど、あの魔法使う原因もマーシーやねんから。全部マーシーのせいやで。分かってんの?マーシー」
「いや、それは。言葉も出ないよ」
「ミラちゃんの。完全にプロポーズでしたもんね。中学生くらいの告白みたいな感じ。初々しかったですね。なぜマーシーなのでしょうか?こんなにも細腕なのに。俺なんてほら。こんなに逞しい」
ザバァ、と立ち上がり筋肉を見せつけるポーズをとるマサル。
「やめろよ。汚いものを見せるな。ほとんど脂肪のくせに」
「なんだとマーシー!この体をミレーヌさんが!」
「アチョー!」
ザッパーン
背後から蹴りを入れてマサルを湯船に放り込んだのはタカシだ。
「なんかめっちゃ腹立ったから蹴った。異論は許さん」
「ミラ様が・・・・・人間を好きになるとはな・・・・」
「すみません。俺なんかで」
僕は申し訳なさそうに軽く頭を下げた。
「いや、マーシー殿がダメなわけではない。マーシー殿のような魔族であったのならよかったのだがな」
「それで?どうなん?マーシーは?」
「なにがだ?」
「俺らの旅が大事なのは分かるわ。マサルの時もそうやったわけやしな。それでもマーシーの気持ちやん!ミラちゃんはどうなん?好きなん?嫌いなん?なんか好きやとは言ってるけどそれはミネアさんとかグルグムさんと同類みたいな感じではぐらかしてるやん!マーシーのホントの気持ちや!!
LIKEなのかLOVEなのかやん!
女の子として好きなんか?友人として好きなんか?
抱きしめたいのか?抱きしめたくないのか?
メイド服を着せたいのか?着せたくないのか?
裸を拝みたいのか?拝みたくないのか?
ミラちゃんとやりた・・・・ブフォ」
僕の左手がタカシの口をがっちりと掴んだ。
「それくらいにしておこうな、タカシ」
ガシッと今度はマサルが僕の肩をガッチリと掴んだ。こんなに至近距離でマサルと見つめ合うこともない。
「マーシー。もしも、もしもですけど。俺たちの旅が無かったとして、これから特に行く当てもない。後はこの世界でゆっくり過ごして、美味いもの食べて、呑んで、彼女作って、結婚して、のんびり過ごすってことになった場合ですが。そうなった場合は相手はミラちゃんでも良いと思えますか?」
なんだよコイツ。
いつもみたいにチャラけて来いよ。
どうしてそんなに普通に聞いてくるんだよ。
脇でタカシとグルグムさんが何故か首を縦に振ってウンウンと頷いている。
「なんだよ、このノリは?修学旅行の夜か?」
「そうやってすぐマーシーははぐらかしますね。うまい具合に逃げる。本心を口で出しても確信は出してこない。逃げ道作りすぎですよ」
今度はタカシがウンウンと大きく頷いている。
クソッ、伊達に付き合いが長すぎるだけにお互いのことを分かりすぎてる。
「あーーーーーー、そうだな。分かったよ。ミラは正直どストライクだよ。お前らも分かるだろ?俺のタイプくらいは。黒髪黒目、髪も腰まであるロングの見た目清楚系。外見は100点。普段はツンっとしてる感じだが時折照れて顔を赤くするところなんかは+50点。それでも自分を維持しようと気丈に振る舞うところ+30点。最後は・・・・・・・・・・・・。命をかけてまで俺に勝とうとするくらいの覚悟。あの時ミラは笑ってたんだよ。多分、俺がそれをも防ぐだろうと思っていたのかもしれない。それでも最後まで必死になって覚悟を持って俺にその思いをぶつけてきたところ・・・・・・+120点。100点満点中300点。おめでとー、トリプルゲーム達成だな」
「まぁせやな。分かりきってたけどな」
「なら聞くなよ」
「マーシーの色恋話は少ない。ホモ説も流れたくらいに。これは貴重です」
「ふざけんなよ、俺は女の子が大好きだ」
「マーシー殿・・・・・。ありがとうございます。ミラ様もお喜びになると思います」
「えっと・・・・グルグムさん。絶対に!!絶対にミラには俺がミラに好意を持っていることは言わないでくださいよ!!俺はここには残れないんですから。言ったら変な期待を持たせるでしょう?正直二度とここに戻ってこない可能性もあるんですよ」
ガタン・・・
ん?脱衣所から物音が?
「ままままマーシー!そそそうやな!!ここに戻ってこられへんかもしれんからなー!ミラちゃんには言うのは酷かもなー。グルグムさん、ミラちゃんには言わんでええと思うわー!」
タカシが肩を回してきた。
「そそそうですね!グルグムさん!マーシーがミラちゃんを好きだったってことが我々に分かっただけでも十分ですよ!」
逆側からマサルも僕に肩を回してくる。
「やめてくれない?お互い全裸だから気持ち悪いんだけど」
「それにしてもトリプルスコアーかー。そんで魔王様の娘やから-200点ってところやな」
ホントそれな。
「それじゃあそろそろのぼせそうですし、あがりましょうか。部屋で3人で一杯やりましょう」
「グルグムさんも一緒に呑もーや。4人でええやん」
「いや、流石に遠慮しておこう。ミラ様の様子も気になるしミラ様とマーシー殿の決闘の後始末も考えないといけないからな」
僕達は風呂から出たところでメイドのミザリィちゃんに付き添われそのまま部屋まで戻った。
準備よく出されたお酒を堪能し今日はそのまま就寝。僕たちが寝るまでミザリィちゃんはお酒を注いでくれたり時折部屋を出てどこからかおつまみを用意してくれた。
「う・・・ううぅーん」
朝起きるといつも2人の姿はない。
「あの2人の方が呑んでいたのになぜだ」
扉の前には今日もミザリィちゃんが立っている。
「おはよう。ミザリィちゃん。2人はどこに?」
「タカシ様マサル様は大浴場に。そろそろおあがりになって朝食に向かわれるかと思います」
「そっか。じゃあ俺は直接朝食に行かせてもらおうかな」
昨日と同じ個室で朝食をとらせてもらう。
そこで先に席についていたタカシとマサルに声をかける。
「おはよ」
「おはよーマーシー。先風呂入ったで」
「あ・・・朝飯から肉が・・・・。最高」
マサルの朝食にのみ肉が盛られていた。分かっているな。
朝食を済ませて部屋に戻って一服。
ミザリィちゃんに入れてもらった紅茶をすすりながらタカシが話しだした。
「ほんだら今日帰るでええんか?」
「そうだな、もうやることもなくなったしな。馬車で3日の距離だから走ってどのくらいかな?半日かからないか。いや、馬車で休憩とっての3日だから5時間もかからないかな」
「ミザリィちゃんミザリィちゃん、魔大陸から出る船って毎日出てるん?出てるんやったら何時くらいなん?」
「時間は決まっておりません。お昼すぎくらいまでに渡りたい人がいれば受け入れて、夕方前に出発します」
「そっか、今から出たらどうやろ?今日の便に間に合うかな?」
「今は・・・・10時か・・・・。ちょっと間に合わないかな。どうする?今日中に出て夜は港町で一泊していこうか?」
コンコン
部屋をノックする音がした。
ミザリィちゃんがドアを開けるとミラとミネアさんが立っている。
ミラは部屋着。ミネアさんはメイド服。
「おはよう。ミラネル様、ミネアさん。本日はどうされましたか?」
僕は澄ました顔であいさつした。
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