汚れは落とせても、心の汚れは落ちないよ
僕は索敵で魔獣を探す。
そこにタカシ、マサルを向かわせて狩る。一応レベルのバランスも考えてマサルに多い方を任せているが数よりも高レベルの魔獣を狩る方がレベルの上がりが良いように感じる。
3時間ほど狩りまわりタカシがレベル30、マサルはレベル29。そろそろ目標には達する。
と、ここで念願の目標発見。
「いたぞ。おそらくレッドベアだ。この先500メートルくらいのところにいる」
「来たか。やっとやな。ほんじゃあマサル、じゃんけんしよか?」
「大丈夫だな。3匹いるから」
「な!?3匹も!!」
グルグムさんが声を出した。
「レッドベアは1匹でも出たら危険だからな。2年前に退治した時は1匹だったな」
「3匹かぁ。どうする?タカシとマサルが1匹づつで・・・・・・・・・・・・。じゃあ残りは俺がやろうか」
「いやいやいやいや」
「まぁまぁまぁまぁ」
タカシとマサルは僕の肩を掴んだ。
「ここは早いもん勝ちにしよーや。マーシー抜きで」
「賛成ですね。2人で1匹づつ受け持って、早く仕留めた方が残りを」
「分かったよ。それでいいよ。じゃあもうちょっと近づこうか」
僕達は熊との距離を詰めていく。
手前に2匹。この2匹はレベル52と53。奥に居るのがレベル59か。良い配置だな。
「よし、それじゃあ手前に2匹いるからそれを先に仕留めた方が奥のデカいやつな。合図は出すから」
「手前のを瞬殺して奥のヤツやったらええんやな。オッケーや」
「手前のを仕留める。うっかり金属バットをタカシへ投げる。奥のを仕留める。オッケーです」
「マサル!なんなんそれ!?ありなん!?それありなん!?」
「よーーし行くぞーーー、レディーーーー・・・・」
僕は合図を始める。
「ちょっ!ええの!?妨害ええの!?」
「ゴーーー!!!」
僕は真顔でそのままスタートを合図した。
ダッ!と走り出すマサル。タカシは一瞬遅れた。
「待て!マサル!!靴紐ほどけてんで!!」
「さぁ俺たちも行きましょう、グルグムさん」
僕は苦笑いのグルグムさんを連れて後を追った。
ガン!!ドン!!と鈍い音と。
獣の鳴く声が聞こえてくる。
さぁ、どっちが早いかな?
少し木々の開けた場所でまずは動かなくなった熊2匹発見。
ピンと尖った真っ赤な毛皮を纏った大きさは3メートルくらいの熊が2匹伏せていた。
それと同時くらいにさっきより大きな獣の声が聞こえるが開けた場所で見えた光景は、タカシがその4メートルはあろうしっかり2足で立ち上がった真っ赤な熊の顔面に跳び蹴りをかましている姿と、そのわき腹に横からボディブローを打ち込んでいるマサルの姿だった。
頭部と腹部に強い衝撃を同時に受けた真っ赤な熊は力が流れる方向がおかしく、体を横にくの字に曲げ、地面に一度ビタンと打ちつけられたあと数メートル吹き飛んで着地。そのまま息をひきとった。
「マサル!なんやねん!!バット投げるって!気にしてもーてスタート遅れたやんけ!!!」
「タカシ。靴紐ほどけてるってなんですか?この卑怯者」
「同時だったか。どうだ?レベルいくらになった?」
僕は言い合っている2人の間に入った。
「俺36。マーシーも聞いてたやろ!?さっきコイツ金属バット投げる言うてたやん!」
「35。このヤローは靴紐がほどけているなんて古典的な卑怯な手を」
「よし、それじゃあこの熊も持って帰ろう。やったなマサル。念願の熊鍋だぞ」
「ヤッホーー!熊鍋!熊鍋!」
マサルは上機嫌だ。
「グルグムさんも聞いてたやろ!コイツが金属バット投げるっていう威嚇したんを!」
グルグムさんが困りながら答えていた。
「なんというか・・・。まいったな、言葉もない」
「それじゃあ帰りましょうか。今日は十分収穫がありましたしね。グルグムさんありがとうございました」
「いや、何もしてはいないからな。護衛なんてやっぱり必要なかったようだな」
「せやな。道も簡単やったしグルグムさんがわざわざ来る必要なかったんちゃうの?」
僕達はゆっくりと森を来た道へと戻っている。
「まぁ護衛っていうよりは俺たちの監視ってわけだったからな。見たことを報告するように言われてるんだと思うけど」
「流石マーシー殿。分かっていらっしゃったか」
「監視して報告する任務なんや?それでなんて報告すんの?マサルが卑怯な手を使った的な?」
「そうだな。想像以上にタカシ殿マサル殿の戦闘能力は高い。あと、マーシー殿の魔獣を見つける能力が逸品であったというのと、補助魔法も有能であるといったところかな」
「まぁそれくらいなら許容しよう」
スピードアップとパワーアップは使わないほうがよかったかな?
森の入り口までは特に他の魔獣は出てこなかった。
あらかた確認できるヤツは仕留めてまわったからまぁ仕方がないか。
森を出た後は僕達はゆっくりと歩きながら帰ることにした。特に急いで戻ってすることもないし。
「グルグムさん。俺たちは明日にはもう帰ろうと考えてます」
「そうか、もう少しゆっくりしていけばいいと思うが」
「もうやることもあらへんしな。魔王様もすっかり良くなったし、報酬ももらったし、こうやってレベル上げもできたんやし」
「後は今日熊鍋を食べるだけです」
「あれって食べれんの?なんか真っ赤やったから毒でもあるんかと思うんやけど?」
「レッドベアは食べても問題ない。毛皮の方が重宝されるが肉もまぁ美味いな」
「そうか、じゃあマサルのためにも今日は熊鍋にしてもらわないとな」
「くっま鍋―♪くっま鍋―♪」
「戻ったらとりあえず風呂入りたいわー。随分汚れてもうたしなー」
「あ、タカシ、ちょっと待て『クリーナー』」
清潔魔法のクリーナーだ。汚れを落とす魔法らしいが。
僕はそれをタカシの全身にかけてみた。そう、かけてみた。どうなるのか確認はしたことがない。そのため自身にかけるのはためらわれたわけだ。よって他人で試してみる。これは当たり前のことだ。自分で試すのは怖いから他人で試す。何も間違っちゃいない。
「どうだ?タカシ?」
「おお!!綺麗になった!!すごいやん!何これ!?服の血糊も腕の汚れとかもなくなった!」
「そうか。クリーナーっていう綺麗にする魔法だな。汚れを落としてくれるらしい」
「なんですか?俺も俺も!俺も綺麗にして!」
マサルが俺も俺もとうるさい。
「残念だが心までは綺麗にできないんだ、マサル」
マサルは無言で金属バットを構えた。
「冗談冗談。ほらクリーナー。頼むからその鉄の塊をしまってくれ」
マサルも綺麗になった。
「すごいですね。確かに綺麗になった」
さて、じゃあ自分にも。
「クリーナー」
確かに綺麗になったな。もともと僕はあまり汚れていなかったが。
しかしただ綺麗になっただけという感じだな。
「綺麗にはなったけどやっぱり風呂には入りたいなー」
そう、綺麗になっただけで体が風呂上りみたいにさっぱりしたとかはない。そういうもんか、ただ単に体と衣類を綺麗にするだけということか。
「そうだな、はやく帰って風呂に入らせてもらおう。24時間風呂は入れるって言ってたしな」
僕達はいそいそと城へと向かった。
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