欲は出さない。ほどほどが一番
「イエーイ!!フルボッコミーティングーーー!!」
「いえーい」
「へーい」
パチパチと弱めの拍手だ。
「耳澄ましたら俺らの会話ってさっきのメイドちゃんに筒抜けなんちゃうん?」
「大丈夫。風魔法で遮音してるよ。その辺りはぬかりない」
「え?なんなんですかそれ?ホテルの俺の部屋にもそれしてくださいよ」
「なにを隠そうお前がミレーヌさんと部屋に居る時も実は使っていた。聞きたくないからな!!」
「それはさておき。とりあえずミラが呼んでるってことは報酬のことだと思うからまずはそっちだな」
「金貨100枚となにかしらのアイテムですね」
「俺レベル上げも行きたいんやけど。今のままやったら魔王様に勝たれへんっぽいし」
「そうだな、俺もそれは考えてたからな。魔王様に勝つためってわけじゃないがな。向こうに戻ってからのレベル上げよりは魔大陸の方がレベル上げは効率がいいかなとは思う。ここに来る途中の魔獣の群れも結構レベルは高くて平均でもレベル30以上はあったからな。2人のレベルを30台くらいまであげてもいいと思ってる」
「それでしたら今日は報酬をもらってその後にレベル上げ。グルグムさんの言っていた北の森に行くってことですね?」
「熊やな、熊。やっと熊とやれるんか」
「とりあえずはそうだな。で、できるなら明日は難しいかもしれないが2日から3日くらいでさっさとここからは離れようとは思ってる」
「あまり長居はしない・・・・ですか」
「俺はゆっくりしてってもええと思うけど」
「個人的な意見を言うとあまり魔王と関わりたくないってのが本音かな。ここまで冒険してきて一番の不安要素だな。今まで会ってきた人の中で1番強いヤツってなるとおそらく聖騎士団の団長さんかなとは思うんだが、例えば団長さんが俺たちと敵対したとして、苦戦はしたとしてもなんとか勝てるとは思えるくらいなんだが、魔王はマズイ。アレの矛先がこっちに向くことがあったら俺たちの命の危険にあたる。今はまだ大丈夫そうだが何かのきっかけで俺たちを排除しようと考えたら相当マズイ。と、いうことでなるべく早くここからは離れたいとは思っているんだが」
「マーシーがミラちゃんに手を出していたらおもしろいことになっていたんですがね」
「マジでそれは笑えないよ、マサル」
「あれは確かにただの親バカやったなー。マーシーに対してすっごい威圧してたもんなー」
「というわけで今日は報酬もらって北の森でレベルあげ。1日2日レベル上げしてさっさと帰る。これでいいか?」
「まぁええよ俺は。帝都帰ったらマリーちゃんとこ行こな」
「そうですね。なるべく早く出るのは反対ではないですね。俺も早くミレーヌさんに会いたいし」
「よし、じゃあそういうことで」
そして僕たちは扉の前で待っていたメイドさんに声をかけてミラの部屋へと案内してもらった。
メイドさんに連れられて二階の大きな扉の部屋へ。ミラの部屋は寝室は別でこちらは客間のような扱いになっているようだ。
そうだよな。流石に女の子の部屋に普通に男を案内したりはしないよな。
部屋に入ると部屋にはミラとミネアさんが待っていた。
「おはようございますミラネル様」
僕は軽くお辞儀をした。
「おはよう。あなたはいいわ、出ていなさい」
ミラは僕達を案内してくれたメイドさんに声をかけてメイドさんは部屋の外へ。
中には僕達3人とミラ、ミネアさんが残る。
「ミラちゃんおはよう。ここっておもしろいなー。俺結構気に入ったわ」
「おはようございますミネアさん。ミネアさんが一番メイド服姿が似合いますね」
マサルは視線を胸元に固定しながら挨拶した。確かにここまで見たメイドさんの中で一番のものをお持ちだ。ミネアさんは他のメイドさんと同じような服装でミラの横に立っている。ミラは部屋着っぽい真っ白のワンピースで昨日のような髪型や化粧はない。
「おはようございます、マーシー様、タカシ様、マサル様」
「昨日から言いたかったのだけれど、マーシーのその私を自然にミラネルって呼ぶ姿が違和感でしかなかったわ。正直胡散臭い」
「人前でミラって呼んだら少々まずいことになったと思うけど。特に魔王様の前でとか」
「ご配慮ありがとうございます。特に打ち合わせなくミラ様をミラネル様とお呼びいただいたことには感服いたしました。私共も先に気づいていればよかったのですが」
「大丈夫、大丈夫。そういうのんはマーシーは得意やから。周りに気ー使うんはマーシーの得意技みたいなもんやからな」
「私たちだけの時はミラでいいわ」
「ありがとうミラ。それで?用があったんだろ?」
「ええそうよ。依頼の報酬を渡そうと思って」
ミネアさんがテーブルに乗っている革袋を僕たちの前に差し出した。
僕は紐を解き、簡単に確認した。だいたい100枚くらいかな。
「確かに。間違いなく頂戴いたしました」
「本当に金貨100枚でいいの?」
「十分だよ。最初に言った通り。これ以上もらうつもりもこれ以上値下げするつもりもない」
「そう、分かったわ。あとはアイテムよね。ここの二つ隣の部屋が宝物庫になっているからそこで選んでもらうわ」
僕達はミラ、ミネアさんに連れられて廊下に出てその宝物庫へ。
宝物庫の扉は他の扉とは違い豪華というよりは頑丈。さらになにやら魔力も帯びているためそういう魔法がかけられているのだろう。
ミラがその扉に手をかけてあっさりと扉を開く。
「おおー。なんか色々あるなー」
「甲冑ですよ甲冑。今にも動き出しそうです」
綺麗に並べられた武器やテーブルに並ぶ宝石。壁には盾やらコレは時計か。巻物がまとめて籠に入っていたり。半分以上は魔力を感じる。マジックアイテムが多いのか。
「どれでも欲しいものを持って行ってもらっていいわ。説明聞きたいものがあれば私かミネアに聞いてちょうだい」
まぁ僕は識別を使えば効力も全部分かるけどね。
宝石はシンプルな宝石が多い。中には状態異常耐性がついていたりする。
防具は火や水耐性、魔法耐性付きもあるな。
武器は麻痺付与、毒付与、火を巻き起こすとか雷を生み出すとかもある。
僕は巻物を手に取る。
種類は多い。過去の記録の書かれたものやアイテムの生成方法。魔法書まであるな。珍しい魔法はないかな?
「お、このグローブかっこいいやん。俺これにしよーかな?」
爆発付与?とんでもないものがあるな。
「いいんじゃないか。そのグローブは着けて叩けば爆発が起こるようだぞ」
「マジで!?じゃあコレがええかな」
「しかしどう考えてもその爆発に自分自身が巻き込まれるだろーがな」
「ホンマや・・・・・・・別のにしよ」
「俺はこの甲冑がやっぱりいいですかね」
「それを着けた人間と歩くのは俺は絶対嫌だがな」
「それでもええけど近寄らんとってや」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ですね」
「ミラ。ちなみに火属性付与の武器の火は装備者本人に危害はないのか?」
「え?使用者本人に被害はないと思うのだけれど?魔法だってそうでしょう?」
「そうか、ありがとう。マジックアイテムって使ったことないから聞いてみたんだ。タカシとマサルはなんでもいいなら火とか風とかの属性つきのものでもいいかもな。魔法使えないから物理攻撃をあまり通さないスライムとか相手にするときは有効かもしれないし」
「スライム相手に考えるなら火が無難でしょうね。もしくは雷か。そういうことならこっちの腕輪をお勧めするけれど」
ミラは奥の棚に並んでいた腕輪を二つ持って来る。
「こっちが火属性の腕輪でこっちが雷属性の腕輪ね」
「火属性の腕輪ってことは・・・・・ファイアーパンチが打てるってことなんか?」
「と、なるとこっちはサンダーパンチですね」
「素手で攻撃する場合も、剣を持っていたとしても属性攻撃ができるから魔法の使えない格闘家や戦士には重宝するものね」
「じゃあ俺はそれにしようかな?考えてもキリがなさそうやし」
「それじゃあどっちが火か雷か決めますか?俺は雷がいいんですが」
「じゃあ俺は火でええよ。俺たち2人はその腕輪にするわ」
「他にも欲しいものがあれば言ってもらっていいわよ。ここにあるものならどれでも選んでもらって構わないわ」
「俺ら2人はええよ。後はマーシーが欲しいのん選べばええし。ぶっちゃけ持ってても使わんかもしらんし」
「うーんじゃあ俺はやっぱりミラの持ってた姿を変える指輪がいいかな。あと、この巻物を1つ」
「はい、これね」ミラは宝石の集まったところにある指輪を僕に差し出した「あと、その巻物なんだけど」
「ん?なにかまずいものなのか?」
「それ、魔法書なのだけど。古代文字で書かれているから解読からしないといけないわよ。どういった魔法かも分からないし」
大丈夫です。何故か僕には読めるんで。語学スキル万々歳。
「図書館で解読してみるよ。俺、こういう古き遺産とかって好きなんだよ」
「そう。他はいいの?他にも色々あるけれど」
「十分だよ。ありがとう。あれもこれもってなったら止まらなさそうだし」
「なんだか申し訳ないけれど。マーシーがそれでいいって言うのなら」
「マーシー様」
ミネアさんが近づいてきた。
「どうしました?ミネアさん」
「少々お伺いしたいのですが、マーシー様はマジックアイテムの効果を知っておいでみたいなのですが、見ただけで分かるのでしょうか?」
「マジックアイテムって若干ですが魔力が宿っているみたいなのである程度はその魔力で分かるんですが何か問題でも?」
嘘ですよ。識別スキルでバリバリチェックしてます。魔力を帯びているのは本当ですが。
「魔力・・・・・・ですか・・・・・・・」
「ミネア。マーシーがそう言っているのだからそうなのよ。いい加減慣れたわ」
今回の報酬は金貨100枚と火の腕輪、雷の腕輪。変身できる指輪に魔法書1つ。
僕達はそれを受け取り宝物庫を出た。
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