じゃあ、お言葉に甘えて
魔王様はタカシの言葉を受けて少し口角をあげた。
明らか魔王様の殺気が違う殺気になったじゃねーか!
このアホタカシ!!
身の安全を約束してくれた意味ねーだろが!!
ゆっくりと。そう、ゆっくりとこちらに歩み寄って来る魔王様。
膝をついたままの僕の目の前まで来ると笑顔のままゆっくりと僕の横を通過してタカシの前まで来た。
「久しく体を動かしていなかったから少し運動をするのもよいな。ほら、よいぞ。打ってきて構わん」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
甘えんな!アホ!
ドンッ!!!!!
と、僕は振り返り魔王様を見上げるとタカシはハイキックを魔王様の右側頭部に目掛けて打ち込んでいたが魔王様は右手でその蹴りをガードしていた。
「ふむ、速いし重いな」
タカシはガードされた左足をすぐに引き、今度は左のミドルキックを魔王様のわき腹に。
ドーーンッ!!!
叩きつけたような激しい重低音が広間に響く。
今度は魔王様はガードせずにその左ミドルは魔王様の腰やや上にヒットしている。
「ちっ!!」
と、舌打ちを打ったタカシはさらに左足を流れるように引いて体を反時計回りに回転させながら左の上段後ろ回し蹴りで今度は魔王様の左側頭部を狙う。
バチーーン!!
と、今度は魔王様は左手の掌でその左足を防ぐとそのままその左足を掴み力任せにタカシを壁へと投げつけた。
ドオォォォォン!!!
と壁に両足で着地したタカシ。その勢いで壁はヘコみタカシの足型が壁にそのまま残った。
と、そこでグルグムさんがタカシの前に。僕もグルグムさんの横に並びタカシの前に立つ。
「はいはいはいはい、終了―――――、そこまでな」
「タカシ殿!もうよろしいでしょう!」
「え?もう終わりなん!?まだいけるって!魔王様も乗り気やん!」
周りの魔族は口をあんぐりだ。
「こんのバカタカシが!それ以上続けるっていうなら何日酒抜きにしてやろーか!」
「ええ!?ゴメンって!わかったわかった、もう十分やから。こりゃ強いわホンマ、勝たれへんかもしれん」
『かも』はない。『かも』はないよ。
力、スピード、1000オーバーのタカシの蹴りを軽く止めてさらにはダメージも通ってないっぽいのはヤバイな。
ワンチャン勝てるかもと思っていたが、そりゃ流石に無茶だよな。だって魔王だからな。
「はっはっは、元気な人間ではないか。誰か良い部屋を案内してやれ」
ささっとこちらに寄って来るメイドさん。
「準備ができしだい酒宴だ。それまでゆっくりしていろ。今日は皆に酒を配れ!!城にあるだけの酒を用意しろ!!我の回復祝いだ!!!」
おおおっ!!
と、皆が声を上げた。
魔王様は玉座の奥へとミラと一緒に下がっていくと僕たち3人はメイドさんに案内されて別の客室へ。城内に居る人はバタバタと色々な準備にとりかかる。
客室に案内された僕たちは広いソファでくつろいで飯まで時間を潰していた。
「タカシ、さっきの蹴りはどのくらいで蹴りました?」
「結構本気やったで。魔王やねんから多分大丈夫やと思ったから」
「タカシの本気キックをあの感じで止めるってことは現状絶対に相手にしちゃダメだってことだな」
「なんと言っても魔王ですもんね。そりゃラスボス相手にこのレベルで相手するのは無謀」
客室は内装がものすごく豪華でフカフカのカーペットや飾り付けられた絵画、金色の花瓶と豪華さを前面に出している。
今座っているソファも帝都のホテル以上の高級感があり、超絶にフワフワだ。
「魔大陸のご飯。魔大陸のご飯。魔大陸のお酒。魔大陸のお酒」
マサルが妄想を膨らませている。
「実際どんなんが出てくんねんやろーな?案外ゲテモノ料理とか出て来たりしてな」
「確かにそれはあるかもな。生態系が全然違うとなれば牛や豚っていうよりも、ヘビやカエルってこともあるかもな」
「大丈夫です。ヘビもカエルも美味しいですから」
マサルはなんでも食べる。
「俺は姿形がそのまま出てきたらちょっと考えるわー。味は美味しいんかもしれんけど、カエルとかヘビとか、昆虫とか、なんかその幼虫とかはなぁ」
「大丈夫です。昆虫も幼虫も食材として出てくればそれは食べ物ですから」
「マサル、好きな食べ物は?」
「食べ物です」
と、いうことだ。
かれこれ20~30分ほど待っていると
コンコン
扉がノックされた。
「はい、はーーい」
マサルが元気に返事をして扉を開けた、
「失礼いたします」
頭を下げて綺麗なお辞儀をしたメイド姿のダークエルフだ。肩が開いた上乳の見えるエロい服装にもう少しで中の見えそうなミニスカート。
見える肌は褐色なのがそれもポイントが高い。
「あれ?ミネアさん?」
頭を上げたメイドさんはミネアさんだった。
「うわ、その服装めっちゃええやん。さっきの人らも良かったけどミネアさんもめちゃめちゃええなぁ。他の人よりも大きいし」
大きい・・・・・それはもちろんバストのことだ。セクハラで訴えられるぞ。
「まずは先に今回の件、改めまして本当にありがとうございました!一時はどうなるかと思いましたが本当に!本当に!!ありがとうございました!!」
深々と頭を下げてあまり表現の豊かではない方だと思われるミネアさんが声を上げてお礼の言葉を述べた。その声は感情のこもった心からの感謝であると3人とも感じ取れたはずだ。
「ええって、ええって。ここまでが依頼やってんから。なぁ、マーシー」
「もちろん。お礼を言われるのはありがたいですが、仕事と言えば仕事ですからね。当たり前のことですよ」
「それで、ミネアさん。食事の時間でしょうか?僕はもう準備万端です。いつでも、どんな量だろうと立ち向かう準備はできています」
戦でもするつもりか。
「いえ、お食事まではまだ少々お時間がかかるのですが・・・・・その・・・・・・・」
どうしたんだろう?歯切れが悪い反応だな。
「マーシー様。マーシー様に少々ご足労いただくことは可能でしょうか?」
「ん?俺?どこに?誰かと会うとか?」
「はい。その・・・・・魔王様がぜひマーシー様とお話しされたいと」
はいダメでーーす。
「1人は無理。3人ならいいですけど」
1人は無理だ!魔王とタイマンは無理だ!!何かあった場合1人で解決できる自信はない!!
「さ・・・・左様でございますか」
「マーシー、ヒヨッたんか?」
「マーシー、マーシー。魔王様に呼ばれてますよ(笑)」
「1人じゃ無理だ。アレと1対1は無理だろ。ここは恥を忍んでタカシとマサルも連れて行く。これは譲れない」
「中々に弱気やな。まぁしゃーないか」
「魔王様と1対1は・・・・・・・確かに俺も無理ですね」
「と、いうことでミネアさん。3人ならいいですが」
「かしこまりました。それでは3人で大丈夫です。魔王様のお待ちになっている部屋へ案内いたしますのでこちらへ」
さて、食事前に魔王様と懇談ということでミネアさんに連れられて僕達は部屋をでた。
先ほどの玉座の間を越えて違った大きな扉の前。
ミネアさんはその扉をノックしゆっくりと扉を開け、僕達3人を中へと誘導してくれた。




