責任者を呼べ!!
魔王城のホールのようなところに停車した馬車から僕達3人はそろって降りた。
そこには姿勢よく頭を下げたメイドのような女性が数人、肌は黒く耳がとがっているところを見るとおそらくダークエルフなのかな?と思われるが、そんなことはどうでもいい。
そう、どうでもいい。
問題はその衣装だ!!
メイド服。メイド服なんだが。
超ミニスカートだ!!
分かってる!!分かっているな!!!
基本は黒、そして白のライン!ヘッドドレス!!超ミニスカ!白いタイツ!!
ここの責任者を呼べ!!!
徹夜で褒めちぎってやるぞ!!!
「なんだかマーシーの表情があやしいんですが」
「いつものヤツやな。初めてエルフ見た時もこんなんやったやん」
「マーシー殿どうなされた?気分でも悪いのか?少し震えているようだが?」
「大丈夫大丈夫。たまにある発作みたいなもんやから。ミニスカートとか肩丸出しの衣装に興奮してるんやと思う」
「ほら、マーシー起きろ。ペシペシ。大丈夫ですか?現実世界に戻って来い」
「はっ!悪い悪い。こんなところで拝めるとは思ってなかったから一瞬意識が飛んでた」
頭を上げたメイドたちは一斉に僕達3人に目線が向くと分かりやすく驚きの表情を見せた。
「彼らは協力者よ。丁重に扱ってちょうだい」
ミラが一声かけると。メイドたちは表情を取り戻し。
「「「「「かしこまりました」」」」」
と、綺麗にそろったお辞儀を見せた。
「すぐにお父様と謁見します。もちろん彼らも一緒に」
「はっ」
と城の中へと進んでいくミラたちの後について僕たちも城の中へと入っていった。
グルグムさんを先頭にミラ、ミネアさんと並んでその後ろを僕たち3人は並んで絨毯の敷かれた通路を歩く。後ろには槍を持った鎧姿のガタイのいい兵士が2人とさっきのメイドさんの2人がついてきている。
横切る扉は豪勢で所々にある花瓶や装飾品、天井にぶら下がっているシャンデリ。どれも高価そうで魔族はどうやって金を稼いでるんだろうかと疑問に思う。
真っ直ぐ進み通路の角を曲がるとより一層豪華で大きな扉が目に入りその前でグルグムさんたちが足を止めた。
脇にはグレーのローブ姿の毛むくじゃらのおじいさんが立っている。身長は僕らよりも小さい。グレーのローブは装飾品も施されておりかなり高価そうな身なりだな。偉い人なのかな?
もちろん僕達を見て驚いた表情をしている。
「ミ・・・ミラネル様、彼らは一体?」
「ペドロイ。彼らは私の協力者であり恩人です。大事な客人として扱いなさい。彼らも一緒にお父様に謁見します」
ペドロイさんね。こういうお城によくいる宰相さんとかかな?
「ミラネル様。彼らは見たところ人間でございましょう?謁見の間にお通しするのは流石に無茶がございませんか?」
「彼らがいなければ目的は達成できなかったわ。彼らも一緒に謁見します。いいわね?」
ミラがゴリ押した。
ペドロイさんは渋々の表情で目の前の大きな扉をゆっくりと開けた。
ギギーーーーッと扉が開くと両脇に鎧姿の兵士とその後ろにはさっきのメイド集団。
前方には王様が座るような玉座。
その玉座に近い位置の脇にはペドロイさんのよな豪華なローブを着た魔族が数人並んでいる。
数人は息を切らしていることからミラが戻ってきてすぐに招集されたんだろうなというのが見てとれた。
グルグムさんとミネアさんは扉から入ると両脇に分かれてペドロイさんが先導しながらミラはゆっくりと玉座に近づいていく。
僕はグルグムさんにチラリと目線を向けるとクイッとミラに付いて行けという風なアクションをしたため僕たち3人はミラの後ろをゆっくりとついていった。
両脇に並んだ人たちは一斉に頭を下げて綺麗なお辞儀をしている。
ちなみに玉座には
誰も座っていない。
なんだろう、さっきから・・・・・・危機感知が反応している。
コレが反応するということは僕に何かしら危険が迫っていることを表している。主には殺気を感じているということだが。
両脇の魔族たちからの殺気かと思われたが多分違うな。これは、玉座の奥。もっと先からなにかを感じる。
『さっきからビンビンなにか感じるんやけど』
『同感ですね。何か嫌な感じがしますね』
タカシとマサルが念話で話しかけてきた。
『ああ、俺もだな。下手な動きはするなよ。やばくなったら速攻で逃げることも考えておこう』
多分この玉座の奥にいるのだろう。魔王様が。
確認のために索敵を使うことも考えたが、もんのすごく嫌な予感がする。
絶対に使わない方がいいと僕の直感が働いている。索敵すれば索敵したことを気取られる感じがしている。
本当にそうなのかは分からないが今はしない選択を選んでおこう。
「お父様!!只今戻りました!!」
ミラが玉座の前でその奥に向かって声を上げた。
「『治癒の血』はここに!」
ミラは首からぶら下げた瓶を目の前に出した。
「「「おお!!」」」
歓声が上がる。
「ミラネル様!よくぞ!でしたらすぐに魔王様に処方したしましょう!」
ミラはその瓶をペドロイさんに手渡した。
「皆のもの!!ミラネル様が『治癒の血』を!!これで魔王様は回復されるはずじゃ!!」
オオオオオオオオ!!
と歓声が上がる。
僕達3人はボケーッと突っ立ったまま玉座の前でその様子を見ている。
「そこの人族の3人はこの『治癒の血』を手に入れるのに協力してくれた者たちよ。丁重に扱いなさい」
「「ははっ」」
と周りの人達は頭を下げた。
!?
なんだ?
「ささっ、ミラネル様!はやくこの『治癒の血』を魔王様に」
「ええ。3人はそこで待っていなさい」
ミラは僕達に声をかけて奥へと入っていった。
玉座の前にペドロイさんが居て僕たちは玉座の前に3人並んで立っている形だ。
周りの魔族はボソボソと小さい声で何か話しているがここまでは聞こえない。治癒の血の話か、僕達3人の話なのだろうとは予測はできる。
僕は2人に念話を飛ばした。
『タカシ、マサル、言っておくことがある』
『なんや?なんや?魔王を倒してオレらが勇者になる的なヤツか?』
『それはない』
『なんでしょうか?それは良いことですか?それとも悪いことでしょうか?』
『多分、まぁ、悪いことになると思う』
『正直聞きたくないんですが』
『詳しく説明はしないが魔王様がこっちに敵対心を持ったら即離脱。逃げることに専念しろ』
『逃げなきゃならないことになるということですね。聞きたくなかったですね』
『後はいつも通りだ。話は俺がするから少し下がってニコニコしててくれ』
『了解』
『ラジャ』
少しの時間が流れる。
僕達はただ立ったままでなにもせず、しかし警戒は怠らず待つ。
すると、先ほどからアラームを鳴らしている危機感知が徐々に大きく鳴り始めた。
視界が薄っすらと赤くなり頭の中で警報装置が鳴り響くような感覚。タカシとマサルも感知スキルは取らせているので同じような感覚になっているはずだ。僕は感知は最大まで上げているので2人よりも敏感に反応しているかもしれないが2人も険しい表情になっている。
多分魔王様がこちらに近づいているのだろう。
しかしこの感知スキルで受ける感覚は僕達個人へ向けたもの
というよりは全体へ向けたもののように感じる。それはただの魔王様の圧力なだけで僕らへ向けられた殺気というわけではないのかもしれない。
ただ、ここまでの反応を見せる感知スキルは初体験なわけで少々ビビっている自分がいる。
コツコツと玉座の奥から歩く音が聞こえてきた。
周りの魔族たちもピリッとした雰囲気をして固唾を飲んで玉座の方に視線を向けた。
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