平和が一番。ラブアンドピース。
森から次々と飛び出してくるのは犬みたいな4足歩行の獣がメインだがオークをデカくしたようなヤツやワイバーンを小さくしたようなヤツが空を舞っていたり種類は様々だ。
感知スキルも反応はしているが微々たる反応だ。これだけいても命に関わる危険というほどの判断はされていないようだな。
「おーう、すごい量だな。波のように向かってくる。さてと撃ち漏らしのないようにしないとな」
100、200じゃきかんな。1000とか余裕で越えてね?
「はっはっはっは、魔物がまるでゴミのようやな!」
僕とマサルは2人してタカシを見た。
「まさかタカシからそのセリフが出るとは思いませんでした」
「だな、けど元ネタ分かってないんだろうな。素でそのセリフを出したタカシは120点な」
タカシは穴あきグローブをぎゅっと取り付ける。マサルは毎度おなじみ前掛けのポケットから金属バットを取り出した。
おっと、そろそろ索敵の範囲内に敵が引っかかる。レベルは30から40が多いか、所々に20台50台。60が混じってるな。この距離じゃステータスは分からない。
目をギラギラさせて殺意まんまんで向かってくる群れ。
じつは歓迎でしたってのは流石にないか。
「怖いのは特殊攻撃だからな、麻痺とか毒とか溶ける攻撃とか石化とかあったらシャレにならないからなるべく避けていけよ。俺も注意しておくが怪我したら叫べ」
僕はダッと地面を蹴り前方へと走り出した。
「あと、先に謝っておくけど全部やっちまったらゴメン」
「「え!?」」
僕は走りながら
「フレア!もとい、レーザービーム!!」
魔力全開。かざした左手から直径2メートルくらいの熱線が前方を貫通していく。
ジュウッ!!と何かが焦げたような音と同時に一直線に敵の居ない道ができあがる。
「しまった。威力はあるが殲滅力はなかったか、それならこっちで。ダイダルウェイブ!!」
僕の上空から一気に大量の水が降り注がれ、こちらに向かってくる大群を押し戻すように5メートルくらいの高さまで達した津波が猛スピードで前列から次々と飲み込んでいく。
僕を中心に扇状に広がっていく水の塊、水の壁はこちらに向かってくる獣たちを1匹残らず呑み込んでいき前進を許さず、吹き飛ばし、押しつぶし、押し流す。
津波って所詮ただの水かと思ったが恐ろしいもんだな。
僕は右手を空にかざした。
「火龍!!空を飛んでるヤツは全部噛み殺せ!!」
人を丸呑みできるほどの頭を持った火を纏った50メートルはある龍。
コイツは賢い。魔術大会の時も思ったが、自分の意思で動いてくれるんだよな。
火龍は上空を飛んでいる鳥やワイバーンに似た魔物を次々と噛み殺したり尻尾をぶつけて撃退していく。
うわーお、レベルアップが止まらない。おそらくダイダルウェイブで大量虐殺できたみたいだ。
津波が去った後には3メートルくらいのでかい鬼みたいなヤツが3匹と鎧に身を包んだヤツが20くらいか。
ほとんどやっちまったな・・・・・・・・。
「テメー!マーシー!!そんなん反則やーーー!」
僕の左を通過して真っ直ぐその鬼に向かっていったタカシ。
「もう・・・・・・やることないですね」
マサルは僕の右隣で金属バットを右肩に構えて立ちすくんでいた。
「いやいや、ほら、あそこに鎧が数匹残ってるよ」
「あれ、すごく弱ってますよ?少しかわいそうにも見えるんですが」
「いらないなら俺がここから打ち殺すけど?」
「やるよ!やりますよ!ここまで出て来た手前、何もせず戻るのはこっぱずかしいですし!」
マサルは鎧に向かって駆けて行き弱った鎧をその金属バットで星にしていった。
同じころにはタカシが残った大柄の鬼を地面に伏せブツクサ言いながらこちらに戻ってきたところだった。
「俺なんもしてへんで!マジでなんもしてへん!!レベルはなんか6回もあがったけど!」
「鬼が1匹レベル60だったからな。ラッキーだったな」
「なにがラッキーなん!?俺なんてちょっとカッコよく手袋つける時、端を口で噛んでギュッってやったんやで!赤面もんやわ!!熱っ熱っ!ちょっ!龍近いんやけど!」
「おーう、お疲れ。また呼ぶときもあると思うからよろしくー」
僕は火龍の頭に手を置くと火龍はスウッっと炎へと変わりそのまま消えていった。
鎧掃除の終わったマサルが戻って来る。
「ミネアさんとミラちゃんに良い所なにも見せられませんでしたね。はい、マーシーの1人勝ち」
「勝ちも負けもないない。道を塞ぐ魔物の大軍を俺たちで、そう俺たちで、一掃しただけだな」
「マジでどっかでレベル上げしてから帰らん?マーシーのレベルが離れてもうてると思うねんけど。多分マサルが一番レベル低いと思うけど」
「ああ、俺は今のでレベル41になったな」
「ほらー!俺まだ25やで!!牛の時もほとんどマーシーがやってもうたからやん!」
「あれ?俺まだレベル18なんですが」
「レベル60の鬼を倒したタカシと弱った鎧をちまちま倒したマサルじゃそりゃ違うだろうな」
そんな話をしながら馬車に戻っていく3人。
馬車の前でこちらを見ていたミラ達が声をかけてきた。
「お疲れ様。フレアからダイダルウェイブ。そして火の龍ねェ。使えることには驚かないけれどあの規模には驚くわね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ミネアさんは怯えた目でこちらを見ている。
「・・・・・・・これほどとはな」
グルグムさんは津波の残骸を見つめてボソリと声を漏らした。
「マジでマーシー1人で良かったやん。張り切って損したわ。いや、適度に残しておくんが良心ってもんやったんちゃうん?」
「どういう攻撃してくるか見当もつかなかったからな。さっき言ったように石化とか骨まで溶けるような攻撃してきたら受けたくないだろう?だから安全に遠距離で仕留めれるだけ仕留めただけだよ」
「その対象で99%瞬殺って、もうマーシーは兵器ですね。今後はキラーマシーン、イヤ、キラーマーシーと名乗ってください」
「あ、そういえばさっき全部やったらゴメンって言うてたな。完全に確信犯やん」
「魔獣1000匹に匹敵する戦力か。敵対したくはないな」
「グルグムさん、大丈夫ですよ。敵対する理由がないじゃないですか。むしろ結構友好関係にあると思っているんですが」
「けれど、もし私たちが人間と戦争することになったら敵になると・・・」
「ミネア」
良からぬ発言をするミネアさんにミラが声を被せる。
「ミネアさん、俺は女性の味方です。ミネアさんの敵は俺の敵です!」
マサルが話を広げてきたな。
「俺もそうなったとしてもミラちゃんたちの敵になるとかはないと思うけど」
「戦争なんて物騒なことには俺たちは首を突っ込まないですよ。ただ今言えるのは俺たち3人はミラ、ミネアさん、グルグムさんの敵にはなりえないですよ。全然知り合いでもない人間よりも魔族の友人を大切には思いますからね。まぁ戦争なんてもの自体が起きないことを祈りますが。もしもそうなったとしたら多分どっちにもつかないでしょうね」
昔から人間と魔族は争いを起こし続けている。
何百年に1度は大きな戦争も起きているとは本にも書かれていた。
けれど戦争を起こすのはミラたちのような魔族でもないと思うし、俺たちみたいな人間でもないだろう。
帝都の団長さんが人間は魔族を見れば大半が嫌悪感が生まれるみたいなことを言っていたが僕たちはそういうことはないんだよな。
ミラたちだからそうなのか、僕たちが違うのか分からないが争いが起きないに越したことはない。
平和が一番。ラブアンドピース。
「さぁ行きましょう。馬車通れますかね?」
「大丈夫だろう。魔獣の死体はどけていかないといけないがな」
僕達は馬車に戻って水浸しになった道をゆっくりと進んでいった。
タカシが道を塞ぐ魔物の遺体を蹴り飛ばしマサルが金属バットで掃除をしながら馬車は森へと入りガタガタと揺れながら進む。
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