船旅中に巨大生物に襲われる。予定通り
イカと綱引きを始めたマサル。
僕は明るく照らされた海面を窺いながら船の後方へとゆっくり移動した。
ロープは後方に伸びているのでイカは今、船に引っ張られて後方にいるはずだしな。
後方に広範囲にライトをあてて海面を覗くもまだ獲物は目で確認できない。
あ、索敵使えばいいか。
僕は索敵を広げて周囲を確認する。船の真後ろにこちらと同じスピードでついてくる物体。まだ200メートルくらいは後方だな。
マサルが少しづつロープを巻いてるからそのうち目視もできるようになるか。
「マーシー!!マーシー!!軽くなった!!」
!?
マサルが声を上げたと同時に後方の物体は勢いよくこちらに向かってきていた。
マサルはせっせとロープを巻きながらこちらに歩み寄ってきた。
「もうすぐ見えそうだな」
「イカですよね?イカ。焼いてよし炊いてよし。ああ、刺身もいい!」
水面に刺さるロープの先に見える黒い影。
あ、こりゃでかいわ。
目視でも10メートル級の影が見える。
「はい、アイスウォール」
船の後方に氷の壁を設置してそのまま放置するとその場所にできた氷の壁はもちろんイカに肉薄する。
ガアン!!
と、氷の壁に激突したイカは氷の壁を避けようとグルリと大回りするとマサルの握ったロープは緩みなくピンと張った状態になった。
「今だマサル!!高級食材を海から引きづり出せ!!」
「おっしゃ!!まっかせろーーー!!!」
マサルはグッと握りしめたロープを一本背負いさながら一気に引っ張り上げると
ザッパーーーン!!!
と、何メートルもある触手をウネウネさせながらこの船と同じくらいの大きさの透き通るような肌をした物体が宙に舞った。
「サンダー!」
ビシャーーン!!
と、弾けるような音と光が宙に舞ったクラーケンを包み込むと少しの煙をあげながらそのままザッパーーンと海に落ちた。
「でかい。一体何人前の刺身ができるんでしょうね」
「あの気持ち悪い姿を見たら食べるのを少し躊躇してしまいそうだな」
ステータスを見るとHPは0になっているためサンダー1発で即死したか。弱点属性とかだったのかな?
「よし、マサル。引っ張りあげろ。船長さん呼んでくる」
船長さんに仕留めたクラーケンを確認してもらうが全部を船に積むことができないというので僕のアイテムボックスの話をしてとりあえずアイテムボックスに入れておくことに。
港に着いてから取り分けるというので半分づつにしようということで話はついた。僕とマサルで仕留めたようなもんだから全部持って行って構わないと言われたがこの大きさは流石に食べきれないわ。
船長さんに港で換金すればいいと言われたので食べる分を少し除いてお金に換えてしまおう。船長さんは自分の取り分の方は魔大陸ではなく帝都の方で換金するとのことだ。そっちの方が高く売れるらしい。
「さてと、もうひと眠りするか」
「そうですね。イカは明日食べましょう」
部屋に戻って布団に滑り込む。横では何事もなくスヤスヤと寝息をたてているタカシがいた。
目覚ましもなく自然に目が覚める。
グラグラと揺れている寝室に寝起きはあまり清々しくはなかったが十分に睡眠がとれた満足感はあった。現在時刻は11時だ。
「よく寝たな」
周りには誰もいない。タカシもマサルも。
狭い船だから行くところなんてあまりないだろうからおそらく甲板にでも出ているのだろう。
僕は目を擦りながら部屋を出て甲板に出てみる。
「プハー、ええな。海の上で呑むビールって」
「青い空。白い雲。そしてキンと冷えたビール。最高です。ここにミレーヌさんも居たら他にはなにもいらない」
「おい、昼間っから良い身分だな」
ただの木の箱に腰かけたタカシとマサルが一杯やっていた。
「おお、マーシー。昨日はなんかでかいイカ取ったらしいやん。今から炙ろうや」
「イカ・・・・・いい。俺もご所望する」
「デカすぎるから出せねーよ。港に着いたらな。それよりも俺にもビールをよこせ」
「お?ええやん。マーシーにしては珍しいな」
タカシはさっと瓶ビールを一本取り出し器用に栓をあけて僕に手渡した。
「はーい、かんぱーい」
「「かんぱーい」」
「ゴクゴク、んっぷはーー。寝起きにビール。しかもこんな真昼間っから。なんだかすごい背徳感を感じるな」
「ええやんええやん。俺はなんか、こう。日の出てるウチの酒は贅沢な感じがするわ」
「ミートゥーー」
あ、やばい。すぐに酔いが回る。キュア、キュア。
「タカシ、船長さんにもビール何本か差し入れしておけよ」
「大丈夫大丈夫。さっきまで一緒に宴会してたから」
チラリと木箱の陰に20本近い空き瓶発見。
こいつらは一体何時に起きていつから呑み始めたんだ。
「おう、あんたたち。少し予定よりも早く着きそうだ。もう1~2時間もすれば着くから準備だけはしといてくれよ。ああ、空き瓶はこっちで片付けとくからそこに置いといてくれ」
「ありがとう船長さん。今度は陸で呑もうや」
酒さえあればコイツらは例え魔族だったとしても仲良くできそうだな。
タカシとマサルを連れて一旦部屋へと戻って降りる準備をしておく。たいした準備はないが部屋で呑みちらかしていたゴミだけは片付けておく。
一応ミラたちにも一言早く着くことを伝えておこう。
コンコン、とドアをノックする。
「はい」
ガチャリとドアを開けて出て来たのはミネアさん。
「あと1~2時間くらいで着くらしいのでお伝えにきました」
「わざわざありがとうございます」
「昨日夜ひどく揺れたんですが皆さん気づかずよく熟睡されてたんですね?」
「いえ、3人とも起きたのだけれど、ミラ様が」
後ろからミラの声が聞こえる。
「マーシーが出ていったから大丈夫ってそのまま寝たわ」
「さいですか」
まぁその通りだったわけだが。
「それじゃあボチボチ降りる準備だけはしておいてください。また船長さんが声かけてくれると思うんで」
扉を閉めて部屋へ戻る。
それにしても・・・・・・巨乳美女ミネアさんと清純派黒髪少女ミラと同室のグルグムさんが羨ましすぎる。着替えとかどうなんだろう?流石に寝る時は薄着にもなるんじゃなかろうか?男の前でお着替え?いや!ミネアさんあたりは寝る時全裸とかもあるんじゃないのか!?しまった!こんなことなら召喚獣の鳥をあの部屋に忍び込ませておくんだった!
「と、言う心の声が俺には聞こえてきます」
「切実な思いやな。俺も同感」
「おい、勝手に心の声を捏造するんじゃない」
「なんや、マーシーは羨ましく思わんのか?」
そんなもの決まってるだろう。
「めちゃくちゃ羨ましい。できれば代わってほしい」
「せやな。男の願望やわ」
1時間くらいそんな妄想の話しで盛り上がった僕たちのもとに船長さんが声を掛けて来た。
「お疲れさん。陸が見えてきたぞ。長旅ご苦労さん。まぁ1日程度だったがな」
僕達は甲板に出た。遠目に陸地が見えている。
ミラ達3人も甲板に出てきた。
「ミラ、着いてからどうする?すぐに出るか?」
「少し休憩したら馬車を調達するわ。用意出来たらすぐに出るつもりよ」
「分かった。俺は昨日仕留めたクラーケンを売り払ってくるからどこかで昼飯でも食ってから馬車を見にいこう」
そして僕たちは魔大陸という地に足を着けた。
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