こういう縁って大事です
僕達はミズリー師匠に挨拶を済ませて冒険者ギルドの並びのホテルにそのまま戻りロビーを見渡した。
お、ダークエルフのミネアさん発見。フードで耳は隠せてもその突き出した胸は隠せていないぞ。
「ミネアさんご苦労様です。もう部屋にはチェックインしたんですか?」
「ああ」
ミネアさんは冷ややかな目で返事を返した。彼女とは全然友好度上げれてないよなぁ。
「なら30分後くらいに俺の部屋に3人で来てください。こっちで待ってますんで」
僕は部屋番号を伝えてタカシとマサルを連れて僕の部屋に入った。
とりあえず『治癒の血』の情報は入ったし今日動けるなら今日中にできることはやってしまいたい。
「モグモグ結構情報モグ入りましたねゴクン」
「間近で見て改めて分かったけど、今まで会った中でメロン師匠が1番なんわ間違いないわ」
「お前らガン見しすぎな。多分バレてるからな」
「大丈夫。おっぱいを見ない方が罪。メロン師匠はそれを分かってる」
「俺はエロい目で見てるんやない。信仰の象徴として拝んでたんや」
そんな信仰はいらんよ。
「とりあえずミラたちと相談してダープさんの所は今日行くか明日行くか考えよう。行ってすぐに解決できるものじゃあないがおそらくまだスタートラインにも立てていないしな」
「え?今日は夜には『楽園』行くんやろ?ほんだら明日にしよーや」
「タカシ。これは仕事だ。お前は朝仕事に行く時間に起きて「なんかめんどくさいなー」ってキャバクラに行くようなヤツなのか?」
「え!?流石にそんなんはせーへんけど・・・・・」
「タカシ。仕事終わりの一杯は?」
「最高やな」
「そういうことだ。終わったら目一杯楽しもう」
「せやな!やることやってからパーッといこうか!」
「マーシーが手慣れすぎムグムグゴクン」
「マサルもそれでいいな?」
「大丈夫。俺は急いでいない。ミレーヌさんは逃げないからな」
すると扉がノックされてミラたち3人が入ってきた。
部屋のソファにミラは座り、他の2人はソファの後ろに立って整列している。流石護衛っぽいな。
「ミラ、どうだ?いい宿だろう?風呂もあるしベッドも大きいし」
「そうね、逆に落ち着かないわね」
「まぁ長居するわけじゃないからな。それじゃあこっちで掴んだ情報を話すよ」
僕は治癒の血が依頼に出されていた話から現在の所有者とその人物ダープさんの屋敷の場所を説明した。
「仕事が早いわね。ありがとう」
「さてと、ここからどうするか?なんだが」
「盗難強奪はできれば遠慮したいわ。一度真正面から話を持っていこうかしら」
「そうだよな。俺も実は正攻法が一番いいんじゃないかと考えていたんだ」
「『治癒の血』ってめっちゃ高価なもんなんやろ?普通に譲ってくださいって言っても無理なんちゃうん?」
「ミラ様。誰が持っているのかが分かれば私が速やかに回収いたしますが」
「ミネアさん、それは強奪するってことですよね?それはダメです。ダープさんは一応俺たちの知り合いでもありますので何かあれば俺たちを敵にまわすことになりますよ」
「ミネア、ありがとう。大丈夫よ。一度私が直接接触して話してみるわ。ある程度の条件でも出してくれれば交渉の余地はある。一番問題なのは交渉の余地すらなく断られることね」
「まぁ話してみないことには事が進まないな。それじゃあミラと俺の2人と後は保険もつけてダープさんの所に伺ってみよう」
「保険?なにかいい案があるの?」
「ああ。ちょっとだけ待っててくれ。すぐ戻る」
僕は1人席を立ち部屋を出た。
そして自身の索敵に反応している保険の元へと足を運ぶ。
僕はホテルのロビーに出た。
「お疲れ様です。今着いたんですか?」
僕はその人物に声をかけた。
「おおマーシー。早いな。先に戻っていたか」
「Fランクがこの宿に泊まるなんて・・・・・。優勝賞金か!優勝賞金なのね!!」
ナイトガードのダルブさんとミクシリアさんだ。
「他の皆さんは?」
「部屋で休んでいるわよ。私たちは今から買い出しと冒険者ギルドに報告ね」
「そう・・・・ですか。お忙しいところ本当に申し訳なく思うのですが、お2人にお願いがあるんです、聞いてくれませんか」
「・・・・・・・・・・・・。なによ改まって。ちょっと意味深で怖いんだけど」
「ふむ、割と真剣な話のようだな。今じゃないと駄目かな?」
「早い方がありがたいですね」
「まぁ聞くだけ聞かせてもらおう。ここでいいのかな?」
「いえ、部屋に待たせているんでそちらで」
「それじゃあマーシーたちの部屋に行こうか」
「いいんですか、ダルブさん?マーシーのこんな態度はきっと何か裏がありそうですよー?」
「はははは、珍しい態度だからこそきっと大事なんだろう?できることならしてやってもいいさ。もちろん無理なことはできないが」
「いえ、十分です。話だけでも聞いていただいて無理なことは流石にお願いはできませんから」
僕は2人を連れて部屋へと戻る。
「ただいまー」
「おう、帰ってきたわ。!?ダルブさんやん」
「お邪魔するわよー」
「ミクシリアさんも一緒ですね」
僕は2人を部屋に通してソファへと誘導する。
こちらのソファには僕とタカシマサル。
対面にはミラがソファに。後ろにミネアさんにグルグムさん。
こちらから見て右手のソファにダルブさんとミクシリアさんだ。
「えっと、一応改めて紹介しておきますね。彼女はミラ。もちろんご存じかと思いますが。今俺たちの状況はミラが依頼主で俺たちはその依頼の遂行中です」
ミラは軽くダルブさん達に頭を下げた。
「はい、こちらの方々は冒険者チーム『ナイトガード』のリーダーダルブさんと魔法使いのミクシリアさんです。俺たちに冒険者の手ほどきを教えてくれた俺たちの恩人です」
ダルブさんはこれはどうもと言う感じにミラに軽く頭を下げたがミクシリアさんはじっとりとした目で僕を見ていた。
「なによ、この密会は?」
「密会と言えば密会なんですけどね。今話したように彼女から現在進行形で依頼を受けてる真っ最中なわけです」
「実力的には冒険者ランクBとかAの人間がEランクにわざわざ依頼するわけ?」
「まぁそれは成り行きでそうなってしまったわけでしてね、はい」
まぁ普通はそういう反応するわな。
「まぁまぁミクシリア。彼らの実力がEランク程度ではないのは分かっているだろう」
「それはそうですけど・・・・・・。その、ミラさんにもできない依頼をマーシーたちが受けているってことよねェ」
僕はミラに視線を向けた。
「ミラ、この2人は信用できる人物だ。ある程度の情報を開示することになるが構わないな?今回のことで2人の協力を得られるのと得られないのとでは状況が全く変わってくる」
ミラは表情はかわらないが後ろの2人が少し顔をしかめたのが見えた。
「もちろん構わないわ。全て任せる」
僕はミラから受けている依頼を説明し始めた。
彼女の父が病に倒れて治療法が見つからない。そのために『治癒の血』を求めていること。流石に魔王関連は話に出さずにえらい所のお嬢さんという形で説明する。それならば護衛がついているのも納得できるだろう。
『治癒の血』を最近ダープさんが入手したこと。それを分けてもらうためにダープさんのもとへ向かおうとしていたこと。
「それで我々というわけか?」
「はい。できれば仲介というかたちでダープさんに取り次いでいただければありがたいのですが。もちろん取り次いで話を聞いていただくだけで構いません。なにも一緒に説得してくださいとは言いませんよ。俺たちだけで行っても門前払いになる可能性が高いんじゃないかと思うんです。今ダープさんの元には『治癒の血』目当てで近づくものが多いと伺ってますので」
「まぁ取り次ぐくらいなら可能だろうな」
ミラの表情が少し和らいでダルブさんを見た。
「けれど『治癒の血』を分けてもらえるなんてのは甘い考えね。あれにどれだけの価値があるか知ってる?あれひとつで死ぬまで遊んで暮らせるくらいよ」
「そう、ミクシリアさんそこなんですよ。ダープさんって商人としてすごく成功されてる方ですよね?それならあまりお金に困ってるわけじゃないと思うんですよ。それなら『治癒の血』がなぜ必要なのか?できればそこを知りたいんですよね」
「そうだな。確かにダープ殿はお金には困ってはいないだろうな。商人であるから稼ぐことはしているだろうが。お金のためではなく別の目的で『治癒の血』が必要だったと?」
「ダルブさん、ちなみにですがダープさんの身近な人で最近事故や病気に遭われた方がいらっしゃったって噂とかは聞きませんか?」
「ダープ殿は数年前に奥さんとは死別されているが娘さんが1人いる。そういえば最近見ていないな」
「ここ最近ダープさんの屋敷に回復魔法を使う魔法使いが頻繁に出入りしているという情報があります。確実ではないですが可能性はありますよね?けれどその話も『治癒の血』で解決している可能性もあるわけですが」
「なるほど、譲ってもらうにしてもそういった事情であればその根本を解決することで譲ってもらう材料にするということか」
「それでもなんにしても話してみないことには始まりませんからね。だからこその橋渡しをぜひお願いしたいわけです」
「あんた色々考えてるわねー。帝都に戻ってすぐにそれだけの情報を探ってさらには私たちっていう繋がりまで利用して」
「いえいえ、運が良かっただけですよ。情報はたまたま入ったものですし、ナイトガードの皆さんとの繋がりはそれこそたまたまでしょう?」
渋い表情をしていたダルブさんが明るい表情に変わる。
「よし、それじゃあ橋渡しは受けよう。正直なところダープ殿になにかあったのか心配ではあるっていうのも正直なところだがな。でだ、何かウチにメリットはあるかな?」
「もちろんお礼はしますよ。金銭的にでも他のことでも大抵のことはさせてもらいますよ。労働力としてウチの2人を派遣することも吝かではありません」
僕は満面の笑顔を見せた。
「え!?じゃあ3人共ナイトガードに入っちゃうってことに」
「と、いうのは冗談として」ダルブさんがミクシリアさんの提案に言葉を被せてきた。そういうとこですよ、そういうとこ。「そうだな、リアで呑ませてもらったエシオンのぶどう酒」
「タカシ、あるだけ出せ」
「ラジャ」
タカシはアイテムボックスから5本エシオンのぶどう酒を取り出した。
「5本も?いいのか?グラブルが呑みたいってうるさくてな」
「問題ありませんよ全部どうぞ」
「よし、なら交渉は成立だ。いつ向かうんだ?今日行くのか?」
僕はチラリとミラを見た。
「できればすぐにでも。ありがとうございますダルブさん、ミクシリアさん」
ミラは深々と頭を下げ、それに釣られて後ろの2人も頭を下げる。
「それじゃあこいつを部屋に置いてきて買い出しは誰かに任せてくるか。ミクシリアはどうする?」
「私もダープさんのところに行きますよ。危険はなにもないと思いますけど一応リーダーのお目付け役ってことで」
見ておかないと危なっかしいのはミクシリアさんだと思いますが。
「マーシー何?その目?私がついてきちゃ問題あるってわけ?」
「まさか。大歓迎ですよ」
笑顔だ笑顔。
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