魔王の娘の父は、もちろん魔王
ガタン!!!
とグルグムが椅子を蹴り上げ横に置いてあった大剣を鞘から抜いてタカシの前に突き立てる。
ミネアは咄嗟にミラを守るようにミラの前で身構えている。
ミラは驚いた表情で僕を見つめている。
「おっ」
と、タカシは特に動じずにグルグムに向けられた大剣を見て鼻の頭を掻いている。
マサルも特に動かず僕に視線を向けた。
「とりあえず落ち着いて席に戻ってもらっていいかな?グルグム。ミネアも。ウチの馬鹿が言ったことについては今から説明するから」
タカシのおかげでまずいことになったじゃねーか。このまま戦闘が始まってもおかしくなかったが向こうもすぐに攻撃してくる様子がなくてよかった。もちろんこのままやっても負けるつもりはないが、僕はそんなことは全く希望していない。
僕は真っ直ぐにミラを見た。
ミラも僕を見つめ返す。
「2人とも座りなさい」
ミラが声をかける。
「ミラ様、危険です。やはり想像した通りミラ様を退けるほどの魔力、コイツは魔族です。我々に差し向けられた追手です」
グルグムがタカシに視線を向けたまま低い声を発した。
「そうよ、あの魔法も魔族であれば説明がつくわ。人間にあの火の龍が使えるなんて考えられないわ」
ミネアさん、実際使えているものはしょうがないじゃないか。
「2人とも座りなさい。これは命令よ」
少し怒気のかかった声でミラは再度2人を座らせようとする。
「とにかく座ってください2人とも。言っておきますが今ここで戦闘になった場合死ぬのはそっちの3人ですよ。俺の実力は分かっているでしょう?それにグルグムさん、あなたも強いのは分かるがウチのタカシはあんたよりも強いよ」
「挑発はやめてくれるかしら?」
「いや、事実を言ったまでだ」
僕とミラがお互い視線を外さずに口戦する。
「座りなさい、グルグム。ミネアもよ」
ググググっと噛みしめた表情で席に戻るグラグム。ミネアもひきつった表情を見せている。
「すまないな3人とも。別にだましているつもりは一切なかったんだけど、タカシはあとで死刑な」
「ええっ!?なんで!!」
「今のはタカシが悪い」
マサルも同意見だ。
「俺は相手の職業が分かるんだ」
「職業が?どういうことかしら?」
「そのままだよ。どうやら神官の偉い人とかにそういう人もいるらしいが、俺には相手の職業が見えるんだよ。ちなみにミネアさんはダークエルフ、グルグムは魔族、そしてミラは・・・・・・魔王の娘」
「分かってて接触してきたの?」
「こっちから接触した覚えはないんだけどな。初めて会った時は魔王の娘ってだけは分かってて顔を見ていなかったから髭面のおじさんに変装していたにもかかわらず『お嬢さん』って言ってしまったんだよ。何をもって証明とするべきか分からないが、職業っていうか種族か、合ってるだろ?俺たちが魔族じゃないって証明はどうすればいいのか分からないが」
「ミラ様彼らは危険だと判断します。ミラ様の正体が知られていることが一番の問題です」
「分かっているわミネア」
「ミラ、お前が決めていいぞ。別に俺たちは無理にミラたちの手伝いをする必要はないからな。けれど口封じのためにここで俺たち3人を殺すとかなら覚悟はしろよ。こっちは世界で1、2を争う実力の格闘家とミラよりも実力が上の魔法使いだからな」
「俺が1番やねんけどな」
「俺が1番でタカシが2番な」
なんか左右の2人からの視線がバチバチしてるな。
「もしもこのまま依頼を継続するのなら全力で治癒の血をゲットできるようにするよ、それは約束する。(俺たち以上にこの依頼を出して効率のいいヤツは絶対にいないしな。だってすでに持ってるし)別に依頼をなかったことにしても構わない。誰かにこのことを話すことは絶対にないし邪魔もしない」
この依頼のルート選択が出たが依頼主からNGが出れば流石に大丈夫だろう。こっちからルートを逸れたわけでもないしな。
「依頼は・・・・・・・・・・このままお願いするわ」
「「ミラ様!!」」
「魔王の娘だと分かっていたのは事実だけれど、それが知られたことによる被害はないわ。現に魔術騎士団あたりに通報したりもしていない。それなら今頃私たちは追われている頃よ。それにさっきからグルグムが剣を抜いた時でさえこの3人からは殺気を全く感じられない。私たち3人をどうこうしようとは思っていないわ。タカシがポロッと口にしたのも私たちを騙すつもりなら絶対にありえないし」
タカシが馬鹿であったために白くなったということか。
グルグムさんとミネアさんは渋い表情であったがミラが決めたとなると反対もできないか。
「よし、それじゃあ依頼は継続で。大丈夫、治癒の血はなんとしてでも手に入れよう。できる限りの手はこちらも尽くすよ。グルグムさん、ミネアさん、すみませんでした。正体を知っていて黙っていたことに関しては言い訳ではないですが、分かってて「あなたは魔族の娘ですよね?」なんて言えないですよ。そのことを他言しないということはお約束します。タカシあたりがポロッと漏らしたら俺がコイツを始末しますよ」
「言わへん言わへん。もう絶対言わへんよ。ホンマごめんなさい」
「それじゃあとりあえず帝都に戻ろう。明日の夕方の便で馬車で向かって帝都で改めて合流しよう。向こうに着くまでは一応別々で向かって、俺たちはギルドの横の綺麗な方のホテルに泊まる予定だから着いたらそこでミラたちも宿をとってくれ。冒険者じゃない場合は割引なしだったけど泊まるのは問題ないはずだからそこでチェックインしてそのホテルで待っててくれればいい。俺たちは向こうに着いたら治癒の血の依頼主とそいつの居場所を調べてから合流ってことにしよう。金はあるのか?」
「あまり持ち合わせはもうないわね。誰かさんのおかげで優勝し損ねちゃったし」
僕は袋に金貨を3枚ほど入れて手渡した。
「じゃあとりあえずこの金を使ってくれ。返さなくてもいい。報酬になにか上乗せしてくれればいいから。別にお金じゃなくてもいいし」
「それじゃあ身体で払ってもいいのかしら?」
そんな冗談も言えるのかい。
しかしグルグムとミネアは、ハッとしている。
「な!!ミラ様!!」
「ミラ様!!駄目です!!それでしたら私が!!」
そんなミネアさんの言葉に反応する男3人。
「お、俺はなんでもええんやけど。マーシーとマサルがどうしてもっていうんやったら全然ミネアさんでもええんやけど」
「マーシー鬼畜すぎ。そこまでダークエルフを堪能したいんですか?けれどそれしかないのでしたら俺も全然仕方なしですけど。ミネアさんを報酬としていただいても」
「いや、ちょ、ダークエルフが報酬、ヤバ。ただのエロゲじゃねーか。いや、俺はそういうつもりで言ったわけじゃないんだが、タカシとマサルがどうしてもって言うのなら、ねェ」
「なんだか私が言葉にしたよりもミネアが口にした時の反応のほうがいいんだけど。何?この差」
ミラが不服そうにしている。
それはね、17、18の未発達の女の子よりも22、23の豊満なお身体をした女性に目の前の3人は鼻の下を伸ばしてしまうからなのです。個人的にはダークエルフというだけでも高ポイントだが。
そして僕たちはその場はお開きにしホテルへと帰る。
僕達3人は明日は午前中に集合ということで部屋に入りゆっくりくつろぐ。
ミラたちが治癒の血が必要な理由がミラの父が病に伏せっている・・・か。魔王がってことだよな。
これはとんでもない情報なんじゃないだろうか?魔族のトップが現在病で弱っているなんていうのが人間側に伝わると色々とまずいんじゃなかろーか?
とんでもない情報を知ってしまったもんだ、しかもそれを助けるために僕らが動くってのはものすごくヤバイ話なんじゃないかと思う。
うーん、まぁ、それでも、大丈夫かな。
分岐ルートが出たってことはひとつのちゃんとした正規ルートだと考えてもいいし、なによりウチの馬鹿2人も否定的でもない。むしろ若干乗り気だしな。
それにミラ。あいつはなんだか悪いヤツには見えないんだよな。まだ会ってそんなにたってもいないが悪いヤツではないと思う。ただの直感だけど。そう、直感大事。
風呂入るか。
僕は風呂に入り索敵を広げると、タカシもマサルもどうやら風呂に入っているようだ。考えることは一緒だよな。
『おおーいタカシー、聞こえてるかー?』
僕は念話を飛ばしてみた。
『うおっ!!突然話しかけてくんなよ。結構ビビる』
『便利だなーコレは。索敵と合わせるとちょっとした無線機だ。マサルーマサルー、湯加減どうだー?』
『ヒィッ!!やめて!!1人で風呂に入ってていきなり話しかけられたら恐怖しかない!』
『お前らもステータス欄に多分念話が出てきてるはずだから取っておけよー』
『あ、ほんまや。あるわ』
『これでセクハラし放題ですか』
『怖っ!マサル怖っ!!女性相手に耳を塞ぐことのできない状況であんなことやこんなことを口ずさむつもりか!!なんてハレンチな!!』
『実際口には出してないからセクハラで訴えられることはないゆうわけやな。マサル頭ええな』
『あ、なんだか興奮してきた』
『よし、もう寝ろ』
僕は念話を切って風呂をあがる。
下着姿でベットに寝ころぶと
『なあなあマーシー』
『なんだよマサル。まだ何かあるのか?』
『これってこっちから念話使ってたらそっちは喋らなくてもこっちの声は聞こえているわけですよね?』
『・・・・・・・・・何が言いたい』
『あんなこといいな♪できたらいいな♪~~』
ああああああああああああああ!!!!!
それから僕は約1時間ほどマサルが飽きるまで延々と精神攻撃を受け続けた。
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