こういうのは後始末の方が手間がかかる
表彰式を済ませてさっさと闘技場をあとにする。
その後控室へと足を運んでロマネちゃんに挨拶をした。
「どう?勉強になった?」
「もう・・・・・・次元が違いすぎて、言葉にならなかったです」
「そっか。ロマネちゃん、学院もいいけどもっと色んな経験をした方がいいかもね。魔法の知識が豊富な人の教えを乞うとか、例えば騎士団の人とか冒険者にもそういう人はいると思うし。学院が魔法の全てじゃないんじゃないかな?」
「それじゃあ・・・・・・マーシーさん!!私を弟子にしてください!!!」
え・・・・・・なに言いだしたこの子。
「いやいや俺は無理だよ。魔法の知識は全然無いし、まだまだ俺は教えてもらってばかりの人間なんだから。それに絶賛冒険者活動中でここもすぐに離れるし」
「ええ!?すぐにリアを離れるんですか!?じゃあ、私も付いて行きます!!私も冒険者になります!!」
「いやぁ、流石にそれはちょっと・・・・・ねぇ」
あれ?なんだこれは?デジャブ?デジャブなのか?
「親御さんもここにいるんだろう?まだ若いのにそんなに早く親元を離れるもんじゃないよ」
「でも・・・でも。私マーシーさんに色々教えて欲しい。昨日教えてもらったのもすごく分かりやすくて、できてすごく嬉しくて。学院は・・・・楽しくないし」
学校嫌いな感じかな。僕もあまり好きじゃなかったしな。アイツらが居たから嫌いにはならなかったけど。
「それじゃあこうしようか。流石に連れて行くのはダメだ。学院で教わること以外はこの2人が時間があれば見てくれるよ」
僕はネイさんとホールドさんを巻き込んだ。
「こっちのお姉さんは俺の兄弟子なんだよ。師匠が一緒ってことね。俺もリアに来た時は見てあげることもできるし」
ネイさんは驚いた顔でこちらをみている。もちろんホールドさんもだが。
「さっき僕を騎士団に取り込んだお返しです。もし必要なら名前だけでも騎士団に入れてもらっても構いませんからロマネちゃんのことお願いできますか?」
「言ったな?じゃあお前はウチの所属にしておこう」
「名前だけですよ。ここには居られませんからね」
「構わんよ。せいぜい大物になってくれたらマーシーは俺の部下だって俺の立場も大きくなるってもんだ。はははは」
「それじゃあロマネちゃん、もう一つ。今のところ俺は弟子をとるなんてことはないけれどもし弟子をとるってことになったらロマネちゃんが一番弟子ってことにしよう。実際昨日教えたのが生まれて初めて魔法を他人に教えたわけだしね」
共鳴は教えたとは言わないよな。
「一番弟子。私が一番弟子ですね!」
「ああ、そうなるね」
この辺りで落ち着いてくれるかな。
「それじゃあネイさん、ホールドさんよろしくお願いしますね」
「ああ大丈夫さ。教えるって言っても、この子ならすぐに俺たちを追い抜いてもおかしくないがな」
ロマネちゃんは2人に任せる。また明日の昼にお伺いしますと伝えて僕は観客席へと向かう。
客席はすでに帰路につく客も多くそんな人達とすれ違う。
指を指され声をかけてくる人は多い。
そんな人の波を越えてやっと皆が待っている観客席までたどりついた。
「遅いわ。何やってたんや」
「色々あるんだよ。『優勝者』はな!」
「あ、私への皮肉だ。そうですよー私はベスト8止まりでしたよー」
「何言ってるんですかミクシリアさんは来年の優勝者でしょう」
「全財産賭けてくれるんだよね?」
「もちろん賭けますよ」
「くっ!そんな純粋な目で言えるなんて!」
「とりあえず祝勝会や!!呑もーぜ!!」
「そして食べよーぜ!!」
「昨日の店をとってあるから今から向かおう」
ダルブさんが席を片付けて皆を誘導。
昨日は僕はその店では一滴も酒を呑めなかったから今日は呑んでやる。
その後僕達は昨日の店に向かい祝勝会を開始した。
今回の主役は僕なのだがそんなことはお構いなしにタカシとマサルは好き好きに酒をバカ呑みし、酒臭い息を吐きながら僕に絡んでくる
「なんなんあれは?龍やん!めっちゃ龍やったやん!マーシーセコいわー。オレだってあんなんやりたいわー」
「いや、それよりも最後にあの黒髪のネーチャンに肩を貸した時、わざと自分の腕が胸に当たるように寄り添っていた。これか!この腕か!あのチチを堪能したのはこの腕か!!」
スリープ
ストンと眠りについた2人は隅に追いやって僕はグラスにお酒を注いだ。
「あら、寝ちゃったの?昼間っからずっと呑んでたしね」
「いや、こいつら朝から呑んでただろ」
グラブルさんは呆れた顔をしていた。
「ねぇねぇマーシー」
「なんですかミクシリアさん」
「やっぱり聞かなきゃならないと思うわけよ、私は」
「多分何を聞きたいかは見当つきますが一応聞いておきましょうか」
「1つや2つじゃないんだけど、いいかしら?」
「・・・・・・・・・・どうぞ」
「あの雷の剣ってなに?」
「そこからですか。あれはミラが水の剣って使ってたじゃないですか。あれを真似ました」
「真似した?あんなの真似してできることじゃないよねー?」
「そもそも俺はミクシリアさんの教えてくれた『魔法は想像力』ってのを根本にしているんですよ。水の剣ができるなら、雷の剣も可能でしょう?」
「この、よくもぬけぬけと。じゃああの防御魔法は何よ!ダイダルウェイブ防ぐ防御魔法って一体なんなのよ」
「あれは戦士の使う『ガード』です。昔剣術を習っていた頃に覚えたんです」
「ガード?魔法使いがガード?」
「ダイダルウェイブを防ぐほどのガードなんて考えにくいが・・・」
ダルブさんが首を捻っている。
「ガードは戦士の唯一使える魔法ですよ。実際使えばMPを消費します。ガードの強度は魔法なだけあって魔力の大きさに比例しますからね。俺が使えばそりゃあダイダルウェイブくらい防ぎますよ」
「この後輩はしれっと爆弾落とすわね。そんな事実は今まで誰も認知していないわよ。MPを消費するのは分かるけど、魔力で強度が変わる?」
「確かに実証は難しいと思います。ガードは戦士しか使えない。しかし戦士は魔力が極端に少ない。戦士が魔力を極端に高める手段はおそらく無いと思いますので結果戦士では実証する術はないですね」
ダルブさんは顎をさすりながら口を開いた。
「魔法剣士・・・・・」
「そうですね。俺も噂だけは聞いたことがありますね、魔法剣士。魔力の高い戦士、剣士なら強度の高いガードは使えるかもしれませんね」
「はぁ、ガードの使える魔法使いなんて聞いたことがないわよ。剣術習うだけで覚えただなんて誰が信じるのよ。そんな簡単に覚えれるんなら私だって・・・・・・・はっ!共鳴ならいけるかも」
「それもミズリー師匠に相談してからですね」
「うううう、ミズリーさんの名前を出すのは卑怯よ」
「卑怯はミクシリアさんですよ。俺が折角覚えた魔法片っ端からぶん盗ってるじゃないですか」
「「確かに」」
ダルブさんとグラブルさんがハモった。
「それじゃあ最後のドラゴンの説明は?」
ミクシリアさんが目を逸らしながら確信をついてくる。
まぁ問題はそこなんだよな。どう言い訳すればいいんだろうか?
「あれは企業秘密です」
「なによそれ?なめてんの?」
え?やだ怖い。
「簡単に言うとあれは俺の切り札です。ミクシリアさんには・・・・・・今のままじゃ使えませんよ」
「分かってるわよ。って今のままじゃってことは使える可能性はあるってこと?」
「俺の使った火龍はれっきとした火魔法ですよ。ミラが使ったのも水魔法です。上級のさらに上だと考えてもらえればいいかもしれません」
「上級の・・・・・さらに上・・・・・。普通の魔法使いじゃ考えもしないことね」
「魔法は想像力。固定観念にとらわれないことが大事ですね。フレアやダイダルウェイブを覚えるまでで向上心を止めてしまえばそれ以上は身につかないということです」
「上級のさらに上、ねぇ・・・・。確かに上級も使えない私じゃ逆立ちしても使えないか・・・・」
「他言は無用でお願いします。俺の切り札なんで」
「じゃあマーシーはアレをどうやって覚えたの?」
「え?・・・・・・・・火魔法は自分の得意分野なので」
「じゃああれは自分で編み出したと?」
「そのあたりは企業秘密ですね」
「まぁ魔力的に自分じゃ使えないのは分かるけどね。まずアレを使うにはそれ相応の魔力が必要になるわね。私じゃもちろん、上級を使えるロマネちゃんだって無理でしょうね。そうなるとマーシーもそうだけどあのミラって子も魔力量は普通じゃないってことか」
魔王の娘だからね。サラブレットです。
「さあさあ呑みましょう!ミクシリアさん!うるさいだけのバカ2人は寝ちゃったんで。グラブルさんもほら」
「おう!そうだな!今日はマーシーの優勝祝いだしな!そういや言ってた通り、Eランクの冒険者のチームで武闘大会と魔術大会制しやがったな!」
「冒険者ランクは強さに関係ないってことですね。実際ミラは冒険者ですらないわけですしね。実績のない強者もいるってことで」
その後まったりと宴会を楽しんだ僕はそろそろ宴もたけなわってところでタカシとマサルを起こし
「随分気持ちよさそうに寝ていたな。朝からどんだけ呑んでたんだよ」
「え?あれ?寝てた?なんか呑み足りひん感じがすんねんけど」
「もう十分呑んでるだろ。そろそろ帰るぞ」
「おかしい。おかしいぞ。俺はまだ全然食べれる気がする」
「マサルは消化が早すぎるんだよ。ほら、帰る用意をしろ」
お店を出てホテルへと帰ってくる。
「ナイトガードの皆さんは帝都には戻るんですか?」
「ええ、リアでの用事は済んだから明日か明後日には帝都に戻る予定ね。マーシーたちはどうするの?」
「僕たちはこの後別の仕事を受けてますので別行動にはなると思いますが帝都には向かいます。ミズリー師匠にも挨拶に行かなきゃならないですしね」
「あ、そういえば私魔法騎士団のネイさんて人に挨拶できてないや。どうしようかな?わざわざ挨拶に行くほどでもないかな?」
「それじゃあ・・・・・・明日一緒に挨拶に行きますか?明日のお昼に実は会う約束をしてまして。ミクシリアさんと一緒なら心強いんですが」
「なによ?会うだけなのに心強さが必要ってどういうことよ?なにかやらかしたの?」
「まぁ今日の追求とかはあると思うんで。適当に合わせてくれる味方が居た方がありがたいですね。ちなみにタカシとマサルは連れて行きません。話がこじれるんで」
「・・・・・・・・・まぁいいか。分かったわ、じゃあ明日のお昼、行く前に声をかけてちょうだい」
「分かりました、それじゃあお願いします。ダルブさんグラブルさん応援ありがとうございました」
「礼を言われるようなことじゃないさ」
「マーシーは俺のツレだって自慢話もできるしな」
そして僕らはナイトガードの皆さんと別れて部屋に向かった。
「よし、じゃあ明日は朝9時に起きてギルドで朝食な。はい、解散」
僕は今も首を傾げている2人を部屋へと押し込んで自分も部屋へと入る。
さて、明日は魔法騎士団の用事を済ませて夜はミラたちと合流だな。
明日からはやっとメインストーリーを進めることができそうだ。
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