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男3人異世界ぶらり旅  作者: neon
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居酒屋を出たらそこは草原でした

のんびりと投稿予定

居酒屋に男3人でするようなくだらない会話を楽しんでいただけたらと思います。




見渡す限りの草原で雨露の滴るビニール傘を手にした男3人がたたずんでいる。


空は快晴。


この場で傘をさしている3人は側から見れば間抜けに見えるだろうが視界に入る範囲には人っ子一人いやしない。



数百メートル、いや、数キロ先に石造りの壁みたいなものが見えている。



逆方向を見渡すとこれまた数キロ先に森のように木が立ち並んでいる景色が見える。



こんな、先の先まで視界の広がった場所なんて僕の生まれ育った土地にはなかったはずだが。



北海道あたりなら、、、。



いやいやそもそも今僕達3人は居酒屋で一杯呑んで店を出たところだったはずだ。



「まぁ、あれやな。呑みすぎた」



長身で灰色のパーカーにジーパン姿の僕の友人がボソッと言い放った。



「とりあえず呑みなおすか」



と、小太りの半袖姿に前掛けをした僕のもう1人の友人が言葉を放った。





居酒屋を出たらそこは大草原でした。





なんて状況を目の当たりにしてもっと驚愕の反応をすべきなのだろうが、いかんせん3人共酒がまわっているため思考がスローだ。



「まぁ、とりあえず」



僕達は手に持ったビニール傘をゆっくりとたたんだ。










時間は少し前に遡る



居酒屋に集まった僕達3人はいつものように日常の不満を漏らしたり、なんでもないような話で無駄に盛り上がっていた。



居酒屋なんてそんなものだろう。宝クジが当たったらどうするとか、サッカーの外国人選手のドリブルがエグすぎるとか、最近本で知識を得た相対性理論がどうだとかでそういえば先週も同じ話をしたようなしてないような内容の会話が延々飛び交う。



僕の向かいに座って今まさにアゴを突き出してプロレスラーの顔マネをしながら「次もハイボールなのかバカヤロウ」とグラスに睨みをきかしている馬鹿はタカシ。



長身の茶髪で筋肉質。長身と言ってもせいぜい180あるかないかくらいなので僕よりも10センチほど頭の位置が高いくらい。スラッとしたモデル体型。

そして馬鹿だ。



僕の横で日本酒をすでに何合呑んだかわからないくらいに空き瓶を並べているのがマサル。もう11月で肌寒いことこの上ないのに何故か半袖。腰には酒屋がよく装着していそうな前掛けをつけている。彼自身が居酒屋で働いているので特に意味はないようだが、プライベートで着けている意味が分からん。



僕よりも若干身長は低いが体重は僕の倍ほどのポッチャリ系だ。正確に言うと僕が52キロに対してマサルが90キロ。僕が痩せすぎというところも問題だが、まぁ太っているのは間違いない。ちなみに彼は超動けるポッチャリだ。趣味はサッカーと登山で冬はスノボもバリバリ。3人は中学時代のサッカー部からの付き合いで3人共スポーツは得意だが、いま現在1番運動神経がいいのはおそらくマサルだろう。身体を動かすことが大好きなようだ。しかし何故痩せないのかまったく不思議だ。

ちなみにこいつも馬鹿だ。



今日は昼間から天気が悪く、3人が集まった11時くらいにはどしゃ降りだった。雷も轟音轟かせていたため今日は中止でもいいだろうと意見を持ち出したが0.5秒で却下された。




雨天でも雷雨でも決行する3人の飲み会は、およそ2時間に渡りさしていつも通りかわり映えしない雑談会として今日も無事終わりを告げる。



勘定を済ませて店から出ると3人が3人とも似たようなビニール傘を手にして店の前でさて2軒目にいくのかそれともこのまま解散なのかを談議し始める。



大抵の場合僕がそろそろ帰ろうと帰宅を促すのに対して目の前の馬鹿2人が明日も仕事であろう馬鹿2人が「こっからが本番やでー」と僕を連れ回す図になる。



携帯電話で時間を確認すると、1時をまわっていたためこれでもかというほどの溜息を吐き出すと同時に僕の両脇はデブとノッポに固められた。



腕力では100%敵わない僕はいつも通り諦めて次の店へと足を運ぶ。



土砂降りの雨の中ほんの50メートル先にある深夜3時まで開いている居酒屋に足を運んでいるとゴロゴロゴロと空は唸り声をあげていた。




その刹那




ピカァッッ!!




と瞬間視界が明るくなったのを確認した




今日は2軒目に辿り着くことはなかった。









まぁ、辿り着いたのがこんな草原地帯なので良かったのか悪かったのか考えものだろうが、、、、、、、、、いや。



どう考えてもこっちの方がアウトだよな。






草原地帯に男3人。



家に帰ろうにも電車もタクシーも無いだろうなと思い周囲を見渡す。


一応携帯電話も確認してみたが案の定圏外表示。時間は1時をまわったところなので今さっきまで呑んでいた事実は間違いなさそうだ。




「やっぱりあっちだろうな」



と僕は石造りの壁がそそり立っている方を向き、目を細めて凝視している。


こんな所つっ立っていたってバスが停留してくれるわけもないのであの石造りの壁まで行ってみようかと2人に提案してみる。


森に向かうよりはあっちだろう。



「なになに?あそこまで競争ですか??よっしゃ!よーーーい、どん!」




「するか、アホ」


と、言った時にはマサルはすでに50メートルは先まで猛ダッシュしていた。


僕とタカシは別段追いかけるわけでもなくトボトボと歩き始めた。


「あ、減速し始めた」


遠目で見えているマサルがフラフラし始める。


先ほどまではスプリンターに見えていた背中は今は80過ぎのおじいちゃんのようだ。


「あ、倒れた」


とそのまま草原に倒れこんだ。


当たり前だ。ついさっきまであんなに呑んでたんだから。



「さてここで三択です」


僕は横を歩くタカシに視線は向けないまま話しかけた。


「居酒屋を出たら草原に飛ばされたヤローが3人。一体何が起きたのでしょうか」


①何処か見知らぬ土地に瞬間移動した。


②タイムスリップした。


③夢オチ



歩きながら難しい顔をして腕組みしているタカシ。


「ぜひとも③であって欲しいな」


「同感です」


切実に願う。③以外であった場合は笑い話にもならない。②だったとしたらもう打つ手がない。


しかしこの現実感。若干酒がはいっているにしても、肌にあたる風。踏みしめる大地。草の匂い。全てに現実味がありすぎる。



前方に座り込んだマサルがこちらを見ていた。僕達がマサルの元に到着するとマサルは立ちあがり一緒に歩き出す。

ゼェゼェと息をきらしているが僕達はゆっくりとしたペースで歩を進めているので後ろをトボトボとついてくる。


前方に膝上くらいまでの草が生えた一帯が見えたため少し進路を左にうつしてその一帯には足を踏み入れないようにする。


ヘビとか隠れてたらいやだし。




石造りの壁が徐々に近づいてくるとどうやら木製の門らしきものが視認できる。あそこから入れるのかな?なんだか大きな砦のようだ。



ガサガサッッ



3人共ビクッと右を向く。


長めの草が生えた辺りで何かが動く気配がし、足を止めた。



3人が3人とも危険を感じ視線はそのまま草むらを監視しながらジリジリとソレから距離をとろうとする。


カサカサッ


やっぱり何かがいる。



犬猫の類いならありがたいんだがライオンや虎なんかが出てきたらアウトだ。


いや、この草むら自体さほど背が高いわけではないのでそんな大型の猛獣ってわけではないだろうが。



と、その時2つの黒い物体が草むらから勢いよく飛び出してきた。



「なんだ?鼠?」


「ウサギ??」


タカシと僕に飛びかかってきた小動物は灰色っぽい色をしていたが、見るからにどうやらウサギで間違いなさそうだ。


ソレを身体を反転させてヒラリと躱す。


タカシも難なくその体当たりをかわした。


「ウサギだよな?コイツ」


タカシの疑問系には共感を持てた。このウサギは白くて鼻が赤いかわいらしいウサギとは似ても似つかぬ姿をしている。


身体は灰色。そしてこちらを威嚇するようにフーッフーッって感じで鳴きながらこちらを睨みつけている。耳だけはウサギって感じだ。眼は完全にライオンや虎レベルで僕達を見据えている。


「まだ草むらに何匹かいるみたいだぞ、気を付けろ」


と、僕が2人に注意すると構えていたウサギが駆け出し、再度僕にアタックしてくる。


僕はそれを先ほどと同じように身をひねらせて軽やかに躱した。もう一匹も同じようにタカシに再度アタックをかまそうと突進し、地面から斜めに跳ぶように跳躍した、が。



ドゴッ



とタカシは狙い澄ましたようにそのウサギ?に対して下から蹴り上げるように右足をタイミングよく合わせた。




「「「なっ!!!」」」



僕達3人は同時に驚き、そして空を見上げた



タカシに蹴り飛ばされたウサギははるか上空、だいたい50メートルくらいはいったんじゃなかろうか。


「なんでやねん」


タカシがボソッとそう呟いたのが聞こえた




「マサル!!草むら!!」


咄嗟に僕が草むらから飛び出してきた灰色の影に気づき声をあげるとマサルは反射的に右拳をその物体に打ちつけた。



ドゴンッッ!!



「「「!!!」」」



地面に叩きつけられたウサギはその衝撃で身体が地に張り付いたように薄くなり、口と目からは出血し、身動き一つとらなくなった。道路で車にはねられた猫がちょうどこんな感じで放置されているのをみたことがある。


驚愕なのはウサギの叩きつけられた地面が軽く窪んでいたことだ。バトル漫画などでよく見る光景だった。


とりあえず驚ききった後、さらに1匹のウサギがタカシに対して草むらから飛び出してきた。それと同時に2度回避されたウサギが、僕に3度目のアタックを仕掛けてくる。


考えるにタカシとマサル、2人の筋力が異常なレベルで増しているのだろうと推測し、なら僕も、と飛びかかってきたウサギに対して3度身体を反転させウサギの側面をとるとボレーシュートの応用で横から蹴りをいれてみた。


ドン、、、ゴロゴロ。


蹴りをうけたウサギは地面をゆっくりと転がり、すぐにこちらを睨んできた。



「そうそう普通はこんな感じ」


僕の足には動物を蹴ったという嫌な感触だけが残っただけだ。


ビュッ!! グチャ!!



蹴られたウサギは横から唐突に飛んできた何かがぶつかり10メートルほどぶっ飛ぶとそのまま横たわったまま動かなくなった。


どうやら飛んできたのもウサギで、タカシがウサギを素手で掴み、投げつけてきたようだ。さらにタカシは潰れた小動物を足蹴にしている。



ドチャッ!



1番最初に打ち上げられたウサギが運悪く50センチくらいの石の上に頭から落ちてきたようで赤い液体を散らして絶命している。




おそらくもう打ち止めのようで草むらからは生き物の気配はもう感じられない。



僕は2人に歩み寄った。


「いったいどういうこった?」


僕がそう言うとタカシがこう言い出した


「あ、レベルあがった」


「はいはい、それでこの惨状はどうしたもんかな?」


「襲ってきた方が悪いと考えて、まぁ放置ってことでいいと思いますが」


と、マサルが答えると


「それよりもレベルあがったって。今レベルあがった音聞こえたやろ?」


??気でもふれたかこの馬鹿は??


「ここ。ここに『タカシはレベルがUPした』って書いてある」


と、タカシは指を自分の顔の前辺りを指している。


タカシは空気は読まないが嘘をつくようなヤツではない。いや、嘘をつくような知恵のないヤツだ。


「タカシ、他には何が見える?そのメッセージ以外に何か別のマークとか文字とかは?」


「なんか右下に三角が点滅してる。続きがあるってことか」


「とりあえずそれ押してみ」


タカシは何かを指でタッチする動作をした。


「HPが30アップした、力が10アップした、俊敏が10アップした知力が1アップした、、、」


「知力1ってショボっっ!!」


マサルが吹き出しながらケラケラ腹を抱えている。


完全に格闘家とか武闘家のステータスの上がり方だ。


そんなことよりもメッセージが出るってことはおそらく、、、



僕は何もない目の前の空間に意識しながら『メニュー画面』と意識してみた。



「やっぱり出るか」


目の前には横書きでプロフィール、ステータス、スキル、アイテム、などが表記されたメニュー画面が出てきた。





腹をかかえているマサルと無慈悲にボディブローを打ち込むタカシの2人にとりあえず少し先に行こうと声をかける。


ウサギの屍体の飛び散ったこの場所に突っ立ってるのもどうかと思う。



少し進んだところでちょうど座れるサイズの岩場があったのでそこに腰をかけて2人にメニュー画面を出すように指示する。特にこの操作は問題なく。心でメニューと念じるだけで出てくるようだ。


カーソルもイメージするだけで移動してくれる。便利なもんだ。


まず自分のステータスを確認する。


LV1 マーシー


平民 ▶

HP 32

MP 135


力 12

俊敏 40

知力 120

体力 28

運 15



完全に魔法使いタイプか、、、


「タカシ、力いくらある?」


「ん、70あるわ」


「俺は58ですね。タカシはレベルあがって10あがったということは元々60か。この少し負けてる差がなんかイラっとくる」

マサルが不貞腐れ顔で言う。


「マーシーは??」


「、、、、、、、、、、、。」


なんか言うの嫌な感じ。


「いくらなん?いくらなん?わーんーりょーくー」



「12」


「じゅ、じゅ、じゅーーにーーー!!!」



「ひひひひ貧弱ーーーーー!!」


2人して口を押さえて腹を抱えながら僕を時折指さす。


ウサギに与えるダメージの大きさはこれの所為か、、、。


「とりあえずお前達、知力がいくらか言ってみな」

と、僕は2人に仕返すかのように確認する。


「え、え、先にマサル言えや」


「タカシは?タカシが先に言ったら言いますよ」



「なんか学生の時に好きな子言う風にする必要ないし」

早く言えよと僕が急く。


「タカシが2でマサルが4ね。はぁ」


2人に見せつけるように呆れた溜息をもらす。タカシに至ってはレベルあがって2ってことは元々1、、、。酷い、、、。



「ちなみに俺は120な」



「120!!東大行けるレベルか!!」


その例えは判断できないが


「いやいやこの世紀末は腕っぷしだけが物を言うんやで。知力が120でもバイク乗ったモヒカンにボーガンであっというまに始末されるで」


いやいやなんだよその世紀末的な始末のされ方は。




それよりも興味深いのはこのメニューの『スキル』ってやつだな


力、俊敏、知力、体力、運


剣術、格闘、棍術、槍術やら


魔法もある


火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、雷魔法、


光魔法、闇魔法。


索敵、語学、識別、感知なんかもある


所々に????があるのがテンションあがるな。



それにこの右上のスキルポイント。初回ボーナス100。


スキルポイントを割りふって技とか魔法を覚えれるのかな?



「タカシ。メニューのスキルってところ開いてスキルポイントって今いくらある?」


そう尋ねるとメニューをタッチしながら目が泳いでいた。


「え、、、じゅ、、、、13」


この馬鹿何も考えずスキル割り振りやがった!!

隣で俺に目線を合わせないようにデブが一歩遠ざかったのを見逃さない。


「マサルは?」


「右上に8ってなってます、、、、」


馬鹿が2人。


「いやいや、とりあえず力はMAXにするべきやし」


「タカシー、珍しく意見が合うなー」


この馬鹿2人は何も考えずとりあえず力を連打しやがったんか。

まぁ選択肢としては無くはないが。

「それ以外は?」


「残りは俊敏に、、、」

と、タカシ。

「残りは体力に、、、」

と、マサル。


考えることがほぼ一緒とは、、、、。



力や俊敏にもスキルポイントが割り振れるのか。力がMAX5段階で俊敏、体力が4段階になってるってことは、スキルポイントの消費は2.4.8.16.32か。

残りの差が5ポイント。レベル1あがると5ポイント取得かな?タカシがレベルアップで5ポイント入ったのか。高レベルになるとこの上がり幅も変わるかもしれないな。


どうやらポイントはキャンセルができないようだ。再振り分けできるアイテムとかあるかもしれないな。


2人にステータスを確認させると力はそれぞれ5倍に俊敏、体力は4倍になっていた。

うーん、1.5倍2倍3倍4倍5倍かな?数値的には結構破格だな。

今後振り分ける時は相談するように釘を刺す。





さて居酒屋を出たら草原に飛ばされたヤローが3人。一体何が起きたのでしょうか?


①何処か見知らぬ土地に瞬間移動した。


②タイムスリップした。


③夢オチ


④異世界(ゲームの世界)に飛ばされた。



ぜひとも③であってほしい。


それでも今可能性が1番高いのは、


④だろうな。


とにかくここは今まで僕が生活してきた世界とは異なる世界だ。


とにかく今はもっと情報が欲しいな。


この世界に人が僕達以外にいることを願おう




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