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サボテンと心

                第2話 サボテンの心と彼の心


 農業高校の園芸科に通うわたし、浅沙あさざははっきり言って花のことなんてさっぱり分からない。分かるのはせいぜい、サボテンか朝顔か、何かの草くらい。それでもこうして学校をサボることなく真面目に通っているのにはワケがある。


 園芸科担当にして担任の柳先生と話をしたいからだ。農業高校でイケメンに会いたかったら同級生じゃなくて、先生を狙え! なんてことを従姉に聞いたことがあってそれを今まさに体験している。


「柳先生、あの、この花は何て名前ですか~?」


「あぁ、それは鷺草さぎそうだね。見てごらん、可愛い形をしているだろう? これはねランの仲間なんだ。日当たりがよければすくすくと育ってくれるんだ」


「へ、へぇ~……そ、そうなんですね(知らないことばかりだ)」


「浅沙だって花の名前だろ? 正確には草だけど、池に浮いている綺麗な草でもある。いい名前だね」


「あ、は、はいっ……」


 マジで? 草か~でも先生、わたしのこといいって言ってくれた。これはイケそうなんじゃ? 名前の知らないいくつもの鉢植えを配置換えするために呼ばれたけど、どれから手を付けていいのか分からないよ。


「て、適当にこれを……って……キャー!」


 ガシャーーンン!!


 あああ……何でこんなドジを踏むのだろう。せっかくいい感じに話が出来ていたのに。


「浅沙はドジだね。でも、怪我をしていないようで何よりだ」


 咄嗟に私の手を掴んで、血が出ていないかを確認する先生との距離がとてつもなく近い。わたしの心臓の音はドクンドクンと鳴り響いている。


 し、静まれ……わたしの心臓――


「良かったよ無事で。浅沙も、花もどちらも」


 優しい表情かおを見せる先生。こんな時、わたしはどんな顔をすればいいのだろう。先生は水を汲みにこの場を離れている。わたしはどうすればいいと思う? なんてことを目の前のサボテンに話しかけていた。


「サボテンは人の心が分かる、だったっけ? ねえ、柳先生はわたしのことをどう思っているんだろうね? わたしはこんなにも好きなのに……」


「浅沙? どうした?」


「……え、あっ!」


 いきなり声をかけられて鉢を地面に落としてしまった。もしかして今の言葉……聞かれていたのかな?


「いたっ……針が」


「ドジだな。ほら、見せてみなさい」


 何てことの無い肌の触れ合いなのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるのかな。叶わない恋だというのに。指先と指が触れ合っているだけなのに感情が高ぶってしまう……


「先生、あのわたし……わたしは」


「……気持ちだけもらっておくから、だからごめん」


「――あ」


 そ、うだよね。何を言わせてしまったんだろう。学生に”好き”なんて言葉はかけられないよね。好きと言う言葉は無くても、わたしは確かな想いを受け取った……そんな感じがした――

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