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異世界は最強から  作者: 桜城響
第一章 人生のリスタート
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《3》ケルベロスVS宗土

 食事をし終わった後、フィリナの案内によって僕はエレナと別れて魔獣ケルベロスの討伐隊の集会所に向かった。フィリナによると集会所は王都の中央広場で、そこから隊長の固有魔法『テレポート』で出撃するそうだ。


「ここだぜ!おーいテメェら!最っ高の助っ人連れてきたぜ!」

「あのさー、頼んでおいて言うのもあれだけど……僕って助っ人扱いなの?」

「ったりめぇだろ!とりあえず宗土はここにいる奴らの装備整えてやれ」

「そうだな……しょうがない、そうしよう」


 いつも明るくてお調子者のフィリナだが、出撃の前ともなると仲間のことを気にかけてやっているようだ。すでにフィリナの声に気付いたのであろう沢山の討伐隊の人達が集まってきていた。


「まずは……イマジネーション/修復」


 まずは集まってきた人達の装備をフィリナの時のように修復する。すると、皆の装備が綺麗な色を取り戻し、新品同様まで修復された。

 しかし、


「ありがとうございます。ところで、ポーションを買いたいのですが、代金をその魔法で何とかしては頂けないでしょうか?」


 一人の男が金を要求してきた。でも、僕の権限では無から物を創造することは出来ない。残念ながらこの男の願いは無惨にも……いや、まてよ……まだ方法があるではないか!エレナから聞いたけど、確かこの世界の通貨は銅からプラチナの塊で扱われている。


「それでは、銅塊をひとつ出してください」

「は、はい。どうぞ」

「そのまま持っていてください……イマジネーション/完全複製」

「おおっ!」


 確かに僕は権限の力があるので創り出した訳ではない。だから、複製、コピーしたのだ。そうすれば、創り出さず、完璧な物が出来上がる。このように複製能力で片っ端から複製していけばいいのだ。これで僕のお財布事情も解決だ。ありがとう、神様。


「宗土、お前本当にスゲーな!」

「ははっ、まあね」

「そちらの者が、今回の助っ人か?」

「うぉっ、隊長!そうです、こちらの男が今回の助っ人、金井宗土です!」


 いつの間にか背後にいた隊長に驚いてフィリナは急いで僕のことを紹介した。僕もそれに続くようにして自己紹介をした。

 見上げる程の巨体に、身に纏う銀色の鎧がキラリと光る。人間なのか疑いたくなるような体格だ。


「宗土君、今我のことを人間なのか疑っただろ?」

「え……?何で、解ったんですか?」


 僕は確かに思っても口に出してはいない。それなのに何故バレたのか……こんなの、魔法でしか出来ない技。でもこの世界の属性魔法にそんなものはない。


「あ……属性魔法じゃないなら……」

「そう、我の固有魔法だ。フィリナ君に教えてもらっているだろうが、我は固有魔法をふたつ使うことが出来るのだ」

「そんなこと……」

「出来る筈がない、何て言わないでくれ。まあ、君は悪い者ではなさそうだしな」


 装備を整えてもらって喜んでいる隊員を見て、隊長は笑った。

 僕はそんなこと権限の力を持っている僕しか出来る筈がない、と思っていたんだけど。


「そういえば、我の名前をまだ教えていなかったな。我はグランド・レードだ。この度は、危険な魔獣討伐に加わってくれてありがとう」

「いえいえ、やめてくださいよ」


 魔獣討伐は僕の仕事でもあるしな。何か悪いことしたような気持ちになっちゃうよ。


「我が隊員達よ、よく聞け!」


 隊員達の方を向いてレードさんは声を張り上げた。それを聞いた隊員達は姿勢をレードさんの方に向けて聞き入った。


「ここにいる宗土君と共に、今から魔獣ケルベロスの討伐に向けて、出撃する!」

「さあ、行くぞ宗土」

「うん」

「では行くぞ!テレポート/魔獣ケルベロス!」


 レードさんが固有魔法のテレポートを使った瞬間、地面に真っ赤の巨大な魔方陣が出現した。それは僕と隊員達を分解するようにして空間を飛んだ。最後にレードさんも飛び、魔方陣は消えた。

 同じ魔方陣を通って出てきた先は、日差しの強い草原。全員がその場に再構成されて出てきた後に魔方陣が消え、緑の大地に鎧の集団が現れた。


「構え!」


 レードさんが言うと、隊員達は一斉に剣を抜いた。フィリナも同様、腰の剣を抜いた。しかし、フィリナの剣は他者が持っている物と形が違った。細身で先端が尖っている、レイピアのようだ。


「壁となり我らを守りたまえ 強靭な大岩 ロックウォール」


 隊員の一人が地属性魔法を発動した。こんな何もない草原で、魔法を発動する意味はないと思う。いやまて、この場所で迎え撃つつもりなのだろう。と言うか、僕には権限があるじゃないか。魔獣が何処にいるかなんて簡単に特定出来る。


「イマジネーション/特定:ケルベロス」


 レーダーのように青い輪が地を這うように広がっていく。草の一本一本まで詳しい情報が脳に送られてきた。十メートル、二十メートルとぐんぐん距離を伸ばしていく。

 中には、この世界にも存在していた虫などの情報も入ってきた。しかし、ひとつだけ明らかにおかしい物が入り込んできた。

 三メートルを越えた巨体と三つの首。これこそが探し求めた魔獣ケルベロスだ。

 僕はレードさんの方を向いて頷いた。どうやら察してくれたようで、隊員全員に戦闘用意の号令をかけた。

 すると、先程のロックウォールを使える者は全員が前に出て魔法を発動させた。横一列に並ぶ大岩の壁は、まさに何者も通さんとする堤防のようだ。


「あ、あれを見ろ!」


 隊員の一人が前方の林の中を指差した。その方向は確かにケルベロスを特定した方向である。つまりこの隊員は恐らく間違っていない。

 そう思いつつ指差す方向を見ると、そこには黒い巨体に赤の炎を宿した三つの首の魔獣ケルベロスがいた。


「攻撃開始!」

「走れ閃光 その身を貫け ピアースフラッシュ!」


 レードさんの号令と同時、隊員の光属性魔法が発動した。隊員の掌に突如現れた閃光はものすごい速度で空を駆けた。そして失速することなく真っ直ぐとケルベロスを貫き……はしなかった。巨体に激突する前に焼かれて消えたのだ。


「そ……そんな!?」

「当たり前だ!相手は魔獣だぞ!いつものように上手くはいかないぞ!」

「んなら……これはどうだ!」


 対策なく突っ込んだのはフィリナだ。レイピアを突きだし突撃していく。

 しかし予想通り、ケルベロスにレイピアは刺さらず溶けた。ケルベロスが眼下のフィリナを視界に捉えた。このままでは攻撃されて、下手すれば大怪我では済まない。

 だが攻撃の構えがない。ケルベロスが力を出せば、眼下の人間一人など何の苦労もなく消し去れる。一体何故だ?けど、今は考えている場合じゃない。フィリナを助けなくては!

  

「イマジネーション/テレポート:フィリナ」


 僕は先程見せてもらった固有魔法を使わせてもらった。ケルベロスが何もしてこない隙に、フィリナは足元に出現した魔方陣に飛ばされ僕の後ろに出た。


「ありがとうよ、宗土」

「いや、気にしないでください。それより、ここまでの強敵、下手に魔法を使えば……」

「そうだな。周りに大きな被害が及びかねん……こんなときに水属性魔法のウォーターフォールショットを使える者がいれば……」

「それ、詳しく教えてください」


 レードさんは深刻そうな表情で叶えられる筈のない願いを口にした。でも僕にはその願い、叶えられるかもしれない。

 先程地属性魔法を使った者や光属性魔法を使った者は、発動する前に詠唱を必要としていた。それさえ出来れば、権限の力で魔法の発動は可能。しかしそれが解らない今、ここは知っているであろうレードさんに聞くしかない。


「しかし……その魔法は何節にも繋がっていて、発動までに暫しの時間を要する。はっきり言って魔獣の動きを止めていられるか解らない。既に沢山の隊員達が負傷しているしな……」

「時間なら大丈夫です。言いにくいですが、もう少しだけ、何とか耐えてください!」

「む……?その魔法すら知らんのにか?……まあ、何か策があるのだろう。いいぞ、任せよう」

「ありがとうございます」


 魔獣クラスを仕留める程の魔法なら、当然詠唱も長いだろう。でも、僕の前では問題とすらも思われない。

 僕の話を信用してくれたレードさんは、僕に攻撃を与えられないように防御に回るよう全体に指示した。その瞬間、ロックウォールでの防御が一気に厚くなった。


「レードさん、地属性魔法の使える方に、出来ればケルベロスの真下に抜けられないように縦穴を掘って頂けないでしょうか」

「うむ、承知した」


 向き直ると、レードさんの指示によって隊員の中から優秀な人が選ばれた。僕がその人に作戦を伝えると、笑顔で了承してくれた。


「大地よ開け その歩みを止めたまえ バーティカルホール!」


 地属性魔法が発動。ケルベロスの真下に大きな縦穴が出現した。それはケルベロスも全身が入る程大きな縦穴である。

 当然飛べないケルベロスは穴に落下。ドスンとケルベロスが落下した衝撃が走り、駆け付けた僕達は穴の上からケルベロスを覗き込んだ。

 そしてここからは僕の出番。


「イマジネーション/魔法詠唱キャンセル ウォーターフォールショット!」


 権限の力で魔法詠唱をなくし、水属性魔法を直撃させる。圧倒的な水量に流石のケルベロスでも全身の炎が全て蒸発した。これで攻撃し放題になった訳だ。

 あくまでも今のウォーターフォールショットは、全身の炎を蒸発させるための攻撃。


「次はアタックだ!ウォーターフォールショット!」


 構えた右手の前に出現した大きな魔方陣から滝のように極太な水が大放水となって撃ち出された。それはケルベロスの横っ腹にクリーンヒット。この攻撃はかなり効いたようで、反撃することもなくその場に倒れた。


「イマジネーション/意志疎通 よっと」

「な……危ないぞ宗土君!」

「大丈夫です。僕にはある目的があるんです」


 ケルベロスとの意志疎通を可能にした宗土は穴の中に飛び込んだ。


「なあ、これで僕には勝てないって解っただろ?そこで、周りに危害を加えないなら、僕と一緒に来ないか?」


 そう。僕の狙いは最初からこのケルベロスを迎え入れることだった。だってさ、一緒ににケルベロスいるってカッコよくない?


「解りました……。しかし、私はそもそも人間に手を出そうとなど思ったことはありません。魔獣だということから勝手に危険視されているだけなのです」

「それでさっきはフィリナを攻撃しなかったのか。それなら上の人達には僕から言っておくよ。それと、迎え入れるんだし、名前が欲しいよな……それじゃあ、フレイな」

「フレイ、ですか。良い名前をありがとうございます……あの、あなたは名前を何と?」

「僕は金井宗土。フレイは王都にいると目立つからな……人型になってもらうよ」


 王都でケルベロスを連れていたら周りの人が混乱してしまう。フレイがケルベロスだという事実も隠し通さなければならない。

 それでは早速、


「イマジネーション/人化:ケルベロス」


 掌に大きな魔方陣を出現させ、魔法らしくするのを忘れず。見下ろしているレードさん達も思わず息を呑む中、包むようにして光がケルベロスの全身を呑み込んでいった。

 


 

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